第18話
「で、昨日の今日でコレか」
「私、強い匂いは好きじゃないのよ」
テーブルに置かれたのは、小さな、花の装飾がほどこされた小瓶。聞いた話じゃ水色の瓶だというが、これは無色透明。
容器自体も相当高価らしいソレを前に、姉貴は眉を顰める。
「あらあら、コワルトちゃん、頑張ってるわねえ」
「そうだな。花屋、思い切り姉貴に喧嘩売ってんな」
夕食会の翌日。午前中、姉貴も俺もいない時間に荷物が届いたということで、母親が楽しそうに報告してくれた。
どうやら、何度か花屋はウチに来てたらしい。
そのせいか、この寝癖がヤバイ母親の脳内では、花屋と姉貴は既に結婚してることになってるらしい。恐ろしい。
俺がぶっ倒れてた間に、何が起きてたのやら。
「クーラちゃん、お返しはどうするの?」
「どうしてそうなるの。向こうが勝手に送ってきたのよ」
「あのな母さん、こういうのは手紙でいいんだよ。物なんて返したら花屋のことだ、倍返しでくるぞ」
手紙にしても、エンドレスに続くと思うが黙っておく。俺、関係ないし?
不機嫌な姉貴は、俺の予想を受けて眼鏡ごしに目をきつくする。
「ケープ、やめてよ」
「悪い。ってことだ母さん。お返しなんて用意しないでいいからな」
「あらそお? でも、悪いじゃない。これ、高いんでしょう?」
「向こうの気持ちだから、いいんだよ」
方向は完全に違うけどな。姉貴なら、本がベストだ。次点は食い物か。
ちなみに、最下位は恋心を詠ったポエムなんかがヤバイ。あれは、本当にヤバイ。
「捨てるわけにもいかねえだろ。姉貴、一度は付けてみたら?」
姉貴の眼光を受けて怯まなかった花屋は、まあ、ある意味お似合いではないかと思うわけで。
氷姫と呼ばれるのは伊達じゃない。
「……一度だけよ」
「俺を睨むなよ! 送ってきたヤツを恨めよ!」
「クーラちゃんったら、新婚旅行っ? あらあらお母さんどうしようかしら? 新しいお家、見つけたほうがいいのかしら?」
「違うわよっ!」
はしゃぐ母親は、既に旅行後のことを考えてるのだろう。姉貴の怒りなど、どこ吹く風だ。
テーブルに置かれた、瓶さえ特注の香水、ソーブを見ながら俺はため息をついた。
最後まで読んでいただいて有難うございます。
色々説明が足りない部分があり、また、伏線のようなものを複数配置していたために消化不良に陥りそうな「小説のような何か」でしたが、いかがだったでしょうか?
地味な粗筋に、地味なキーワード。にもかかわらず、ここまで読んでいただいて、感謝の極みです。
一読、有難うございました!
追記
これ自体は完結していますが、アクセス数などはちょくちょく確認しています。
ので、放置はしていません。
…だから何? と言われてしまうと、ただそのことを伝えたかっただけです、としか言えません、ハイ。




