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第16話

「プー! 君がいなかったから依頼受注できなかったじゃないか!」

「プーじゃねえよ! てめえ、ワザとだろ? ワザと間違えてるだろ? ああ?」

「ほら! アンナ、君からも言ってくれよ! プー以外の受付が依頼受注してくれなかったって!」


 人の名前を覚えない阿呆。

 カウンターをぶっ叩いて怒りを表現してやるが、阿呆は氷点下の目を向ける女性へ助けを求めている。

 つうか、抱きつきやがった。


「アンナああぁぁぁっ!」

「ケープの優しさに気付けないアンタ、サイアクね」


 阿呆に抱きつかれても全く感情が動かない幼馴染。

 ふい、とその平坦な顔を背ける。途端、阿呆の目から涙が流れる。気味悪っ!


「なっ? なっ……アンナが、アンナが僕を見捨てたっ? そんなあああぁぁっ?」

「ウルサイ」

「ヒドイよぉおおおおアンナあああああっ!」

「外でやれ!」

「ケープ、迷惑かけるわ」

「……アンタも大変だな。次!」


 再度カウンターを叩いて、立ち上がってたことを思い出す。

 荒い息を吐きながら腰を下ろしながら、女性に引きずられていく阿呆を眺める。

 その視界を覆うようにすぐさま、筋肉のカタマリがやってきた。手を上げて挨拶しておく。


「よお久しぶりだ、ケープ。コレ頼むわ」

「……はいよ。アンタみたく、身の程を弁えた人間が増えてほしい。本当に」

「切実だな」


 最近、弟子を取ったというオッサンが持ってきた依頼書の手続きをする。

 オッサンには余裕の依頼だが……弟子用ってところか?


「見りゃ分かるだろ。で、噂の弟子は?」

「外で飯食ってる。受注だけなら俺一人でいいからな」

「ふうん。ま、オッサンならいいか。持ってけ」

「うし、助かる」

「だけど油断すんなよ」

「りょーかい」


 承認済みの依頼書を返す。軽く手を上げて立ち去るオッサンを見ながら、カウンターに置いてあるギルド員の名簿を取り出して弟子の名前を探す。

 手っ取り早く金が稼げ、名誉ももらえるとあって、ギルドに所属しようとする人間は多い。

 それこそ毎日途切れることなく新人が入り………誰かが死んでいく。

 だから各ギルドが毎日更新情報を交換している。当然、名簿の方も毎日更新されている。


「……ふうん」


 筋肉が、魔術師の弟子を取るのか……面倒見いいこった。

 名簿を戻し、目の前に自分の手を持ち上げる。


「魔術師、なあ…」


 魔術と聞いて嫌でも思い出すのが、あの、むせ返るような匂い。

 三日も昏睡していて、起きて二日の今でも手が痺れる。花屋が言うには魔術は解除されたとのことだが、疑わしい。

 背後の机で仕事をしてる友人も、治療したと満面の笑顔で保証してくれたが。


「ったく」


 この感覚を共有できる人間がいないから、なおさら腹立つ。気のせいってなんだよ。

 手を握りこみ、カウンターに落とす。


「あらま、ゴキゲン斜めじゃない」


 笑ってやってきたのは、ギルド近くにあるパン屋の女主人。

 背は低いものの、横に広がっているその堂々とした姿に、彼女を知らない人間は威圧を感じて自ら体を避けていく。

 パン屋、のはずなんだが……はずなんだが…

 カウンターに置かれた、鍛え抜かれた腕を見て唸る。


「ん? まあな。そんなゴキゲン斜めな俺のところに来るアンタ、今度は何の依頼だ?」

「いやさ、ちょっと在庫が心もとないから調達をね」

「依頼書寄越せ」

「ほら」


 パン屋のはずなんだが、リザードの鱗やら、コウモリの体液を依頼にしてくるのは、何故だ?

 混ぜてるのか? それを食わせてるのか? いや、食えると……いや無理。絶対無理。

 書かれた依頼書をチェック。動きが止まる。


「嫌味か?」

「なんだい? 今日は単なる薬草採取の依頼だがねえ」


 思わず零れた言葉を拾われ、手を振る。


「単なる独り言だ。不備もないし、あとはこっちでやっとく」

「ありがとさん。頼んだよ」

「あいよ」


 颯爽と外へ出て行く女主人の後姿を追っていく。貫禄あんなあ……荒くれ共が、道開けてるよ、オイ。

 さて、と気を取り直して時間を確認すれば……そろそろ上がりだ。

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