第11話
「ってわけだ。どうよ姉貴」
「地味ねえ」
「だろう? 俺もそう思った」
俺も姉貴も、テーブルに置かれた三種の鉢、中央の地味すぎる花へ視線を向ける。
姉貴はその膝に、分厚い植物図鑑を乗せていた。なるほど、いつぞやの読書はコレのためか。
ページをめくりつつ、眼鏡越しの目はあらぬ方を睨んでいる。
「花屋の、コワルトの言葉が引っかかるわね」
「引っかかるって、何が?」
「色々と」
そんな俺たちの前に登場する、母親。今日は側頭部だけでなく後頭部の髪もカールしている。
相変わらず盛大な寝癖ですね。
俺たちの視線を追って、三個の鉢に気付く。
「あら、二人ともお花とにらめっこ?」
「なあ母さん、この花、どう思う?」
俺は体をのけて、テーブルに乗せた三つの鉢を見せる。
途端、母親は嬉しそうに目を輝かせて両手を胸の前で組む。
「お母さんにプレゼント? やだっ、嬉しい!」
「うんまあ……」
「まあありがとう! お母さん、コレ気に入っちゃった! 一目ぼれね!」
そう言って、母親は鉢を持ち上げた。
一番地味な鉢を。
なぜ、一番地味な花を取るんだい、母さんよ。
姉貴も、そんな母親を若干引きつった顔で見上げている。
「母さんなら、コッチ選ぶと思ったんだけどな」
小振りな花が付いた鉢を指差せば、いやいやするように顔を地味花に押し付ける。
「あらそお? コレが一番可愛いじゃない」
「か、かわいぃい?」
「それにいい匂いもするじゃない」
「匂い?」
そんなものしないぞ。
同意を求めるように姉貴へ視線を送る。小さく頷き、姉貴も援護する。
「図鑑にも、匂いについては書いてないわ」
「そんなことないわよぉ。ほらほら!」
「いや、やっぱ無いぞ?」
「ケープの言うとおり」
いくら鉢を押し付けられても、土の匂いしかしない。
まさか、花と土の匂いを間違えてるのか……?
有り得る。
「こんないい匂いなのに」
「ん、まあ……なんにせよ、母さんが気に入ってくれたならそれでいいよ」
「そうね」
不思議そうに首を傾げる母親を見ながら、俺と姉貴はため息をついた。




