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オカルト系少女 2

空は思いの外青かった。


下ばかり見ていたせいか、空の色をすっかり忘れていたみたいだ。


屋上に連れてこられて五分くらい。


私はやることもなく、とりあえず空を見ていた。


後ろでは何かを広げるような音が聞こえてくる。


カサカサ、ごそごそ、時折ガチャン。


「はーい、準備出来たよー。さ、こっち来てこっち来て」


振り返って驚いた。


可愛らしいクマのキャラクターをデザインした敷物が広げられている。


さらに驚いたのはそこに広げられたお弁当の彩り鮮やかなこと。


簡単にいえば美味しそうなのだ。


「これ、先輩が一人で作ったんですか?」


「まぁね。こう見えて料理だけは得意でさ。自分で言うのもなんだけどね」


「でもこれ、三人分はありますよね…」


「…。ま、まぁ育ち盛りだからね!」


変な空気が漂う。


本当は誰かほかの人と約束があったりしたのだろうか。


だとしたら申し訳ない。


「まず食べよう。遠慮はしないでね、見たとおりいっぱいあるんだから」


じゃあ、と渡されたお箸(これもピンクの可愛らしいデザインだった)で近くにあった卵焼きから取ってみる。


先輩はそんな私の一挙手一投足をジーっと見つめている。


プレッシャーを感じながら、これで美味しくなかったら私はどう反応すればいいのだろうと悩みながら卵焼きを口に運んだ。


「美味しい…」


先輩の表情が明るくなる。


悩みが意味の無いものだったことを嬉しく思うと同時に、何か懐かしいような、それでいて悲しいような、複雑な気持ちに襲われる。


既視感、のようなものなのだろうが、錯覚と呼ぶにはなんとも生々しい感じ。


「良かったー。美命さんの口に合わなかったらどうしようかって思ってハラハラしたよ。それはもう作ってる時からハラハラしてたんだから」


「作ってるとき?」


「あー、いや、なんでもないなんでもない。それよりほら、この鮭も上手く焼けたんだから。もちろん骨は撤去済み!」


結局、お昼は先輩のペースにごまかされるように終わってしまった。


美味しいお弁当。


優しい先輩。


自分にはもったいないような出来事だった。


ただ、全てが偶然にしては出来すぎているような感じもして、それが頭のどこかに引っかかっている。


はっきりとまとまらない考えを頭の中で持て余しながら休み時間の残りを潰すこととなってしまった。




午後の授業は憂鬱だ。


特にそれが体育だとその憂鬱さ加減は倍増する。


というのも、元々体が丈夫でない私は調子のよい日を除いて体育は概ね見学なのだ。


それなりにお腹が膨れた後に何もすることのない時間を過ごすというのはある意味で拷問に近い。


呼んでもいないのに睡魔がこちらへにじり寄ってくる。


だが今日のところはその気配はしない。


頭の中は考えることでいっぱいで、入り込む余地が無いのだろう。


では考えますか、と適当な場所を探して体育座りをする。


表面上は真面目に見学してますよ、という体面を取り繕いながらも、思考は授業と完全に切り離された。


まず、先輩が何者なのかということ。


初対面なのは間違いないが、私の名前を知っていたことや、なによりお弁当の味が完全に私の好みと一致していたことが気にかかった。


私の好きな卵焼きは砂糖をこれでもかというほど入れ、とにかく甘く甘く作ったものなのだ。


普通にお弁当に入っているとは思えないほど甘く。


ほかのオカズにしてもそうだ、金平も里芋のにっころがしも、全てものすごく甘かった。


まるで私の好みの味を知っているかのように…。


そこまで考えて、ふと脳裏に懐かしい顔が過ぎった。


兄の顔だ。


幼い頃は仲が良かったらしいのだが、物心ついたときには疎遠になっていた。


記憶の中の兄はまるで私を居ない者のように扱った。


私にとって家族の記憶というのは決して良い思い出ではない。


ズキリ、と目が少し痛んだ。


昔を思い出したせいかと思ったが何か違う。


嫌な予感。


目を閉じ集中。


開くな、見るな、


そう体の奥から警告が聞こえてくる。


でも、私は目を開いた。


そして驚愕する。


地面を小さな蜘蛛が這っていた。


一匹や二匹では無い、数百匹、とにかく大量の蜘蛛だ。


正確には蜘蛛のような何か。


悲鳴を必死に押さえ込む、理由はわからないが、気がつかれてはいけない、そう思った。


再び目を閉じる。


見えない、見えない、見えない、何度も心の中で念じ、再び目を開く。


そこにあるのはいつもどおりの風景。


退屈な体育の授業。


のはずだった。


「見つけた」


目と鼻の先に顔が一つ。


眼球は無く、目があるはずの場所には空虚な闇が広がっていた。


今度は悲鳴を押さえ込むことができず、私はそのまま気を失った。

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