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ようこそ外夢の町へ

 1新しい都市


 この都市には、一匹のモンスターと七夕伝説が存在する。

 ただ、純粋ではない。



 人工都市、外夢のそとゆめのまち

 一つの都市を半球ドームで覆い閉ざした空間都市には、人口という名の自然が外の世界と同じように存在している。

 灰色に覆われたアスファルトに通り抜ける風を始め、全てを照らす日差し、降り注ぐ雨すべてが都市のコンピューターにより管


理されていた。

 特殊なエネルギーでこの都市は生きていた。

 ドーム内面積、5万平方キロメートル。

 3万人の人間が全て人工で出来た未来都市に住んでいる。

「外夢の町はなぁ、エネルギーに困ることはないのさ」


 その町へと向かう車の中、助手席にどっかりと座る先輩は後輩に説明した。

「節電、節電といわれてますが…他の町と同じじゃないですか」


 先輩の話し相手をしながら運転する後輩は、少しづつ大きく見えてくるメタル色のドームに得体のしれない不気味さを感じた。

 高速を降り賑やかな市街地を通り抜けて数時間すすむと店や住宅がまばらになって、しまいには見かけなくなった。

 長いトンネルが明けたら、木一本ない荒野にたどり着いた。

 ここは本当に日本なのか?次元を超えて異世界に来てしまったのではないのかと不安がる後輩の目に『外夢の町まで10キロ』


という看板が目に入った。

「外とは比べ物にならないんだよ」

 先輩はタバコを口にした。人工都市は完全禁煙なのでいまのうちに吸っておこうという考えなのだが、あいにく後輩の車は禁煙


にしていた。

 後輩がそれを伝える勇気はなく、先輩は白い息を吐き出した。

「この都市にはなあ、原子力発電所がなくても、電気があるんだよ」

「じゃあ、風力か火力ですか?」

 先輩は否定を口にせず、後輩の頭を軽く叩いた。

「バカモン、それじゃあ話にならないだろ。

 モンスターだよ。

 都市中央に発電所の塔があって、そこに住む1匹のモンスターがとてつもないエネルギーを作り出しているんだよ」

「町の真ん中に発電所?モンスター?どういう事ですか意味わかりませんよ」

「今いった通りだ。塔にいるモンスターが電気を作っているんだ」

「町の真ん中って危険じゃないですか」

「バカモン、100パーセントクリーンで安全だ」

「モンスターが…ゲームみたいな話ですね」

 後輩の言葉を口にしても、おかしくないのだが…

「殴るぞ」

 先輩は宣言する前に行動した。

(井荒、単語けしておく)

 先輩の見事な平手打ちを後頭部に当たり、車は車線を越えた。

「せせ、先輩。何するんですか」

「車線を越えたって、他に車がないから問題ない。

 問題は、町の発電所をうちの会社が作ったのに知らないお前の頭の方だ」

「関係者でした…わ、待ってください井荒先輩」

 再びつっこみを入れようとした先輩、井荒の手は当たることはなかった。

「田崎、入社して何年になるんだよ」

 どうやら、呆れて殴る気力が失せたらしい。

「しかも、先月まで開発部にいたんだろ」

「そうなんですが…試験管を洗えだとか、使った資料を片付けておけだとか雑用だけで。詳しい事…そもそも何を開発しているの


かすら、さっぱりで」

「………」

 会社の未来に不安を感じる井荒であった。



 巨大ドームは威圧させるほど間近に迫っていた。


 メタル色をしたドーム都市『外夢の町』の入り口は、壁とかわらない大きな自動扉が音もなくスライドし、ぱっくりと大きな口を開


けた。

 田崎は一呼吸してからアクセルを踏む。

 視界に入り込んできた光景は不安だけであった。

 前方に灰色の壁のような建物が一つ。それだけが圧迫するようにそびえたっているのだから。

 念のため左右を見回したが、肉眼で見る限り、建物や人一人見かけないコンクリート製の大地が続いているだけだった。

「………」

「ビビんなって。ここは立体駐車場だ。ここで外の車を置いていくんだ」

「外って。町の外から持ってきた車は使えないんですか?」

 井荒の言うとおり、前方に立体駐車場を表す看板が目に入ったので、ほっとしながら田崎は疑問を口にすることが出来た。

「使えないっていうよりも、ガソリンスタンドがない。中は電気車だよ。

 ここはエネルギーに困る事はないからな」


 車を入り口に止め荷物を取り、初めて会った町の住人兼駐車場の管理人に車を預ける。

 数メートル歩き殺風景なドアを開け、これまた殺風景な長く広くはない通路を進んだ。

「ビビる準備でもしておくんだな、町、初心者の田崎君」

 通路の出口が見えるようになってから、井荒は後輩にニヤリと笑った。

「さっきはビビるなって言ったくせに。何がすごいんですか?」

「外夢の町は半球のメタルドームに覆われた町だ」

 井荒は扉を開けた。

「これは…」

 通路を出た田崎は、空を見上げた。

 メタル色のドームに覆われているはずなのに、青空が広がっていた。町の外にある空と何一つ変わらないのだ。

「これが町の中央にすむモンスターの力だ。

 ドーム内側に張り巡らされたスクリーンで映像化された人工の空だ。

 中央のコンピューターで天候は自由自在に変えられる」

「じゃあ、ボタン一つでこの都市は雨にも雪にもなるんですか?」

「ああ。膨大なエネルギーがあるから何でも人工でできるんだ」

「…へぇ……」

 人工都市『外夢の町』

 1匹のモンスターにより成り立っている。



 

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