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いや、王太子の仕事は王太子がしろよ

作者: 井上さん
掲載日:2026/06/25

婚約者だからって、仕事押し付けるのはどうかと思うし、

何で代わりにやっちゃうのかな?と思っていたので

 王太子の婚約者に選ばれた。


私は、公爵家の長女なので、王太子の婚約者に選ばれるだろうと、様々な教育を受けていた。




 婚約が決まったので、王城へ挨拶に行った。


国王様と王妃様は、優しそうな感じだった。


優しいだけでは国王はやっていけないだろうから、表面だけだろうが。


「娘ができて嬉しいわ」


 王妃様が微笑んだ。


一方、婚約者である王太子は。


「…」


 不機嫌な顔で、そっぽを向いていた。


フキハラかよ。


いい歳して、自分の機嫌を他人に取らせるなよ。




ん?フキハラ?


その時、れき…じゃなかった。前世を思い出した。


 他人の仕事までやってしまい、疲労困憊で、体調不良になった前世。



私は、微笑んだまま、王太子を放置した。


 婚約が嫌なら、嫌だって国王に言えよ。


内心で毒づいた。


反抗期かな?

反抗期は、両親だけにしてよ。

私はお前の親じゃない。




 いつまでも無言な王太子に、国王様と王妃様が


「庭園を案内したら?」


 と、振っていたが


「申し訳ございません。この後、予定がありまして」


 私は、両親を連れて、さっさと家に帰った。




 その数日後、婚約者としての交流の為のお茶会に呼ばれた。


広い客間で、ゆったりとしたソファに、王太子が座っていた。


「王太子殿下、ご機嫌よう」


 私は、挨拶をした。


「…」


 王太子は、そっぽを向いたまま無言だった。

挨拶もできないのか、この幼児。



メイドがお茶を淹れて下がる。


王太子が無言なので、そのまま黙って立ったまま待っていた。


何も言われないから座れない。

上位の者が手をつけないのに、お茶は飲めない。


「お前!偉そうに!俺のご機嫌を取れよ!」


 王太子が立ち上がり、叫んだ。


「ご機嫌を取ってもらわないといけない程、殿下は幼いのですか?」


 私は、びっくり、という顔をした。


「はぁ!?」


「大人は、自分で自分の機嫌を取るものですよ」


「何だと生意気な!帰る!」


 王太子は、出ていった。


私は、お茶を飲み、お菓子を食べてから退出した。




 次のお茶会では持っていた書類をテーブルに投げ


「お前は優秀なんだろ?これをやれ!」


 と言った。


「こちらは何でしょうか?」


 私は首を傾げた。


「優秀なお前を試す為、執務中の書類を持ってきた」


「つまり、ご自分の仕事という事ですね」


「何が言いたい?」


「私を試すだなんて…仕事したくないから押し付けたい、と正直に仰ってください」


「うるさい!」


 おや、図星か?


「王城の書類は、極秘事項も多いのに、執務室から持ち出してはいけませんよ」


「は?」


「書類を持ち出した事を誰かに話しましたか?」


「はぁ?」


「情報漏洩の疑いがあります。担当の者を呼んでください」


 近くにいた護衛に声を掛ける。


「もう良い!」


 王太子は、書類を持って部屋を出た。


何故私が王太子の仕事をしなければいけないのか。

するわけない。


自分の事は自分でしろ。


できないなら、王太子を辞めろ。

あらやだ。口調が悪くなってしまったわ。




 私は、王妃様に呼ばれた。


「王太子が、貴女が我儘を言うと言ってきてね」


 挨拶が終わると、すぐに本題に入った。


「まず、初日に『俺のご機嫌を取れ』とおっしゃいました。2回目は、『お前を試す為に書類仕事をしろ』と」


 私は、率直に答えた。


「え?」


 いつも笑顔の王妃様が固まった。


「私は、自分の機嫌は自分で取るように、と、極秘書類だと情報漏洩になるので、担当者を呼んでほしい、とお答えしました」


「…そ…そうね…」


 何も間違ってはいない。


「精神が未成熟なようなので、王太子殿下におかれましては、ご休養なされて、再教育なされた方がよろしいかと。王家の威信に関わります」


「本当に申し訳ないわ…」


 王妃様が、新しい提案をした。




 交流のお茶会で、また王太子は、書類を投げた。


「これをやれ」


「ご自分の仕事はご自分でなさいませ」


「何だと?生意気な!」


 王太子は、私に殴りかかった。


振り上げた手を、誰かが止めた。


「誰だ?」


 王太子は、止めた人物を睨む。


「兄上、令嬢を殴るなど、紳士とは言えませんよ」


 第2王子だった。


「邪魔するな!」


「邪魔なのは兄上ですよ」


「何だと!?」


「ここは、婚約者との交流のお茶会。貴方がいる場所ではありません」


 第2王子が言うと


「はぁ?こいつの婚約者は俺だ!」


 王太子は、私を指差した。


「兄上、もう兄上の婚約は白紙になりましたよ」


「はぁ?」


「まだ家族でもない婚約者に、自分の機嫌を取らせようとしたり、仕事をさせようとしたり…王太子にあるまじき行為。兄上、国王がお呼びですよ」


 第2王子に言われ、王太子は


「覚えてろよ!」


 逃げる悪役みたいな事を言いながら部屋を出ていった。


「大丈夫ですか?」


「ありがとうございます」


 第2王子と私の言葉が被った。


「無事で良かった」


「殿下…」


「私の可愛い婚約者が、無事で良かった」


 そう。私の今の婚約者は、第2王子。


王妃様に呼ばれ、話した結果、王妃様から提案されたのだ。


「第2王子と婚約し直さない?」


 私は、第2王子と会ってから決めたいと言い、第2王子と面会した。


「兄上がご迷惑をおかけしました」


 第2王子は、挨拶のあと謝ってきた。

話は聞いているのだろう。


「私は、自分の機嫌は自分で取れるし、自分の仕事は自分でします」


「王太子になったら、仕事が増えますよ?」


「はっ…!そしたら、貴女と会う時間が無くなりますか?」


 第2王子は真剣だった。


「え?」


「貴女のような可愛らしい令嬢と婚約できたらと思ってたのですが…いや、頑張ります。貴女と会う時間を作れるように、もっと頑張ります!」


「まぁ…」


「私と婚約してください」


 押しに負けた。


「…分かりました」


「やったぁ!これから、よろしくお願いします!」


 そんな感じで、婚約した。




 元婚約者の王太子は、廃嫡され、離宮に幽閉された。


調べたら、側近や文官や護衛に暴言を吐いたり、仕事を押し付けたり、仕事中のメイドを侍らせたり、厳しく言う者達をクビにしたり、と、やりたい放題していたらしい。


王太子だったから、誰も何も言えなかったのだ。


 離宮では、教師をつけられたが、サボっているらしい。




王太子になった第2王子とは、何だかんだ言いながら、上手くいっている。


元婚約者の悪い所を見ていた2人なので、あんな風にはなりたくない、と思ったのだった。


「夫を諌めるのも、妻の務めです。これからも、ハッキリと言いますよ」


 私は、あらかじめ言っておいた。


「頼むよ。私の愛しい人」


 未来の夫が微笑んだ。

読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
元王太子を監督するような係の人もサボってるし、教育係もサボってたんだろなーとは思いました。何か陰謀が渦巻いてる大スペクタルあったりして。
アッハッハッ!! ざまぁされる王太子が、自分の感情を自分でコントロール出来て、自分の仕事をこなせてたら、ざまぁ出来ないんだから、して貰っちゃ困るって話だ。 後、押し付けられて逆らえず従うというドアマッ…
さて、この元王太子、王兄と呼ばれるまで生きてられるかどうか。 主人公の家の中で賭けをしようとしても、賭けにならんな。これ。 主人公の両親や兄弟姉妹間ではどういう意見? まあ、十中八九、数年以内に王城…
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