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掌編・短編

答え

作者: 星見有春
掲載日:2026/01/31

 未舗装の道を歩いている。ガタガタと鳴る道を踏みしめている。歩くほどに固められていくはずの道はガラガラと崩れていく。

 後ろには、戻れない。ただ前へ足を進めることしかできない。それ以外に”道”はない。

 歩く。歩くほどに、歩けなくなる。見えなくなっていく行き先を、無理やり思い描く。

 僕はどこへ行くのか。どこへ流れていくのか。何もわからないまま歩く。

 はたと足が止まった。動かない。足を叩いて、進めと指示を出す。それだというのに、まったく動かない。どうして動かないんだ。

 ああ、歩きすぎたんだ。

 そう理解するまでに、時間は必要なかった。

 しばらくその場に立ちつくす。動くのを待っていた。待てば待つほど動けなくなっていく。動く理由が、わからなくなってしまった。

 全身から力が抜けていく。手からも、足からも、脳みそからも抜けていく。

 僕はここまでなのか。

 そう考えた途端に、足に枷がついた音がした。がしゃり、と重い音がして、同時に僕はその場にへたり込んだ。

 もうどこへ行くこともできない。

 道端の石ころさえ、僕に襲いかかってくる錯覚に陥る。砂利のひと粒すら、僕をのみこむような気がしてくる。

 助けてくれと叫びたいのに、声すら出ない。喉が潰れてしまったように痛む。ひしゃげたような音しか出てこない。

 後ろを振り返る。けれどそこには何もない。この道は、後ろに続いてはいない。

 歩く意味も、何も、見えない。

 つい先程までこちらを見ていた月は、今やすっかりいなくなっていた。

 前にしか、道はない。

 絶望に打ちひしがれながら、それでも僕はゆっくりと起き上がった。枷を、苦しむ手が外してくれた。あとは動かすだけだ。

 もはやただの二本の棒と化したそれを、静かに前へずらす。足元の石と砂利がザリ、と鳴る。そうしてまたすぐに鳴り止んだ。

 本当は、僕は、この未舗装の道を行くのが楽しみだった。先の見えない道が、大好きだった。

 それなのにどうだろう、今の僕は。

 無理矢理でしか思い描けない行く先が、後戻りできない恐怖が僕を包んで、逃がしてくれない。

 僕は本当にこの道が楽しみだったのだろうか。

 それすら、こんな暗闇の中では、もうわからない。ただ、前に進んだらわかるのだろうか。

 ーーいや、わかりはしないだろう。

 足を、また静かに動かした。今度は大きく踏み出した。するどい石が足に刺さる。痛みで止まりそうになる歩みを、止めない。どうにか進める。にじんだ血に砂がへばりついてひどく不快だ。それでも、進む。

 いつの間にか二本の棒は足へ戻っていた。前へ、前へ。進んだ先には何があるのか。僕は何のためにこんな道を歩いているのか。

 歩いて、歩いたところで、そこに答えなんてはじめからありはしない。

 答えのない道を、僕は、今度は明確な意志で歩いていく。

 後ろの道が、また音を立てて崩れ落ちた。

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