ダンジョンラスボスの土下座は初めて見ました。
「迷宮王……」
「監視者……か。面白い」
監視者からは明確な殺意を感じる。どうやら俺を本気で排除したいらしい。
「対象解析実行……エラー。解析失敗。弱点把握のため、検証を開始します」
独り言が多い奴だな。無機質な男声のボスだ。その実力は間違いなく死神以上だろう。
一応心配だからルナにバリアでも張っとくか。
“空間分断”
ルナの周りに四角い結界が現れる。
「え!?なにこれ?」
「すまないなルナ。お前のいる空間を世界から切り離した。」
「え?」
「つまりお前には攻撃が効かないが、代わりにその間そこから出られなくなる」
ルナが結界を叩く。
「嫌ですご主人様!私も一緒に戦わせてください!!」
「それは無理なお願いだ。多分今のお前の実力なら即死する。だからそこで見てろ」
「むー……」
ルナは頬を膨らませ不満そうにしていたが仕方ない。
俺の直感が正しければ……
「火炎耐性、検証。“ヘルフレア”」
直径50mの火球が俺に直撃してボス部屋全体に爆炎が広がる。
やっぱりだ。こんなの実質不可避の全体攻撃だ。しかもこの威力ならルナは即死していただろう。
結界を張って正解だったな。
「対象の生存を確認。効果なし。次の検証に移行します」
そして……
「雷属性……効果なし」
「水属性……効果なし」
「闇属性……効果なし」
そして監視者が動きをとめた。
「どうした?もう検証はしないのか?」
「……」
なんかかわいそうになってきたな。
「全属性効果なし。物理攻撃を検証します」
異空間から巨大なモンスターの腕が召喚され、俺を叩き潰す。
バァァァァァァァァァァンッ!!
俺がでかい腕を弾くと勢いが強すぎて消滅した。
「他になんかないの?」
「……」
沈黙が流れる。
「じゃあ次は俺のターンかな?」
「!?こ……効果なし。対象の排除は不可能と断定。対象をダンジョンから追放します」
「え?……ちょまっ」
俺はダンジョンの入口までワープさせられた。
もう一度ダンジョンに入ろうと入口を見ると、遺跡風の見た目に合わない鉄の扉に南京錠が掛かってご丁寧に封鎖されていた。
どんだけ俺をダンジョンに入れたくないんだよ。
あ……そういえばルナがまだダンジョンの中にいるわ……
一方その頃、ダンジョン最下層では……
「……」
「……」
ルナと監視者が2人っきりになっていた。
「今すぐここから立ち去りなさい」
「出たくてもここから出られないんです!!」
とにかくこのままルナを放置する訳にはいかないから、この扉を開けないとな。
ドカァァァァァァンッ!
お……開いた開いた。
「……!?封鎖した入口の破損を確認。危険因子がダンジョン内に侵入」
「棒立ち空中浮遊状態……時速100kmで壁と床を破壊しながら最短距離で接近中……」
「ご……ご主人様……移動方法キショいです」
はっくしょーードガァァァンッ!!
くしゃみでダンジョンの壁が爆発する。
「誰か俺の悪口言ったか?」
「対象との距離、約1000m……ガタガタガタガタ……」
「だ……大丈夫ですか?オブサーバーさん」
ダァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
「はい到着っと。じゃあ続きを始めようか。監視者」
「いやぁぁぁ!もう無理ぃぃぃぃぃ!!じゃなくて……ここから無事生還できる可能性を模索します……」
「じゃあ俺のターンね」
直径100mの火球を生成する。
“ファイヤーボール”
「っ!?」
その瞬間、監視者は女の子に変化した。
「ま……待ってください!もう許してください!!」
監視者が土下座した。
「え?」
「この通りです。ふ……服従しますから!!」
俺はファイヤーボールを解除した。
『えっと……監視者が服従を宣言しました。このまま隷属契約を結んじゃいますか?』
「は……はい!?」
『はい、ですね。了承を確認。隷属契約を実行しまーす』
「ちょま……そういう意味のはいじゃな……」
互いの右手に赤い紋様が浮かぶ。
『監視者との隷属契約が完了しました~』
やってしまった……
そして奴隷(規格外)が増えた。なんでやねん。
『ダンジョンを完全攻略しました。称号“迷宮覇者”を獲得しました。
さすが無宗様ですねー!』
どうやらダンジョンを攻略してしまったらしい。
『ダンジョン完全攻略報酬として大量の経験値を獲得できますけど……』
あぁ……俺、レベルカンストだしな。
経験値をルナに譲渡できたりしないか?
『可能ですよ。しかし現在は対象に干渉できないため、譲渡を実行できません』
「あ……」
後ろを振り返ると、結界の中で腕組みをしてこちらを睨むルナの姿があった。
「ふんっ!」
「ご……ごめんルナ」
「いんですよ。どうせ私は戦闘に参加できない役立たずですよ!!」
『対象に干渉可能になりました。これより経験値を譲渡しまーす』
ルナの体が光る。
「な……なんですかこれ!?」
“鑑定”
ルナのステータスが表示される。
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ルナ【レベル515】
【種族】人間
【性別】女
【称号】奴隷、冒険者、弓王
【職業】弓使い
【スキル】
体術 B、弓 S、自爆 B
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「レベル515!?弓がSで体術がB、自爆は……まぁいいや」
「な……なんですか自爆って!?」
「まさかこんなに強くなるとはな……」
「これでご主人様と一緒に戦えます!!」
喜ぶルナとは対照的に複雑そうな表情を浮かべる子が1人……
「服従なんて言わなきゃよかったかも……」
あ……心中お察しします……
「というか女の子だったんですねぇ……かわいい!!」
足元まであるアイスグリーンの透き通る髪に、澄んだ青緑色の瞳の少し幼く見える女の子だ。
ダンジョンの歴史を考えるとこの見た目でも1000歳は超えてるだろうな……
「明らかに男みたいな声だったのにな」
「あ……あれは……その方がナメられないと思って……」
理由がなんか可愛いな。
「てゆーか、なんなのあなた!?どんな攻撃しても全部効かないし、ファイヤーボールとか言って明らかにファイヤーボール越えの技出してきたり……こっちの気持ちも考えてよ!!」
「あぁ……それは心中お察しします……」
「なんかごめん」
「ご主人様?」
「どうした?」
「この見た目でオブサーバーって名前はゴツくないですか?」
「あぁ……たしかにそうだな」
「という訳で新しい名前をつけましょうよ」
「新しい……名前……」
「いいね。どんな名前がいいと思う?」
「うーん……ロリえもんとかどうでしょう」
「却下。その名前つけられた人の気持ち考えろ。てか“えもん”はどっから出てきたんだ」
ルナのネーミングセンスは絶望的だった。
しかしどういう名前がいいだろうか。
澄んだ青緑色の瞳に透き通るアイスグリーンの髪……そうだ!
「クリア……ってのはどうだ?」
「わ……悪くない……」
「私もいいと思います」
「じゃあ決定だな」
『では、監視者の固有名を“クリア”に設定しまーす』
「とりあえず外に出るか」
ダンジョンには階層ごとにテレポートゾーンがあり、そこからいつでも外に出られるのだ。
そして俺たちはダンジョンの外に出た。
「もう真っ暗ですね」
「これが外の世界……」
「クリアにとっては初めての世界だからな」
ぐぅぅぅぅぅ……
「ご……ご主人様。お腹がすきました」
そういえば一日中ダンジョンだったからな。
「ここで飯にしよう」
「で……でも食べるものが……」
「ないなら作ればいい」
俺はテーブルとイスを出現させた。
「なにこれ」
「まぁダンジョンにはないだろうからな。わからなくて当然だ」
“料理生成”
テーブルの上に温かいラーメンが3つ出現した。
「なんですかこれは?」
「いいにおい!!」
「醤油ラーメンだ」
「らーめん?」
2人は首をかしげる。
「食ってみろ。うまいぞ」
2人がラーメンをすする。
「おいし~~~!!」
箸がとまらないようだ。
え……なんで2人がラーメンをすすったり箸を使ったりできるかって?
それは俺が脳内に直接教え込んだからだ。
俺たちはラーメンを完食した。
「ありがとうございますご主人様!」
「おいしかった!また食べたい!!」
「いいぜ、いつでも作ってやるよ」
このままギルドでアイテムを換金したいが、もう閉まってるだろうから今日は簡易テントを作って寝ることにした。
あ、もちろん歯は磨いたからな?
次の日、ギルドにて
「あ……受付嬢さん。アイテムの換金をお願いしたいんですけど……」
「換金ですね。ダンジョンでも行ったんですか?」
「はい。近くのダンジョンでね……」
「無理しないでくださいね?
無茶して帰ってこない人、結構いるんですから」
「たしかにそうですね。気をつけます」
「ではアイテムを」
俺は手をかざしドロップアイテムを放出した。
ドバァァァァァァァァッ!!
受付嬢や周りの冒険者が目を見開く。
「な……な……なんですかこの異常な量はぁぁぁぁぁ!?」
その瞬間、ギルドの空気が凍りついた。
※クリアのイメージイラストを活動報告に載せました。
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