集団カンニング事件
ある日、クラスの何人かがテスト中にカンニングしていることが発覚した。エリとマユコを中心としたグループだった。ヒトミ先生が問い詰めた結果、他にもカンニングしている人がいた。いや、クラスの全員でやっていた。
もちろん、ヨシヒロもやっていた。タツヤもアキノリもシンジも、少し関わっていた。テスト中に紙を回したり、小声で答えを教え合ったりしていた。
ヒトミ先生が事の全体像が掴んできた頃、何かの授業の代わりにこの事件についての学級会が行われた。
「エリさん、どのテストで、どういうカンニングをしたのですか?」
「前の算数のテストで、ユウキくんに答えを教えてもらいました。」
「それは、1回だけ?」
「いえ、何回もやりました。」
「わかりました。次、ヤスヒロくん。」
児童が一人ひとり、起立して先生に報告していった。ヨシヒロも試験中にヤスヒロに答えを教えたと白状した。
子どもたちが一人ひとり、自分のやったカンニングを報告してから、ヒトミ先生はため息をついた。大きなため息だった。そして、怒りに満ちた表情で怒り始めた。
「あなたたち、なんてことしてくれたんや!!」
「こんなんやったら成績つけられへんやろ!!」
そして、
「これ全部、中学校に報告するんやで!!」
と叫んだ。
小学校6年生のクラス、あと半年ほどで中学生になる子どもたちに、このパンチは効いた。ヤスヒロがうろたえるようにして言った。
「ええ、中学校に言うん?」
先生は怒りの表情のままこう言い放った。
「そうやで!」
そして、その後クラスメイト全員が別室で、ヒトミ先生と1対1の面談をすることになった。さすがにいつも反抗的な子どもたちも口数が少なくなった。
やがて、クラスの一人ひとりが順番に呼ばれていった。ちょうどヨシヒロたちの教室の隣の部屋は視聴覚室だった。やがて、ヨシヒロの番になった。ヒトミ先生は普段は使わないような言葉で怒りを爆発させた。
「オマエみたいなんがおるから、今までの仕事が台無しやろ!!どないするねん、これ!!」