芋掘りデート
ヨシヒロとヒトミは一緒にドライブに行った後も、何回か会っていた。お互いに休みが合わず、食事に行くだけだったが、ヒトミにはいい息抜きになったようだ。
「やっぱり、神戸とか大阪はいいなあ。田舎も好きやけど、こういう所で働くのも憧れる。」
「田舎だと、知ってる人ばっかりですもんね(笑)」
「そうやね(笑)それが、いい時もあるんやけど、ちょっとは息抜きしたいよね。」
ヨシヒロと会えるだけで、いい刺激になっていた。
「そういえば、芋掘りに行きたいっす!」
ヨシヒロは唐突に言った。
「ええ~、芋掘り?(笑)そんなん、デートになるん?(笑)」
ヒトミは笑った。
え?デート?デートって言った?
ヨシヒロは思った。たしかに、これまで何度も会っているし、「お試し」とはいえ彼氏・彼女である。しかし、ヒトミの口から「デート」とハッキリ言ったのは初めてだった。
「ん?どうしたん?芋掘り、行きたいん?」
ヒトミは不思議そうな表情を浮かべた。
「芋掘り、行きたいっす!」
ヨシヒロは元気よく答えた。
「わかった(笑)でも、ウチの近所は止めてね。芋掘りできるトコ、たくさんあるけど。」
「そうですよね(笑)大阪の方で探しておきます。」
「ありがとう。まあ、彼氏に付き合ってやるか(笑)」
え?彼氏?
またもヨシヒロは、ヒトミの言葉に反応した。
芋掘りの当日、ヨシヒロとヒトミはレンタカーで大阪の郊外に出かけた。ヨシヒロが契約したゴルフの納車はもう少し先だ。
「大阪にもこういうトコ、あるんやね~。」
ヒトミは少し驚いていた。
農園に着くと、早速2人ともジャージに着替えた。そして、2人で芋掘りに夢中になった。ヨシヒロも小学生の時、学校の畑で芋掘りをした。その時の担任はヒトミ先生ではなかったが。
ヨシヒロは、ヒトミのジャージ姿もいいものだと思った。小学生の時に散々見たが、2人の時はオシャレで小綺麗な格好なだけに、そのギャップにドキドキした。汗を拭う姿と、泥が少し付いた顔もたまらなかった。
2人で汗をかくのもいいものだった。ヨシヒロが思っている以上に心が接近できた気がした。そして、2人で掘ったサツマイモは、持ち帰ることができた。
「たくさん取れましたね~。」
「ホンマやね。持って帰るのが大変やわ(笑)」
「このお芋、どうするんですか?」
「ぶっちゃけ、焼き芋の季節はまだ早いよね(笑)なんか、色々料理しよっかな。」
ヨシヒロはしばらく考えて、こう提案してみた。
「よかったら、ウチに来てお芋パーティーします?それか、ヒトミさんの家でもいいですけど。」
ヨシヒロはヒトミを誘ってみた。まだ早いかなとも思ったが、彼氏・彼女なので大丈夫とも思った。「お試し」ではあるけれど。
「うーん、ヨシヒロくんの家でもいい?」
ヒトミは考えながら言った。
「はい、大丈夫ですよ!今から来ますか?」
ヨシヒロは喜びながら答えた。
「そうね、今からおじゃまします。」
ヒトミは軽くお辞儀した。
「わかりました!じゃあ、レンタカー返して、ウチに行きましょう!」
そうね、とヒトミはつぶやいた。レンタカーを返しにいくまで、車内では沈黙が続いた。
ヨシヒロはヒトミを自宅に連れていき、玄関の前で少し待たせた後、しばらくしてから扉を開けた。
「おまたせしました~。散らかってますけど、どうぞ~。」
「おじゃましまーす。」
ヨシヒロ、ヒトミともに緊張の瞬間だ。
ヒトミはリビングに来たあと、手を洗うために洗面台に行った。戻ってきてから、リビングを見渡して、
「たくさん本があるのね~。全部、会計士の本?」
と尋ねた。
「そうですね~、会計関係の本が多いですね!でも、分厚いのはあんまり読んでないです。最初の方しか(笑)」
そうなんや、とヒトミは小声で言った。そして、サツマイモの入った袋をテーブルの上に置き、自分のショルダーバッグから何かを取り出した。




