賽は投げられた
ヨシヒロは、ヒトミ先生へ告白しようと思っていた。タイミングはまだ来ない。でも、確実に近づいている。
ヒトミ先生はデザートを食べ終え、「あー、美味しかった。」と言った。そろそろだ。
ただ、普通に告白してもダメだと思っていた。年齢は向こうの方がひと回りも上。年下の自分では満足しないだろうし、告白している途中でなんやかんやとはぐらかされそうだ。
そこで、ヨシヒロは手紙を用意した。「小学生の時から好き」とは書けなかったが、「大人になってもずっと気になっていた」というニュアンスで書いてみた。他にも、自分なりに想いを書き綴った。
ヨシヒロは徐ろに鞄の中から手紙を取り出した。便箋に何枚か書いて、封筒に入れていたものだ。ゆっくりとヒトミ先生の目の前に持ってきた。
「ヒトミ先生、実は読んでほしいものがあります。」
ヨシヒロは手紙を渡した。賽は投げられた。
「ここで、読んでいいの?」
ヒトミ先生は少し戸惑った。
「はい、お願いします。」
静かに答えた。
はじめ、ヒトミ先生はスムーズに手紙に目を通していたが、途中から考え込むような仕草になった。半分くらい読んだところで少し目を閉じて、また残りを読んだ。
先生が読み終えたのを見て、ヨシヒロは言った。
「先生、先生のことが大好きです。お付き合いしてください。」
ヒトミ先生はいったん視線を落とした。
そして、再び顔を上げると明るく笑ってこう言った。
「まずは、お試しってことでいい?」




