ヨシヒロくん、彼女は?
ヨシヒロの意図したタイミングではなかったが、呼び出し音が鳴った。慌てて通話を切ろうと思った。だが、その前にi-phoneから声が聞こえてきた。
「はい、ヨシヒロくん?」
ヒトミ先生だ。もうこうなったら話すしかない。ヨシヒロは思いつく限りの言葉で話を繋いだ。
「もしもし、ヒトミ先生ですか?お久しぶりです。ヨシヒロです。」
そして、勇気を出して言葉を続けた。
「今、お時間よろしいでしょうか?」
緊張の瞬間だ。
「はい、いいですよ。」
ヒトミ先生が答えた。やったあ!
「ありがとうございます。なんか、お懐かしいなあと思って、思わず電話しちゃいました(笑)」
思わず?たしかに思わずだが。
「今もお元気されてるかな~、なんて思って・・・。」
段々めちゃくちゃになってきた。
「はい、元気してますよ。ヨシヒロくんは?」
先生が話を繋いでくれた。
「はい、僕も元気してます!」
これは答えやすい質問。
「先生、実は僕、会計士ってのになって4月から働き始めてるんです。試験に受からないとなれなくて、ちょっと勉強が難しくて、1年遅れちゃいましたけど、無事合格して社会人になりました!」
「そうなの、よかったねえ!」
「ありがとうございます!」
ここまではありきたりな感じだ。さて、ここから何の話題で話を繋ぐか?どうやって会話を盛り上げるか?
ヨシヒロがどうやって話を繋ごうかと思っていると、ヒトミ先生が質問を投げかけた。
「ヨシヒロくん、彼女は?」
えー、いきなり?!
思わずヨシヒロは、言葉に詰まった。そして、
「いやあ、いないんですよ。」
と言うのが精一杯だった。
「そう。仕事が忙しいんかな?」
ヒトミ先生が優しく語りかけた。その後は、ヨシヒロもだいぶ落ち着いて普通の話ができるようになった。
「そういえば・・・、先生は今も△△小学校ですか?なんか、中学生の時にご挨拶に行って、転勤するとか言ってましたよね?」
「ああ、一昨年から□□小学校に移ったの。家から近くなって、通勤が楽になったわ。」
そうなんだと思った。小学校卒業から12年。当時6年生だった自分も24歳だ。もうありとあらゆることが変化している。
その後も色々な話をした。ヒトミ先生も嬉しそうだった。ヨシヒロは話しているうちにまた会いたくなってきた。もちろん、電話する前から会えたらいいなとは思っていた。ひょっとするとお付き合いなんて?とも妄想していた。しかし、電話で声を聞いているうちに本当に会いたくなってきた。
「先生、またお会いできませんか?なんか、色々話したくなっちゃって・・・。」




