甘くない現実
大学3回生の時、ヨシヒロは公認会計士試験を受けた。まだ膨大な学習範囲は済んでないが、現時点での腕試しのために受験した。それなりの点数は出せる気がしていた。
結果はボロボロだった。低く見積もってもこのくらいは取れると思っていた点数も下回った。試験でこんなに打ちひしがれたのは初めてだった。
周りの大学生たちは、就職活動の準備を始めた。ヨシヒロは不安になった。このまま公認会計士を目指すべきか、一般企業への就活に路線変更するべきか。
だが、結論はスグに出た。このまま公認会計士の試験に挑戦を続けようと思った。上手くは言えないが、一般企業でやっていくイメージがわかなかった。なんとなく、自分は公認会計士になるかもと思った。
そんな中、ヒトミ先生のことを思い出した。小学校を卒業してからもう10年近くかあ。先生の正確な年齢は知らなかったが、30代の半ばかなと思った。今はどうされているのだろう?
公認会計士試験の後、猛烈にヒトミ先生のことが気になってきた。連絡先は知っている。しかし、高校の入学前に交換した連絡先は今も生きているのだろうか?仮に生きていても、電話に出てくれるだろうか?
ヨシヒロは何度も逡巡した後で、思い切って電話してみることにした。「発信」のボタンを押す際に力を込めた。
やがて、呼び出し音が鳴った。その間、ずっと緊張していた。部屋の中で孤独との戦いだった。
だが、その緊張は意外に早く解けてしまった。呼び出し音が途切れ、電話口から声がした。
「はい?」
電話に出た女性は訝しむような声だった。しかし、ヒトミ先生に間違いなさそうだ。ヨシヒロはしどろもどろになりながら、話し始めた。
「あっ、夜分にすみません。ヒトミ先生でしょうか?昔、◯◯小学校で、お世話になった、ヨシヒロです・・・。覚えておられますでしょうか?」




