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白粉の記憶  作者: キャロット艦長
第三章

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見覚えのある車

4月からヨシヒロが通う中学校は、小学校の近くだった。毎朝、家を出ると小学校の横を通り、その後5分くらい歩いて中学校に着く。つい最近まで通っていた小学校の校門前をそのまま素通りして中学校に向かうのは、変な感覚だった。


ヒトミ先生がいないことは、いつの間にか気にならなくなった。新しいクラス、新しい先生、バレーボール部にも入り、忙しい毎日になった。


新しく、「可愛い」と思う女の子もできた。タカナちゃんという子だ。クラスは違ったが、バドミントン部に入っていて、バレーボール部のヨシヒロは放課後の体育館で目にする機会があった。


もっとも、体育館はバスケ部、バレー部、バドミントン部でそれぞれ使える日が決まっていた。男子と女子とでも別れていた。男子バレー部と女子バドミントン部の組み合わせの日が、ヨシヒロにとってベストな日だった。


そんなある日のこと、登校途中に交差点の青信号を渡ろうとした時だった。赤信号で停まっている車列の先頭に、見覚えのある車があった。白い、小型の車だった。まさかと思って、運転席の方へ視点を移した。


ハンドルを握っていたのは、ヒトミ先生だった。


ヨシヒロは思わず声を上げそうになった。だが、車内のヒトミ先生にはさすがに聞こえそうもない。


すると、ヒトミ先生がこちらを見た。ヨシヒロはドキッとしたが、スグに先生はヨシヒロに気がついた。窓ガラス越しに笑顔になったのがわかった。


次の瞬間、窓ガラスが開いた。ヒトミ先生が優しく「おはよう。」と言ってきた。


「おはようございます!」


ヨシヒロは元気よく挨拶した。


「元気?」


「はい、元気です!」


「よかった!色々がんばってね!」


「はい!」


それを聞いたヒトミ先生は窓ガラスを閉めた。ヨシヒロも横断歩道を渡った。車の正面で軽く頭を下げ、先生の笑顔を確認してから中学校へと向かった。


ヨシヒロの心の中に、忘れていたはずの淡い想いが蘇ってきた。

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