二倍のきずな
真紀は机の引き出しから小さなチャームを取り出した。親友の里奈が転校する前にもらったチャーム。
「真紀ちゃん、大事に持っててね、これお揃いだよ、また会えるお守り約束」
そう、言い、笑顔も真紀の心に残っている。
その後も手紙や電話で交流した。学校中心の話で、給食・部活・クラスメイトなどの話で、共有時間を楽しんでいた。
ところが、ある日を境に、交流は止まった。電話もつながらなくなり、手紙の返事は届かない。半年過ぎても、届かない・・・・・
"約束したのに、ずっと親友、また会えると・・・他に親友ができたの?約束忘れちゃったの?"いろんな思いが混合していた。
チャームで元気をもらっていたのに、もう、見れない。お守りの効果消えちゃうよ。
真紀はいつしかチャームを見なくなっていた。
中学の部活で気の合う友達がつくれた。それはそれで、楽しく過ごした。プレゼントの交換したり、カラオケ行ったり、お互いの家に泊まりあっこしたり・・・・。
高校では代表者委員を務め、仲間との絆を作った。意見の言い合いもできる仲になれた。
けど、里奈がやっぱり一番だ。
高校二年生の春、映画館のチケット売り場で、ふと並んだ人の横顔が、目に留まり、じーっと見つめていた。
里奈にそっくりだったから。
彼女が、こっちをみても、何の反応もないから、人違いかと思っていた時、彼女の隣の女性が声をかけてきた。
「小学校の時、仲良くしてくれてた、真紀ちゃん、もしかして・・・」
聞き覚えのある声に、
「里奈ちゃんのお母さん! わっ、びっくりだね」
「真紀ちゃん、久しぶり、キレイになって・・・里奈ね、分からないと思う、実は事故に遭って、記憶障害が残ってるの、治療はしているんだけど、記憶戻るようにと思ってるのよ」
「そうなんですね、きっと記憶戻ります、お母さん、ありがとう」
そう告げてその場を去った真紀。
だって、真紀の胸がぎゅっと締め付けられていて言葉をそれ以上かけられなかったからだ。
鞄にあるチャームも、約束の事も言いかけたけど、言えなかった。
約束破ったわけでも、忘れたわけでもなかったんだ・・・と思ったらちょっとだけ、ほっとした。
その夜、久しぶりに便せんに向かい手紙を書いた。
"里奈ちゃんへ
私たちお揃いのチャーム持っているの、里奈ちゃんも、持っているよね。
大事にしてるよ。その時の笑顔と一緒に。何があっても親友、ありがとう"
と。
数日後 返事が届いた。
"手紙を読んだら胸の奥がぎゅっとなった。何だろう?記憶が呼んでる気がするよ、会って話したいよ、チャームあった、持ち合って再会を楽しみにしてるよ、ありがとう。"
奇跡みたいな返事に思えた。
数年後
大学生になった真紀・里奈は、チャームを持って再会した。
「今度は忘れない」
「うん、私も」
二人は笑いあった。また会える、という約束は果たされ、新たな絆が歩き出した。その先に、永遠に続く親友。
この物語のタイトル「二倍のきずな」に込めたものは、「一度離れた関係がもう一度つながったとき、以前より、深く強くなれるのではないか?」ということ。
真紀と里奈は、子供の頃に交わした約束を大人になってようやく果たす。
その間にはすれ違いや届かない思い、もどかしさ、悲しさ、寂しさが生まれ、一つのチャームが時を越えて、記憶の奥の扉を開く。
二人の間にあるきずなが「昔のまま」ではなく、「二倍になった」と言う、証に思える。
誰かとの関係が途切れてしまったと感じたとき、それでも手紙で気持ちを届けることで再び、繋がることもあるのではないでしょうか?
この物語はそんな小さな希望・やさしさを思い出すきっかけになれば、うれしい。
じゅラン椿