92. 言い伝えに関する議論 場所:おそらくカペルナウム
•凡例•
( )囲み ── 訳者または編集者によるより理解しやすくするための補助、本文と一緒に読んでかまわない
[ ]囲み ── 訳者または編集者による語句の定義をより明確にする説明
『 』囲み ── 旧約聖書または会話の中の引用
さて、イェシュアの所に、パリサイ人とエルサレムから来た数人の聖書学者とが集まって来た。そして彼らは、イェシュアの弟子の中に穢れた手で、すなわち洗わない手で食事をしている者を見た。──というのも、パリサイ人をはじめユダヤ人は皆、先祖の言い伝え[口伝律法]をかたく守って、(決まった方式で)手をこぶしにして洗ってからでないと決して食事をせず、市場から帰った時は(身を)洗い浄めねば食事をしない。そのほかにも杯や壺や銅の器や寝台を水に浸して洗うことなど、かたく守っている仕来たりがたくさんあった。──そこでパリサイ人と聖書学者がイェシュアに尋ねた、「あなたの弟子はなぜ先祖の言い伝え[口伝律法]を踏みにじるのか?食事をする時に手を洗わないではないか?」イェシュアは彼らに答えられた、「では(わたしも)一つ尋ねる、あなたたちも自分の言い伝えで天主の掟を踏みにじっているが、あれはどうしたのか?天主は、『父と母を敬え、』また『父または母を罵る者は必ず死に定められる』と言われた。それなのに、あなたたちはこう言っている、『もしある人が父または母に向かって、わたしがあなたに差し上げるはずのものはコルバン[天主への供え物]にする、と言えば、(扶養の義務を免れて、)もはや父または母を敬う必要もなく、何一つすることをしなくてもよろしい』と。このように、あなたたちは天主の掟を捨てて、人間の言い伝えをかたく守っている。なお、これに似たようなことをたくさんしている。こうして、あなたたちは自分の言い伝えで天主の言葉を無にしている。偽善者たち!イザヤはあなたたちのことをこう言って預言しているが、うまいものだ。──
『この民は口先でわたし[天主]を敬いながら、
その心は遠くわたしから離れている。
彼らは(熱心に)わたしを拝むが無駄である、
彼らが教えとして教えているのは、
人間の(作った)規則であるから。』
それから、イェシュアはまた群衆を呼び寄せて言われた、「皆、わたしの言うことを聞いて悟れ。人の(体の)外から入って、人を穢し得るものは何もない。人の口から出るもの、これが人を穢す。聞く耳のある者は聞け。」
さて、イェシュアが群衆を離れて家に帰られた時、弟子たちが来て彼に言った、「パリサイ人がお話を聞いて腹を立てたことを御存じですか?」イェシュアは答えられた、「わたしの天の父上がお植えにならないものは皆、引き抜かれる。あの人たちを放っておけ。盲人の手引きをする盲人だ。盲人が盲人の手引きをすれば、二人とも穴に落ちよう。」そこで、ペテロが口を出して言った、「(群衆に言われた)さっきの譬えを説明してください。」イェシュアは言われた、「あなたたちまでそんなに悟りが悪いのか?すべて外から人(の体)に入るものは、人を穢し得ないことがわからないのか?すべて口に入るものは、心に入らず、腹を通って便所に落ちるのだ。つまり、すべての食物は清いものである。(人は何をどのように食べても穢れない。)」イェシュアはさらに言われた、「人の口から出るものは心から出るので、そちらは人を穢す。内側から、つまり、人の心から邪念が出て来るからだ。(すなわち)不品行、盗み、人殺し、姦淫、偽証、欲張り、悪意、悪巧み、道楽、妬み、悪口[罵り]、傲慢、無分別(など)。これらの悪はみな、内側から出て人を穢すのである。洗わぬ手で食事をすることは人を穢さない。」




