8. シメオンとアンナ 場所:ベツレヘム、エルサレム
•凡例•
( )囲み ──訳者または編集者によるより理解しやすくするための補助、本文と一緒に読んでかまわない
[ ]囲み ──訳者または編集者による語句の定義をより明確にする説明
『 』囲み ──旧約聖書または会話の中の引用
八日過ぎて幼児の割礼の日[天主とアブラハムおよびその子孫との永遠の契約のしるしとして、民族的アイデンティティの象徴でもあって、男児の性器の包皮を切り取る儀式]が来ると、彼にイェシュアという名がつけられた。これは、胎内に宿る前に天使からつけられた名である。
さて、両親はモーセ律法による彼らの清めの日々(出産後の四十日間)が過ぎると、幼児を主[天主]に捧げるため、エルサレムへ連れて上った。これは主の律法に、『はじめて生まれた男の子は皆、ヤハウェ[天主]に聖別される』と書いてあるとおりである。また、(母親の清めについて)主の律法に言われていることに従って、山鳩一つがいか雛鳩二羽を犠牲として供えるためであった。
さて(その頃)エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は思慮深く、善良な人で、イスラエルの慰め(である救世主)を待ち望んでいた。そして、天の尊い霊[聖霊]が彼を離れなかった。主[天主]の救世主を見るまでは決して死なないと、かねて天の尊い霊[聖霊]からお告げを受けていた。さて(その日)、彼が天主の霊に駆られて宮に行くと、ちょうど両親が幼児イェシュアを連れて入ってきた。それは、子供に関する律法の仕来りどおりに行うためであった。すると、シメオンは幼児イェシュアを両腕に抱き、こう言って天主をほめたたえた。──
「今こそ、主よ、あなたはお言葉どおり
あなたの僕を、
安らかに(この世に)暇乞い[別れの挨拶]をさせてくださいます。
わたしはもう、この目であなたの救いを拝見したからです。
この救いこそ、あなたが全人類の(ため、その)目の前に用意されたもの、
異邦人の(心の)覆いを取り去る光、
あなたの民イスラエルの栄光となる光であります!」
ヨセフと幼児の母はイェシュアのことをこのように言われるのが不思議に思っていると、シメオンは彼らを祝福し、母ミリアムに言った、「驚きなさるなよ。この幼児は、イスラエルの多くの人の没落と台頭を引き起こすよう、また、一つの目印となるよう、(この世の激しい)反対を受ける使命を負わされておる。(母人よ、)あなたの胸[魂]さえも剣で刺し貫かれ(る苦しみをせ)ねばなりますまい。多くの人の心の(隠れた)思いを露にされるためなのです。」
また(その場所で)、アセル族のパヌエルの娘に、アンナという女預言者があった。非常に年を取っていて、娘時代に嫁いでから七年間、夫と共に結婚生活を送り、(その後)八十四歳(の今日)まで寡婦ぐらしをしていた。彼女は(片時も)宮を離れず、夜も昼も断食と祈りとをもって(天主に)仕えていた。そして(シメオンが預言している)ちょうどその時、彼女はやって来て(突然)天主をほめたたえ出し、またエルサレムの人々のあがない[解放]を待ち望んでいるすべての人に、この幼児のことを話した。