5. お水浸らせ者ヨハネの誕生 場所:ユダヤの丘陵地
•凡例•
( )囲み ──訳者または編集者によるより理解しやすくするための補助、本文と一緒に読んでかまわない
[ ]囲み ──訳者または編集者による語句の定義をより明確にする説明
『 』囲み ──旧約聖書または会話の中の引用
さて、月満ちて、エリサベツは男の子を産んだ。近所の者や親類は、天主がエリサベツに大きな憐れみを施されたと聞いて、自分のことのように喜んだ。そして(誕生から)八日目に、この人々が幼児に割礼を施すために集まった時のこと、(慣例もあり)父の名に因んでザカリヤと名をつけようとすると、母親が、「いけません、ヨハネとつけなくては」と言って反対した。彼らは、「あなたの親類には、そんな名前の者は一人もいない」とエリサベツに言い、父親に、その子に何と名をつけたいかと身振りで尋ねた。ザカリヤは石板を頼んで、「あれの名はヨハネ」と書いたので、皆が不思議に思った。すると、立ちどころにザカリヤの口が開け、舌が動き出し、ものが言えるようになって天主をほめたたえた。そこで、近所の者皆に恐れが臨んだ。そして、このことがことごとくユダヤの山地全体の話題になり、聞いた者は皆これを胸に納め、「この幼児はいったい何になるのだろう?」と考えた。天主の御手が確かにこの幼児に働いていたのである。
父ザカリヤはその時、天の尊い霊[聖霊]に満たされてこう預言した。──
「イスラエルの天主に讃美を!
主は、その民を心にかけて
あがない[代価を払う上の解放]を成し遂げ、
我らのために、僕ダビデの家に
救いの(力強い)角(なる救世主)を立てられたからである。
遠い昔から、聖なる預言者たちの口をもって語られたとおりに。
その角こそ、我らの敵から、
また我らを憎むすべての者の手から、すくう救いである。
主はこうして、我らの先祖を憐れみ、
またその尊い契約、
(すなわち)先祖アブラハムに立てられた誓いを覚えて、
我らを敵の手から救い出し、
不安なく、純潔と義のうちに、全生涯の日々を彼[天主]の前にて、
彼に仕えるようにしてくださるのである。
お前、幼児(ヨハネ)よ、
お前はいと高きお方[天主]の預言者と呼ばれる。
主(救世主)の先駆けをしてその道を用意し、
罪[的外れ]の赦しによる救いを民に知らせるのだから。
これは(みな)我らの天主の(深き)憐れみの心によるのである。
また、その憐れみの故に、高き所より曙の光が我らを訪れ、
暗やみと死の陰とに住まう者を照らし、
我らの足を平和の道へと導くであろう。」
さて、幼児(ヨハネ)は大きくなって、霊においても強くなり、イスラエルの民の前に現われる日まで、荒野に(隠れて)いた。