2. ヨハネ誕生の告知 場所:ユダヤのエルサレム(宮)
•凡例•
( )囲み ──訳者または編集者によるより理解しやすくするための補助、本文と一緒に読んでかまわない
[ ]囲み ──訳者または編集者による語句の定義をより明確にする説明
『 』囲み ──旧約聖書または会話の中の引用
ユダヤのヘロデ(大)王の代に、ザカリヤというアビヤ組の祭司があった。その妻は(出エジプト頃の大祭司)アロンの末で、名をエリサベツといった。二人とも天主の目に(さえ)義しく、天主の掟と定めのうちに落ち度なく歩んでいた。しかし、エリサベツが石女[子供を生めない女]であったので、子がなく、かつ二人とももう年を取っていた。 さて、ザカリヤの組が当番で、宮にて祭司の務めをしていた時のこと、(ある日)彼が祭司職の習わしに従って籤を引いたところ、主[天主]の聖所に入って香を炊く役目に当たった。(ザカリヤに一生にただ一度ゆるされる幸運が臨んだのである。ザカリヤが)香を炊いている時、一般の民衆は皆 (いつものとおり) 外で祈っていた。
(すると)突然一人の天主の使いがザカリヤに現われ、香壇の右、(ザカリヤの向かって左)に立っていた。それを見てザカリヤは胸騒ぎがし、恐ろしさが彼を襲った。すると天使が彼に言った、「ザカリヤ、恐れることはない。あなたの(かねての)祈りは聞き入れられた。妻エリサベツは男の子を産むであろう。その名をヨハネとつけよ。この子はあなたの喜びであり、楽しみであり、多くの人もその誕生を喜ぶであろう。主の前に大いなる者となるからである。彼は決して葡萄酒や強い酒を飲まず、(その代わり)母の胎内からすでに天の尊い霊[聖霊]に満たされる。彼は多くのイスラエルの子孫を、彼らの天主に立ち返らせるであろう。(そればかりか、預言者)エリヤの霊と力とを持って主(救世主)の先駆けをし、父たちの心を(再び)子供たちに(向けさせて、)また不従順な者を義人と同じ考えに立ち返らせて、準備のできた民を主のために用意するであろう。」
ザカリヤが天使に言った、「(子を授かる)その証拠は何でしょうか?わたしは老人で、妻ももう年を取っております。」天使が答えた、「わたしは天主の前に立つガブリエルである。あなたにこの喜びのおとずれを伝えるために遣わされたのだ。だから今、あなたは口が利けなくなり、このことが成るその日まで、ものを言うことができなくなるであろう。これは、わたしの言葉を信じなかったからだ。時が来れば必ず私の言葉が成就されるのである。」
(外で)待っている人々は、ザカリヤが聖所の中で手間取るのを不思議に思った。やがて出てくるには出てきたが、(仕来りの)祝福を人々に与えることができなかったので、人々は彼が聖所の中で幻を見たことを知った。ザカリヤは身振りで示すばかりで、口が利けずにいた。そして、(その組の七日の)務めの日が終わると、家に帰った。数日の後、妻エリザベツは身ごもった。そして、五か月の間(家に)引き籠っていたが、彼女はこう考えるのであった、「主[天主]はわたしに目をかけ、人々の中で(子供のない)わたしの恥を取り除いてやろうとて、今この時にこのようにしてくださった!」と。