103. 悪鬼につかれた一人息子 場所:カエサレア・フィリピ地方
•凡例•
( )囲み ──訳者または編集者によるより理解しやすくするための補助、本文と一緒に読んでかまわない
[ ]囲み ──訳者または編集者による語句の定義をより明確にする説明
『 』囲み ──旧約聖書または会話の中の引用
さて、彼らが山を下りて、(他の)弟子たちの所に帰って見ると、大勢の群衆が弟子たちを取り巻き、聖書学者たちが彼らと議論をしていた。群衆はイェシュア(の姿)を見た途端、皆びっくりして、駆け寄って来て彼を歓迎した。イェシュアが群衆に尋ねられた、「弟子たちと何を議論しているのか?」すると一人の人がイェシュアに近寄り、ひざまずいて言った、「師よ、お願いです、啞の霊[口を利けなくする霊]につかれている一人息子に目をかけてやってください。ひどく苦しんでおります。どうぞ彼にお慈悲を!霊がつくと息子は発狂して、急にどなり出し、所かまわず投げ倒され、泡をふき、歯斬りして、体がこわばってしまいます。霊が彼をすっかり弱らせて、なかなか離れません。わたしは息子をあなたのお弟子たちの所に連れて来て、霊を追い出すことを頼みましたが、おできになりませんでした。」イェシュアは答えられた、「ああ、信頼の無い、歪んだ世代よ。わたしはいつまであなたたちと一緒におるだろうか?いつまで辛抱すればよいのか?その子を、わたしの所に連れて来なさい。」(こう言って群衆のいない所に行かれた。)人々がイェシュアの所に連れて来ると、霊はイェシュアを見るや否や、その子をひどく引きつけさせたので、子は地に倒れ、泡を吹きながら転げ回った。イェシュアが父親に尋ねられた、「こうなってから、どのくらいになるか?」父親が答えた、「子供の小さい時からです。霊はこの子を殺そうとして、幾たびか、火の中、水の中に投げ込みました。それでも、もし何とかおできになるなら、わたしども(親子)を不憫と思って、お助けください。」イェシュアは言われた、「『もしできれば』と言うのか?信頼する者には、一切のことが可能だ。」即座にその子供の父親が叫んだ、「信頼します!不信のわたしをお助けください!」さて、イェシュアは群衆が駆け寄って来るのを見ると、(急いで)悪鬼を叱りつけて言われた、「聾啞の霊[ものも言わせず、耳も聞こえさせない霊]、お前に命令するのだ!この子から出てゆけ、二度と入るな!」すると霊はどなり散らし、激しく引きつけさせて、出て行った。子は死人のようになったので、多くの人が、「死んでしまった」と言った。しかし、イェシュアが手を取って起されると、その子は立ち上がり、その時から治った。そしてイェシュアは、彼を父親に返された。人々は皆、天主の偉大さに仰天し、イェシュアの行われたことすべてに驚いてしまった。
後で人のいない時に、弟子たちはイェシュアの所に来て言った、「わたしたちは、どうして、悪鬼を追い出せなかったのでしょうか?」イェシュアは言われた、「信頼が無いからだ。アーメン[真実に]、わたしは言う、もしあなたたちに一粒の芥子種ほどでも信頼があれば、この山に向かい『ここからあそこに移れ!』と言えば移り、あなたたちにできないことはなかろう。つまり、祈り[天の父上との交流]によらなければ、この類いのものは決して出てゆかせることはできない。」




