寒天ゼリーの告白
「好きです。付き合ってください」
「えっ!」
バレンタイン当日。以前から気になっている相手にチョコとともに告白したが、逃げられた。
「は?」
チョコレートもデパートで一番高そうなものを買った。部活に明け暮れていた私はどれが良いかわからなくて、店員に勧められるまま買ったもの。
「え、これって何?」
逃げられたので振られたのか、オッケーなのかも不明。
一応SNSはブロックされていないが、メッセージを送っても返事はない。
「という事でおばあちゃん、どういう事ですかね?」
こうして告白から二日経った今、祖母に相談中。祖母からは寒天ゼリーをもらった。普通のプルプルしたゼリーではなく、小さな個装されたお菓子の寒天ゼリー。一見キャンディーのようにも見えるが全く別物だ。
一つ一つオブラートで包まれ、味も濃いめ。意外と歯切れは悪くない。オレンジ、イチゴ、メロンなどの味があるが、正直、祖母から貰うとさほど嬉しくないお菓子。昭和というか大正の匂いすら漂う。地味でレトロ過ぎるというか。
「あはは。そんな告白したんか」
私の話を聞いていた祖母は大笑い。顔を皺だらけにして手まで叩いて笑ってる。
「いや、ばあちゃん。笑いすぎ」
「だってあんたストレートすぎる告白だよ。そんな転校生で知り合ったばかりの相手にする告白じゃないわー」
「だってかっこいいんだもん。一目惚れした」
「だからってねぇ。情緒ってもんがないよ」
祖母はまた寒天ゼリーをくれた。
「想いもオブラートに包みなよ。女には奥ゆかしさや恥じらいも必要」
「そうかな?」
「そんなグイグイ来られたら、簡単な女にも見えるよ」
私は寒天ゼリーを口に入れる。オブラートがじゅわりと溶け、濃い甘みと「間」ができていた。確かにこの「間」があるお陰で、寒天ゼリーもだいぶ食べやすい。あんまり嬉しくない菓子だが、これはこれで悪くない甘みだ。見た目もキラキラと綺麗。派手じゃない。映えもしないが、ひっそりとキラキラしてる。
「そうかも? 焦り過ぎたかも?」
私は告白をやり直す事にした。明日、とりあえず友達から仲良くなろうと言ってみよう。
「だったらオッケー。とりあえず一緒に帰る?」
今度は彼も逃げなかった。
告白にもオブラートが必要みたい。