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強者男性薬

作者: ワーク笹沼

 和久田未来(わくたみらい)は、地下アイドルHちゃんと繋がることに成功し、今日はおデートの日だった。つまり、アフタヌーンティーなるものをすべく、お台場ちかくの商業施設内1Fで待ち合わせしていた。

 入り口近くのソファに腰掛けて時間まで待つが、一向にHちゃんは来ない。彼のそばには、テンガロンハットを被り、茶色いコートを羽織った、身長175センチ程度の中年と思しき男性が立っていた。

 ここで和久田は、嫌な予感がした。テンガロンハットの彼は、いま噂の繋がり警察では無いのか。繋がり警察とは、つまり、地下アイドルやコンカフェキャストと正規なルートを介さず会おうとする不届き者を取り締まり、インターネットで彼らの様子を晒し上げて笑いものに仕立て上げようとする私人警察の総称である。中には、運営が囮になって、出入り禁止にしたいオタクを嵌めようという噂もある。

 大体、自分宛に、インスタグラムでダイレクトメッセージが来て、相談したいことがあるなぞと話を持ちかけられたのは、今思えばあまりにも虫が良すぎるだろう。これは、自分を出禁にするための運営の罠なのでは。


 ヒヤヒヤしながらも、彼は希望を捨てることはなく、待っていた。30分くらい待ちつづけていたが、Hちゃんは来なかった。テンガロンハットの男は、謎の美女と合流してホテルにチェックインしてしまったので、どうやら繋がり警察ではなかった。結句のところ、Hちゃんが来ないことに対し、真底ホッとする感想が湧いてきた。

 しかしながら、アフタヌーンティーなるものは予約していたので、根がたいそう生真面目に出来ている和久田は、ドタキャンするのはお店に迷惑がかかると考え、1人で入店した。慣れない口調でウエイターに、1人が来れなくなってしまったことを伝えると、予約席に通された。丁度、窓の外には古風な建物と、池を一望でき、池の中ではアヒルボートが2〜3隻泳いでいた。しばらくすると、事前に予約していた品がテーブルに置かれた。小太りの中年男性が、紅茶を飲みながら仰々しい3段のお皿に盛られた小さなケーキやマカロンをパクつくという光景は、異様としか言いようが無く、周りのマダムやカップルからは、不審な目で見られていたが、もはや、仕方がなかった。


 その刹那、どこからともなくドラクエのレベルアップ時に鳴るようなファンファーレが鳴り響いた。


「パパパン!パパパーン!」


「おめでとうございます!合格です!和久田殿!あなたのような真面目な方をお待ちしておりました!」


 いかにも紳士といった雰囲気のウエイターと、それに、なぜか推しメンのHちゃんも目の前に現れ、ちょっと意味が分からなかった。

 話をきくに、どうやら、彼は製薬会社の開発部長らしく、日本の少子化を食い止めるため、また、公的な補助金の援助もあり、真面目でモテない弱者男性を、クズ男であるが女性とセックスできる強者男性に変える薬を開発しているらしかった。Hちゃんはたまたまその助手のようだ。

 紳士といった雰囲気の男は、奇屋不手黒男(きやふてくろお)と名乗った。彼は、弱者男性を強者男性に変える薬、通称「ストレングス」実験台1号として、和久田を選んだのだった。

 これは本当に偶然であり、たまたまHちゃんが、黒男の助手であったことがことの発端であった。

 黒男から渡された「ストレングス」を1錠飲んだ和久田は、みるみるうちにナンパ体質になり、なんと、その場にいた、アフタヌーンティーを楽しむ50代のマダムを口説き、キスをしてしまった。

 その瞬間、嫉妬に怒り狂ったHちゃんは、包丁で和久田を刺殺し、彼は36歳にて、死亡した。Hちゃんは、和久田のことが、薬を飲む前から、実は好きだったらしかった。

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