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1-3

 ――夜中。町の殆ど、誰もが眠りに就いている丑三つ時頃。

 予定通りにその時間に起きて、予定通りに事を起こす。手早く寝間着から厚手のジャンパーを着込んで、部屋から出て、眠っているだろう家族に気付かれないように、静かに玄関から外に出た。そうして一階に降りる。吐く息は白く、冬の夜の寒さにぶるりと身が震えるけど、折角理想の時間に起きられたんだし、今行かなくてどうする。

 目指すはあの空き地。マイコンを求めて。


 人の目を気にしながら、空地までの暗い、静かな道を歩いていく。か細い街灯の灯りだけが夜道を照らしていた。

 とにかく寒い。厚着してても寒さが貫通していく感じがしたけど、マイコンを手に入れる為だと思い、耐えて進んでいった。

 そして、目的地である空き地に。草ぼうぼうになってるその奥の方に、俺が隠してたマイコンはまだちゃんとあった。

 辺りを見回し確認する。人の気配はない。

 今がチャンスと、ディスプレイに手を伸ばす。金属で出来たそれは冬の冷気に晒されて、とにかく冷たかった。

 これは、慎重かつ迅速に行なわなければならない。誰かに見付かる危険性もそうだけど、重いし何より手が痛むように冷たい。手袋を付けて来るべきだったと思いながらも、手が滑って落としてしまうかもと考えると、どっちが正解なのか解らない。でも、事はスピードが重要と考えて、帰ったらまず手袋をしようと考えた。

 ――そうして、なんとかディスプレイは自室にまで運ぶ事が出来た。

 手が痛む。だけどこれからもう一つ重そうなものを運び込まないといけない。そう思うとげんなりとした気持ちになったけど、貴重なブツを手に入れる為には仕方ない。

 とにかく、手袋を付けてもう一往復だ。それさえ済めば事は終わる。取り外しの利くケーブル類は既にここにある。後は本体とキーボードだけ。

 気合を一つ入れて、静かに家を出る。いざ、空地へ――。


 ――ゆっくりと、マイコン本体を部屋の端、畳の上に置く。そしてその上にディスプレイを載せて、乱雑な物の中に隠すようにする。

 全ての状況は完了した。苦労はしたけど、ブツは全てここにある。後やる事と言えば、起動の確認くらいか。流石に今から遊ぶ気にもなれないし。

 ……だけど、ここで一番の問題点に気付く。

 このマイコン、壊れたりしてないだろうな。

 何も考えず、只遊ぶ為に持って来る事だけ考えていたけど、そもそもこれ、壊れて動かなくなったから捨てられたという説も考えられる訳で。

 ……解らない。全てはこれを、実際に動かしてみない事には。

 ちょっと迷って、電灯を付けてケーブル類の接続を試みる。キーボード、マウス、ディスプレイ、電話線などだ。型に嵌めるだけの事だけど、暗い中で見えない事にはどうしようもない。繊細そうな部位のケーブルもある。壊してしまうかもだし、間違えて差し込む事は出来なかった。

 ――それら全部を差し終えたのを確認して、いよいよ電源のスイッチを押す。ブーン、と音がして、マイコンは動き出した。黒い画面に幾つか文字が表記される。どうやら壊れているかもという心配は杞憂で済んだみたいだ。

 だけど。

「うーん……」

 動きはした。だけどここからどうしたらいいんだろう。キーボードのどのボタンを押してもなんにも反応がない。いやディスプレイに文字は追加されていくから、何かしらの反応がある事には違いないんだろうけど。

 文字を打った事で、マイコンに何か面白そうな変化が起こるという事はなかった。

「どうしたもんかなあ……」

 何をどうすればいいのか全然解らない。コンピューターってもっと便利で簡単なものかと思っていたのに、これじゃあ。

 仕方ない。動く事は解ったんだ。なら、実際にこういったものを動かせる奴に色々訊いた方が手っ取り早いだろう。

 そのあてはある。明日になって、学校に行かないと解らない事だけど。

 マイコンの電源を切る。夜も遅く、眠気も最大値だ。今夜はもう眠ってしまって、明日に備える事にしよう。

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