79話 久しぶりのクラスメイト
やっぱりトランクスにしか見えねえ。エロさは感じないな。
城を歩くメイドの足元を『影移動』で移動しながら上にあるメイドさんの下着を見上げ、もう何回考えたか分からない事をもう一度考えている。別にこのメイドさんが美人だからついて行ってる訳ではない。『探索』で大野がいる方向にメイドさんは向かっているので、偶然ご一緒しているだけだ。そんな言い訳をしながらメイドさんと一緒に歩いて行く。途中何度かついていくメイドさんを変えながらも何とか大野がいる部屋に辿り着いた。辿り着いたが大野がいる部屋の扉に隙間はなく『影移動』でも入れない、しかも扉の前には門番がいるから困った。暫く扉の近くの調度品の影で困ったまま待っていると、誰かがやってくる音が聞こえてきた。その音の主が誰か気付いた門番は膝をついて頭を下げるので、かなり偉い人物がやってきたようだ。
「開けろ」
その大物が命令すると門番は逆らう事無く扉を開ける。これはチャンス!どこかで見た事ある大物の影に隠れて大野がいる部屋に入る。
「前原君?どうしたの?」
部屋に入ると俺が影に隠れている奴に大野が声を掛けてくる。・・・前原ってそう言えばクラスにいたな。結構影が薄い奴だったと思うけど。って事はこいつがこの国の引き籠り勇者なのか。
「大野さん・・・聖女と二人だけで話がある。席を外せ。外の連中もだ」
前原が、部屋にいる大野の取り巻きに偉そうに命令している。・・・こんな偉そうにする奴だったかな?
俺が疑問に思っている中、大野の取り巻きと外の門番が離れていく音が聞こえなくなる。
「ああ、大野さん。ようやく二人きりになれたね。色々聞きたい事もあったし心配してたんだよ」
音が聞こえなくなるとすぐに大野を抱きしめる前原。うん?この二人そんな関係だったのか?
「ちょ、ちょっと!やめて!」
そう思ったけど違ったようで、大野は抱きしめてきた腕を慌てて振り払い前原から距離を取る。
「前原君、心配してくれるのは嬉しいけど、私達は唯のクラスメイトでしょ。抱き着くのはやめて」
「唯のクラスメイトとは酷いな。僕の気持ちは前に伝えたはずだよ」
「それは断ったでしょ。私の事は諦めて!」
前原の奴、既に告って振られてんのかよ。
「僕は今でも大野さんの事が好きなんだから諦められないよ。」
前原の奴未練タラタラだな。まあ気持ちは分かる・・・俺もエレナに振られた時はそうだった。ただ俺はもう振られた事からは大分立ち直った。前原も頑張って立ち直れ。
「そうは見えないけど。・・・聞いたよ、毎晩違う女の人と寝てるって」
前言撤回。同情して損した。
「それは僕が勇者だから仕方ないんだよ。優秀な子を残すのが勇者の役目だからね。でも安心して僕の気持ちは大野さんにしか向いていないから」
都合の良い事を言って前原は再び大野を抱きしめようと腕を広げる。
「ちょっと!だからやめてって!人を呼ぶわよ!」
「呼んでも誰も来ないよ。人払いはもう済ませてある」
広げた腕を掴み抵抗する大野。・・・このまま様子見てると前原が無理やり大野を襲うな。助ける気はないが、このまま始められても困る。先に俺の用事を済ませてから勝手に始めてくれ。
「なあ、悪いけど、そういうのは俺の用事が終わってからでいいか?」
2人から少し離れた所で影から出て、声を掛けるともみ合っていた二人とも驚いた顔でこっちを振り返る。
「だ、誰?」
「お前は?」
驚いて振り返った所で二人とも影で拘束する。『探索』だと前原は赤くなってるから口の拘束を解除すると、大声出しそうだな・・・どうしようか・・・・。
少し考えてから俺は二人に近づき頭に手を置く。
(おい、俺の声聞こえるか?聞こえたら返事しろ。頭で会話するようにすれば出来るはずだ)
(き、聞こえた。あ、あなた誰?)
(な、何で頭に声が・・・おい、貴様、水の国の勇者の僕にこんな事してタダで済むと思うな。さっさと解放しろ。)
『念話』を繋げると威勢のいい前原の声が頭に響く。こいつは今自分がどういう状況か分かってないのか。俺の気持ち次第で簡単に殺せるっていうのに・・・まあやらないけど。
(前原って性格変わったな。前はもっと大人しかっただろ。勇者だってちやほやされて勘違いしたか?)
(はあ?誰が勘違いしてるって?そもそも(待って!前原君!・・・昔の前原君の事知ってるってあなたもしかしてクラスメイトなの?)
(ん?ああ、この格好じゃわからないか)
そう言って俺は二人の目の拘束を解除して。俺の顔を覆っている布を外して顔を見せてやる。
(久しぶりだな、お前ら)
(つ、土屋君!)
(土屋かお前?)
(今までどうしてたの?)
(お前もこっちに来てたのかよ)
(俺の事はどうでもいい、一つだけ質問に答えろ。そしたらこのまま何もせずに帰ってやる・・・しかし俺を見捨てた奴が『聖女』ねえ。似合わねえな)
(・・・し、仕方ないでしょ!勝手にみんなが言い出したんだから私から『聖女』なんて名乗った事はないわよ)
(おっと、悪い。お前が『聖女』とかどうでも良かったわ。で、お前らノブがこっちに来てるか知ってるか?)
(ノブって津村君の事?・・・ごめん、知らない)
(津村?・・・知らん。あいつもこっちに来てるのか?)
(知らないならいい。邪魔したな。・・・ああ、そうだ、『念話』は繋いだままにしておくから、もしノブの情報が分かったら連絡くれ。今みたいに俺に向かって呼びかけるイメージで繋がるからな。俺からは今後接触するつもりはないから、お前らもノブの事以外は接触して来るなよ)
結局こいつらと接触したけど何も情報が得られず、とんだ無駄足になってしまった。『念話』を繋いだけどこいつらには、あんまり期待しないでおこう。そう考えてから、俺は城を抜け出しギルドに寄ってから今度は光の国に向かった。
◇◇◇
俺は光の教国の首都『聖地』までもう少しの道を歩いている。前回の反省を生かして今回は馬車を使わず気ままな一人旅だ。途中『快足』使ったり、途中の街でのんびりしたりしたが、特にトラブルもなく順調に進んでいる。そうして道なりに進み森を抜けると視界が広がり、ついに『聖地』が見えてきた。『聖地』は事前情報の通り、堀が街全体を取り囲んでいるだけなので、ここからでも街の中の様子が良く見える。
街の建物は全て白で統一されていて、どことなく神秘的な感じがするのは、ここが『女神教』の総本山でもある事が関係しているのかもしれない。そして街の中心にはかなり高い白い塔『白塔』が立っているのが見える。来る途中に聞いた話だと、『聖地』が襲われた時に街全体をバリアで包み込む魔道具だとか、ただの見張り台だとか、『聖地』の凄さを巡礼者に伝える為の建造物だとか言われていて、ホントの所はどうなのか分からない。分からないがただ一つ共通しているのが、あれは『女神』が作ったものだと言う事。この国では王城の代わりの『大神殿』に国の中枢機能が集まっていて、当然、この国を治める『教皇』もここにいる。その『白塔』は『大神殿』の中心に立っているので、普通の旅人が立ち入る事はできないだろう。
街の入口から伸びた長い列に並びながら『白塔』を見上げたり、周囲の観察をしているとすぐに自分の順番に回ってきたので、銀貨1枚を払って『聖地』に足を踏み入れる。『大神殿』には許可がないと立ち入れないが、近くに礼拝場があるので、多くの人は街の中心に向かってそのまま大通りをまっすぐ歩いて行く。俺は『女神教』なんて信じていないから、人の流れから外れて、書いて貰った地図に従ってどんどん進んでいくと、明らかに治安の悪そうな一角に出た。『聖地』だと言ってもこれだけ大きな規模の街ならこういう所は必ずあるんだろう。周りの奴等からジロジロ見られているが気にせず先に進み、ついに紹介してもらった店を見つけたので、躊躇う事無く中に入って行く。
「てめえ、何の用だ?」
店に入ると奥の扉の前にいる厳つい男3人が俺に気付くと警戒しながら、声をかけてくる。ここ表向きは店なのにいきなり喧嘩腰のその態度大丈夫か?
「買取希望だ。ほら紹介状もあるぞ」
気にせず懐から紹介状を取り出し俺に声を掛けてきた男に渡す。男は紹介状を開封し、中を確認すると、扉の奥に消えていった。と思ったらすぐに出てきた。
「許可が出た。入れ」
言われて中に入ると机に人相の悪そうな男が座りその両脇にこれまた人相悪い男が二人立っていた。まあ、師匠やギースさん程ではないな。
「へえ。お前が噂の『首渡し』か、思ってたより若えな。それで何を買い取って欲しいんだ?水の奴がこっちに泣きついてくるなんて珍しいからな。相当ヤベえんだろ、楽しみだ」
俺が『首渡し』って知ってるのは紹介状にでも書いてあったのかな。
「まずはこれだけだ。もっとでかいのもあるから後で広い所に案内してくれ」
カバンをひっくり返しアクアフォース家から持って来た貴金属や武器類等小物系を机に落とす。これだけでも軽く山になるな。
「な!・・・マジかよ、これ本物じゃねえか、これも、これも・・・はっはっはっ!こりゃヤベえ、水の奴が泣きついてくるはずだ。しっかし、すげえなこれ。しかも『首渡し』の奴まだまだあるって言ってるぞ。こいつヤベえ頭かなりイカレてやがる」
ボスの男が俺が出した宝の山から適当に手に取った短剣等に家紋が入っている事を確認すると、何故か上機嫌になった。だが、俺が頭おかしいみたいな言い方は気に食わない。ただここで文句言って買ってもらえないと困るので今は我慢する。
「いくらになる?」
「これなら白金貨3枚だな」
「わかった」
買取価格について俺はすぐに了承すると、ボスの男がご機嫌になる。
「ハハハ、こういう店では交渉無しってよく分かってるじゃねえか『首渡し』」
紹介してもらった水の奴に教えてもらったからな。
「ほら白金貨3枚な。それじゃあこっちに広い所がある。そっちででかいのを見せてくれ」
上機嫌になった影商人に、店の奥にある広いスペースに案内してもらい、そこでデブ貴族家の物は全て売り払った。別に金が欲しい訳じゃなく、師匠達『カークスの底』全滅に間接的に関わった貴族家への恨みを晴らす為だったのが、結果全部で白金貨12枚になった。
「ククク。いい取引だったぜ『首渡し』!おかげでこっちの現金はほぼ無くなったけどな、ハハハ」
取引が終わるとボスが上機嫌で俺を店の外まで見送ってくれる。と店を出る前にもう一つの不動在庫について確認していない事に気付いて立ち止まる。
「そういや、これも買い取ってくれないか?」
ホントに久しぶりに取り出した鎧セットを影商人が「まだあるのかよ」みたいな呆れた感じで鑑定を始めるが、例の刻印を見ると動きが止まった。
「・・・・『首渡し』てめえ、何て物持ってんだ。これはここでは買い取れねえ。っていうかこれはどこも買い取ってくれねえぞ」
また買取拒否された。ここなら何でも買い取って貰えるって話じゃなかったか?
「何だ、ここなら買い取れない物なんて無いって聞いたけど噓だったのか」
「嘘じゃねえよ。ただ、これは駄目だ、こんな物扱ったのがバレると俺達が国から狙われる。貴族の物は貴族からこの国への抗議だから普通教国が動く事はないが、これは火の国の物だ。そうすると、抗議は火の国から出る事になって教国も動かざるを得ないからな」
「そういうもんなのか?ドアールの商業ギルドだと兜1個は買い取ってくれたぞ?」
「そりゃあ、偽物だとでも思われたんだろ!俺は本物だって分かるから手は出さねえ!悪いがこいつは買取拒否させてもらう」
チッ、やっぱりこの鎧セット処分出来ねえのかよ、呪われてるんじゃないか。だったらどこかに捨てようか。なんて考えてみるが、不法投棄はどうかと思い取り敢えず、鎧セットの件は一先ず保留にして、『聖都』に一泊してから次の日にはすぐに『聖都』を後にした。のんびりしなかった理由はあんまり飯が美味しくなく、サービスも悪かったから。聖職者や巡礼者が多く、何も努力しなくても客が来る為か、商業ギルドおススメの宿でも良くなかった。無愛想な店主、狭い部屋、マズくて少ない量の飯。その癖値段は銀貨2枚と高かった。商業ギルドおススメでこれだからこの国への興味は全く無くなってしまったので、後悔する事なく『水都』に帰った。
「戦争?」
「ああ、火の国が攻めて来たらしい。こっちも騎士団や冒険者が火の国に向かって出発したんだとさ」
水の国への国境を越えてすぐの街の定食屋の店主から、水と火の国同士で戦争が始まった事を教えてもらった。
「物騒だな」
「ああ、だけどまあこの街は火の国から離れてるからあんまり関係ないな。ドアールの領主含む貴族達は、今頃慌ててるだろうがな」
「ドアール!そうかあの街の連中が危ない!助けにいかないと!」
「ちょ、ちょい待て。別に街の奴等に危険はないぞ?戦争に負けたらあの街が火の国所属になるってだけだ。まあ、ドアールの貴族は全てクビ、火の国の貴族があの街を治めるから貴族からしたら大事だけどな。平民は生活が大きく変わらないから心配する事はねえ」
「そうなのか?ドアールの街が攻められる事は無いのか?」
「まあ、戦争なんて100年以上起こってないから知らないのも無理はないが、国同士のルールでそういうのは禁止されてる。だいたい勝てば自分達の領地になるんだ、自分達で街を破壊したり、住人と軋轢を生むような事をする必要はないだろ?」
慌ててドアールの街に助けに向かおうとしたが、店主の言葉に落ち着きを取り戻して残った昼飯を食べ始める。店主がわざわざ噓を吐く必要も無いからこの世界だとそういうルールなのだろう。それならそこまで慌てる必要もないかと思い、特にペースを上げる事無く『水都』に戻った。
出発してから同じぐらいの日数をかけて戻ってきた『水都』はいつもよりどこかピリピリしている雰囲気だった。戦争が始まったから見回りの兵士は少ないが、その分かなりピリピリしているのが、住人にも伝わったんだろう。時刻は昼時いつもならギルドに人が大勢いて飯を食べている光景が目に入ってくるが、今日のギルド内は閑散としていた。閑散としていたが、ギルドの一角に見覚えのある集団を見つけたのでそちらに向かっていく。
「よお、ただいま。何か人少なくねえか?」
「「「アニキ!」」」
「「「「「ギン!」」」」」
集団はトマス達、『ウェイブ』、『戦乙女』、あと『紅の水』のガーネットとリー達だ。ガーネットとリーはいつの間に仲良くなったんだろう。
「お前、『光の教国行く』って伝言だけ残して消えやがって、心配したじゃねえか」
「そうだよ。あんたアクアフォース家とトラブってたから光の教国に逃げたんだと思ったよ。挨拶無しで行くなんて薄情な奴だと思ったけど違ったんだね」
ゴドルとトアから文句を言われる。まあ、あの時は少しドタバタしてて、詳しい説明なしで光の教国に行ったから文句を言われても仕方ない。
「ああ、悪い悪い。あの時はちょっとバタバタしててな。それであの後どうなった?」
「アニキが言った通り次の日にアクアフォース家の当主、婦人、息子が国家反逆罪で捕まったんですよ。で、その次の日には3人とも爵位剥奪、平民に落とされて、アクアフォース家は取り潰されました」
よし、カラミティの奴、ちゃんと言われた通り動いてくれたみたいだ。念の為残った手紙が敵対派閥に届くように手配していたけど無駄になった事はまあ、いいか。それで処罰は執事の爺さんの想像通り爵位剝奪か。今まで平民に対してあんな態度で接していたんだ、少しは平民にとって貴族がどれだけ理不尽な存在か分かればいいさ。
「それからしばらくその話題で持ち切りだったんだよ。ああ、あと『深海』が『姫』に妙に突っかかってたな。で、そうしているうちに火の国が攻めてきて、こっちも騎士団が国境に向かって行ったから戦争になるって話だ。もうそろそろ両軍ぶつかっていてもおかしくないぐらいだ」
カラミティの奴上手く派閥に取り入れたみたいだな。『深海』の奴等がカラミティに絡んで文句言ってる姿を見たかったが、今はいないみたいだし、また今度の楽しみにしておこう。
「それで冒険者連中は貴族に大量に雇われて一緒に戦争に行ったからギルドに人が少ないの。『水龍姫』と『大海龍』のクランはアクアフリーデン家とその派閥勢力に雇われていたわ。『ガーデン』は参加する気なかったみたいだけど、王命が下って嫌々参加って所ね」
「あれ、じゃあゴドルと、トアの所は行かなくて良かったのか?」
「私達は『ガーデン』派閥だけど、所属している訳じゃないから強制じゃないわ。まあ、Dランク以下でも参加したければしてもいいんだけど、私達は貴族と関わりたくなかったし、戦争って難易度分からないじゃない。死ぬ可能性が分からないって怖すぎるから今回はパスしたわ」
「それならガーネットとリーは参加しなくていいのか?」
この二人はクラン『大海龍』所属のCランクパーティだから、ここにいるのはおかしい。まあ、ここにいる時点で何となく予想はできるが。
「私達は『大海龍』を抜けたわ。あの時見捨てられたんだもん、そんなクランに未だに所属してる程馬鹿じゃないわ。それでパーティメンバーと喧嘩してパーティ解散。今はリーと二人でこいつらの依頼を手伝っているわ」
確かに見捨てられたクランに残っているなんて馬鹿らしいもんな。そういう理由でこの二人はここにいるのは納得だ。ただ、ガーネットは言いながらリコルをチラチラ見ている。っていうかリコルはまだフラグ回収してないのか?
「俺がいなかった時の話は飯でも食いながら教えてくれ。光の教国で結構稼いできたから奢ってやるよ」
「マジっすか?アニキ!ゴチっす」
「稼いだって何してきたんだ?まあその辺も予想できるが飯食いながら聞かせてもらおうか」
「もしかして教国でも何かやらかしてきたのかい?」
「何か教国でも騒ぎ起こしてそう」
「まあ、ギンだしな」
「ギンだもんね」
何か酷い事言ってる奴がいるから飯奢るのやめておこうかな。なんて考えていると、本当に久しぶりに『念話』の呼び出しが入った。
(・・・エレナ?)
少しドキドキしながら『念話』を繋ぐ。ドアールを出てから半年ぐらいは経過した今では失恋から大分立ち直ってきたので、そろそろゴドル達と『カモメ亭』にでも行こうかな、なんて考えている。まさかそれを察して連絡してきた訳じゃないだろうなとか考えていると、
(土屋君!良かった、繋がった!お願い助けて!)
相手は、『念話』を繋いだがその存在をすっかり忘れていた、クラスメイトの大野だった。




