表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
4章 水都のEランク冒険者
75/163

73話 特別依頼

翌日、掲示板を眺めるが特に野盗出没の情報はないので、どれにしようか考えている。最近は寒くなってきたので、採取系の依頼はかなり減ってしまった。あと3ポイントでランクが上がるが、この調子だと春まで待たないといけないかもしれない。どれにしようか迷っていると、受付にいるリマから声を掛けられた。幸いリマの受付には人はいないのでまだ依頼は決まっていないが、席に座る。


「なんだ?まだ依頼決めてないけど」

「そう、丁度よかったよ、ギンにはギルドからの特別依頼を受けて欲しくて呼んだんだ。依頼が決まってないなら受けてくれないかな」


初めて耳にする特別依頼とは何だろう、採取でも討伐でもない特殊系だとは予想がつくが、Eランクの俺にってのが気になる。


「えっと、東の方でオークによる被害が多くなってきたから、多分大きな巣が出来たと思うんだけど、その巣の場所の調査をお願いしたいんだよ」


やっぱり変わった依頼だ。野盗のアジトの調査はD、Cランクにあるが魔物の巣の調査は初めて聞いたな。


「調査ってのはどの程度調べればいいんだ?」


オークの巣の構造を調べてこいだったら断ろう。さすがにそれは『影魔法』使わないと無理だし。


「えっと、ホントは場所だけ探してくるだけで依頼達成なんだけど、クオンから聞いたけどギンはスキルでオークに気付かれないんでしょ。それなら鐘1つの時間だけ入口を見張っててもらう事って出来る?」

「まあ、そのぐらいなら構わないが」


ただ、1時間も寒い中入り口見てるだけってのも嫌だけど、依頼だから我慢するか。


「その鐘1つの間に何匹ぐらい出入りしてるかと、ジェネラルやキングがいたらそれも教えて欲しいんだけど、大丈夫?」

「大丈夫だと思う」

「ホント!ありがとう。それじゃあ、受付してくるけど危険を感じたらすぐに逃げてね。鐘1つってのは私の我儘だから無理そうならすぐにその場から離れてね。あと、巣を見つけたら巣の規模に見合った討伐隊を編成するから、その時はギンは道案内もお願いね」


・・・討伐隊を編成するのはいいが、道案内は聞いてないぞ。


文句を言いたいが、すでにリマは俺のギルドカードを持って奥で手続きをしている。手続きが終わった所で確認だけはしておく。


「道案内ってなんだ?聞いてないぞ?」

「ああ、大したことじゃないよ。討伐隊を巣まで案内するだけだから。そっちも別依頼になるからポイントも報酬もあるよ」


マジか、俺には『探索』あるから巣を見つけるのは余裕だ。更にそこに道案内するだけの簡単な依頼も受けれるって事はこれだけでポイントが2つ加算される。そうすると残り1つ。これはすぐにでもDランクだ。


「よし!じゃあ、行ってくるけど、東のどこに行けばいいんだ?あと期限ってあるのか?」


俄然やる気になった俺はリマに被害が多い場所を確認する。


「取り合えず東に行った2つ目の村から北上して最初の村の周辺で被害が多いみたいだから、まずはその村で情報集めてみるのがいいかも。期限は今日から7日間、見つからなくても戻って来たらどの辺りを探していたか報告はお願い」

「よし、7日な、分かった。じゃあ行ってくる」




◇◇◇

「ふう、寒いな。スープとか飲んだら気付かれるかな」


オークの巣を見張りながら寒さを紛らわせる為に絶対にやったらバレるだろう事を口にしてみる。本当にやるつもりはない。


あの後依頼を受けて、その日の内に目的の村についたので、村長から話を聞いた。村から更に東の方に行くとオークとよく遭遇すると言われた。見かける度に討伐依頼を出していたが、倒しても数がどんどん増えていくのでおかしいとなり、この村の担当代官に相談した所、国から冒険者ギルドに依頼がいったらしい。この村も一応、王族の領地らしいので、国から依頼があったそうだ。ドアールだとそこを治める領主からの依頼になるらしい。


そうして翌日東の方に4時間程森を進んでいくと『探索』であっさり洞窟にあるオークの巣を見つけて、リマとの約束通り隠れて巣の様子を眺めている。洞窟と言ってもオークが巣にしているだけあって、入り口は5mぐらいの高さがありかなり大きい。中もかなり広い空間が広がっていると想像できる。そして『探索』の最大範囲だけで周辺には赤が20はいる。これが全てオークかは分からないが、結構頻繁にオークが巣を出入りしていて、巣の中に反応が30はあるからそこそこの規模の巣なんだろうか?取り合えず1時間程様子を見てジェネラルが2匹は確認できた所で俺はその場から離れて村に戻った。


戻ってきた俺に村長さんが色々聞いてくるが、巣があった事は教えたが場所や規模は教えなかった。最初は依頼主に報告しないと、後でトラブルになっても困るからだ。討伐隊が編成される事を伝えると村長さんは安心したのかそれ以上は何も聞いて来なかった。そうして途中の村で1泊してから都まで戻ってきた。




「よお、見つけてきたぞ」

「・・・・・え?」


リマの受付に行き声を掛けると、驚いた顔でリマが固まる。美人が面白い顔をしているので普段なら元に戻るまで面白がらせてもらうが、今日の俺はさっさと報告して銭湯に行きたい。


「・・・は、早くない?一昨日だよね出発したの?あの村行くだけで1日かかるよ!何でこんなに早く終わらせられるの?おかしいよ!ギン、知ってる思うけど虚偽の報告は・・・」

「分かってるよ、降格か除名だろ。そんなリスク侵すぐらいなら普通に発見できなかったでいいだろ?虚偽報告する理由が無い。だからホントに見つけて来た。納得できるか?」


腕を組んですごい考え込んでいるリマだが、そのポーズは一部が強調されて、ムラムラしてくるのでやめて欲しい。


「・・・分かった。取り合えず報告だけ聞くよ。ただ、嘘なら今の内に正直に言って、今ならまだ依頼失敗で収める事ができるから」


小声で注意してくれるリマ。


「大丈夫だ。ちゃんと見つけてきたから心配するな。まずは巣の位置だけど、あの村から東に鐘4つ程進んで行けばある。オークの数は大体50以上と考えておいた方がいい。あとジェネラル2匹は確認できた」


報告を終えると、リマは少し俺を睨みつけて、


「馬鹿!もう無理だからね!」


小声で怒鳴りつけるという器用な事をして席を離れていった。


しばらく待つと、リマがギルマスとオッサン職員を連れて戻ってくると、俺は個室に案内された。


「リマから聞いたが、本当か?」


個室の席に着くなりオッサン職員が確認してくる。


「本当だ!発見できなかったって方よりわざわざ厳しい罰にする理由は無いだろ?」


オッサンに答えるが、納得してくれるだろうか。多分、このオッサンがこの依頼の担当なんだろう。


「ジョクス先輩。ギンは信頼できる人です。それにギンの言う通り噓を言う理由は何もないと思います」


さっきまで疑ってた奴のセリフだと思えないけど、リマは俺の事信じてくれたんだろう。・・・いや、信じるしかなくなったのか。


「そうだね、嘘を吐く理由はないさね。ジョクス、この坊主の報告が本当だと考えて討伐隊を編成しな」


婆さんが助け船をだしてくれた。まあ婆さんは俺が『首渡し』って知ってるから、金もあるのにわざわざこんな嘘を吐く事はないとでも考えたんだろう。・・・いや、もしかして、


「なあ、婆さん。この特別依頼ってあんたが俺を指名したのか?」

「ふぉふぉふぉ、そんな昔の事はわすれちまったねえ」


気持ち悪い笑い方で誤魔化してもバレバレだ。それに1週間も経ってないから昔じゃない、リマを見ると目を逸らされたので婆さんの指示で依頼してきた事は確実だな。


「報告を聞く限り、恐らくキングがいると判断した方がいいでしょう。そうするとBランクパーティが頭でCが2つ、Dが3~5って所でしょうか?」


俺と婆さんのやり取りも全く気にせず腕を組んで考え込んでいたオッサンが考えがまとまったのか婆さんに報告する。


「まあ、そんな所だね。BとCは派閥をどうするかだけど面倒くさいねえ。Dは依頼貼っておけば勝手に集まるだろうさね・・・そうだった、Dは3で十分だわ」


俺をチラリと見ながらオッサンに注意する婆さん。何か嫌な予感がする。


「3ですか?BとCを決めてからDの数を決めるのが普通なのでは?先にDを決めるとBとCをある程度実力のあるパーティにする必要がありますけど」

「そうだ、それが正しいけど、今回だけは特別だね。取り合えずBとCも依頼を貼って集めればいいさ、派閥は気にしなくていい。いやあ、こんなに考えなくもいい依頼は久しぶりだねえ。ああ、ジョクス、心配しなくても今回の依頼失敗しても私が全て責任とるからね。あんたは成功した時のポイントだけ貰えるって訳だ、悪くないだろ?」


なんか、婆さんが勝手に話を進めていくが、正直嫌な予感しかしない。隣のリマを見ると頑張れって目で俺を見てるし。これ絶対面倒くさい事になるだろ。




「ふう、面倒くさい事になったな~。直接言われてないけど、そういう事なんだろうな」


湯船に浸かりながら独り言をぼやく。あの後すぐに解散したが、婆さんの言い方からして俺に道案内以上の事を要求しているのが分かった。確かに危なくなったら多分助けるとは思うけど、婆さんの思う通りに動くのもそれはそれでムカつく。でも、失敗したら婆さんが全部責任を取る、成功したら討伐隊を編成したオッサンと、俺に調査を依頼したリマにポイントがつくと言われたら協力しない訳にはいかない。


今日教えて貰ったが、ギルド職員もポイントで昇進や昇給が決まるらしい。通常業務だと数カ月で1ポイントだが、こういう特別依頼は成功すれば1ポイント貰えるらしい。あと、例の貴族みたいに面倒くさい客の対応をすると加算されるらしい。だからあの時、ベテランっぽい人が担当していた事に納得できた。リマが俺に依頼したのは婆さんの指示だし、俺の事を心配してくれているので、ポイントの為って事はないだろう。


取り合えず5日後に討伐隊が出発するって事なので、1回別の依頼を受ける時間はある。それでオークの巣まで案内できれば晴れて俺はDランクに上がれる。師匠達と同じランクになれるので俄然やる気がでてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ