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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
4章 水都のEランク冒険者
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69話 新人とローカルルール

東方向で多く採取される『水光花の採取』依頼を手に取り、受付に向かうと、クオンとの話が終わったのかリマが戻ってきていた。


「ほい、これ。受付頼む」

「はーい。『水光花の採取』ね。これは東の方に多く・・・・あるよ」


うん。知ってる。さっきギワンから聞いた。ついでに野盗がいる事も・・・


「み、見た?」


慌てたようにリマが聞いてくる。主語がないぞー何の事だー?


「ああ、そりゃあそんな立派なもん持ってたら見ちゃうだろ」


そう言ってリマの立派な部分に遠慮なく目線を送る。


「ち、違うよ!こっちじゃないよ!どこ見てるのよ!馬鹿!依頼よ!依頼!」


顔を真っ赤にして胸を隠すように腕を組んで俺に普段と変わらない様子で文句を言ってくるから、昨日の事はもう気にしてないようだ。


「ねえ、まさかとは思うけど。また?」

「いや、いや、そんな訳ないだろ。ただ、もしかしたら偶然遭遇するかもだけど、まあそんな事滅多にないから大丈夫だ」


すごいジト目でこっちを見てくるリマから処理の終わったギルドカードを取りあげる。


「じゃあ、行ってくる」

「ほ、ホントに気を付けてよ!無理しちゃ駄目だからね!」


リマが大声で言うもんだからギルド中にその声が響き渡る。


「そうだぞ、無理は駄目だぞ『採取野郎』!」、「気を付けろよ。ちゃんと木の棒持ったか?ブハハハ」、「また『採取』か?たまにはオークでも倒して来いよ!」


まあ、いつものように野次を背中に受けつつギルドを出て、東に向かう。




・・・・あいつら・・・・一応先輩だから注意はしとくか。


ギルドを出て30分程進んだ所で、恐らく新人冒険者だろう3人が街道沿いの薬草を採取しているのを見つけてしまった。ゴドルから都に出てきて最初に聞いたが、ここのローカルルールは徒歩1時間圏内は子供の小遣い稼ぎ用で冒険者は薬草採取禁止だったはずだ。それなのにこんな所ましてや街道沿いって目撃者も多い所で採取なんてあいつら何考えてんだ?気付いてしまったら注意するのが暗黙の了解となっているので、面倒くさいが声だけはかけておく。街道沿いなので周りには目撃者がたくさんいるから、俺が注意した事は誰かが聞いているだろう。


「おい、お前らここで採取したら駄目だ。冒険者はあと鐘半分は離れた所で採取しないと駄目だぞ」


俺が注意すると3人はビクッと驚いた後、俺に振り返る。振り返ると何故か俺じゃなくて周囲に目を配る。そうしてすぐに俺が一人だと分かったんだろう3人はすぐに俺を見る目つきが変わる。日本だと金子達、こっちだと俺に野次を飛ばしてくる連中がしてくる目つきだ。


「何だよ。『採取野郎』一人かよ!」

「何でお前に注意されなきゃいけねえんだよ。ここは俺らが見つけたんだよ。口出してくんじゃねえよ!」

「もしかして、お前、俺達からこの場所奪って採取しようとか考えてんのか?言っとくけど『採取野郎』に負ける程、俺達弱くねえからな」


うわー。注意してすごい後悔した。暗黙の了解だから仕方ないけど、すげえテンション下がる。


「お前ら!もう一度言うけど冒険者はあと鐘半分は離れた場所で採取するってのがルールだ!注意はしたからな!」


大声で街道を歩いている人に聞こえるように注意してから、俺はその場を離れる。後ろから、


「はっ!ビビッて逃げやがった」

「やっぱりあいつ噂通りすげえ弱いんだな」

「今度文句言ってきたらボコボコにしてやろうぜ」


ムカつく言葉が聞こえてくるが、見た感じ3人とも俺より年下、俺は大人。いちいち子供の言う事で目くじら立てるのも格好悪いので、聞こえない振りして依頼に向かった。





さて、困った。無事採取を済ませて、最近出現した野盗も狩り終わったのだが、今回この野盗に捕らえられている人がいなかった。だからいつものように捕まっている人に首をあげる事は出来ないので、野盗の首合計12個どうしようか首の無い12体の死体の前で考えている。・・・ダルクさんが言っていた、首があれば野盗から奪った宝はどうとでも出来ると言う事を思い出し、首だけは持って帰る事にする。


依頼を受けてから3日後の夕方、俺は特に苦労する事もなくギルドに戻ってきた。そして、いつものようにギルドに入ろうとした所で、


「ギンさん!すみませんでした!」、「許してください!」、「次からは必ず言う事聞きますから許して下さい!」


ギルド入り口前でこの前の新人3人から泣きながら縋り付かれる。な、なんだ?これ?何が起きた?俺何かしたか?


「あ、ああ、分かった。もう怒ってないから、許してやるから」


よく分からないが戸惑いながらも許してやる事にする。そう言うと3人ともペコペコ頭を下げながらお礼を言ってきて怖かったのでそのまま放置して受付に向かった。


リマに『水光花』とギルドカードを渡しながら、さっきの奴等について考えているが謝られる事については全く思い当たる気がしない。その事を考えていると、


「はい、処理終わったよ。・・・今回はやっぱり無理だった?」


リマが小声で聞いてくるが『やっぱり』って言葉が気になる。


「いや、潰してきたぞ。ただ人質がいなかったから首は俺が持ってるな。ダルクさんが戻って来たら首も売り払うから、話題になるのはもうちょい後だ。それよりも『やっぱり』って何だよ」

「いや、だって今回出発遅かったし、新人と道中でトラブルあったんでしょ。それなのにこの時間で戻ってきてるから・・・」


出発遅かったのはギワンとカラミティのせいだ、あと道中トラブルなんてなかった、ちょっと注意しただけだ。・・・そういえばギルド前のアレ何だったんだ?


「ついさっき、ギルド前で3人から泣きながら謝られたんだが、アレって何だ?」


聞くと、リマは眉間に皺を寄せてすごい困った顔になる。


「まあ、黙っててもすぐにバレると思うから教えるよ。ギンが依頼に行く途中、あの子達ルール破って注意したギンを馬鹿にしたんでしょ?」


まあ周囲に俺が注意していることが分かるように大声だしたからな。


「そこで謝ってきちんとルール守れば良かったのに、あの子達ギンに酷い事言ったんだよね?それを聞いてた人がその事をみんなに話したらアッと言う間に知れ渡ってね。元々ローカルルール破ったら1週間ギルド立入禁止ってのが決まりみたいだけど、今回はまずギンの許しを貰ってからってなっているみたいだから、今日から1週間立ち入り禁止になるんじゃないかな?」


ちょっと待て、今日から7日って俺が依頼受けたのは3日前だぞ。新人が10日間もギルド入れなくて依頼受けれないって厳しくないか?


「それってその新人たちは金大丈夫か?」


心配してリマに聞くと、思った通り険しい顔で首を振る。


「新人なんてギリギリの生活なんだから、大丈夫な訳ないじゃない。噂じゃ昨日から何も食べてないって」


マジかよ。それじゃあ、残り1週間どうやって過ごすつもりなんだ?


「ギルドは何か言わないのか?助けたりとか」

「そんな事すると、際限なく助けないといけなくなるからギルドは干渉しないよ。ローカルルールもそもそもギルドが決めた事じゃないからどうしようもないし、今だってギルドはあの子達を立入禁止にしてる訳じゃないんだよ。冒険者が自発的に入り口であの子達を見張って入れないようにしているだけで見張ってる場所もギルドの敷地外だからギルドからも何も言えないよ」


ホントにギルドは不干渉の立場を貫くつもりだ。確かにリマの言う通りここで手を出したら際限なく助ける事になりそうだから、その言い分も分かる。それに職員だからリマ個人がってのも通用しないんだろう。


「そうすると、あの新人はどうなるんだ。金がないんじゃ1週間もたないだろ?」

「孤児の子なら一時的に孤児院に戻るって事も出来るけど、あの子達スラム出身だから、このままだと碌な生き方しないと思う・・・」


・・・・これであの新人が野盗になって俺の前に現れたらやりにくくて仕方ないぞ。注意した時はムカついたけど、この3日間俺を入り口でずっと待って、謝ってきた事を考えると、そこまで悪い奴等じゃないだろう。それに俺も師匠から指導員以上に助けてもらったからなあ。


「・・・リマ、これから1週間、俺は依頼を受けに来ないと思うけど心配するなよ。ちょっと用事が出来た」


仕方ないが、あの新人は1週間面倒を見てやろう。金には困ってないし、すぐにランクをあげる必要もないしな。


「そっか~。やっぱり、私達を助けてくれたギンならそう言うと思ってたよ。ありがと。私達も何とかしたいと思ってるけど、流石にギルド職員が助ける訳にはいかないから。ギンがそう言ってくれたからあの子達はもう安心だね」


俺がこれから何をするのかリマはすぐに理解したみたいでお礼を言うが、この1週間は死なないように面倒みるだけだしあんまり期待されても困る。。

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