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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
4章 水都のEランク冒険者
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68話 ギワンとカラミティ

本日2回目です


翌日、いつものようにギルドに行くと、すぐにリマとクオンからギルドの個室に引っ張り込まれて謝られた。


「昨日はごめんなさい。あの時金貨を持たせてくれた意味を考えてなかったよ」


昨日の俺が言った意味を分かってくれたみたいで良かった。今後はああいう事を言ってこないでほしい。さすがに昨日は帰ってから「断ったの勿体なかったなあ」とモンモンとして少し寝不足気味だ。


「ギンが昨日の誘いを断ったのは、私達がゴブリンに汚されているからって訳じゃないよね?」

「クオン、お前またゲンコツされたいのか?・・・はあ~。昨日カッコいい事言って帰ったけどな、宿に戻ってから『勿体なかったな、誘いに乗っとけばよかった~』って考えて少し寝不足気味だ」


アホな事を言い出すクオンに警告をして、昨日宿に戻ってから考えたカッコ悪い事を正直に話すと、二人とも何が嬉しいのか表情が照れ笑いになる。


「それなら昨日もしも、ホントにギンとしたくなっててギンを誘っていたら最後までしてくれたって事?」

「ああ、多分我慢できなかっただろうな。お前らあの件があるから自己評価低いみたいだけど、十分可愛いからな。リマなんて更に立派なもん持ってんだから。お前らと仲良くしていると、色んな奴等から妬まれるし、お前らも飯に誘われまくってるから分かるだろ?」


2人は赤い顔でモジモジしながら上目使いで俺を見てくる。あざとい。


「そっか~。うん。ギンが言うなら少し自信が出てきたよ。それとあの時のお礼だからと言って二度とああいう事は言わないよ。今度はちゃんとギンとしたい時に誘うね」


いや、誘うなって。次は我慢出来ないぞ。


そうして二人は納得してくれたのか、この後二人で少し話があるとの事で俺だけ解放された。二人とも仕事は大丈夫なんだろうか。そんな事を思いながらも俺は掲示板に貼ってある依頼を眺めるとある依頼が目についた。


・・・ククク・・・また湧いたのか。東の街道か。そっち方向の依頼はと。


Dランクの依頼『東の街道に出没する野盗団のアジトの調査』を見つけて、嬉しくなって心の中で笑ってしまう。そうしてテンション高くどの依頼を受けようか考えていると、後ろから声を掛けられた。


「よお、ギン今日はどの依頼受けるつもりなんだ?時間があればお前の腕を見せてくれよ」


振り返ると大男の姿あった。確かギワンって言ったな。でかくて極悪人顔だからかこいつの周りから冒険者は少し離れて掲示板を見ている振りをしつつ、こっちの様子を伺っている。


チラリと受付に目をやるとリマはまだ戻ってきてないようだ。戻って来るまで待っててと言われているので少しは時間がある。


「依頼についてはまだ考えている所だけど、鐘1つぐらいなら大丈夫だぞ。今から行くか?」


ギワンに言うと、嬉しそうに頷いたので、二人で訓練場に足を運ぶのだが、何故か後ろからゾロゾロと冒険者がついてくる。


「ドミルから聞いてるぜ、色々面白い戦い方するんだろ。だが、まあ最初はスキルも魔法もなしでやってみようぜ」


その提案に断る理由はないので、最初は『生活魔法』もスキルも使わずにギワンに攻撃を仕掛ける。



「ハハハ、お前ホントにEランクかよ。Dって言われても不思議じゃねえぞ」


感心しながら褒めてくれるギワンだが、俺の攻撃を軽く受けながらなので、嬉しくない。こっちは本気なのに向こうは全然本気を出していないから、かなりの実力差があるのは分かる。


「はあ、はあ、ギワン!そう言えばお前のランク聞いてなかったな。その腕だとドミルと同じBって所か」

「ここから一歩でも俺を動かしたら教えてやるよ」


そう、ギワンの奴さっきから一歩も動かず俺の攻撃を受けたり躱したりしているのだ。さすがにこのままだと、折角誘ってくれたギワンに申し訳ない。


「ギワン。このままだとお前も楽しくないだろうから、隠し球を使わせてもらうぞ」


「おっ。噂の『合成生活魔法』って奴か。いいぜ、かかってこい」


楽しそうにギワンが言ってくるが、俺の合成魔法はドミルの奴がバラしてるみたいだ。これはほとんど攻撃力がなくて意表をつくのに効果的なんだけど、相手にバレてたら効果は半減だ。ドミルに心の中で文句を言いつつ、ギワンに攻撃を仕掛ける。



「はあ、はあ、くそ!これ使っても一歩も動かせねえって何者だよ!ギワン!」


そう、『合成生活魔法』を使ってもギワンを一歩も動かす事が出来なかった。ドミルから色々聞いていたのか、意表を突く事も出来ず悉く対処されてしまった。ドミル戦で使わなかった『風』と『土』の合成魔法『目潰し』も『風』で相殺されたので、もしかしたら事前に色々試してきたのかもしれない。


「ガハハハッ、おもしれえ奴だ。まさか『生活魔法』をここまで使いこなすとはな。知らなけりゃかなり有効だな」


相変わらず感心したように褒めてくれるが、一歩も動かす事が出来ていないので、いい加減、俺の事を煽ってきるんじゃないかと疑ってしまう。このまま何も出来ないと恥ずかしいので『身体強化』を使う事にする。


「よし、そしたら次行くぞ」


それだけギワンに言って『身体強化』を発動する。


ガッ!


攻撃を仕掛けたが、先程と同じようにギワンの持つ棒に受け止められる。受け止められるが、さっきまでと違い俺の勢いは止まらない。止められた棒を力任せに振りぬくと、ギワンは大きく後ろに飛ばされる。ようやくその場から動かす事が出来た嬉しさよりも『身体強化』を使った攻撃を受け止められた衝撃の方が強かった。


「ようやく、動かせたぞ。ただ、俺のとっておきを普通に受け止めるなんてお前化物かよ」

「いやいや、周りからすればEランクなのに俺を動かしたお前の方が遥かにバケモンだぜ。って事で約束だ。俺のランクを教えてやるぜ。俺のランクはAだ。Aランクパーティ『青盾』のリーダーでクラン『ガーデン』のリーダーでもあるギワンだ。二つ名は『怪力』」

「A?ってこの国に3つしかないパーティだよな。そうか、なら俺の攻撃を受け止めたのも納得だな」

「まあ、普通は無理だけどな。俺は今お前と同じスキル使ったからな。まあ、話は後にしてかかってこい。俺もこのスキル使って訓練するのは久しぶりだ」


って事はギワンも『身体強化』を使えるって事だな。なら遠慮はいらないな、ドアールのギルマスとの稽古の時みたいに、全力でやらせてもらう。




「・・・参った。降参だ」


俺が負けを認めたので、ギワンが突き付けている棒を引く。結局地力で負けてる俺はスキルを駆使してもギワンに勝てなかった。結局最後は武器を弾き飛ばされて負けてしまった。『影魔法』使えば結果は変わっていたと思うが、アレはホントに人前では使えないので、考えるのは無しだ。


「ハハハハハ、いやあ楽しかったぜ。また今度暇な時相手してくれよ」


ギワンが差し出す手に捕まり地面に倒れた状態から起こしてもらう。


「ああ、こっちも楽しかった。ドアールではこのスキル使った訓練が出来たんだけど、こっちでは出来なかったからな。その申し出はありがたい。偶に使わないと、いざ実戦で使えないしな」

「えっ?お前ドアールでの訓練の相手って・・・もしかして」

「ああ、ギルマスだよ。あの人から『身体強化』教わったからな。銀貨20枚ぐらい使ったんじゃないかな」

「マジか。俺もこのスキル覚えた時、あの人から使うタイミングとか注意点とか教えて貰ったんだぜ。・・・そうかって事は俺とお前はある意味あの人の弟子って事だな。まあそれはいいとして、お前銀貨20枚って、もしかしてあの詐欺みたいな指導で覚えたのか?よく覚えられたな」

「詐欺みたいって・・・。元々無意識で少し使っていたっぽい、それをギルマスに指摘されて、なら覚えてみるかって所だな。ギルマスも教えるの初めてだったからどうやって行くか手探り状態だったから大変だったぞ」

「そりゃあ、そうだろ。『身体強化』なんてどうやったら習得できるか分かんねえのに、よく諦めずに習得したな。あんなのに諦めずに金出し続けるなんてお前少しおかしいぞ」


また変人扱いされたよ。俺は変人じゃねえと文句を言おうとした所、


「あなた!私を騙したわね!」


訓練場に声が響き渡る。声のする方を見ると、周りをイケメンに囲まれた超絶美人が怒った顔でこちらに向かってドシドシ歩いてくる。


「げっ!姫!」


隣のギワンがすごい嫌そうな声を出したので、こっちに向かってくる女が誰か分かった。俺たちの前まで歩いてきた『水龍姫』カラミティはギワンをチラリとだけ見た後、すぐにその青い瞳で俺を睨みつける。


腰まである青い髪を真っすぐ下ろしていて、身長は俺より低いが低すぎると言う事もなく、胸も大きすぎず、小さすぎずで理想的な体形をしている。『姫』というのも納得できるぐらい顔立ちも今までに見た事がないぐらいの美人だ。


そんな美人が何故か不機嫌そうな顔で俺を睨みつけている。騙したとか言ってたけど、こいつとは絡んだ事もないから騙しようもない。そもそも俺は人を騙すような事はしていないはずだ。


「私を騙すなんて何様なの?あなた、覚悟は出来てるのかしら?」


??いきなりこんな事言われてもマジで心当たりがない。


「まあ待て、姫、ギンは「あなたには話してない!」・・・」


ギワンが横から助けてくれようとしたのか口を挟むが一蹴される。一蹴されたギワンは呆れたように首を振っているが、目で自分でどうにかしろと伝えてくる。


「騙すって何の事だ?そもそも話したのはこれが初めてだろ?」

「テストの時どうして手を抜いたのよ!」


怒鳴りつけてくる姫の言葉で何でこいつがこんなに怒っているのかようやく理解した。俺の許可なく勝手にテストした時の事を言ってるんだろう。


「俺の許可なく勝手にテストしといてよくいうぜ。あの後は少し本気を出そうとしたけど、勝手に俺の実力に見切りをつけたのはお前じゃねえか」


そう、勝手に見切りをつけて去っていたからこっちは不完全燃焼で仕方無かった。幸いドミルが相手してくれたから良かったけど。だからこいつから一言でも文句を言われる筋合いはないはずだ。


「な!・・・生意気ね!・・・でもまあいいわ!そこのとの闘い見たわ。顔は好みじゃないけど、実力はあるから合格よ。喜びなさい、特別に私のクランに入れてあげるわ」


マジで、なんだこいつ?何でこんな偉そうなんだよ


「入る訳ねえだろ!何様だよ、お前!そもそも俺は一人で気ままにやってくんだよ!『姫』プレイしてる所なんて入る訳ねえだろ」


俺が言い放つと絶句するカラミティ、俺の隣ではギワンが下を向いて肩を震わせている。こいつ絶対笑ってる。


『姫』プレイしているぐらいだから、今まで俺みたいな断り方をされた事がないのか絶句して信じられないって顔をしているカラミティだが、すぐに俺を睨みつけると、


「ふん!ホントに生意気ね・・・でもあなたは私の言う通りにするのよ。分かったわね」


俺を真っすぐ見つめてカラミティがそう言ってきた途端、体に悪寒が走る。目の焦点が合ってないのか、目の前にいるカラミティの顔が霞んでよく見えなくなる。風邪の引き始めみたいな倦怠感も出てくる。


「だあああ!」


ボーっとした頭を大声をあげて意識をはっきりさせる。そして頭や体を振って体に纏わりついた嫌な感じを振り払う。いきなり大声をあげたもんだから、隣のギワンがおかしな奴でも見るような目つきになっているが、目の前のカラミティは、


「なっ!・・・う、嘘」


ものすごく驚いた表情で俺を見ているので、何となく察してしまった。


「お前、今俺に何か仕掛けただろ?何しようとした?スキルか?」


問い詰めると更に驚いた表情になるカラミティ。その表情だけで十分だ。


「な、な、な、何言ってるのよ!馬鹿じゃないの!EランクなんかにAランクの私が何かする訳ないでしょ。もういいわ!折角私のクランに入れてあげようと思ったけど、後から土下座してももう入れてあげないから!ふん!」


そう言って足早に訓練場からイケメン軍団を引き連れて立ち去ってしまった。もうその態度で俺の指摘が正しいと証明しているんだけど、これはどうしたらいいんだろうか。困ってしまい、隣のギワンを見ると、こいつも困った顔をしていた。




「で、何で姫にあんな事言ったんだ?」


ギワンとギルドに戻り、俺が取り出した葡萄を机で二人で食べていると、ギワンから聞かれると思っていたさっきの件を聞かれる。少し離れた所から色んな奴等が俺らに注目してるのは何でだ?男二人、そのうち一人は大男の極悪人顔が葡萄を摘まんでる絵面が汚いからか。


「いや、あいつに見つめられた途端、体がおかしくなった。知識でしか知らないが何か状態異常系の魔法かスキルを俺にかけてきたと思う。なあ、ギワン、『魅了』系の魔法かスキルってあるのか?」

「ああ、まんま『魅了』ってレアスキルがあるが、姫は『水魔法』の上級が使えるんだ。レアスキル二つ持ちなんて考えられないぞ」


驚いているお前の目の前にそのレアスキル二つ持ちがいるんだけどな。


「驚いているけど可能性はゼロじゃないんだろ。ならそれで合ってるだろ。姫の噂を聞けば合ってると思うけどな。Cランク上がるまで苦楽を共にしたパーティからイケメンだけを引き抜きって、どう考えてもおかしいだろ」


そう言うと、ギワンは困った顔で考え込んでしまった。


「いやあ、でもあいつ顔だけは誰よりも美人だし、大体ここの男は合否関係なく姫のテスト受けたってのがある意味ステータスになってるから。不思議に思わなかった」


クランリーダーのギワンでこの調子って都のギルドはホントに大丈夫か心配になってくるな。


「まあ、俺も100%確信持ってる訳じゃないけどな。それでもそういう可能性は頭に入れておいた方がいいぞ。『常に最悪を想定して動け』。誰の言葉か分かるよな」


ドアールのギルマスの言葉だ。俺も訓練中に事ある毎に言われていた。『身体強化』を指導してもらったギワンなら当然聞いているはずだと思い聞いてみると、大きく頷く。


「ああ、そうだったな。Aランクになってクランも立ち上げたから慢心もあったみたいだ。すっかり忘れてたぜ。ありがとよ、思い出させてくれて」

「じゃあ、お礼として俺の知り合いがお前んとこの派閥に所属したみたいだから、気にしておいてくれ。特別扱いしろって言ってるんじゃないからな。困ってそうだったらお前じゃなくてもクランメンバーから、それとなく相談に乗ってくれるだけでいい」

「まあ、それぐらいなら普段からやってるから別に構わねえが、ホントにそんな事でいいのか?お前が言った姫の情報は間違っていたとしてもかなり有用だぞ。なんならその知り合い特別にクラン戦に参加させてやってもいいんだぜ」


ギワンの申し出は流石にゴドル達とトア達に内緒で約束していい物じゃない。それに特別扱いは仲間内に亀裂を入れる原因だ。


「いや、逆にそこまでされると困る。特別扱いはしなくてもいい、まあドミルが仲良くなっているから大丈夫だとは思うが、念の為だ。それじゃ、俺は依頼受けてくるからな」


そう言ってギワンとの会話を切り上げて俺は依頼を受けに行った。


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