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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
4章 水都のEランク冒険者
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67話 水都でのBBQ

「美味ええ。これがジェネラル肉か、マジで美味いなこれ」

「やっば、こんな美味い肉食えるなんてギンと仲良くしててよかったわー」

「こんな美味しいお肉食べてるなんてお貴族様にでもなった気分ね」

「もしジェネラル倒したら肉は全部引き取ってやるわよ」


BBQ開始の乾杯の合図と共に速攻で肉を焼き始めその美味しさに全員が喜んでいる。やっぱりBBQは楽しい。


最初はみんな肉に夢中だったが、しばらくすると大分お腹も落ち着いたのか食べるペースも落ち着き各自会話を楽しんでいる。リマとクオンは『戦乙女』の連中と楽しそうにしているから大丈夫だろう。『ウェイブ』の連中にも嫌われたくないなら、あんまり話しかけるなと注意しているし、今の所問題ないようだ。そして、その『ウェイブ』の連中は今、ドミルと楽しそうに話をしている。そう、ドミルである。トア達『戦乙女』の家に行く前に広場で少し野菜を買っている所に偶然会って、今日は暇だというから都での師匠の話が聞きたくて俺が連れてきた。連れてきたのだが、Bランクと話をする機会なんてないらしい『ウェイブ』と『戦乙女』から大人気で師匠の話を聞く隙はなかった。


そうして、何か俺だけ蚊帳の外になりながらも一人で肉を焼いて食っていると、セシルとティナがこっちにやってきた。ドミルがいるが自分の家と言う事もあり今日は兜を被っていない。


「肉焼けてるぞ、食うか?」

「貰うわ」


俺が育てていた肉を二人に譲ってやると、セシルがティナの分も皿によそっている。俺の姉貴は俺に肉持ってこいって命令するだけだから同じ姉でもえらい違いだ。そうして再び肉を焼き始めると、


「ギンは変な奴だね。ただでジェネラルの肉食べさせてくれたり、ドミルみたいな大物連れてくるし」


セシルが優しい声色で話しかけてくる。ドアールでも師匠を筆頭に色んな奴に変な奴扱いされたけど、そこまでおかしい事はしてないと思うけど。それよりも、


「ドミルが大物ってどういう意味だ?あいつ有名人なのか?」


尋ねると、呆れたように姉妹が俺を見てくる。


「呆れた、知らないで連れてきたの?ドミルは『ガーデン』の実質ナンバー3のパーティ『大戦槌』のリーダーよ。二つ名は『打壊』。野盗団が立て籠もった砦の入り口を一人でハンマーで打ち壊した事からそう命名されたわ」

「いや、『ガーデン』所属ってのは知ってたぞ。ただ『ガーデン』ナンバー3ってのと二つ名については知らなかったな。二つ名って命名されるもんなのか?どこから?国か?」

「ギルドよ。ギルド。何でこんな事も知らないのよ」


またまた呆れられる。俺って知ってるようで色んな事を知らないって都に来て思い知らされるな。


「じゃあ、『三兄弟』ってのも命名された二つ名なのか?」

「違うわよ『三兄弟』は唯の通り名。ギンの『採取野郎』と同じ扱い。二つ名は貢献度が高いと判断された人にギルドから正式に命名されるものだから、名誉ある称号よ。国から表彰される事もあるわ」


へえ~。二つ名って命名されると目立ちそうだな。無いとは思うけどそうならないように注意だけはしとくか。


「それで、前からギンに聞きたかったんだけど、あなたって男に興味あるの?」


いきなりとんでもない質問をセシルがしてきやがった。前振りなく変な事聞かれるもんだから口に含んだビール吹き出してしまった。


「そんな訳ないだろ。そっちの趣味はねえよ。身に覚えのない噂を流されてもあんまり気にしないけど流石にその噂が流れたら、流した奴特定してボコボコにするからな」

「そうなの?その割には・・・自信過剰に聞こえるかもだけど私達の顔見ても何も誘ってこないし、あのリマとクオンと仲良いのに手を出してる様子もない。『ウェイブ』の連中に誘われても『カモメ亭』にも行ってないから、そりゃあソッチを疑われても仕方ないと思うけど?」


言われてみれば疑われても仕方がないか?ただこっちは未だにエレナに振られた事を引きずっているから他に行く気はまだない。我ながら情けないがまだ立ち直ってないし、『猫宿』と同じ売春宿の『カモメ亭』もこんな気持ちで行ける訳がない。


「うるせえ。こっちはまだ失恋から立ち直ってないんだよ」


自棄になってセシルに文句を言うと、それを聞いたティナと二人でニヤリと怪しい笑顔に変わる。すごい嫌な予感しかしない。




「そうか。プロに本気になったか~」

「ガハハハッ、流石にそれは世間知らずだぜ。プロに本気になるな!鉄則だ」

「でもエレナって人はそう簡単に指名受けてくれないって有名だったよ」

「まさか『猫宿』エレナとは・・・セシルとティナみたいなチンチクリンに反応しないのも納得だね」


バシッ!ボゴォ!


トアがセシルとティナからヤバそうな音のする突っ込みを受けたけど大丈夫だろうか。そしてその後俺を睨まないで下さい。俺は何も言ってません。嫌だったけど、正直に話したじゃないか。


俺がセシルとティナから根ほり葉ほり聞かれていると、楽しそうな雰囲気を察したリマ達も混ざって色々聞いてくるから、エレナとの事をほとんど聞き出されてしまった。




「それならギンは色々溜まってるだろ。何なら私が相手してあげようか?」


「「「「な!!」」」」


ジェミーが爆弾発言をすると、周りから驚きの声が上がる。言われた俺もかなり驚いた。けど、すぐに俺を励ますための冗談だと思い俺もその冗談に悪乗りする。


「マジで?それならどうしてもってなったらその時は頼む。ハハハ」


・・・・・・・・


あれ?何で静まる?これってセクハラになるのか?・・・でもこれぐらいの冗談はゴドル達もトア達に普段から言ってるよな?トア達も冗談だって分かってるから軽くあしらってるけど・・・・俺が言うと何でこんな空気になるんだ?


「そ、そうかい、それなら今から行くか!」


俺がそう答えるとジェミーの表情が明るくなり俺の肩に腕を回してそのままどこかに引っ張っていこうとする。男と女でも筋肉ムキムキのジェミーに地力では敵うはずがなく、ずるずる引きずられる。


「ちょっと、待て!冗談だ!冗談!」


慌てて声を掛けると組んでいた腕を肩から外して残念そうな表情になる。


「なんだ、冗談なのか?ギンでもそういう冗談言うんだねえ。私は本気でも良かったんだけど?」


あぶねえ。この世界の貞操観念が日本より低いの忘れてたわ。こういう冗談は今後言わないようにしておこう。ジェミーと二人きりだったら、最後までいってたかもしれん。


焦ったので喉が渇いたが、さすがにもうビールはあきたのでカバンからワインを取り出して自分で酌をして飲み始める。このワインは都の下水で見つけた隠し部屋にあり、今朝取ってきたものだ。リストには100年前のチルラト産のワインと出ていたのでドアールで見つけたものより20年若いが、俺には味の違いが良くわからん。元々持ってるワインと味の違いが良く分かんないなとか師匠なら違いが分かるのかなあとか考えていると、


「えへへ~、ギン、私にも頂戴」


考え込んでいると、目の前にグラスを差し出して笑顔のクオンが立っていた。そう言えば前にあげたワイン飲みすぎて二日酔いになったってリマから聞いたな。それだけ気に入ったのか。まあ、今朝300本も見つけてきたから出し惜しみするつもりは無いので、そのままグラスに注いでやる。


「あんまり飲みすぎるなよ」


一応注意しておくが、こいつももう成人だから酔い潰れてもサラみたいに面倒は見てやらん。すぐに俺とクオンがワインを飲んでいる事に気付かれたので、人数分のワインをだしてやりながら、


「これは俺の師匠の秘蔵酒だからな、味わって飲めよ。ちなみに100年前のチルラト産のワインだ」


ホントは今日見つけたものだけど、全部師匠の酒って事にしておこう。


「ガハハハッ、これは美味いな。まあ100年前のチルラト産は本当かどうか置いておいて、さすがにガフの秘蔵酒じゃな」


俺の言葉を信じてないドミルだけど、これが本物だと知ったらどんなリアクションするんだろ。今は証明する方法はないから、みんなも信じてないけどホントなんだよな。師匠なんかこれ見たらもう少し味わって飲めとか言って怒り出しそうだ。


「お主はホントに変わってるのう。普通ジェネラルの肉なんてタダ同然で振舞わんぞ。しかもガフの秘蔵酒、こんな美味い酒を惜しげもなく出しおってから」


ワインをラッパで飲みながら呆れたように、また俺を変な奴扱いしてくるドミル。俺にはワインをラッパで飲んでる奴の方がおかしいと思うぞ。


「そうか?でも、みんなで美味い物を飲んだり食ったりすれば楽しいだろ」

「まあ、そうじゃな。普段はパーティリーダーとクランの目があるから、今日は久しぶりにドミル個人として楽しめたわい。礼を言うぞ、ギン」


ドミルはニカッと笑いながら礼を言ってくるが、その言葉は普段はあんまり落ち着いて飲み食いできるような立場ではないと言ってるも同然だ。


「なら、またBBQやる時は声を掛けるよ。その代わりBランクなんだから、参加するなら変わった肉とか食い物持って来てくれよ」


俺の言葉にドミルは少し驚いた顔をした後、いつもの調子で笑い出した。


「ガハハハッ、そうか、そうか。分かった、次参加する時は依頼で倒した魔物肉を持ってきてやろう。まさかまた誘われるとは思ってなかったわい。いや、ギン、お主分かっておらんだろう。3回もワシを誘って飯を食べるって事がどういう意味か」

「どういう事?」


ただ、俺が楽しかったし、『ウェイブ』も『戦乙女』の連中もドミルと話が弾んでいたようだから誘っただけだ、意味なんて特にない。


「それはな、お前が周りから『ガーデン』派閥になったと認識されるって事じゃ。お主はあんまりそう言うの好きじゃないと言っておったからな。『ウェイブ』と『戦乙女』はDランクじゃからな、2回でもそう認識されるぞ、どうする?」


め、面倒くせえ。何だよ派閥って、都だと誰かと飯食うのも色々考えないといけないのか・・・これならドアールの方がよっぽど過ごしやすいな。でもドミルは訓練付き合ってくれるし、師匠の知り合いだから色々話を聞きたいんだよな。まあ、派閥なんて勝手に考えてくれればいいか、俺は今まで通り気に入った奴は飯や訓練に誘う、臨時でパーティ組んだりするでいいか。


「派閥については俺は知らん、興味もない。1年経てば俺はドアールに帰るから、そういうのは好きな奴が勝手に考えてればいい。俺は今まで通り気に入った奴を誘う」

「ガハハハッ、やっぱり弟子じゃな。ガフ達と同じ事を言っておる。まあ、『ウェイブ』と『戦乙女』はさっき正式に話があったから、今日からワシ等『ガーデン』の派閥じゃ、ガハハハッ」


この野郎。わざと黙って俺がどう答えるか試しやがったな。でもまあ、ゴドル達が決めたなら俺は何も言う権利はないからな。それよりも今後も気にせずこの連中を誘えるのは良かった。




「じゃあ、今日はありがと。鉄板と金網は悪いけど明日ギルドまで頼むな」


もうそろそろ良い時間になってきたので今日はお開きとなった。ギルドから借りている金網と鉄板は明日トア達が持って行ってくれると言うので、お礼の代わりに余ったワインも飲んでいいと言うと喜ばれた。


「じゃあ、俺はこいつら送っていくから、気をつけてな」


まだ明るいが酒を飲んで軽く酔っているリマとクオンがトラブルに巻き込まれるといけないので俺が送って行く、途中でゴドル達とドミルと別れる。何かヒソヒソ話していたが今日はドミルの奢りで『カモメ亭』に行くらしい。



「ギンは『カモメ亭』行かないの?」


ゴドル達に送っていた冷たい目線を俺にも向けながらクオンが聞いてくる。


「まだ、ああいう店に行く気になれないって話しただろ?」

「・・・『まだ』ね、って事はいつか行く事もあるって事だよね」

「まあ、そうなるな。それがいつになるか分かんねえけど」


そう答えると、何か納得した様子でリマとヒソヒソ話を始める。今はそう言う気分にならないだけで、俺だって男だから気分になったら、そういう店に行くよ。軽く軽蔑されたかなとか思いながらも、こいつらの家まで無事送り届けた。そうして家に着いたら何故か二人から腕を掴まれて中に引っ張り込まれる。


「何だ?ああ、ワインが欲しいのか?いいぞ、2本ぐらい置いてくぞ」


そう言って机の上にワインを2本置いていくが、二人の様子がおかしい下を向いてモジモジしている。自分の家ならトイレ行けばいいのに・・・俺がいるから行けないのか?でもこの前ここでジェネラルの肉食べた時は普通に行ってたような。


「あ、あの、あのね、ギン、そ、その、もし溜まってるなら、私達が相手しようか?」



・・・・何ですと!!相手ってそっちの事だよな。しかも『達』ってどういう事だよ。可愛い二人からそんな事を言われると、さっきの言葉を撤回するかのようにスケベ心が大きくなってくるが。


「・・・いや、一人で処理してるから大丈夫だ」


その誘いを断る。何故か・・・そりゃあ、誘ってくる二人の膝が震えてるからだ。あの時の事を思い出して恐いのだろう。それでも我慢して俺の相手をしてこようと提案してくる理由も分かる。


「遠慮しなくてもいいよ。ギンには命を助けて貰ったからそのお礼だと思って」


・・・やっぱり、こいつらがここまで言ってくれる理由は俺が思い当たった理由と同じだった。あの時こいつらをゴブリンから助けだしたのは、これを期待していたからではない。むしろ、そういう事を仕事にする未来しかなかった、こいつらの選択肢を広げる為に金貨をあげたのだ。それなのに人の気もしらないで。


ゴン!ゴン!


取り合えずムカついたから二人の頭にゲンコツを落としておく。落とされた2人は少し涙目になりながらも何故ゲンコツを落とされたか分からず涙目でこっちを見ている。


「お前等を助けた事はもう気にしなくていい。一人で都に出てきて不安だった俺の相談相手になってくれたり、色々情報を教えて貰ったからそれで十分だ。あと、何でお前らに金貨を渡したのかその意味を良く考えろ」


それだけ言うと、呆然とする二人を置いて俺はその場を後にした。少しムカついて興奮したので帰りに銭湯に寄って気持ちを落ち着かせてから帰った。



断ったの勿体なかったなあ。

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