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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
第3章 水の国境都市のFランク冒険者
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55話 三兄弟

(師匠!どうしたんですか?返事してください!師匠!)


いきなり『念話』が切れたので慌てて呼びかけるが全く反応がない。そもそもさっきの返事はおかしすぎる。師匠は謝る時は「悪い」か「すまねえ」しか言わないのに「ごめん」なんて普段言わない謝り方をした。師匠に、または仲間に何か緊急の案件があったんだろうか。


(ターニャ!何があった!返事しろ!)


師匠が反応しないので、ターニャにも『念話』で呼びかけるがこちらも反応がない。嫌な予感がする。


「クソッ!」


イスを弾き飛ばすように席を立ちあがり、受付に向かう。


「おい?どうした?ギン?」


俺の様子を不思議に思ったカールが声をかけるが、今はそれどころじゃない。一番近くの受付職員の場所に向かい尋ねる。


「師匠達、『カークスの底』は今どんな依頼受けてる!」

「ええっと。光の教国に向かう東の街道に最近野盗が出たらしいので、そいつらのアジトの場所の発見で、可能であれば討伐の依頼ですね」


くそっ。嫌な予感がどんどん大きくなっていく。


「おい!!!お前らの中で『カークスの底』を最近見た奴はいるか?東の街道に野盗の調査に向かったみたいだ。誰か見てないか!」


ギルドに響き渡る声で尋ねるが、みんな顔を見合わせたり、首を振ったりして反応が宜しくない。仕方ない範囲最大の『探索』でしらみつぶしに探そうと思ってギルドから出て行こうとしたら、


「あの~、カークスの底なら、二つ先の村で一昨日見ました。『明日から北の方探してみるか』って宿の食堂で話しているのを聞きました」


恐る恐る手を挙げて教えてくれたのは、確かこの前Fランクになった奴らだ。周りの仲間もうんうん頷いている。


「そうか、ありがとう!」


駆け出しながらそいつらに情報料を投げ、ギルドを飛び出す。俺は『身体強化』スキルも使いダッシュで東の街道を駆ける。一つ目の村を過ぎた所で街道から北に外れて森に入っていく。魔物と遭遇して対処するのも面倒なので、久しぶりに影に潜り移動を始める。そうするとすぐに、『探索』に反応があった。


良かった。見つかった。師匠達全員無事だ。でも周りに10個死体があるな。野盗のかな?戦闘中で忙しかったから返事してくれなかったんだな、もしかしたら誰か大けがしてるのかも・・・急ぐか。


『探索』で反応が5つあったので少しホッとしつつも、心配なので足を緩めずに師匠達の元に向かうと反応があった場所は洞窟だった。野盗のアジトとしては普通だななんて思いながら師匠達の元に向かう。途中いくつか分岐があるが『探索』で迷う事はない。


「師匠。何で話しかけてるのに無視するんですか?ターニャも心・・配・・・・・」


角を曲がれば師匠達がいるので文句を言いながら角を曲がると、悪人顔がこっちを見ていた。ただその悪人顔は俺の知ってる二人じゃなかった、イケメンもいない、美女もいない。全員が俺の知らない悪人顔だった。


「ああ?誰だてめえ?」


一番体格のいい悪人顔が俺に怒鳴りつけながら武器を構えて警戒する。周りの4人も何も言わないが武器を構えて戦闘準備をしたのが見えた。


「ん?お前『最長』か?カシラ!こいつあれですよ、こいつらが可愛がってた後輩ですよ」


どこかで見覚えがある悪人顔が体格のいい恐らくカシラだと思われる奴に自分達の後ろを指差しながら話しかける。そいつが指を差したので、俺もそいつらの背後に目線をやると、敵の前だと言うのに呆然としてしまった。





そこには俺が良く知っている悪人顔が転がっていた、そう、転がっていたと表現するのが正しいんだろう。光の無い目でこっちを見ている師匠は首から下が無かった。いや近くに師匠の首から下があるので、こいつらに斬り落とされたんだろう。


—————ズァァァァ


それに気付いた瞬間影が洞窟内に広がり目の前にいる野盗達を拘束する。更に影を洞窟全体に広げる、さっき通り過ぎた分岐の方までも影が伸び、野盗のアジト全てに影が広がった。『探索』で分かっていたがやっぱり5つの黒いオブジェと化した目の前の5人以外生存者はいない。ただ離れた所に死体があったので、『影収納』経由で俺の前に出すと頭の一部が陥没したケインさんと上半身と下半身が別れたターニャだった。





それを見た瞬間、俺は吐いた。


「おえええええええ。おえ、ゴホ、ゴホ。はぁ、はぁ、何で、何で」


吐きながら泣きながら、鼻水を垂らしながら、俺は捕縛した奴等を避けて奥へ歩いて行く。そこに横たわる死体を影から解放するとそこには首を落とされた8つの死体があった。そのうちの3つは師匠、ギースさん、エステラさんだ。3人とも装備を剝がされて首を落とされている。師匠の腹に大きな傷があった、これが致命傷だったんだろう。ギースさんは刺し傷だらけだった。エステラさんもどれが致命傷か分からなかったが、皮膚がおかしな色に変色していたので恐らく毒で死んだって事は分かった。


「み・・・みんな・・・・何で・・・・し、師匠・・・・返事して下さい。俺をパーティに入れてくれるって約束したじゃないですか。・・・・くそっ!くそっ!あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」





どのぐらい時間が経っただろう。ゆっくりと立ち上がる。体が重い。


「質問に答えろ。お前らが師匠達を殺したのか?」


全員の目と耳だけ捕縛を解除して目の前の悪人顔達に質問する。そうしてカシラって言われていた奴だけ口も捕縛を解除すると、


「ぷは~。おら!!クソガキ!てめえこれどうなっ・・・・て」


俺の質問に答えてくれないので、ナイフを横薙ぎに振るい、師匠と同じように腹を斬り裂いてやる。


「ぎゃああああああ!!痛え!クソ!痛えええ!・・・・」


斬りつけると騒ぎだしてうるさいので口をまた捕縛して黙らせる。腹からは地面に血と内臓がボタボタと垂れ落ちる。このまま放置すればすぐに死ぬだろう、まあどうでもいいか、次。


一番近くの奴の口の捕縛を解除する。


「ひいいいい!助けてくれ!頼む!・・・・グハッ」


こいつも質問に答えてくれないので胸にナイフを突き立てる。呼吸が苦しそうだが、これもどうでもいい。


おかしいな、言葉は通じてるはずだけど、質問に答えてくれない。残り3人だけど誰か質問に答えてくれるといいんだが。その前にカシラってのが死んだな。首までの捕縛を解除してと、


ザシュッ!!!


死んだカシラの首を影魔法で切り飛ばす。残りの3人はいきなりカシラの首が飛んだ事に驚いて目を見開くと、すぐに俺に畏怖の目を向けてくる。


もう面倒くさいから3人全員話できるようにして話を聞こう。


「分かった!全部話す!話すから命だ・・け」


口の捕縛を解除したら一人がまくし立ててくるが、俺が聞きたいのは命乞いじゃないので、影で首を斬り飛ばすと、返り血を浴びて体中血塗れになった。それを見た残り2人は更に怯えて話をしようとしない。しばらく待ってみたが、話ださない二人も首を刎ねようかと思った頃にようやく俺の質問に答えてくれた。


「こ、こいつらを殺したのは俺達だ。調査でここに来るって知ってたから待ち伏せして殺した」


やっぱりそうだよな。こんな奴等なんかに不意をつかれないと師匠達が負けるはずがねえ・・・・あれ?


「何で師匠達がここにくるって知ってたんだ?」

「ギ・・・ギルド職員に仲間がいる。そいつから教えてもらった」

「おい!!てめえ仲間を売るのか!!それ以上話すんじゃねえぞ!」


今まで黙っていた奴が素直に話し始めた奴に脅しをかけてくる。邪魔だな。


「で?そいつの名前は?」


五月蠅くて邪魔な奴を影で黙らせて、情報を討った奴の名前を尋ねる。


「・・・・・ポ、ポーラスって奴だ」


しばらくの沈黙の後、あんまり聞きたくない名前が出てきた。まあ、ポーラスなら野盗に情報売ってても不思議じゃない。


冒険者じゃなくて、ギルド職員が野盗の仲間って性質が悪いな。しかもポーラスか・・・あいつの事だから証拠なんか残してないかもしれないな。


「証拠はあるのか?」

「ああ、俺らの顔見てくれよ。〇の中に横に3本線のマークが入った焼き印が入ってるだろ。それが俺らの仲間のマークだ。ポーラスは俺らの仲間だってバレないように顔じゃなくて右腕に印がある」


転がっている野盗の顔をみると確かに頬とかに同じマークが入っている。


「それにほら、お前と前に深緑草の依頼で会ったじゃねえか。あれはポーラスが考えた小遣い稼ぎだったんだよ。な?これであいつが仲間だって分かるだろ?」


言われてみればこいつはさっきから見覚えがあると思っていたけど、あん時の一日で深緑草集めろとか無茶苦茶言ってた依頼人か。ポーラスとグルだろうって話だから腕にマークがあるってのもホントだろうな。


「そ、それによ、お前が殺した最初と2番目の奴、あと、俺の後ろの奴3人は都の元冒険者だ『三兄弟』って通り名のBランクパーティだったけど、今じゃ賞金首だ。こいつらの首持っていけば金になるぜ」


そうか、こんな奴等でも元Bランクパーティか。師匠達より弱そうだけどな。


「こ、これで俺の知ってる事は全部話したぞ。だ、だからな、衛兵に渡すとき俺が正直に話したって言ってくれよ」


・・・・こいつは何を言ってるんだ?何で衛兵に引き渡されると思ってんだ?全部話したから許されるとでも思ってんのかな?そもそも助けてやるなんて一言も言ってない。


「これで全部だな?じゃあもういい、死んで師匠達に謝ってこい」

「な?おい!ふざ・・・・」


最後の野盗の首が落ちると、辺りは静かになる。初めて人を殺したが罪悪感は全く感じない。魔物を倒したぐらいにしか思わないから俺はもうこっちの世界に染まってしまったようだ。俺は師匠達の遺体の近くに座り、しばらく動けなかったが、『ギルドへの報告』と『ポーラスを殺す』の二つのやらなきゃいけない事を思い出して、ノロノロと立ち上がる。


—————ズ


影を洞窟全てに広げ、野盗の持ち物を全て『影収納』に入れる。師匠達の遺体も野盗達の死体も全て収納する。野盗の首から下はいらないので、装備品だけ回収して洞窟の外に体は捨てた。その後はどうやって街まで戻ったかはっきり覚えていない。途中森の中で魔物に襲われた気がした、街道や街の入り口で誰かに何か言われた気がした・・・・はっきり思い出せない。




ギィ


勢いよく開けるとギルド職員から怒られるギルドへの扉をゆっくりと開けて中に入る。はっきりした時刻は分からないがそこそこ騒いでいるので、夕方ごろだと思う。ギルドに入ると受付に向かって歩いていくが、足が重い。いまから報告しなくちゃいけないけど、したくない。報告を口にしてしまえば俺は完全に認めた事になる。言いたくない。けどきちんと報告してちゃんと仇を取らないと。頭の中で葛藤しながら受付に向かってノロノロ歩く。


「・・・おい」

「あれ見ろ」

「『最長』の奴血塗れじゃねえか」


俺の様子に気付いた奴等が騒ぐのをやめてヒソヒソ話を始めるが、気にせずミーサさんの受付の列に並ぶ。ミーサさんの受付には5人ぐらい並んでいるが、その後ろで葛藤しながらただ順番が回ってくるのを待っている。気付くとさっきまで騒がしかったギルドが静まりかえって俺に視線が集まっていた。


「ギンさん!!!!」


ギルドの異様な雰囲気に気付いたミーサさんが異常な格好をしている俺に気付いて叫び声をあげると、俺の前に並んでいた奴等も振り返って俺の様子に気付くと列を離れていった。たった今、順番が回ってきた奴も席を立ち離れようとするので、


「いいのか?悪いな」

「あ、ああ」


順番を譲ってくれた奴にお礼を言い、イスに腰かける。


「ギンさん!何があったんですか!その前にケガを!誰か治療を・・・」

「ミーサさん、大丈夫です。これは返り血なんで俺はケガしてません」


治療をしようとするミーサさんに説明するとすぐに『洗浄』をかけられた。


「返り血ってのは本当みたいですね。それでどうしたんですか?確か『カークスの底』を追っていきました・・・よね」


ミーサさんも何か悪い予感がしたのか最後言葉が詰まった。今から覚悟を決めてきちんと報告する。くそ、唇が震える。


「ミーサさん。し、師匠達、カ、カークスの・・・底は」


言いたくない。言うと自分の中で認めて何かが壊れそうだ。だが、仇を取る為俺は大きく息を吸ってからミーサさんに告げる。




「全滅しました」



「・・・・えっ?・・・・は?」


ミーサさんは俺の言葉が信じられないのか驚いて目を丸くしている。


「おい、今『最長』の奴なんて言った。『カークスの底』が全滅って聞こえたぞ。俺の聞き間違いだよな?」

「いや、俺にもそう聞こえた。でも嘘だろ。ギース達だぜ。多分『最長』の冗談だろ」

「いや、これはガフの性質の悪いいたずらだ、あいつ前もミーサにいたずらしてこっぴどく怒られてたじゃねえか」


俺の報告が聞こえた連中が騒ぎ出す。


「いやいや、嘘ですよね?ガフさんたちに限って全滅なんて・・・・ほ、本当なんですね」


ミーサさんは最初信じてくれなかったが、俺の様子で嘘ではない事が分かったみたいだ。俺はカバンから師匠達の遺体を取り出し、ミーサさんにお願いする


「ミーサさん、金ならいくらでも払いますから丁重に埋葬してあげて下さい」


師匠達の遺体を見たミーサさんはその場に崩れおちた。


「そ、そんな・・・こんな・・・こんな事・・・」


崩れ落ちて呆然と師匠達の遺体を見ながらブツブツ言っている。


「まじかよ。ホントにやられてるぞ。あいつらに勝てる奴なんてそうそういないと思ってたんだが」

「嘘だろ・・・・ケイン、ギース、ガフはCランク並みの強さだって言われてんだぞ」

「しかも全滅って、相手は誰だ。俺らじゃ絶対勝てねえぞ『大狼の牙』でもきついんじゃねえか」


師匠達の遺体を見た他の奴等も驚いている。騒いでいる声が聞こえたのか、今まで呆然としていたミーサさんが立ち上がって、他の職員に遺体を丁重に埋葬するように指示を出すと、俺に向き直る。ミーサさんも泣いているが、既に顔はギルド職員の顔になっている。


「ギンさん。『カークスの底』の相手は知っていますか?知っている事は全て教えて下さい。知らないならギースさん達の遺体を見つけた場所だけでもいいです」

「師匠達の相手は多分依頼で探していた野盗で『三兄弟』って奴等含む10人でした。俺が着いた時には野盗5人と師匠達が死んでいて、残り5人が装備を剥いでいました」

「『三兄弟』!ギンさん、今『三兄弟』って言いましたか?あの水都の貴族殺しですか?」


『三兄弟』って言葉に驚いているが俺には何がそんなに驚く事なのか分からない。


「その『三兄弟』かは知りませんが。全員顔に〇の中に三本線の焼き印がありました」

「合ってます。それです、それ『三兄弟』のマークです。まさか野盗になっていたなんて、ちょっとこの街では対処できませんね。都のギルドに応援を呼ばないと」

「おい、あの『三兄弟』かよ。だったらギース達でもきついな。あいつらBランクだったろ。それで数も多い・・・厳しいな」

「貴族殺しか。あいつら相手だとBランク2パーティかAランクパーティが来ねえと無理じゃねえか?・・・領主はまだ被害が少ないから兵は出してくれねえだろうな」

「しばらく東の街道は通らねえ方がいいな」


あいつらそんなにヤバい奴等だったのか?いや、不意打ちで師匠達を襲ったぐらいだ、そんな大した奴等じゃない。卑怯な手を使わなかったら師匠達は今ごろ、ここで俺の昇格を祝ってくれていたはずだ。それでいい感じになったら、ケインさんがエステラさんとターニャの腰に手を回してギルドから出ていくのを見てから俺も師匠達と『猫宿』に行って、次の日二日酔いの師匠に昇格を自慢すると調子に乗るなと小言を言われる。俺が昇格した以外はいつもの光景があったはずだ。それをあんな雑魚共に、


バギィ!!!!!!!


怒りの余り思い切り受付カウンターを殴りつけると、大きな音をたててカウンターが割れた。


「・・・え・・・えっと。すみません、ギンさん。備品は壊さないで下さい。・・・じゃなくて、その『三兄弟』の情報を知ってる限り教えて下さい。どこで見たのか?どっちに逃げたとかでも分かれば助かります」


何かミーサさんは勘違いをしている。あんな奴等を逃がす訳ないし、みんなが驚く程、強くもなかった。多分貴族を殺したから有名になっただけの雑魚だ。


「ミーサさん。あいつらの事は良く分からないです。ただ、その場にいた奴等は全員殺しました、首も持って来てます。あと戦利品も」


そう言って鞄をひっくり返しボトボト首と盗賊が集めていた宝なんかを落としていく。師匠達より扱いが雑になるのは当たり前だ。


「きゃああああああああ」


いきなり生首が10個も出てきたんだから大声をあげるミーサさんは悪くないな。俺が悪いな。ただ、ここからはスピード勝負だ。さっきから俺たちに注目して動きが無い事を視界の端に入れて確認はしている。


「ミーサさん。見て下さい。お前らもよく見てくれ。こいつら仲間になると〇に三本線の焼き印を入れるらしい。それでな、ここにこいつらの仲間いるんだよ。師匠達の情報を売った裏切者が。なあ」


慌てて机に出している書類を抱えて職員専用の奥に逃げて行こうとしている姿が目に映るが、遅い。カウンターを飛び越えるとダッシュで近づき逃げ出そうとしていた職員を蹴り飛ばすと、近くの壁まで吹っ飛んでいった。


「・・・い・・痛いですよ・・・いきなり何するんですか?ギンさん」


俺に蹴り飛ばされた細目のスキンヘッドが文句を言ってくる。俺はポーラスに近づいていき仰向けに倒れているポーラスの胸を踏みつける。


「ギンさん!何してるんですか!!職員への暴力は降格又は除名ですよ!!


すぐにミーサさんが注意してくるが周りの職員は話の流れについていけず呆然として俺を見ている。冒険者連中も何事かと俺の行動を見ているだけだ。


「ミーサさん。こいつだよ。こいつが師匠達の情報を売った裏切者・・・いや元々野盗だから裏切ったわけじゃないのか。取り合えず証拠を見せて貰うか」


ザシュ!


そう言って俺は『身体強化』を発動してポーラスの腕を斬り落とす。


「ぐあああああああああ!!痛い!!!!!痛い!!!!俺の手が!!!!!!!!」

「ギンさん!!!!何してるんですか!!!!やめて下さい!誰か!ギルマスを!!」

「『最長』の奴!やりやがった!」

「おい、あんな事して大丈夫かよ」

「あいつと仲良い奴らは・・まだ戻ってきてねえのか。誰か『鉄扇』、『大狼の牙』、『赤盾』を見つけて呼んでこい!」


辺りが騒然とする中、俺は切り落とした腕から服の切れ端をはぎ取るとご丁寧に包帯が巻いてあった。包帯を剥がすと出てきた焼き印を確認する。野盗がペラペラ話してくれたおかげで簡単に見つかった。その腕をミーサさんの足元に投げる。


「ミーサさん。見てくれ。今切り落としたポーラスの腕だ。マークついてるだろ」


「ヒッ!!・・・・確かにありますね。で、でも・・・・」


投げた腕に怯えるミーサさんだが、それが同じ焼き印だと気付くと悩みだす。


「よし、ギルド職員の確認がとれたな。これでいいだろ、じゃあ死ね。死んで師匠達に謝ってこい」


俺はミーサさんの返事を待たずに短剣を振りかぶる。ポーラスは怯えた目でこっちを見ているが、震えなのか痛みなのか動かないので、そのまま短剣を振り喉を狙う。








ガシッ!!








ポーラスに刃が届く前に俺の腕が止められた。


「・・・ギルマス・・・何故止める?」


俺は腕を止めた相手、ギルマスを確認すると疑問を口にする。


「ギン、大体の話は聞いた。でももうやめろ。お前の気持ちは分かるがこれ以上は庇いきれなくなる」

「別に庇ってくれなくてもいいさ。こいつのせいで師匠が、みんなが死んだんだ。仇を取らせろ」


ギルマスの腕を振り払おうとしたのだが振り払えない。こいつ『身体強化』使ってやがる。面倒くせえ。・・・・仕方ない・・・



『影』



使うか。


そう考えた瞬間顎に鋭い痛みが走り、目の前の風景がブレた。膝に力が入らず倒れこみながらギルマスを見ると、ちょうど掌底を打ち終わった格好をしていたので、俺は顎を打ち抜かれたのだと理解した。


「・・ク・・・・クソッ」


それだけ言うと俺は意識を失った。


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いいね・・・容赦ない死は冒険者によく似あう・・・
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