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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
第3章 水の国境都市のFランク冒険者
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49話 祝勝会

「結局どうすんだよ?」


地竜を討伐した後、街までの凱旋中に素材を何が欲しいか師匠達が話し合っている。俺含む4人の男は交代で担架に乗せられたエステラさんを運んでいる。街に戻れば教会で回復して貰えるらしいのでそこまでは痛みに耐えてもらうしかない。


「まだ装備も傷んでねえしな。特に欲しいもんねえな」

「そう言えば道具屋の爺さんが、ポーションの後払い利息無しにするから素材売ってくれって言ってましたよ」

「うん、言ってた」


俺の言葉に慌ててターニャも肯定してくるが、多分忘れていたんだろう。ケインさんから頬をつねられる。


「ターニャ!そういう事は先に言っとけって何回も言ってるだろ!どんだけ持ってきたんだ?」

「ごめんなさい。中級5に下級20だった」


頬をつねられても流石に悪いと思っているのか素直に謝り、前借したポーションの数を伝える。


「金5銀2枚か、ってことはそれだけの素材は買い戻しとかねえとな。ジジイなら爪と鱗と肉でいいか」

「それで誰か何か欲しいものあるか?」

「う~ん。特にないわね」

「まあ敢えて言えば肉だな」

「ガフはどうだ?牙から作った短剣とか」

「いや、この間買い換えたばかりだし、こいつで十分だ」

「頭の骨!家に飾りたい!」


「ギンはどうだ?欲しい物あったら俺らで買い戻すぞ。金は払ってもらうが」


「そうですね敢えて言えば俺もケインさんと同じでどんな味がするか気になるので肉が欲しいですけど、まあタン塩が上手くできればいいんでそこまでって感じですかね」


俺の答えに全員がピクリと反応する。そこから俺担当の師匠との交渉が始まった。


結局俺が調理したタン塩パーティを明後日、師匠の家で開催する事になった。師匠達は地竜の鱗と爪、肉を合わせて大金貨1枚分確保する事になったのだが、何故か俺が保管する事になった。竜の舌は上手く処理できるか分からないんだけどなあ。そうだ!ガジ達孤児院連中も誘ってやろう。エレナも呼ばないと怒りそうだな。



「シーラ」


師匠達とタン塩パーティの開催日がなし崩し的に決まったので師匠達から離れてシーラがいる「赤盾」パーティに近づいていく。後から知ったがシーラはドルと同じパーティだったみたいだ。パーティ名の「赤盾」はリーダーのドルが赤い盾を持っている事が由来らしい。


「ギン?どうしたの?」


最初の頃のツンツン具合が消えて普通に対応してくれる。地竜の粘液から庇った事で好感度が上がったみたいだ。


「明後日って暇か?ほら、BBQの約束しただろ、明後日師匠達とBBQする約束してな、時間があればこないかと」

「おいおい、『最長』ウチのメンバーに堂々とナンパか?しかもシーラって良い趣味してんな。顔は良いけど性格キツイぞ、絶対尻に敷かれるからやめとけ」


『赤盾』メンバーから揶揄われる。


「うるさい!別にナンパじゃないわよ。ご飯の約束した・・・・だけ?・・・・あれ?これって・・・・」

「おーい。シーラ変な勘違いすんなよ。約束したから誘いに来ただけだけだからな。お前が来なくても明後日はタン塩パーティやるからな」

「わかってる!別に勘違いなんてしてないわよ!明後日ね!分かったわ、場所は『カークスの底』の借りてる家ね、行くわよ!」

「おいおい、ギン。何か楽しそうな事やるのか、俺も参加させろよ」


シーラと話しているとリーダーのドルが絡んできた。まあ別に参加してもいいが、あんまり増えると出費が嵩むので、


「いいけど、外で肉焼いて酒飲んで楽しむパーティだから、それに合うような手土産持って来いよ」

「そういえば『最長』お前、前に孤児院で似たような事やったらしいじゃねえか。外で肉焼いて食うだけでもすごく美味いって噂になってるぞ。当然俺も手土産持って参加するからな」


孤児院のBBQについて知ってる奴も俺に絡んできて勝手に参加する事が決まったけどギースさんの許可取らなくていいんだろうか。結局シーラのパーティは全員参加になった。代わりに樽でビールを持ち込んで貰う事になったからいいだろう。





こうして街まで戻ると先に戻ったギルド職員が伝えたらしく街は喜びに溢れていた。戻った俺達は色々な人から感謝や労いの言葉をかけられながらギルドに向かっていく。俺と師匠だけは途中でその列から離れて訓練場に向かう。普段は数人は訓練している訓練場も戻ってきた奴等に話を聞きたいのか今日は誰もいなかった。誰もいないのは人払いする必要もなくなり好都合なので、訓練場に『尾無し』の死体を取り出しておく。いつもの買取カウンターではスペースが足りないのでここに出しておくように言われていたのだ。取り出した俺はすぐにギルドに向かいギルマスに報告すると、ギルマスが数人に指示を出し訓練場に向かっていく。


「よーし、お前ら、訓練場に『尾無し』の死体があるから気になる奴は見に行ってみろ。ただし勝手に触るなよ。もうギルドの物だから許可なく触ったり、まして素材盗んだ奴は処分するからな」


ギルマスの言葉に大半の連中が訓練場に足を運んでいく。残ったのは俺とギルマスと討伐に参加したパーティリーダーだけだった。


「ふう、お疲れだった。俺は今から領主様に報告に行かなきゃならん。ついでに今日ここでの飲み食いのお金は出して貰えないかお願いしてくる、駄目でもギルド持ちにするから、見に行った奴等が戻ってきたら始めてていいぞ」


「よっしゃああああああ」

「流石だぜギルマス」

「おーいビールと料理ガンガン持ってこい」


各リーダーが喜びの声を上げ、『尾無し』を見た連中が戻ってくると宴が始まった。






「しかし、お前、俺らと同じランクなのに地竜戦に参加するなんてすげえな」


同じ席に座るウィートがビールを飲みながら聞いてくる。一応俺からは地竜戦に参加した事は言いふらしてはいないが、他のパーティメンバーが話したらしく俺が参加していたのは知ってる奴は知ってるって感じだ。


「別に後ろでちょろちょろしてただけなんだけどな」

「それでも凄いわよ。普通は参加すらさせて貰えないわよ」

「そうだぜ、あんなでかい奴相手にちょろちょろ動けるだけでもすげえよ。俺なんてビビッて動けない自信があるぞ」


サーリーとカールからも褒められるが、参加させてもらえたのは師匠のおかげだし、ビビらなかったのは・・・・何でだろ?ヤバい気配はしたけど動けなくなるって事はなかったな。


バン!!


話をしていると、ギルドのドアが勢いよく開いた。あんまり勢いよく開けると壊れるからギルド職員に怒られるんだけど、誰だろうと思ったらギルマスだった。


「お前ら!領主様が見えられた!道を空けろ!」


ギルマスの声が響き渡るとさっきまで騒がしかったギルド内が静まりかえり歩きながら酒や飯を食っていた奴等も慌てて席につくか壁の方に寄っていく。そんな中ギルマスの後ろにかなり身なりのいいオッサンと見るからに執事ってお爺さん、兵士2人が歩いてギルド内に入ってくる。


「いやあ、楽しんでる所、悪いね。少しだけお邪魔するよ。今回の『尾無し』討伐ご苦労様。祖父の代から苦しめられてきたからね、ようやく祖父と父に報告できるよ。ホントならこのままここでどうやって討伐したかお酒飲みながら話を聞きたいんだけど」


そこまで言って領主はチラリと執事の方を見ると、執事が首をゆっくり振って駄目だと言っている。


「ね。こういう感じなんだよ。だから今日はお疲れ様でしたって言いに来ただけ。後日詳しく話を聞かせて貰うからその時はよろしく。ああ、あと今日この場の費用は私が持つからみんなじゃんじゃん飲み食いしてね。それじゃあ」


それだけ言うと領主はギルドから立ち去ってしまった。ホントに仕事が溜まっているんだろう。ただ、


「何と言うか貴族ってもっと偉そうだと思ってたけど、結構軽い感じなんだな」

「いや、ここの領主がおかしいだけだぞ。普通の貴族は俺らを人扱いしないからな」

「そうなのか、あの領主の態度がおかしいのか」

「まあ、あの領主も元々都育ちらしいが、爺さんの代に権力争いに負けてこの街に戻されてきたからな、腹の中で俺らの事どう思ってるのか」


ホントに貴族の評判悪いな。俺はエドワードしか知らないけど、あいつもそこまで悪くはなかったな。親父である領主の教育がいいのかもな。


そこからはまた宴が再開されたが、俺はウィート達と一緒の席で静かに話をしている。今日の主役の師匠達はみんなに囲まれて楽しそうに話をしているが、たまに討伐に参加したメンバーが俺に声を掛けてくるので、軽く相手をしていると、


「なんかギンはすごいな。さっきからDランクの人達が話しかけてくるじゃねえか。普通俺らみたいな新人にはあんなに簡単に話しかけて貰えないぞ、しかも対等に話してるし、お前ベテランみてえだな」

「まあ、一緒に戦った中だしな。対等っていうかタメ口なのは師匠の指示だ。冒険者が冒険者に気なんか使ってんじゃねえよって怒られたからな」

「そうだな。先輩冒険者に気を使ってたら、いつまで経ってもその先輩を追い越せないぞ。そういう訳だからギンはガフ達にも敬語はやめた方がいいけどな」


いきなり俺たちの話に割り込んできたのはギルマスだった。今回のレイドリーダーなので主役も主役の人が何故か俺達の所に来た。


「ギルマス、いいんですか?こっちに来て」


驚いたウィートがギルマスに確認すると、苦笑いしながら、


「何度も同じ話をさせられて堪らんからな。少し逃げてきた、あとギンと話がしたかった」


まあ、何度も同じ話するのも疲れるよなとか思ったら、俺に用事だと言うギルマス。俺?何で?何かしたっけ?


「今回の『尾無し』討伐お疲れ様。お前の動きは凄かった。とてもFランクには見えなったな。あんまり大きい声じゃ言えないが一部の他の奴より活躍してたぞ」

「またまた、お世辞言っても何も出ませんよ」


ギルマスがさっきから戦闘に参加していた連中に個別に話をしていたのは見えてたからな。俺もその流れで話に来たんだろう。


「お世辞じゃないんだけどな、それよりもギン、ピエラやエステラを助けた時のあの速さ、お前『身体強化』スキル持ってるのか?ああ、スキルの事だから答えたくなかったら答えなくていい」


『身体強化』?そんなスキルあるのか、名前の通りかなり便利そうだな。持ってないけど。


「いや、持ってないですよ」


そんなスキルは持っていないので正直にギルマスに答える。


「そうか、でもあの動きは私と同じスキルだと思ったんだけどな」


何かギルマスが気になる事を言ってくる。


「ギルマスって『身体強化』ってスキル持ってるんですか?」

「ああ、名前の通り身体能力全体を強化するスキルだ。このスキルがあったからAランクまで行けたって言っても過言ではないな」


おお。そこまで言うならかなり優良なスキルじゃん。俺も覚えたいけど簡単に教えてはくれないだろうな・・・・いや、金払えば教えて貰えるって言ってたな


「それってちゃんとした依頼なら教えて貰えます?」

「依頼なら教えるけど、ギルマスの俺が言うのはマズいが銀貨一枚捨てるだけだからやめた方がいいぞ」


ギルマスでもこう言うって事はあんまり期待しちゃ駄目なのかな。


「金に余裕がある時にお願いしますよ、それと一つ聞きたい事があるんですけどいいですか?」

「答えられるか分からないが何だ?」

「ギルマスと『尾無し』の関係についてです。ギルマスって『尾無し』と7年前からの因縁だと思ってましたけど、トドメの時の言い方だと15年前から恨みがあったみたいに聞こえたので」

「私がまだ新人だった頃に『尾無し』・・・その頃はまだ『国境の地竜』って呼ばれてたな・・・と遭遇してな。まだ新人で当然敵うはずもないから当時組んでた奴と二人で逃げたんだけど、まあ逃げられる訳がない。そこで私達はどちらかが生き残るように互いに別方向に逃げ出したんだ。その時、生き残った方が必ず仇を討つって約束してな。そうして運よく生き残った私はずっと仇を討つ事を考えて生きていた。そうして7年前、『尾無し』の尻尾を切る所までは追い詰めたが逃げられてしまい、更にその時のメンバーが大きなケガをしてな、そこでパーティは解散したのさ。私も引退してギルド職員になったがずっと『尾無し』を狙ってたのさ」


ギルマスと『尾無し』にそんな因縁があったなんて知らなかった。それなら今回討伐出来てさぞ嬉しいだろうな。そんなことを話した所で主役席の方からギルマスを探す声が聞こえる。ギルマスは苦笑いしながら主役席に戻っていった。



ギルマスが戻っていった後、再びウィート達と酒を飲みながら話をしている。


「そう言えば明後日お前ら時間あるか?」

「うん?ああ、依頼は受けてないからあるっちゃあるな、どうした?」

「なら明後日師匠達の家でBBQやるから来ないか?『赤盾』も全員参加するって言ってたから仲良くなれるかもよ」

「マジか!行くに決まってんだろ。何でお前『赤盾』とも仲良くなってんだよ。いや、そんな所に俺らを誘って何が目的だ?」

「元々は地竜の舌を俺が調理してみんなで食べようって話だったんだけど、俺も初めて調理するからな。失敗した時の処理要員で来てくれないかって思ってな」

「おい、ふざけんな!残飯処理かよ・・・いや、でもギースさん達以外にも『赤盾』も来るなら・・・くそ、悩むけど・・・よし、分かった参加だ。頼むから少しはマシな処理をしてくれよ」


悩みながらもなんとか参加をしてもらえる事になった。これで地竜の舌がマズくても俺が一人で処理しなくてもよくなったのでほっとする。それからしばらく他愛ない事を話していると、


「よ~し。お前ら酒と飯を堪能した奴等は次行くぞ!金持ってる奴は『猫宿』行くからついてこい!」


カイルが大声で騒いで何人かと外に行こうとするが、パーティメンバーのクリスタが悲しそうな顔でカイルを見ているのが目に入った。俺が口を出す事じゃないが、酒の勢いもありつい口を出してしまった。


「カイル!お前は今日ピエラに説教しないといけないから『猫宿』行ってる暇ねえだろ!」

「ああ?『最長』てめえ俺に指図すんのか?いいぜ、やるか?」


俺が注意するとご機嫌だった顔の眉間にみるみる皺が寄っていき、怒りながら俺に近づいてくる。


「お前今日のピエラの怖がった姿知ってるだろ。リーダーなら今日は我慢してちゃんとフォローしろよ」


小声で理由を説明しながらガウルとオールにも目線で合図を送る。


「だな、リーダーならメンバーのフォローはしっかりしないとな」

「任せたぜリーダー」


俺の視線の意味を分かってくれたガウルとオールが加勢してくれる。


「・・・・ちっ。分かったよ。今日は魔力使いすぎて疲れたからな。大人しくしとくか。ピエラ!宿に戻るぞ、お前には少し話がある。クリスタはまだ残っててもいいぞ」


言いながら俺に背を向けたカイルの後ろで俺達3人はクリスタに親指を立てると、意味を理解したのか顔を真っ赤にして俯いた。ピエラも意味を理解したのかカイルの後ろで俺達に振り返るがその顔は少し微妙な顔をしていた。


「これでクリスタと上手くいってくれるといいんだけどな」

「ああ、さすがになあ、クリスタが可哀そうだな。まあ今日は地竜討伐した勢いでいけるんじゃないか?」


ガウルとオールがカイル達を見送りながらしみじみ語っている。やっぱりカイル以外にはクリスタの事はバレバレだったみたいだ。


「よし、ギン、お前も『猫宿』行くぞっていうかお前は強制だ」

「ガフ!お前らも行くだろ?ギンは俺らが連れてくからな」


2人に肩を組まれて強制的に連れていかれる。声を掛けられた師匠はまだ酒を飲んで誰かと話していたので手を挙げて返事をしただけだった。


「ウィート、カールお前らどうする?行くか?」


連れていかれる途中で二人に声を掛けると、


「いや、俺らはいいよ」

「だな」


二人して誘いを断ってくるが、なんか顔を赤くしながら照れているので何かおかしい。


「何か変じゃねえか、お前ら?何隠してる?」

「いや、別になあ」

「何も隠してねえよ」

「そうそう」


サーリーも加えた3人で顔を赤くしながら誤魔化してきたので、俺はすぐに理解してしまった。マジか・・・サーリーがケインさん状態かよ。いや、まあ人の事だから俺が口出す事じゃないんだけど、でもサーリーって他のメンバーと恋人だって言ってなかったか?


「お前ら、いつの間に・・・・いや、まあいいんだけど。今度詳しく聞かせろよ」


3人に声を掛けた後、ギルドを出てガウルとオールで『猫宿』に向かう。途中後ろを見るといつの間にか師匠とギースさんと他の奴等全部で10人ぐらいになっていた。


結構な人数で『猫宿』に行ったが幸い全員が泊まれるとの事で店に足を踏み入れる。そして誰が酒代を払ったか分からないが、二次会が始まり酒とつまみを楽しみながら今日の地竜戦を大声で話をして、誰がどうだったとかあの動きは良かった等感想を言い合っている。偶に俺にも話を振られるが俺は後ろでポーション投げてただけだし、新人だから誰が良い動きしてたか分かんねとか言うと、みんなが喜んで説明してくれる。そうして話を聞いているとやっぱり今回の地竜戦のMVPは魔法で地竜を貫いたカイルのようだ。次はやっぱりギルマスって所で、更に最初に舌を切り落とした師匠も候補に挙がっていたので少し嬉しい。ギルドに戻ってからその師匠もギースさんも他の奴等とずっと話をしているし、『猫宿』でも別テーブルなので話をする機会がない。


「よーし、俺はもう上に行くぞ!」


一緒に飲んでいた一人がそう言って指名をして上に行ったのをきっかけに解散の流れになった。そうして、みんなで誰を指名するか話をしている中、オールが、


「そう言えば、ギンは誰を指名するんだ?」

「俺か?俺は今日エレナ指名できるからエレナにしようと思ってるけど」

「はあ?何言ってんだお前」

「はは、エレナは無理だぞギン。あいつが指名受けるのカイルぐらいだぞ」


オールとガウルが驚く。そう言えばこいつら依頼から帰ってきてすぐ地竜戦に参加させられたから知らないのか?その前は一カ月ぐらい遠征してたって言ってたし。


「ガハハハッお前ら戻ってきたばっかりだから知らねえけど、エレナは何故かギンの指名受けるんだよ。嘘だと思うだろ?・・・エレナ!ギンが指名だってよ」

「そう、ありがと。それじゃあギン上に行きましょ」


師匠の呼び出しにやってきたエレナが俺に抱き着いて階段に引っ張っていくのをオールとガウル他数人が驚いた顔で見ている。


「マジか・・・」、「エレナって給仕専門だって思ってた」、「あいつが上に行くの初めてみた」、「ギンって何者なんだよ」


階段を上る俺の後ろから驚きなのか呆れなのか良く分からない言葉が聞こえてきた。





「それで?ギン、どういうことなの?何であなたが『尾無し』戦に参加してるのよ。あなたのランクだと参加すらさせてもらいないはずよ」


いつもの様に俺のワインを飲みながら休憩を始めるとエレナから小言を言われる。何か最近このパターンが多い気がする。


「巣を見つけたから流れで参加になった?」

「何で疑問形よ。そもそもギンじゃ足手まといになるだけなのに、どうして自分から辞退しなかったのよ。ギンも足引っ張るかもとか思ったでしょ?」

「俺の事がバレた時は参加を諦めたんだけどな、何故か師匠から参加を強制されたから従ったんだよ」

「もう、ガフの奴何考えてるのよ。今度文句言ってやる。それでギンはどこもケガとかしてないの?」

「さっき俺の体洗ってくれた時にどこもケガしてないって分かってるだろ。・・・ああ、『尾無し』の舌に捕まった時、臭すぎて心にケガをしたな」


言った途端俺にくっついてワインを飲んでいたエレナが俺から距離をとる。ひでえ態度だけどさっきまでの行為は忘れたんだろうか。・・・そう言えば舌で思いだしたけどエレナもBBQくるかな


「ひでえな。その時に『洗浄』6回ぐらい掛けられたからもう臭いはしないだろ。しかもさっき風呂も入ったじゃねえか。・・・そう言えばエレナって明後日ヒマか?」

「ヒマな訳ないでしょ。普通に仕事よ。・・・・ちょっと待って何するの?」

「『尾無し』の舌をみんなで食べようってのと、師匠と約束していたBBQを昼からしようと思ってな。場所は師匠達の家だけどガジ達も誘うつもりだぞ。どうする、来るか?」

「行くわ、明後日はたった今仕事休みになったわ」


誘っておいてなんだけど、そんな調子で大丈夫か?仕事クビになったりしないよな。少し心配しつつもエレナの参加が確定した。ついでにサラも。


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