47話 地竜戦②
アホな事を考えながら広場に向かうと当たり前だけど死闘の最中でした。俺の担当の後組は師匠含むどっちかというとサブアタッカーの人達がチマチマ攻撃している。こっちは先程メインアタッカー達が攻撃して作った傷を広げて血を多く流させて体力を奪うのが目的だ。間違ってもこっちに注意が向いてはいけない。俺はそのメンバーが負傷した時にポーションを投げたり直接近づいて飲ませたり回復する役目だが、師匠含むサブアタッカー達は基本動きが素早いので被弾を全くしない。反対に前組は、
「ぬおおおおおおおおおお」
「だああああああああああ」
前衛の盾組二人が地竜の振り下ろす前足を気合を入れながら受け止めるが、かなり辛そうだ。受け止められた地竜はすぐに噛みついて来ようとするがそれも別の盾組に防がれる。その間にメインアタッカー達が地竜に攻撃を加えるが分厚い鱗に阻まれてあまり効いていない。唯一ギルマスの攻撃だけが鱗を弾き飛ばして傷をつけているぐらいか。さすがギルマス元Aランク一人だけ動きが全然違う。支援組は配置につくと攻撃を受けた盾組やメインアタッカーに向かってポーションを投げて回復を始めた。大きく攻撃食らった奴には走って近づきポーションを飲ませて回復させるなどしっかり援護している。
「ガフが根本から舌を切り落としたから舌攻撃は気にしなくてもいい!」
「ホントかよ!そりゃ楽だ!」
「ガフの野郎味方になると頼もしいじゃねえか」
攻撃パターンが減った事に前組の盾組から師匠を褒める声があがる。
「支援組は手が空いたら羽を狙っていけ!」
地竜に攻撃しながらも全体を見ているギルマスから支援組に指示が飛ぶ。何人か回復ばかりに専念してもう一つの役目を忘れている奴がいたんだろう。
「でかいの行くぞ!気を付けろ!・・・・土よ!我が前に立ち、行く手を塞ぐ愚か者を穿て『土槍』!!!!!」
ドシュッ!!
「グギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
カイルが周りに注意を促して距離を取って詠唱を唱えると地面から土色の槍が生えてきた。その槍は『尾無し』の左足に半分程突き刺さり、『尾無し』が痛みで大きな声をあげた。
おお!あれが魔法か、すげえ初めて見た。
「相変わらず魔法ヤベえな」、「カイル!ナイスだ!」、「魔法で傷ついた左足を狙っていけ!」
「ング、ゴク、・・・プハー。おし!行くぜ」
やっぱり魔法はすごいのか色々な人から賞賛の声があがる。カイルはMP回復用のポーションを飲み終わると再びメインアタッカー組に参戦していく。あいつ魔法も使えてメインアタッカーとか完全に主人公じゃん。
こうして連携しながらも傷ついた左足を集中して攻撃していくので、地竜もそちらに気が向くのか左足の方にいるギルマスやケインさんを攻撃していき、ギースさんや買取カウンターの人の盾組に攻撃を止められつつも徐々に左方向に動いていく。地竜の右後ろ脚側に位置取りしている俺はある事に気付いた。カイル達『大狼の牙』のメンバーであるピエラが最初は右前足の位置取りだったのに今では右横に位置取りしている。多分地竜が左方向に回りだしたので、ピエラは意図せずこの位置取りになって孤立しているみたいだが、右前足担当への援護は十分できているので自分の位置取りに気付いていない。
「ピエラ!!もう少し向こうに行け!そこはマズい」
俺の声に自分の位置取りに気付いたピエラが慌てて本来の位置取りである右斜め前に移動しようとした所、
「ぬおおおおおおおおおお」
ドン!!!!!!
右前足を攻撃していたハンマー使いのオールの攻撃がクリーンヒットした。ハンマーに叩き潰された地竜の指から爪がはじけ飛ぶぐらいなのでその威力はすさまじいものだと思う。地竜的にはタンスの角に足の小指をぶつけた程度かもしれないが、やっぱり痛いのか左足から右足側に注意を向け、犯人を探るように視線を巡らす。そして一人孤立しているピエラに気付くと一歩足を向ける。
「ピエラが狙われた!守れ!」
「ピエラ!こっちまで走れ!」
「ヒッ!」
地竜に標的にされたピエラは恐怖のあまり動けなくなったが、地竜は更に1歩1歩と足を進めていくがどんどん動きが早くなる。走り出す前にピエラから注意を逸らそうと前後のアタッカーが被弾覚悟の捨て身の攻撃をしていたが間に合わず、ついに地竜が走り出した。
だが、ピエラが狙われて恐怖で動けないと分かった瞬間に俺は駆け出していた。多分間に合う、間に合わせる!
「ギン!!!戻れ!!!」
捨て身の攻撃をしていた師匠が俺の動きに気付いて戻るように言われるが、急には止まれない。俺は恐怖で立ち尽くしているピエラの横っ腹に勢いよくショルダータックルをかける。
「ゴフ!!!」
地竜に気を向けて意識の外から横っ腹へのタックルが効いたのか、ピエラは口から空気を吐き出す。明日ムチ打ちになったらごめんな。そんな事を考えながらもタックルしながらその勢いでピエラを肩に抱え上げダッシュで駆け抜ける。その直後、
ドーーーーーーーーーーン!!!
後ろから大きな音が響く。多分地竜が壁に激突した音だろうが、振り返る余裕なんてない。
「早!」、「ギン!すまねえ!」、「よし!ピエラは無事だ!全員『尾無し』を囲め!」、「やるじゃねえか『最長』!」、「ガフの判断は正しかったな」
ピエラを抱えて前衛組に所まで走ってくると、色んな人に褒められた。無理言って俺を参加させてくれた師匠の評価が上がった事が一番嬉しかった。
「ゴホ!ゴホ!・・・・ギン、助けてくれてありがとう。助けてくれなかったら私死んでたわ。・・・でももう手は放して」
タックルの影響か、咳込むピエラにお礼と注意をされる。手?と思って自分の手を見ると、肩に担いだピエラの尻を鷲掴みにしていたので、慌てて手を離す。
「アハハ!悪い。夢中で気付かなかった。でも俺はもう少し肉が付いてる方が好きだな・・・・分かった下ろすから暴れるな」
俺がセクハラじみた事を言うと俺の肩の上で暴れだすピエラをゆっくり地面に座らせるが、ペタンと座りこみ少し様子がおかしい。
「はは、アハハ、ごめん、腰が抜けて立てないや」
諦めたような顔で笑いながら自分の情けない状況を説明してくるピエラで少し和むが、俺の後ろではみんなが絶賛死闘を繰り広げている。
「きゃあ」
このままこの場所に放置してもいけないので俺はピエラを抱きかかえて安全地帯まで運ぶ事にする。ピエラを抱きかかえ地竜の動きに注意しつつ移動して地竜の舌が転がっている場所にピエラを下ろす。
「ほら、ここなら安全だろ。回復したら戻ってこい」
そう言って立ち去ろうとすると、
「待って!取り合えず私の手持ちのポーションを半分渡しておくから、戻るまで私の代わりに前衛の支援に回ってくれない?何か言われたら私が責任とるから」
良い事なんだけど後ろだと誰も被弾しないし回復する必要もなくて暇だったんだよな。それにピエラが抜けた穴は誰かが埋めないといけないしな。
「分かった。俺がヘマした時はちゃんと責任とってくれよ」
「安心して、ギンは命の恩人だからね約束は守るわ。あと助けてくれて本当にありがとう」
ピエラのお礼を受け取ると俺は戦線に復帰する。
「ピエラは洞窟の奥の安全な場所に置いてきた!ケガはないが、腰が抜けたってよ!しばらくしたら復帰する!」
「そうか!ありがとよ!」
「『最長』悪いが「分かってる!ピエラの代わりだろあいつに頼まれた」
俺がピエラの状況を報告すると同じパーティメンバーのカイルからお礼を言われる、ついでに前組の盾組からの声に何が言いたいかすぐに理解してピエラの代わりを始める。取り合えず近くにいる辛そうな盾組2人に下級ポーションを投げつける。投げる瞬間にあの感覚があったので見事二人に命中すると、途端に動きが良くなった。
暫く慣れない回復役に徹していると少しは周りの状況を見渡す余裕が出てきた。もしかしたら誰か大きなケガをしたかもしれないが、ポーションで回復したのか今の所誰も大きなケガはしている様子はなく、各自役割を果たしている。状況は変わらずって感じだけど今はまだポーションがあるから拮抗しているだけだ。これでポーションが無くなったら一気にやられるだろう。その前に地竜の体力が落ちて来ればいいけど、未だに元気に暴れまわってるんだよな。そうなってくるとやっぱりキーマンはカイルか。さっきの魔法で今度は右足を貫いたので左右とも集中してそこを攻撃しているが、魔法の連発はできないのか今はまだ2回しか魔法を使っていない。使うと必ずMP回復のポーションを飲んでるみたいだし、そこまで当てにしてはいけないが、大きくダメージが入るのがこれだけなので期待してしまう。
状況が大きく変わったのは、俺の体感的にもうすぐカイルが3回目の魔法を使えるだろうって時だった。俺が最初に出した『光』も時間が経過してすでに消えているが、外は大分日が昇っている為、『光』がなくても十分なぐらい洞窟内も明るくなっていた。
ドゴォ!!
長時間の戦闘で集中力が切れたのか俺担当の盾組の一人の反応が遅れてガウルだけが地竜の攻撃を受ける事となり、そのガウルも疲れからか攻撃を受け止めきれずに壁まで弾き飛ばされる。
「ガウル!!」
気付いたカイルが声をあげると、その声に反応するように吹っ飛んだガウルが手を挙げるので命に別状はないだろう。俺はもう一人の回復役に後を任せてガウルの元に走っていき、ガウルの兜の口部分を空けて中級ポーションを飲ませる。その時、
「ギャウウウウウウウウウウ」
地竜がさっきから出している怒りの叫びとは違う、何か苦痛を感じているかのような大きな叫びをあげるので何事かと振り返る。そこには何か投げ終わった態勢でポカンとしているエステラさんの姿が印象的で、更に左目だけ目を閉じて頭を振っている地竜。多分さっきから回復の合間に投げていたナイフが地竜の目に刺さったんだと理解した。エステラさんナイス!とか思ったのは一瞬だった。地竜は誰がこの痛みを生み出したのか理解すると、一歩エステラさんに足を踏み出す、先程のピエラの時と同じだが、さっきと今回とでは地竜の怒り方が全く違う。
「エステラ逃げろ!」
「エステラが狙われてるぞ!」
「盾組はカバーだ!エステラを守れ!」
慌ててギルマスやギースさんから指示が出るが、既に地竜は走り出してエステラさんを目指している。盾が間に合うのはギースさんともう一人だけだろう。俺も慌てて向かおうとするが、今はガウルにポーションを飲ませているのでこの場を離れられない事に気付き、慌てて影を伸ばすが間に合いそうにない。
「ぬおおおおおおおお!」
「ぐぬううううううううう!」
盾二人で地竜の突進を抑え込もうとするが、
ドゴォオオオオオ!
怒った地竜の突撃は盾二人では止められず後ろのエステラさんも巻き込んで地竜は壁に激突する。
「エステラ!ギース!」
「ヤホン!」
ケインさんと誰かの叫びが聞こえる。多分一緒に巻き込まれた盾の人は『ヤホン』って名前なんだろう。
「すまん、ギン。助かった」
中級ポーションを飲んでようやく意識が回復したガウルが自分で体を支えながらお礼を言ってくる。
「もう1本飲んでから復帰しろ」
中級ポーションを渡しながらそれだけガウルに言うと俺はギースさん達の元に走り出す。
「ぬああああああああ」
ザシュウウ!!!!
倒れて動かない3人に足を持ち上げて叩き潰そうとする地竜の姿が見えたが、カイルの魔法攻撃で出来た右足の傷にギルマスが気合を入れて剣を突き刺すと剣が地竜の足を突き抜けた。その痛みで地竜は振り上げた足をすぐに下ろして右足を振ってギルマスを振り払う。これで完全にターゲットがギルマスに移った。
「エステラ!!!」
「ケイン!エステラは支援組に任せて集中しろ!死ぬぞ!」
エステラさんの元に駆けて行こうとするケインさんにカイルが注意したので、ケインさんはその場に踏みとどまり物凄い悔しそうな顔で地竜を睨みつける。
そんなやり取りを横目に俺は倒れた3人の元に全力でダッシュしていく。そっちに向かっていたターニャも追い越すと後ろから「早っ」という声が聞こえたが、今は3人の回復が最優先だ。走りながら中級ポーションを2本取り出す、これで中級ポーションは最後だ。その2本を先程から少しは動く反応がある倒れたギースさんとヤホンに向かって投げようとすると、手にあの感覚があったので多分当たる。投げると思った通り二人に当たったので、これで後を走ってくるターニャに任せれば大丈夫だろう。それよりもさっきからピクリとも動かないエステラさんだ。
「エステラさん!」
・・・・酷い。
盾組二人より軽装だからだが、エステラさんの状況は酷かった。左腕と左足がおかしな方向に曲がっていて、鼻と口から血を流して倒れている。多分頭を打っているので動かすのは危険だと判断して、上級ポーションを取り出し半分だけ頭に振りかけると、微かに反応があった。まだ動かすのは危険かもと思ったが内臓も損傷しているとマズいので、エステラさんを抱きかかえて残った上級ポーションを少しだけ口に入れるが、
「ゴホッ!ゴホッ!」
すぐにむせて口から大量の血と共に吐き出す。しかし丁度血を吐いた今なら飲んでくれると思ったので、残った上級ポーションを自分の口に含んで、エステラさんに口を合わせて無理やり流し込む。うん、こんな時に思う事じゃないが、血の味しかしない。しばらく口を合わせていたがむせる様子もないので飲んでくれたようなので口を離して様子を見ていると、
「う、う~ん?」
またまたこんな時に思う事じゃないがものすごい艶っぽい声を出しながらゆっくり目を開けるエステラさん。
「エステラさん!起きて下さい!俺が誰か分かりますか?」
「う、う~ん、ギン少し静かにしてよ・・・・!あれ?私地竜と!!!!っ!!!!」
意識がはっきりしてきたのか周囲を確認しながら状況を観察しようとするが、まだ治療していない折れた手足の痛みに悶絶するエステラさん。
「ターニャ。エステラさんを安全な場所まで連れて行くからついて来てくれ」
そう言ってエステラさんを抱え上げると手足に痛みが走ったのか苦しそうな顔をする。ギースさんとヤホンはターニャがすでに治療したのか立ち上がってケガの具合を確認しているので大丈夫だろう。
「少しケガに響くかもしれないですけど安全な場所まで運ぶので我慢してくださいね」
そう言ってピエラの元までエステラさんを運ぶ。ついでにピエラにもエステラさんをお願いする。ターニャにお願いしてピエラと同じように手持ちのポーションを半分だけ預かった。
「ギン、ありがとね。でもあんまり無茶しちゃ駄目よ」
「ギン、冷静に落ち着いて動く」
何か感じたのかエステラさんとターニャから注意されるので、
「大丈夫ですよ。大体後ろでポーション投げているだけですから、無茶はしないっていうか出来ないですって」
2人を振り返り笑いながら返事をしたら、広場に走って戻っていく。二人にはああ言ったが、本当はギースさんとエステラさんを傷付けられた怒りで今にもあのクソ蛙に攻撃してやりたい。だけど、それをするとFランクの俺ではみんなの戦闘の邪魔になるし、俺を信じて戦闘に参加させた師匠の顔に泥を塗る事になる。冷静にどうしてやろうか考えながら広場に戻る。
「エステラさんは無事!ただ手と足をやられて復帰は無理!ピエラとターニャの二人がついて、治療していて終わり次第二人は復帰予定!」
広場に戻ると、大声で現状を報告する。ピエラは恐怖で動けない様子だったので、復帰は無理そうだったがそこは士気も下がるだろうし噓の報告をする。ずっとエステラさんについていて貰えるだけでもこっちとしては安心できる。
「そうか!ありがとよ!ギン!・・・この蛙野郎が!!よくもエステラを!!」
ずっと心配していたケインさんが俺の報告を聞いて落ち着いたのか、冷静さを失ったか分からないが、大声で地竜に攻撃を加えると、さっきのギルマスと同じように前足の傷ついた場所に剣を差し込みそれが足の反対に貫通する。さっきと同じように痛みで暴れだすが、先程より動きが明らかに鈍い、ケインさんも余裕で攻撃を躱し後ろに下がって盾組二人が前に出るが、こちらも動きが鈍ってきている。
「ケインは俺については怒ってくれないだな」
悲しそうな声でギースさんがぼやいている。ぼやいているがしっかり攻撃を受け止めて盾の役目を果たしている。
「んなこたねえよ。声掛けて心配しただろ」
ギースさんのぼやきが聞こえたのかケインさんが突っ込みを入れてくる。
「俺は誰も心配してくれなかったぞ」
ヤホンが便乗してぼやいている。
「大丈夫だ。ヤホン俺が心配してるから」
「はあ~。男に心配されてもやる気でねえよ」
俺の言葉に更にぼやくヤホン。取り合えずギースさんとヤホンに下級ポーションを投げつけておく。
「おらあ!お前ら余裕そうじゃねえか、他の連中のフォローもしっかりやれ!特にギン!てめえヘマすんじゃねえぞ!俺の報酬かかってるからな!」
師匠が怒鳴りつけてくるがその内容に緊張や疲れで強張っていたみんなの表情が少し和らいだように思えた。
そうしてしばらく一進一退の攻防が続く。
「よし!お前ら!待たせた!巻き添え食らうなよ!」
————きた
カイルの声にいち早く反応する俺。ギースさんとエステラさんを傷つけられてからカイルの魔法をずっと待っていた。俺とクソ蛙の位置から俺の影が地竜の方に伸びていても不思議ではない位置取りだ。更に今はギースさんの影を通して伸ばせる絶好のポジション。
————ズ
ギースさんに向かって影を伸ばす。元々本当の自分の影がギースさんまで伸びていたので怪しまれる事はない、若干影が濃くなったぐらいだから大丈夫だろう。そうしてギースさんまで影を伸ばしてギースさんの影経由で地竜まで影を伸ばすが、
「!!!」
俺の影が届いた瞬間、ギースさんの体がビクンとなり、キョロキョロ辺りを見渡し落ち着きがなくなる。
「どうした?ギース?」
ヤホンが様子の可笑しいギースさんに声を掛けるが目線は地竜から離してはいない。
「土よ!」
カイルからの詠唱が始まる。
すぐに何かに気付いたギースさんが大声をあげる。
「全員!!!もっと下がれ!!!!かなりでかいのくるぞ!!!巻き込まれるなよ!!」
尋常じゃないギースさんの表情と怒鳴り声に全員が更に地竜から距離を取る。
「我が前に立ち、行く手を塞ぐ愚か者を穿て『土槍』!!!!!」
————貫け
ザシュウウウウウウウ!!!!
ドシュウウウウウ!!!!
カイルの発動に合わせて俺も影から『土槍』と同じ形をした槍を生み出し地竜の両手両足羽と腹を貫通させる。カイルの土槍は胸の辺りに突き刺さっているが、やっぱり近くで比較すると俺の槍と色が全然違う、俺のは影だから真っ黒だけどカイルのは地面と同じ色だから違いは一目で丸わかりだ。更に俺の『影槍』は全て地竜を貫いているが、カイルのは突き刺さっているので威力も俺の方が高そうだ。
「ギャオオオオオオオオ!!!!!!!」
貫かれた地竜が痛みで大声で叫び出すが、
「な!!!」、「すご・・・」、「・・・黒い土槍」、「・・・・・・」
全員地竜の叫びが聞こえていないのか驚いて呆然としている。唱えたカイルでさえ驚いている。ギルマスでさえ戦闘中という事も忘れて驚きの表情で立ち止まっている。そんな中俺はというと、
やべえええ。ちょっとやりすぎた。このクソ蛙がどれぐらいの固さか分からないから力入れたけど余裕で貫通してるうう。これは後で誰がやったか犯人捜しが始まるかもしれない。・・・・その前に・・・俺の『偽装』スキルちゃんと仕事しろよ。
「カイルすげええええええええ!やっぱり魔法半端ねえええええ!!!」
取り合えず俺は大声でカイルを褒め始める。『偽装』スキルでみんな誤魔化されてくれえ。
「え?いや、違・・・あれ?俺?・・・・あれ~?」
俺が褒めだすと自分の手と地竜を交互に見ているカイルだったが、
「おお、すげえぜカイル」、「さすがCランクだ」、「やっぱり魔法ってすげえぜ」、「こんなん出来るならもっと早くだしとけよ」、「出し惜しみしやがって」、「ハハハ勝てるぞ」、「カイルのおかげで『尾無し』を殺れる」
俺の賞賛の声を聞いて全員がカイルを褒め出す。俺は後ろで「おおおおおお」とか「すげええええ」とか叫んで場を盛り上げている。何か言いたそうにこっちを見ている師匠がチラリと視界に入ったが無視だ。
「お前ら!まだ終わってないぞ!気を抜くな!」
騒いでいる俺達にギルマスの叱責が飛び、すぐに気持ちを切り替えるが、すでに『尾無し』は瀕死だった。一歩歩く度に傷口から大量の血液が辺りに飛び散り地竜の足元は血の海になっていた。その様子は少し前の俺なら可哀そうだと感じただろうが、今は何も感じない、命のやり取りをしていたので当然の結果だと思っている。今なら『カークスの底』のメンバー以外が今回の戦いで『尾無し』にやられていたとしても何も思わなかったと思う。それだけ俺もこの世界に慣れてきた。
盾組が警戒しながら『尾無し』を取り囲み距離を詰めて、攻撃を受ける距離で立ち止まる。そこから更にギルマスだけが前にでて無防備に『尾無し』に近づいていく。
「『尾無し』、お前をようやく討伐できる。あいつとの約束もようやく果たせる。あいつらにもようやく嬉しい報告ができる。ククク、ようやくだ。長かった気もするが15年なんてお前からすれば大した月日じゃないんだろうな。まあお前はあいつの事も俺の事も覚えてはいないだろう。だがこれで終わりだ。じゃあな『尾無し』・・・いや『国境の地竜』」
ギルマスが地竜に話終えると胸に空いた傷に渾身の力で剣を突き刺す。その勢いは凄まじくギルマスの肘ぐらいまで地竜の中に埋まっている。
「グオ・・オオオ・・・グオ・・・オオオ・・・・・」
ギルマスの一撃で苦しそうな声を上げながら『尾無し』は地面に倒れこみピクリとも動かなくなった。俺の『探索』でも死んだ事が確認できる。
「お前ら!少し下がれ!確認が先だ、ギルマスも下がれ!ムキールとストは確認を手伝え!」
師匠がギルマスに近づくと指示を出し始める。ケインさんとカイルはすぐにエステラさんとピエラの元に走っていった。他の奴等も各パーティ毎に集まり師匠達の様子を見ている。
(ギン!ちゃんと死んでるか?)
師匠から『念話』が入る。
(ちゃんと死んでますよ。これで討伐完了ですね。お疲れ様です。)
「ムキール!スト!どうだ?」
俺との『念話』が終わると師匠が呼んだ二人に確認すると、二人とも笑顔でコクリと頷いた。
「よっしゃああああああ!『尾無し』討伐完了だあああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「やったああああああああああ!!!!」
「だあああああああああ!!!!!!!」




