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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
第3章 水の国境都市のFランク冒険者
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43話 新たに発見した洞窟

朝起きて『猫宿』を後にした俺は広場に向かう。今日は師匠達と南の洞窟に向かう予定だ。師匠からは5日分の食料は買っておくように指示を受けたので、まずはその買い出しだ。食材以外にも屋台で出来立ての料理も買って『影収納』に放り込んでいく。買い出しが終わるとギルドに足を運び、また光苔採取の依頼を受けておく。これで準備完了したので師匠達が来るのを待つのだが、集合時間は昼なのでまだ少し時間がある。『投擲』スキル習得の為、訓練場に移動してひたすらナイフを投げまくるが、結局スキルは覚えなかった。


昼になり広場で師匠達と合流すると屋台で適当に飯を食べ、人数分+αのピッケルとスコップを購入してから洞窟に向かう。


「ギン、またアレ貸して。『シャシン』とりたい」


街から出てすぐにターニャさんがスマホを欲しがってきた。どれだけ写真を撮るのが気に入ったのか、俺がスマホを渡すとまたパシャパシャとメンバーから良く分からないものまで写真を撮り始める。



「そういや、ギン、お前『生活魔法』二つ同時に発動させられるってホントか?」


しばらくのんびり洞窟に向かって歩いていると、唐突にケインさんから話しかけられた。


「出来ますよ。ほら、これが『火』ですね、こっちが『闇』です」


片っぽずつ『火』と『闇』を出して実際に見せると、ケインさんとエステラさんは驚いた顔になり、写真撮影に夢中になっていたターニャさんは俺を何枚も撮影する。この写真は後で削除しておこう。


「すごいわね。やり方は分かるけど二つ同時なんて出来ないわよ」

「う~ん。俺も出来そうにねえな」

「慣れると片手でも出来るようになりますよ」


そのまま『火』と『闇』を片手で発動させ、『闇火』をつくる。


「ええ?どうやってるのよ?」

「おい、それ凄くねえか?」

「別に大したことないですよ、ケインさん『火』だして、エステラさんは『闇』を、それをこうやって合わせると・・・出来た!ね?簡単でしょ?」


「「・・・・・・・」」


「ふおおおおおお!ギン!何それ格好いい!私もやりたい」


2人に説明していたのだが何故かターニャさんの食いつきが半端ない、俺より年上だけどもしかして患っているのかな?いやそもそもこっちの世界に厨二病とかあるのか?


「むむむ!!!・・・・はぁ、駄目だ出来ない。ギンこれやるコツは?」


すぐに写真撮影をやめて『闇火』を出そうと練習を始めるが、やっぱり出来ないみたいだ。でも俺にコツを聞かれてもやってみたら出来たってだけだから何て言えばいいか分からない。


「コツって言われてもよくわかんないです。誰かに最初手伝って貰ってイメージを固めたらどうですか?」


よく分からないので適当に答える。


「分かった、ケイン!火!」


俺の適当な答えにすぐにケインさんを使って練習を始める。


「分かったよ。そんな慌てるな。ほら。」


何だかんだエステラさんとターニャさんには甘いケインさんは素直にターニャさんに従い手から火を出す。


「ふおおおおおお、格好いい!!!ケインもう少し火を大きくして!」


ケインさんに手伝って貰って『闇火』を出すと大喜びのターニャさんだが聞き捨てならない言葉を口にした。


「分かったよ、ほらこれが全力だ」

「フハハハハハ。我が闇の炎を恐れるがいい」


ケインさんの出した少し大きな火に闇を纏わせ滅茶苦茶ノリノリなターニャさんと呆れた感じで付き合っているケインさんだったが俺は物凄い事に気付いていた。


ええ?魔法の威力上げる事出来んの?俺にはどうしてもできなかったけど二人とも当たり前のようにやってる。


「ちょっと待って下さい。何で魔法の威力大きく出来てるんですか?おかしいですよ?」

「うん?何言ってるの?各自得意属性あるんだからそんなの出来て当たり前じゃない。」


俺の質問がおかしいのかエステラさんが不思議そうに言ってくるので、得意属性ってのは常識みたいだ。


「得意属性?」

「ホントにギンは何も知らねえな。自分の得意属性は生活魔法で調べられるんだぞ」

「ええ?知らないですよ。って事はみんな得意属性あるんですか?」


ギースさんがさも当たり前のように言ってくるが、この前『生活魔法』覚えたばかりの俺が知っている訳ない。しかもみんな何気に得意属性あるみたいな事言ってるし。


「俺は『土』、ガフは『風』、ケインは『火』、エステラは『水』、ターニャは『闇』が得意属性だな。得意属性って言っても少し威力が増すぐらいだぞ。ターニャが一番威力をあげられるが、それでも普通の倍ぐらいだな。ギンも自分の得意属性調べてみろよ」


ギースさんが色々教えてくれるが、俺は『生活魔法』で色々試しているうちにどの『生活魔法』でも威力を高める事は出来なかったんだけど、そういう人いるのかな。


「俺、どの『生活魔法』でも威力上げられないですけど、そういう人って多いんですか?」

「ああ、たまにそういう奴いるな。魔法の素質ゼロって話だけど、同時に二つ使えるギンが出来ねえっておかしいぞ。なんかやり方間違ってねえか?」


ターニャさんから解放されたケインさんが話に入ってくる。やり方に間違いとかあるのかな?


「いや、ホントなんですよ。威力強くしようと考えると弾かれる感じがして出来ないんですって」

「それなら本当ね。確かに他の属性だと私も弾かれる感じするし。そうするとやっぱりギンは魔法の才能が無い・・・いや、それは無いと思うんだけど」


結局何故俺が『生活魔法』の威力をあげる事が出来ないのか分からなかった。俺は『影魔法』使えるし、才能が無いって訳じゃないと思う。一つだけ思いつくのが『生活魔法』に『影』がないから才能が無いように見えるだけなんじゃないかと思っている。




「ぬおおおおおお!頑張れ!私!うおおおお」


俺とギースさん、エステラさんの3人で話している中、ターニャさんは一人で『闇火』を出そうと頑張っている。ケインさんはお役御免なのか師匠と話ながら歩いている。ターニャさんは左手には『闇』を出して右手に『火』を出そうとして気合を入れているが一向に『火』が発生する気配がない。


「着いたぞ、ターニャ、洞窟の中じゃその練習は無しだ。終わってからにしろ」


洞窟の入り口まで来てもいまだに大声で練習しているターニャさんに師匠が注意をする。たしかに洞窟で大声で練習していたら魔物を引き寄せる事になるからな。そうして洞窟を潜っていくが、さすがDランク、赤土竜や大ミミズだけでなく大ムカデも苦戦する事なく倒していく。俺は敵が近づいてきたら師匠に『念話』で教えるだけだったが、『念話』使うとやっぱりターニャさんが軽く反応してくるからやりにくい。そうして目的の場所に辿り着いたが、誰もこの辺で採掘していないから多分見向きもされなかったんだろう。


「ここです」

「どれ、ちょっと待ってろ」


俺が案内すると、師匠がまずは壁を調べ始める。全員黙って師匠の動きを見ているがその目は期待に満ちている。でも流石に金目の物は出てこないと思うんだけど。


「う~ん。よく分かんねえな。取り合えず軽く掘ってみるか、お前ら準備しろ。俺らで掘るからエステラ、ターニャは出てきた岩とか砂とかをどけていってくれ。ギンは光苔採取したらエステラ達の手伝いだ」




カーン!カーン!


辺りにピッケルやスコップで岩肌を掘り進める音だけが響く。ここ以外にもいくつか同じ音が聞こえているがそっちはホントの採掘の音だ。俺も光苔の採取が終わり手伝っているが、


「出ねえな。何もないんじゃないのか?」

「そうねえ。勘違いだったんじゃない?」


ケインさんとエステラさんが飽きてきたのか話始める。その目は先程の期待に満ちた目では無くなっていたのだが、


ボゴッ!


ケインさんが振り下ろしたピッケルがついに聞きなれない音に変わった。全員顔を見合わせ、しばらくするとみんなにやけ顔に変わった。


「ま、待て。まだ穴を広げるな。何があるかわからないからな。ゆっくり広げろ」


ギースさんの指示でケインさんと師匠が出来た穴を素手で広げていく。


(ギン、どうだ?反応は?)

(今の所奥の大きな空間に1匹魔物がいるだけですね)


『念話』で簡単に話を終えると、師匠が何かハンドサインをしたので、全員が師匠から距離をとる。広げた穴はまだ人の頭が入り込めるぐらいの大きさしか広がっていないが、師匠が穴に頭だけ入れて中の様子を探る。すぐに頭を抜くと俺達の方にやってきて状況の説明を始める。


「左側は先が少し曲がっていてよく見えなかったが、明るくなってたから外に繋がってるな。右側はかなり明るかったから結構広い穴が外に空いてんな、取り合えず一人がやっと通れるだけの穴を広げるか」


師匠の指示に従い再び穴を慎重に広げていき、人が一人どうにか通れるだけの穴が開いた所で師匠が向こうに体を滑り込ませる。


「ギン、てめえも来い。いい機会だ少し指導してやる」


すぐに師匠からお誘いされる。まあ『探索』、『暗視』持ちの俺がいれば師匠も安心できるだろう。


「おい、大丈夫か?ギンにはまだ早くねえか?」

「心配し過ぎだ、ケイン。まあ少し早いかも知れねえが、未踏破の洞窟なんて、そうそうあるもんじゃねえからな。ヤバそうだったらすぐに逃げてくるから安心しろ」


心配するケインさんも師匠の言葉に納得したのか俺に道を譲ってくれるので、俺も穴に体を潜り込ませて向こう側に出る。


「じゃあ、最初は左側の曲がった先を見てくるから、見たらすぐに戻ってくる」


仲間にそう声を掛けて俺と二人で歩き出す。俺は『暗視』があるが、師匠は持ってないけど大丈夫なのかと思ったら普通に歩いている。


「師匠明かりもないのに『暗視』なしで何で歩けるんですか?」

「馬鹿、お前のインチキと違って俺は夜目が利くからこのぐらいなら問題ねえんだよ」


スキルの事インチキ呼びはどうなんだろ。まあ確かにインチキなんだけど。若干油断しつつ道が曲がった先はすぐに外だった、外だったのだが・・・


「こりゃ、無理だな」

「ですね。落ちたら確実に死にますね」


洞窟の外は断崖絶壁だった。今まで誰にも見つからないわけだ、丁度崖の中腹ぐらいに洞窟が繋がっていて、上は少しせり出しているので崖の上から眺めてもここに洞窟があるとは気付かないだろう。まあ当然だけど、金目のものなんて落ちていないので一度戻る事にする。


「曲がった先は崖だったな、ありゃ、外から入ってくるのは無理だ。当たり前だが、金目のもんなんて無かったからな。そんじゃあ、反対を調べてくる」


軽く報告すると、壁の向こうでみんながっかりしたような溜め息が聞こえるが師匠は気にせず先に進んでいく。


『探索』で分かっていたが右側を進むと大きな空間が広がっていた。空間の一部が大きく口を開けて外に繋がっているが、パッと見さっきと同じような断崖絶壁になっていそうだ。まあ、こちらも見た感じ金目の物はなさそうだ。新しい採掘ポイントでも見つかれば少しは発見者の俺達に報酬がもらえたりしないかなとか考えていた。


(ぎ、ギン、ここからは絶対音を出すな。会話も全部『念話』だ。分かったな?)


焦った様子で師匠から『念話』が入る。俺は何も感じないが師匠は何か感じているのか、顔から汗が噴き出している。


(どうしたんですか?何かヤバいのありました?)

(ギン、魔物に動きがあったらすぐに教えろ。俺の勘だけど多分、そいつかなりヤベえ魔物だ、俺達だけだと絶対勝てねえ。少しでも動きがあったらすぐに撤退だ)


そんなにヤバい魔物なのか?師匠は勘って言ったけどベテラン冒険者の勘だからかなり信用できるだろう。でもそんなにヤベえ魔物って何だろ?大人ゴブリン改めオーガとかかな?


師匠とは対照的に俺はのんびり考え事をしながら師匠の後を付いていくが魔物に近づくにつれて俺でもヤバい気配がビンビン伝わってくる。そうして目視できる岩陰までくると、


フシュー、フシュー


とリズムよく何かの音が聞こえる。『探索』で分かっているがこの音はその魔物が出している音だ。まずは師匠が音の主を岩陰から覗きこむ。どのくらいだろう、多分10秒ぐらいだと思うが、師匠が覗き込んでから岩陰に戻って来るまでやけに長く感じた。戻ってきた師匠は音を立てずに肩で息をしている。


(やべえ、ありゃ地竜だ!しかも『尾無し』だ!ヤベえ奴の巣見つけちまった。ギン覗いてもいいが絶対に見つかるなよ!)


師匠の焦り具合からよっぽどヤバい魔物みたいだ、まあ『竜』の名前が付いてるって事は漫画とかでも強いって定番だしな。俺も岩陰から身を乗り出して魔物を確認する。


・・・・背中に羽が生えてるけど、でけえ蛙みてえだな。そうか師匠が『尾無し』って言ってるだけあって、尻尾が根本から無くなってるのか、尻尾があれば変態途中の蛙だな。しかしよく寝てんな、変な音はこいつの鼻息か。


それだけ確認して俺も岩陰に戻る、すぐに師匠から戻るとジェスチャーされたので、その場を後にする。みんなの場所まで戻ると焦りながら師匠が説明をするが、こんなに焦るとはやっぱり地竜ってのはやばい魔物らしい。


「地竜がいた。多分巣になってる。しかも『尾無し』だった。ヤベえもん見つけたぞ。どうする?」


「「「「地竜!!!」」」」


聞いた4人が驚くのでやっぱりそんだけヤバい魔物らしい。


「馬鹿!静かにしろ!」

「悪い。だけどどうする?俺らだけだと絶対無理だ。」

「『尾無し』ならギルマスが喜んで来てくれるんじゃない?レイドになると思うけど、そこは仕方ないって割り切るしかないわね」

「だなあ。このまま放置もできねえしな。『尾無し』討伐はドアールの冒険者の悲願だからな」

「発見報酬は貰えるだけマシ」

「おお、そういや発見報酬なんてあったな。いくらだったか、覚えてねえな」

「大金貨1枚、討伐賞金は白金貨1枚」

「高いな。取り合えず発見報酬は貰えるだけマシか、それじゃあレイドになるけど構わないって事でいいな?」


なにやら軽く話をしていたらまとまったらしくリーダーのギースさんが最終確認をすると、全員頷いたが、俺だけ頷かないのを不思議に思ったのかギースさんが聞いてくる。


「ああ、すまん。そう言えばギンは別パーティーだったな、いつも一緒だからメンバーだと思っていた。それでギンの意見はどうだ。」


いや、どうだって言われても俺には何が何やら分からないんだけど


「ギン、お前やっぱりよく分かってねえだろ。教えてやるから分かんねえ事聞いてこい」

「『地竜』ってのと『尾無し』ってのはあの魔物の事だってのは分かりますけど何で言い方が違うんですか?」


「『地竜』ってのはあの魔物の種族の名前だ。『尾無し』ってのはあの魔物の固有名って言えばいいのか。あの地竜はこの辺で昔からよく人を襲う竜でな、あんまりにも被害が大きいから領主から賞金が賭けられた地竜だ。元々はそんな名前で呼ばれてなくて『国境の地竜』って言われてたんだけど、7~8年ぐらい前に大規模な討伐隊が組織されてその隊にいた当時Aランク冒険者だったギルマスとその仲間が尻尾を切り落としたことから『尾無し』って呼ばれるようになったんだよ。ギルマスはその時に逃げられたのを今でも後悔していてな、少しでも『尾無し』の痕跡があると仕事ほったらかしで討伐に向かうんだと」


「それじゃあ、『レイド』ってのは?」

「普通ソロかパーティで依頼を受けるけどよ。地竜みたいにヤバい魔物の時は複数のパーティが力を合わせて討伐するんだよ、それが『レイド』って奴だ。報酬はパーティ割になるけど、そもそも『レイド』になる魔物自体報酬がべらぼうに高いからな、討伐さえできればかなり実入りはいい。但し報酬は多い方がいいってみんな考えるから集めるパーティは極力少なくなるな。少なくなりすぎて失敗したら目も当てられねえけどな、その辺がレイドリーダーの腕の見せ所よ。まあ今回はギルマスが頭になると思うからギルマス権限で強制的に人手は集めると思うが失敗しないとは限らねえ」


要するに『尾無し』って地竜を他のパーティと協力する『レイド』って奴で倒そうって話だな。報酬はパーティ毎に分けるけど、かなり美味しいって所か。


「取り合えず師匠達に従うって事でいいです」

「てめえ、折角説明してやったのに・・・・まあ、ギンの事はどうでもいいか、それで誰が街に戻って報告する?」


ここに地竜の巣があった事をギルドに報告に行かないといけないが、全員で戻る訳にも行かないので、誰かが代表して街に戻る必要があるそうだ。


「この穴から馬鹿が入っていかないように見張りが必要だからな。4人は残すか、あとは街からギルマスが来るまでここで待ってないといけないから食い物の補充も必要ってなると買い出し担当のターニャが街に戻る方がいいな」

「分かった」

「もう一人はギン、お前が行け。『快足』持ちだから移動時間が短縮できるだろ」

「分かりました」


師匠の指示で俺もターニャさんと街に戻る事になった。ターニャさんの護衛兼荷物持ち要因だ。今日は時間も遅いのでここで野宿して明日街に戻る事になった。


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