39話 光苔採取と洞窟発見
本日2回目です
疲れた~。大ムカデは一人の時は相手しない方がいいな。っていうかこいつの素材ってどこがいるんだろ?
「すまん。助かった。・・・・お前『最長』か?ここにいるって事はもうFランクになったのか。早えな」
パーティを代表して盾持ちの男が俺にお礼を言いに来た。他のメンバーはその様子を少し警戒するように見ている。渾名についてはもう何も言うまい。
「いや、別に下に行きたかっただけだから、気にしなくていいさ。それよりも俺の貸した装備は返してくれよ」
ハンマー使いと女騎士に聞こえるように言うと、二人とも俺が貸した武器を素直に持って来てくれた。
「いや、この剣すごい切れ味いいな。ムカデがサクサク切れたぞ」
「こっちの短剣もあの固い甲殻が紙みたいに簡単に切れたわ」
武器を貸した二人が大絶賛してくれる。うん。分かるけどその武器の出所はヤバいからね。物欲しそうにしてもあげられないよ。二人から武器を受け取りカバンに放り込むと驚かれたが何も言われなかった。まあ「魔法鞄」と思われたんだろう。
「いやあ、ホントに助かったよ。俺はこの『鉄扇』のリーダーのウィートだ。『最長』の名前は?」
「ギンだ。光苔の採取で初めてここまで来たんだけど、ムカデってこの洞窟結構多いのか?」
多かったら、この洞窟は諦めて別の採取場所見つけないといけないな。
「いや。大ムカデは滅多に出ないな。俺達も今日初めて遭遇してあのザマさ、F寄りだけどEランクの魔物だからな。俺らには少し早すぎた。すぐに撤退するべきだった」
へえ。このムカデEランクの魔物なんだ、俺が敵うはずないか。でも滅多にでないって事だし、しばらくはここで採取依頼こなしてみるかな。
「そうか、滅多にでないなら良かった。じゃあ、お前らも気を付けてな」
「ちょ、ちょっと待て。このムカデほったらかしか?俺らが貰うぞ」
ああ、そう言えば、助けたら、その時の魔物は助けた奴の物って言われたな。すっかり忘れてた。でも俺が一人で倒した訳じゃないし、俺が全部持って行くのも悪い気がするな。
「ムカデはいらないから代わりに情報をくれ」
「おい、マジか。ホントにいいんだな?みんな聞いたな?もう撤回しようとしても遅いからな?」
リーダーが慌てて俺に確認する。師匠とギースさんに散々言われたが冒険者は一度でも相手が得をする言葉を口にした場合は、撤回できないみたいだ。
「撤回なんてしないから安心しろ。それよりも情報が欲しい。ギルド職員のポーラスって奴のせいでこの洞窟の魔物について聞けなかったからその情報が欲しい」
俺がポーラスの名前出した途端みんなすごい嫌そうな顔になった。あいつ俺以外にも結構やらかしてるのか?
「よし、お前ら、ギンからもちゃんと言質とったから素材の回収頼む。それでまずはポーラスからな。あいつには俺らも酷い目にあった、多分ギンも同じだろ?俺らはあいつからここの地図銅貨5枚で買ったんだよ。その値段がおかしいって気付いた時にはもう遅かった、文句も言ったが地図は正確だったから俺らが騙されたって証拠がどこにも無いから信じて貰えなくて泣き寝入りさ。他の冒険者に聞いたらあいつが絡むと必ず騙されるらしく、しかも証拠が残らないような騙し方するから近づかないのが一番だと言われてるぞ」
あの野郎、俺だけじゃないのか。ムカつくな。いつか仕返ししてやる。
「次は魔物の情報だったな。ここは基本、蝙蝠と大ミミズと赤土竜、大ムカデが出現するな。蝙蝠は初心者クエストで知ってるから省略するぞ。大ミミズは家畜の餌になるから全て素材になるな、魔石は見たら分かるが体の色が違う所にある。今倒した大ムカデは頭と尻の長い部分が素材になる。魔石は体のどこかにあるから探すの結構大変だぞ。赤土竜は爪が素材で魔石は体の真ん中付近にあるな」
説明を受けてチラリと『鉄扇』のメンバーを見ると、ムカデの体を切り刻んで手を突っ込んで魔石を探しているから、体がムカデの体液まみれになっている。俺にはちょっと無理そうなので譲ってよかった。
「そうか、情報ありがとう。それじゃあ気を付けて」
「ちょ、ちょっと待て、ギン。下に降りるのか?光苔の採取って言ってたな。どうだ?下まで一緒に行かないか?苔の生えてる所教えてやるよ」
立ち去ろうとすると、ウィートから引き止められた。そう言えばポーラスのせいで光苔がどんな奴かも確認できてないんだった。見た事も無いから『探索』でも見つけられないし、ウィートの提案は丁度いいな。のっておこう。
「それは助かる。ポーラスのせいで光苔がどんなのか聞くの忘れてたからな。そう言えばそっちは何の依頼受けたんだ?」
光苔の採取だったら取り合いになりそうで嫌だったけど、誘ってくれたって事は違うんだろう。
「俺らは鉱石集めさ。6人もメンバーがいれば、これが一番安定して安全だからな」
「そうなのか?場所取りがキツイって聞いたぞ?」
「そりゃあ、ギンみたいにソロはきついだろうさ。俺らは採掘ポイントが空くのを待ったらメンバーと交代で休みながら出来るからな。持てるだけ採掘したら帰る。簡単だろ。採掘ポイントは誰かが採掘してないといけない決まりだからな。ソロだと休憩も出来ないからキツイだろ」
やっぱり聞いていた通りソロだと採掘はきついな。
「よし、素材集め終わったな。ギン、下に歩きながら話そう」
そう言って『鉄扇』のメンバーと地下5階を目指す。多分こいつらは何度も来ているんだろう。地図を見ずにどんどん進んでいく。
「それでギンは魔法が使えるのか?使えるなら是非うちのパーティに入ってくれないか?」
歩いているといきなり勧誘された。あれ?俺『影魔法』使ってなかったよな?・・・ああ、『火炎放射』使った時、「火魔法!」とか驚いていたな。多分そっちだな。
「いや、あれは魔法じゃないぞ。生活魔法の組み合わせだ。ほら、こっちで『火』こっちで『風』起こすだろこれを合わせたら、ほら!出来た」
「「「「・・・・・・・」」」」
何で無言。反応しろよ、何かスベったみたいで恥ずかしいだろ。
「お前それどうやってんだ?いや、やり方は聞いたから分かるんだけど、何で二つ同時に生活魔法使えるんだよ。しかも無詠唱じゃねえか」
ウィートが驚いて聞いてくるが、出来ちゃったんだから仕方がない。
「出来ないのか?」
「出来ねえよ!」
即否定されるけど、出来そうな気がするんだけどな。
「ウィート、ちょっと生活魔法の『火』出してみ、そんでそっちの女騎士さん「サーリーだ」、サーリー『風』だして。ほら出来た。簡単じゃないか」
「確かに出来たけどよ。ギンみたいに一人で出来ねえぞ」
「練習すれば出来るんじゃね?まずは片手に別々の魔法使えるようになって、それが出来たら片手で二つ発動するイメージだな」
それぞれに火と風を発動させて両手を使って『火炎放射』を作り、それから片手でも『火炎放射』を作ってみせる。
『鉄扇』メンバーは俺の説明を聞いてそれぞれ練習しているが上手くいかないみたいだ。そうしてみんな集中しているが俺のマップに反応があるので練習は一旦中断だ。
「おい、敵だ。正面から3匹、1匹は俺がやるから後の2匹は頼む。」
そう言い残して、俺は先行して岩陰に隠れる。しばらくすると、赤土竜が3匹俺に気付かずに通り過ぎる。『潜伏』スキルは相変わらず便利だ。赤土竜も『鉄扇』の奴らに気付いたのか警戒態勢で向かって行くが戦いが始まる直前に俺が後ろから1匹に襲い掛かり短剣で喉を掻っ切って仕留める。すぐに残り2匹が俺に気付き攻撃して来ようとするが、そうすると『鉄扇』の奴等に背中を見せるので、ハンマー使いとサーリーが一撃で仕留めて戦闘終了。
「ふう、仕留めたから1匹は素材もらうぞ」
「ああ、当然だ文句なんてねえよ。しっかし、えらくあっさり倒したな。赤土竜3匹なら俺達だけでも苦戦はしないが、こんな短時間で終わらないぞ」
って事は赤土竜はそんなに強くないのかな?まあ、Fランクの討伐対象にいるぐらいだし、そうなんだろうな。
「そうなのか?まあ、たまたま今回は上手くいったんだろ。それよりもこれ1本づつ切り取るのか?」
「いや、そうじゃねえ。手ごと切り取ってくんだ」
教えられた通り手を切り落としてから魔石も回収する。
「これでいくらになるんだ?」
「どっちも銅貨1枚よ、それよりも何であんなに戦い方が上手いの?」
サーリーが買取価格を答えてくれた。まあ、そんなに高くないと思ってたから驚きはない。戦い方が上手いのは師匠とギースさんの指導のおかげだろう
「そりゃあ、師匠とギースさんが教えてくれたからな」
答えると今度はウィートが興奮したように俺に詰め寄ってくる。
「そうだ!お前ガフさんとギースさんに教えて貰ってんだよな?ずりいぞ。ベテラン二人から指導してもらって!」
「俺は指導員制度利用したからな。ずるいとか言うならお前も指導員制度利用すれば良かっただろ?」
「ぐ・・・・金が無かった。あってもギースさんはDランクだから絶対指導員にはならなかった」
そう言えば普通はDランクは指導員にはならないってミーサさんが言ってたな。ギースさんがケガして師匠がたまたま暇だったから依頼を受けて貰えたから俺はかなり幸運だったみたいだ。ウィートの奴ギースさんに指導してもらいたかったのか?
「それなら今からでもギースさんにお願いしてみろよ。訓練ぐらい付き合ってもらえるんじゃねえか?」
多分ギースさんなら1杯でも酒奢ればOKしてくれそうだけどな。
「いや、恐れ多くて頼めない。何でギンはあんなベテランに物怖じせず楽しそうに話せるんだよ」
ウィートの言い方からランクよりもベテランって所が引っかかるのか?それとも二人の顔かな?
「二人とも顔が怖くて口も悪いが意外と優しいぞ。教え方も上手いし」
「ギンはあの二人怖くないの?」
今度はサーリーが聞いてくる。最初は怖かったけど捕まれば殺される鬼ごっこを1ヶ月続けてきたから我慢できた。なんて言えるはずもなく。
「最初は怖かったけど話をしてみるとかなり良い人達だってわかるぞ。そんなに気になるなら俺からギースさんに話をしてやろうか?多分酒の1杯でも奢れば上機嫌で稽古でも話でもしてくれると思うぞ」
「ほ、ホントか?なら頼む!ギースさんに一度盾の指導受けたいって思ってたんだ。顔が怖いのとランクが上過ぎて声もかけられなかったんだ。あと新人の時にちょっと失礼な態度とっちまってな」
「何したんだよ?それによっては紹介できないかもしれないぞ」
「新人の頃に話しかけられてな、顔が怖かったから無理やり話を打ち切って依頼に向かったんだよ」
そのぐらいならギースさんは気にしてないだろ。スーティンから聞いてるし、後輩から声を掛けられたら多分嬉しがるはずだ。
「よし、採掘ポイントちょうど空いてるぜ。みんなはこのまま準備して採掘始めててくれ、俺はギンを苔のポイントまで案内してくる」
5階は今までの洞窟ではなく広い空間になっていた。そして見た目どこにでもあるような岩肌までくると、ウィートが仲間に指示を出した後、仲間と別れて俺を案内してくれる。
「結構掘ってる奴いるな」
5階まで降りてくると、色々な場所からカンカン音が聞こえてくるので、採掘に来ているパーティは多いみたいだ。
「まあ、この洞窟はそれがメインの奴等が集まるからな。ほら、あそこの地面が光ってる場所、あれが光苔だ」
ウィートの指差す方向を見ると言われた通り地面が光っている。結構広範囲で光っているので、採取は簡単そうだ。
「あれか、ウィートありがとう。色々助かった」
「いや、こっちも助けてもらったからな。それよりも勧誘の件、考えておいてくれよ。生活魔法だけじゃなくて、戦いの上手さも含めて勧誘しているからな。俺らが街まで戻った時にでも返事をくれ」
勧誘は俺が魔法使えると勘違いしてたからだと思ったんだけど違うのか。パーティ組む気はないけど、ここで断るのも失礼かもしれない。師匠に断り方を聞いてから断る事にしよう。
ウィートに返事はまた後でと答えてから光苔の採取を始める。結構生えているので採取自体はすぐに終わる。終わったのだが・・・
さて・・・・また見つけちゃったな。どうするか・・・
『探索』のマップには壁の向こうに通路がある事がわかる。確認したが、その通路は片一方はしばらく進むと外に繋がっていて、もう片方を進むと今いる5階と同じぐらいの大空間が広がっていてこっちも外に繋がっている。こっちと向こうの洞窟は近い所でも1mぐらいは掘り進めないと繋がらないので前みたいに隠し通路って感じではなく、たまたま洞窟同士が隣接しているだけだと思う。
(師匠。いつでもいいので連絡下さい)
取り合えず師匠に報告だ。師匠達が戦闘中だとまずいので、師匠を呼び出して連絡が来るのを待つ。誰にも見られないように『自室』に戻り、寛いでいると師匠から連絡が来た。
(よお、どうした?っていうか『念話』って距離関係ねえのか?お前今南の洞窟だろ?俺らは北の村の先だからかなり離れてるけどそれでも繋がるんだな)
『念話』スキルに感心している師匠だが、俺は早速本題に入る。
(師匠、南の洞窟で隠し通路って訳じゃなくて、隣接している洞窟があるんですけど、どうしましょう?)
(な!マジか!あの辺他に洞窟があるなんて聞いた事ねえから。多分誰も知らない洞窟だろうな・・・・ホントお前の『探索』スキルずりいよな。それよりもうちょっと詳しく聞かせろ)
師匠に現状を詳しく教える。
(そうすると、宝とかはなさそうだな。広い空間があるなら採掘ポイントが増えそうだけどな。取り合えず俺らも依頼終わらせてから、街に戻るからギンも一度街に戻ったら俺達と合流な)
師匠からの指示を受け、その日は時間も遅かったので『自室』で寝て過ごした。やっぱりこのスキル野宿する必要もないし、魔物とかも気にしなくていいからすげえ便利だ。翌朝街に戻る時に、『鉄扇』の奴等の近くを通るとウィートに話しかけられる。
「ギン、まだ採取・・・いや、もしかして寝てないのか?だったら少し俺達のテントで休んでいけよ」
休むように誘われるが周りからカンカン音がして五月蠅い場所で寝れるわけない。俺は昨日は『自室』でゆっくり寝たので全く疲れていない為、その誘いを断る。折角誘ってもらったのに断ってしまい悪い気もしたので、お詫びも兼ねて人数分葡萄を渡す。「鉄扇」の女メンバー2人は葡萄を貰って喜んでいたから、そこまで印象は悪くなってないと思うのでお願いをしてみる事にする。
「なあ、一つピッケル売ってくれないか?俺も採掘やってみたい、・・・お前らの場所ではやらないから安心してくれ」
ピッケルを欲しがると少し嫌な顔をしたメンバーもいたが、俺が別の場所で採掘すると分かると表情が戻った。やっぱり場所取りが面倒くさそうだ。
「ああ、いいぞ。ホントはこういう時は倍の値段で売りつけるけど、ギンには葡萄も貰ったから正規の値段でいいぞ。銅貨1枚な」
銅貨1枚をウィートに渡してピッケルを受け取り、採掘という名の誤魔化しを始めようとした所でどれが鉱石なのか全く理解していない事に気付いた。
「ウィート、どれが鉱石か俺、全然分かってなかった。今回採掘した鉱石見せてくれ」
「う~ん。ポイントが狙われるから見せたくないんだけどな」
ウィートの言う事も確かに分かる。いい鉱石が出た事が分かればそこが取り合いになるもんな。それでも俺はどうしても鉱石を確認しないといけない。いや教えて貰うってのもアリだな。
「ウィート、授業料銀貨1枚で俺に鉱石の事を教えてくれ」
取り合えず銀貨1枚から交渉を開始してみる。駄目ならもう少し出してもいいかなとか思いながら銀貨1枚をウィートに差し出すと、
「よし!分かった!バッチシ教えてやる。しっかり聞いとけ。お前ら、俺の番は飛ばしてやっといてくれ!」
速攻で食いついてきた。ウィートの代わりに俺が、私が教えるとメンバーが文句を言っているが、もしかして銀貨1枚は多すぎたのか?
「よし、ギン、ここじゃあ他の連中に見られるからそこのテントに入れ、ちょっと狭いけど、このテントの中に今回採取した鉱石をまとめていれて他の奴等から見られないように隠しておくんだ。どのパーティでも一つは休憩用、一つが鉱石隠す用でテント持ってきてるからな」
へえ~。二つテント張ってるから男女用だと思ってたけど違うんだ。これだけ徹底して隠すって事はやっぱり価値のある鉱石もよくでるのかな?
「で、今回っていうこの洞窟でよく出るのが、この炭鉱石と鉄鉱石だどっちもこれぐらいの量で銅貨1枚だ」
片手で一杯に持てるだけの量を見せてくれながら説明してくれるウィート。
「大体2時間でこれぐらい採掘できれば普通だな」
2時間って俺の価値観だと時給500円にしかなってないぞ。いや、これが良く出るから、これよりいい鉱石が出ればその分時給があがるって事か。
「こいつが赤鉱石と銅鉱石どっちも似た色だからな、まあ買取価格も同じだから区別できなくても大丈夫だ。でこれが大体銅貨5枚だな。1日で数回でてくるって所か、それからギン、大声だすなよ、これが今回の採掘、今の時点で一番価値がある緑鉱石だ。これが大体銀貨1枚だ。これはまあ10回に2~3回採掘出来たらいい方かな」
そうか、俺が現時点で最大の稼ぎと同じ額払うって言ったんだもな、ノリノリで教えてくれるはずだ。それにしてもこれが鉱石か結構重いな。
しばらく各鉱石を触らしてもらいながら、色々質問をしている。採掘をしているFランクは鉄鉱石、炭鉱石の採掘依頼を受けて持てるだけ採掘してから街に戻るみたいだ。戻ったら納品して依頼を達成してから余った鉱石は売り払うので、やっぱりそこそこいい稼ぎになるらしい。そこからしばらく話をしてからテントを出て採掘ポイントに足を運ぶ。
さて、ここからは師匠からの指示通り、隣の洞窟との間が一番狭い場所でピッケルを振る。そう、師匠からの指示で俺が採掘している時に違和感を感じたっていう設定で隣の洞窟を見つけた事にするのだ。本気で採掘する訳ではないけどピッケルで削った石ころに貴重な鉱石があればみんなここを採掘し始めるので、一応ウィートから鉱石の説明を受けていた。これも師匠の指示だ。1時間程ピッケルでカツンカツンやって、『探索』で何も鉱石が出てこなかった事を確認してからウィート達の元に帰る。
「全然駄目だぞ。このピッケル不良品じゃねえのか?」
「アハハハ。今日初めての奴が適当に選んだ場所でそんな簡単に掘れるかよ」
「ピッケルが不良品とか文句言うやつ初めてみた。アハハ!」
俺が文句を言うと『鉄扇』メンバーは大声で笑い出す。その声は洞窟中に響くぐらい大きく、他のパーティからも失笑が聞こえてくる。これで俺が掘ってた場所は誰も気にしないだろう。
「俺に採掘が合わない事が分かっただけで良かった、それじゃあ、ウィート俺は街に帰るからな」
「おう、気を付けてな。俺らも明日にはここを離れるから戻ったら酒でも飲もうぜ」
『鉄扇』のメンバーにも挨拶をしてから洞窟の出口を目指す。途中何度か赤土竜に遭遇したが、数が多かったので『潜伏』スキルでやり過ごして出口を目指した。外に出ると、採掘で時間が掛りすぎたみたいで思っていたより辺りが薄暗くなっていた。このまま街に戻っても門が閉まっている時間なので、洞窟を出た所で少し道を外れ『自室』に入り休む事にした。




