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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
第3章 水の国境都市のFランク冒険者
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37話 投擲スキル

『自室』の布団で目覚めていつもの安宿を後にする。昨日はあの後ワインを半分ぐらい飲んだ所で俺は師匠達の家を後にした。帰る時は5人とも酔っていたから、今日は『投擲』スキルを教えて貰えるのは昼からになるかなと思いながら、ギルドに来ると既にエステラさんが掲示板を眺めていた。


「おはようございます。早いですね。昨日の様子から今日は昼からになると思ってました」

「ああ。おはよう、ギン。昨日は美味しいお酒ありがと。みんなはまだ寝てるわ。私は昔、娼館で働いていたからお酒には強いの」


なんかすごい事言ったぞ。そうするとエステラさんって昔娼婦だったのか。まあ、確かに今着ている服も露出が多いし、なんとなくそういう雰囲気があるな。でも何で娼館で働いたら酒に強くなるんだ?


「幻滅した?ただ、そのおかげでケインに出会えたから別にどう思ってくれてもいいわよ。」


表情を変えずにエステラさんは見当違いの事を言ってきたので変な勘違いをさせたみたいだ。


「勘違いさせたみたいで、すみません。何で娼館で働いていると酒強くなるのかなって思って」

「そっち?ホントにギンは変な子ね。娼館にもよるけど私が働いていた所は客に指名されたら一緒にお酒を飲むの、それでいい具合に酔ったら部屋に行くのよ。飲めない人はそのまま部屋に行くけどね。だから休みの日以外はほぼ毎日お酒飲んでたから強いのよ」


へえ~。俺は『猫宿』以外知らないけど、そんな店もあるんだ。


「ギンは今日これから暇?暇ならあいつらが来る前に『投擲』スキルの練習しない?」


おお、そのお誘いは有難い。少しでも早く俺も習得したいぞ。


という事で二人で訓練場まで来て、訓練を開始する。って言っても投げナイフを的に当てるだけなんだけど、俺は結構外すが、エステラさんは投げると必中で外す事はない。


「さて、練習は終わりね。今どれぐらい当たったか覚えておいて。それじゃあこれから『投擲』スキルを教えるわ。ギン、ナイフを構えて」


言われた通りナイフを構えるとエステラさんが背後からナイフを持った俺の手に自分の手を添えてくる。


「今から私がフォローするから的に向かって投げて、背中の感触は楽しまないで手に集中してね」


ギクッ。背中に当たるエステラさんの胸の感触にドキドキしていたのがバレバレだったみたいだ。言われた通り背中じゃなくて手に意識を集中して投げる。・・・・・うん?


投げたナイフはしっかり的に当たったが、投げる瞬間何か違和感があった。何かに包まれたような感触だったが、


「すみません。もう1回お願いしてもいいですか?」


エステラさんにお願いしてもう一度投げる。今度も包まれる感覚があったので勘違いではなさそうだ。今度はエステラさんの補助無しで投げると包まれる感覚はない、投げたナイフは的を外れる。この謎の感覚がヒントだと思うがそれが何か分からない。


「エステラさんが補助すると投げる時に手が何かに包まれる感覚になるんですが、これって何か分かります?」

「あっ、やっぱり分かるんだ。そうなの、私が一緒に投げるとみんな手に違和感があるんだって、で、それを覚えれば『投擲』スキルが身につくのよ。他の『投擲』スキル持ちとも色々調べてみたけど、他の人がやるとその違和感がなくて私が教える時だけ違和感があるみたいなの。ただ私もその違和感が何か分かってないの、他の人と同じで普通に教えてるだけなんだけどね」


う~ん。そうかやっぱりあの違和感がヒントか、でもこれなら分かり易いな。


「あとはその違和感を考えながらひたすら練習してると覚えるみたいだから、頑張ってね。その『投擲』スキルは、当たり前だけど投げた後に相手が躱したら当たらないからね、当然投げたナイフなんかも弾かれるから過信し過ぎないように。あと投げても届かない場所だと絶対当たらないから」


まあ、当たり前か。ホーミング機能とか飛距離無視とかおかしいもんな。届く距離の範囲で狙った所に正確に飛んでいくスキルって事だと思うけど、それでも便利なスキルだと思うので習得目指して練習するか。




昼までひたすらナイフを投げまくって練習を繰り返している。たまにエステラさんにお願いしてあの違和感を感じさせてもらっていると、大体20~30回に1回は自分でもあの違和感を感じて投げられるようになってきた。


「おお、やってんな」

「あんた達いつまで寝てんのよ」


練習をしていると、昼頃に師匠達がゾロゾロやってきた。エステラさんはこの時間まで待たされたので暇だったのかメンバーに文句を言う。


「ガハハハッ。まあいいじゃねえか。今日は優し目な依頼を受けて準備するだけだからな。今からでも時間は十分にあるぜ。ギンの方はどうだ?『投擲』スキル覚えられそうか?」

「この子1回目から違和感を感じたから中々才能があるわよ」


エステラさんがそう言うと他のメンバーは少し驚いた顔をする。


「へえ~、たしか1回目から感じとった奴ってターニャだけだろ?それなら取得早そうだな、ターニャで確か1ヶ月ぐらいだったよな」


ケインさんの言葉にターニャさんが頷く。


「それなら後は練習あるのみ。俺らは依頼見に行って飯食いながらどれにするか話し合うぞ。ギンはどうする?まだ練習しとくか?」

「俺も切り上げて依頼見に行きます。何がいいかアドバイスして下さい」


俺も練習を切り上げて師匠達とギルドに歩いて行く時にふと思った。この5人がパーティ組んでるんだよな。


「そう言えば師匠達のパーティー名って何て言うんですか?」


そもそもパーティ名とかあるんだろうか?『ドアールの羽』ぐらいしか知らないから、もしかしたらあんまりパーティ名付けるのは一般的じゃないのかもしれない。


「あれ?言ってなかったか?俺らは『カークスの底』ってパーティ名だ。最初はギースとケインの3人パーティだったが、あとからエステラとターニャが加わった」

「へえ~。最初は3人だったんですね」

「前に俺とガフとケインの3人で下水で暮らしていた事があるって教えただろ。その時の街の名前が『カークス』、闇の国の交易都市『ダークカークス』だ。その街の下水で暮らしていたからな、そこから下がる事はない、後は上がるだけって事で『カークスの底』って名前にしたんだよ」


ギースさんが名前の由来を丁寧に教えてくれる。やっぱり街の名前をパーティ名につけるのが一般的なのかな?まあ、その辺はパーティが組めない俺には関係ないか。





今はギルドで飯を食べながら依頼について師匠達が話し合っていたが、結局ギースさんが長期休養するハメになったオークにリベンジしたいという事でオーク討伐の依頼を受ける事にしたみたいだ。


「俺はどの依頼受けたらいいと思います?」


師匠達の話が終わったので、アドバイスを貰おうと話を振ってみると、


「まあ、この間行った南の洞窟がギンのランクと同じ奴等も大勢いるらしいからな。ソロのギンはそこがいいんじゃないか?何かあってもすぐに助けてもらえそうだしな」


ギースさんが的確なアドバイスをしてくれる。確かにソロだと何かあった時助けてくれる人が近くにいる方が生き残る確率が高いな。って事で行先は南の洞窟に決定。


「う~ん。そうすると、そこの採取系って何があったかしら?鉱石系が多いイメージがあるけど、ソロだとちょっとね」

「何か面倒くさいって聞いた」


エステラさんとターニャさんも何か知っているみたいだ。俺もミーサさんから注意されたので鉱石系の採取は受ける気はしない。


「ミーサさんからもソロだと場所取りが厳しいからおススメしないって注意されました」

「採掘ポイントはパーティメンバー内で交代しながら採掘してずっと占領しているって話は本当だろうな」


ケインさんの話が本当ならソロの俺は寝る事もせずに採掘しないとすぐに場所がとられてしまうな。やっぱり採掘はしない方向に決めた。


「そうなると、光苔、目無魚、暗闇草とかか。目無魚は釣り竿買わねえといけねえし、暗闇草は探すのが面倒だから光苔が一番マシか」


「いや、洞窟まで往復で1日、5階の最下層まで行って採取して帰ってくるまで1日。最低でも2日かかるのに報酬は銀貨2枚だろ。少し割に合わなくねえか?」


師匠の言葉にケインさんが待ったをかける。報酬が銀貨2枚だと最低2日かかるこの依頼は割に合わないらしい。確かに最低でも2日分+予備2日の食料が必要になる。全ての食事を干し肉とスープだけにすれば何とかなるが流石にそんな苦行をする奴はホントにお金がない奴だけなので、色々買いこむ事になる。更に戻ってきてから1日は街で休みたいので宿代とその間の飯代。そういう訳で普通の冒険者なら今回のクエストはほとんど稼ぎがないらしい。ただしEランクになると討伐系の依頼が多くなるのでFランクに上がった頃からEランクを見据えて武器防具を整えておく必要がある。だから割のいい鉱石採掘に人が集まるみたいだ。


そう考えると、師匠に教えて貰った銅貨3枚の安宿でも新人にしては高いのでは?と思い聞いてみると、新人は大抵銅貨1枚の大部屋で寝泊まりするらしい。俺は指導員制度最長で利用したから少しは金があるだろうと師匠は教えてくれたそうだ。本来であればFランクでも少し贅沢らしい。それなら『猫宿』って気軽にいける店じゃないって事がわかる。


「まあ、赤字になる訳じゃないから光苔の依頼を1回受けてみてどれぐらいの稼ぎになるか調べてみるといいかもな」


ケインさんはおススメしない、師匠とギースさんは試しに受けてみろ、エステラさんとターニャさんは鉱石系じゃなければいいんじゃないかと言う意見だったので、俺は光苔採取の依頼を受ける事に決めた。




「そう言えば師匠達の依頼って何日ぐらいで終わりそうですか?」

「そうだな、オークの発見次第だが3~5日ぐらいじゃないか?何かあったのか?」

「それなら、あれから大体20日ぐらい経ちますけど、帰ってきたら一緒に行きませんか?」


俺の『20日』って言葉にピンと来た師匠が顔を輝かせる。


「おお、そうか。もうそんなに経つか。なら戻ってきたら一緒に行くか」


話の内容は俺と師匠が分かるだけで他の4人は何の事か分かっていないのでポカンとしている。


「おい、何の話だ?二人だけで分かってないでちゃんと説明しろ」


ケインさんが師匠に詰め寄ってくるが、師匠が、


「明日の依頼の時に教えてやるよ。さすがにここでは言えねえ」


そう言うと、おとなしく引き下がる。他のメンバーも察したのか何か言いたそうな顔から表情を元に戻していた。


その後、俺は師匠とギースさんと訓練場で稽古をつけてもらい、二人と別れてからは『投擲』スキルを習得する為ひたすらナイフを投げていた。


ケインさんは自分達の家があるはずなのに「宿に行ってくる」と謎の言葉を残してエステラさんとターニャさんとどこかに行ってしまった。


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