35話 新人依頼完了
目覚めるといつものように影魔法で着替えて準備をする。まあ当たり前だがエレナはいない。昨日はエレナが出ていった後、そのまま寝てしまったので酒は飲んでいない。ただサラが悲しむといけないので、ワインを1本だけ机に置いて1階に降りようと部屋を出た所でサラが待機していた。多分部屋の掃除でもするんだろうサラは俺を見ても表情を変えずに掃除道具を手に持っていた。
「見つかるなよ」
サラの頭に手を置いてそれだけ伝えると俺は1階に降りて朝食を食べ始める。朝食を食べ終わったらギルドに向かうが、店を出た所で上から呼ばれたので見上げると、サラが笑顔で手を振っていた。一瞬だけ俺に瓶を見せた後、ペコリと頭を下げたので俺は手を振りギルドに向かった。
やっぱり奮発しすぎたかなあ~。今度エレナから怒られるかもしれないな~。
1本丸ごとあげたのを少し後悔しながらもギルドに足を運び、昨日師匠達から言われた通りにFランクの依頼を眺める。基本的に依頼はランクの低い物が多く、上に行く程少なくなる。だからFランクの依頼は一番多くあるので選び放題だ。
ふ~ん、やっぱり師匠達が言う通り採取系が多いな。後は他の村や街への配達も多いな、こういうのは特殊系だな。討伐系の数は少ないけど素材が欲しいって奴より村に近づく魔物を追い払えって奴がほとんどだな。そうして依頼の掲示板を眺めていると、
「ギンさんどうかしましたか?」
後ろから声を掛けられたので振り向くとギルド職員の制服ではなく旅装したミーサさんが立っていた。
「多分明日でラチナの実が終わると思うのでFランク依頼眺めてました」
正直に答えるが、もしかしたら「そういうのはFランクになってからだ!」と言われるかもと身構えたが特に何か言われる事はなかった。
「Fランクは結構鉱石集めが多いですね。ピッケル買っておいた方がいいですかね?」
「まあピッケルは必需ですね。1回の依頼で大体2~5本は使うらしいですよ。ただ私からは大きな声で言えませんが、鉱石集めは場所取りが激しいのでソロのギンさんにはお勧めしません」
そうか。そういう事なら鉱石集めはやめとくか。
「情報有難うございます。助かります。そう言えば出発はいつ頃なんですか?」
今日ミーサさんは『ドアールの羽』の生き残りと一緒に都まで行くのでギルドの制服ではない。
い。(不要な段落)
「8の鐘なので、もうすぐですよ。私は軽く引継ぎをしに来たのですぐに戻ります」
そう言ったミーサさんは職員と何か話をした後、ギルドを出ていくので俺も一緒についていく。
「見送りしてくれるんですか?そんなに気にしなくてもいいんですよ」
「一応関わってしまったし、あと師匠達が来るまで暇なので」
「そうですか、ありがとうございます。」
ミーサさんと広場にある乗り合い馬車の待合所まで行くとあの二人が暗い表情でイスに座っていた。
「ほら、もう時間ですから馬車に乗って下さい」
ミーサさんが二人の所に来るなり声を掛けると、二人はノロノロと立ち上がり、馬車に乗る為の列に並ぶ。
「お前ら、荷物の中に葡萄いれておくから、腹へったら食べろよ」
俺はそう言いながら二人の持つ鞄に葡萄を入れ、ついでに影から取り出した金貨も2枚づついれておく。これで娼婦以外の選択肢も選べるといいんだけどな。まあ、こればっかりは本人次第、俺もこれ以上は何もしない。ついでにミーサさんにも葡萄を強請られたのであげた。
結局二人は何も反応がないまま馬車に乗って行ってしまった。ホントにあんなんで大丈夫なのか不安だが、後はミーサさんに任せよう。
その後ギルドでしばらく上位ランクの依頼を眺めていると『念話』で店を出た事を教えてくれた師匠達がギルドにやってきた。
「悪いな。そんじゃあ俺らの家で準備してから行くか。なんか北の村の先にラチナの実がそこそこ落ちているらしいから今日は北に向かって歩いていくぞ」
師匠の指示に従い、準備を済ませて街を出発する。道中は近い所に反応があったラチナの実しか拾ってこなかったので北の村に着くまでに3つしか集まらなかった。
北の村はドアールと同じでエドワードの家の領地なので、俺達はギルドカードを見せるだけで村に入る事が出来た。所属が違うとここでも村に入るのにお金がかかるので、小さい村などは入らずにそのまま通り過ぎる商人や旅人も多いらしい。村に入ったのは昼も遅い時間だったが腹も減ったので、定食屋で遅い昼飯を食べる。師匠は食べながら店のおばちゃんに色々話を聞いている。
「もう少し北に行けばラチナの実が結構落ちてるらしいから飯食ったら出発するぞ」
飯を食べ終わった俺達はすぐに村を後にしてしばらく北に向かって歩くとマップに反応があった。結構ある・・・っていうかこれならすぐに終わりそうだ。
(師匠、この辺結構落ちてます)
俺が『念話』で状況を説明すると、師匠は立ち止まり周囲の様子を確認し始める。
「ギースこの辺どう思う?」
「俺達だけならいいが、今日はギンの指導だろ。なら最初はしっかり基本を教えた方がいいんじゃないか?」
「ならそうするか、もう少し移動するぞ」
2人で何やら話し合って決めると再び北に向かって歩き始め道がある程度直線の場所まで歩いた所で二人は足を止めた。
「よし、ここならいいだろ」
「ギン、さっきの場所は道が少しカーブしてて見晴らしが悪かった。たまに馬車や馬が通る時に気付くのが遅れて轢かれたって話があるからな。街道沿いの野宿は道がなるべく直線の場所がいい。それと当たり前だけど道の真ん中で野宿すると轢かれるし邪魔だから、今みたいに道の端に寄って野宿するんだぞ」
「それから野宿する場合は夕方前には場所を決めとくのがいいぜ。暗くなると色々準備が大変だからな。それじゃあ俺は枝を拾ってくるからギンは実を拾ってこい。ただし俺らに声が届く範囲までな。ギースは火を起こす準備をしておいてくれ」
師匠の指示に従いラチナの実をマップで探すとすぐに目標の数を拾い終わった。それでもまだ結構落ちているので、ある程度拾って今回だけで22個拾えた。戻ると既に師匠が枯れ枝を拾い終わってギースさんが石で簡単な竈を作って俺を待っていた。
「何個拾えた?」
「今日だけで22個です。これで必要数集まりました」
「そうか、なら良かった。そんじゃあギン、練習だからお前が火を起こせ。『生活魔法』使えば簡単だ」
またまた師匠の指示に従い簡易竈の前に座り『生活魔法』で火を点ける。うん。上手く点かない。風が吹いてないから空気が足りてないのかな。それなら片手で『火』を出して、もう片方で『風』を起こし空気を循環させる。しばらく待つと火の勢いが増してきた。
「ふう。点きました。やっぱり初めてなんで時間掛かっちゃいました。すみません」
「お、お、お前今両手で魔法使ってなかったか?」
火が点いたので時間が掛った事を謝りながら振り返ると二人は驚いた顔をしていた。すぐに師匠が慌てた感じで俺に質問してくる。
「うん?使ってましたか?・・・使えますね。こっちで『火』こっちで『風』ですね」
実演しながら右手から火、左手から風を生み出す。
「お、おい、ガフ、こ、これって『二重詠唱者』って奴か」
「い、いや、た、多分違え。だってギンのは『生活魔法』じゃねえか。」
「そ、そ、そうだよな。違うよな。でも何でギンは二つも同時に使えてるんだ?」
「知らねえよ!俺に聞くな!」
焦りまくっている二人。『生活魔法』だからそんな驚く事でもないと思うんだけど、『無詠唱』と同じで使える人少ないのかな?
「???」
「はあ~。ギースあいつ馬鹿だ。自分が何してんのか分かってねえ」
「だな、なんか一気に力が抜けたな」
「誰が馬鹿ですか。それよりも何驚いてるんですか?火点きましたよ」
2人は呆れながらも鍋を取り出してお湯を沸かしたり、干し肉を細かく切りだして夕飯の準備を始める。
「ギン、お前さっき両手で魔法使っただろ。もう1回できるか?」
夕飯を食べ終わると、師匠からさっきの『生活魔法』の事について聞かれた。
「出来ますよ。ほら」
言われて俺はさっきと同じように右手で『火』、左手で『風』を生み出す。
「無詠唱!」
あ!やべ!ギースさんに無詠唱の事バレた。
「はあ~。ギース、お前に言ってなかったが、ギンの野郎は『生活魔法』が無詠唱で使える。それと二つ同時に使える事は俺も知らなかった」
「俺も知らなかったです、気付いたら使ってましたね」
俺の言葉に呆れた顔をする二人。何だその顔流行ってんのか
「ホントにお前は・・・まあいい、ギン、俺もギースも『生活魔法』を二つ同時に使える奴なんて聞いた事ねえ。だからお前が使ってんの見て驚いた。無詠唱よりも珍しいって言うか、もしかしたらギンしか出来ねえかもな」
「でも『生活魔法』ですよ?二つ同時に使えたからどうだって感じじゃないですか?」
「・・・・まあ、そう言われればそうなんだけどよ」
「そうだな、なんかすごい事みたいに驚いたけど結局は『生活魔法』だよな」
なんとなく特別すごい事じゃないように話を持っていけたかな?ホントにすごい事でもないと思うしな。
◇◇◇
「野宿は見張りを交代でする必要がある、今回みたいに3人以上の時は最低2人は見張りだ。1人が寝ちまってももう1人が起こすからな。2人の時は仕方がないが1人ずつだな。1人の時は基本野宿は避けろ、やむを得ず野宿する時は出来れば他のパーティや商人のグループを見つけて混ぜて貰え。1人なら事情を話せば混ぜて貰える。混ぜて貰ったら見張りの順番は文句を言わずに素直に従うってのが暗黙の了解だな。ここで文句言うと追い出されても仕方ねえからな」
師匠とギースさんから火を囲みながら野宿について説明を受けている。『自室』で寝れる俺はあんまり野宿する事はないと思うが、一応ルールだけは理解しておいた方がいいので説明を真面目に聞いている。
「見張りの順番だが、パーティによって違うが俺らは基本リーダーの指示に従うって方針だ。俺がその時の疲労度なんかを判断して決めている。他は順番で回しているパーティもあるな」
疲労度で判断って身内だけじゃないと出来ないよな。パーティリーダーは普段のメンバーを様子も把握しておかないといけないのか。結構大変だな。
「ちなみに見張りは最初と最後が人気だ。寝て、起きて見張りしてまた寝るよりも、まとまった睡眠とりてえからな。魔物や賊が襲ってくるのは明け方は少ねえから新人をその時間の見張りにするパーティも多いって聞くぞ」
「あとは他のパーティと合流した場合だが、基本は人数が多い方に順番を決める権利がある。新人とベテランだった場合、ベテランの方が人数少なくても決める場合もあるけどな」
「そういう訳だ。あと何か聞きたい事があれば見張りの時にでも聞けばいい。で、見張りの順番だが、ギン、お前は最初と最後担当だ。最初からきつい順番にしたが、どれぐらいきついか体験しておいた方がいい。ガフは鼻が利くから最初と真ん中、俺が真ん中と最後の順番だ。いいな」
ギースさんはこうやって理由を説明してくれるので特に文句もなく納得して見張りを出来る。これで理由を聞かされてなければ新人につらい所を任せたのかとか思っていたかもしれない。
パチ、パチ
今師匠と二人で火を囲んでボーっとしている。正直暇で眠くなってくるが、少しでもウトウトし出すと、師匠から枯れ枝で頭を叩かれ起こされる。脇ではギースさんが寝ているので必要な時以外は話をする事も禁止されている。『念話』で話をしたら、師匠からは見張りに集中してろと怒られた。『探索』があるから敵が近づいてきたら警報が鳴る設定に今はしてあるので、3人とも寝てて問題ないが、今回は訓練なので我慢して見張りをする。
かなり時間が経過した気がしたが、暇すぎてそう感じただけで多分そこまで経っていないだろう時間に師匠がギースさんに交代の時間だと起こすので、俺が休憩する番になった。暇すぎて眠かったので、固い地面の上だったがすぐに眠りについた。と思ったらすぐに起こされた気がしたがもう時間が経過したみたいで、師匠が休憩に入る。3人で1回ずつ休憩なので1人3時間も寝れたら十分だと分かっているが、やっぱり眠い。ウトウトすると今度はギースさんから枯れ枝で頭を叩かれ起こされる。こうして何事もなく夜が明けた。
「く~。久々の野宿は堪えるぜ」
「だな。大分体が鈍ってんな」
朝になるとベテラン二人でも野宿はきついみたいで伸びをしながらボヤいている。そんな二人にどうしても聞きたい事があった。
「二人とも交代の時間ってどうやって分かったんですか?」
「ああ?そんなの勘だよ。って言いてえが昨日は星が出てだろ、その動きで大体の時間を見てたぞ。まあ雨の日はほんとに勘だけどな」
星で時間見るって俺には無理だな。そういうのは諦めておこう。
「あと、見張りの時って二人とも眠くならないんですか?」
「眠いに決まってんだろ。ただ寝たら魔物や賊の接近に気付かずに殺されるって考えると寝れねえだろ」
すみません。俺にはその覚悟が足りないからウトウトして寝そうになったんですね。
「ほら、もういいか、帰るぞ。今日は北の村で昼飯食ってから帰るからな」
ギースさんの指示で野宿場所から撤退する。作った簡易竈と焚火の処理はしっかりやっておく。山火事注意とかではなくて、そのまま残して行くと馬車や馬の通行の邪魔になるかもしれないからだ。昔どこかの国の騎士団が移動中に道の端に残っていた竈に馬が躓いてケガをしたとかで、竈を残したパーティが罰せられた事があったらしいので、ギルドでは作った竈は崩すように指導している。
帰りも順調に進み街の入り口まで来た所で俺は立ち止まる。俺が立ち止まったのを見て不思議そうに二人は俺を見てくる。
「師匠、ギースさん今日で指導は終わりです。今までありがとうございます。とても勉強になりました」
今日で指導最後なのでお礼を言うと、二人とも驚いた顔をしていた。
「そういや、そうだったな、今日までだった。でも前も約束したけど、たまには稽古つけてやるし、暇なときは依頼手伝ってやるよ」
「ああ、そうだな。ギンの事は気にいったし。別にここでお別れでもないしな。同じ街の冒険者だ。これからも宜しくな」
良かった。単に指導員だから俺に優しくしてくれてる訳じゃなかった。分かってはいたけど、少し不安もあった。二人はベテラン冒険者でランクも高い、指導期間終わったら、はいオシマイって言われる可能性も考えていたが、そうならなくて良かった。
「それじゃあ、二人とも俺の指導期間無事完了という事で記念に写真撮りましょう」
俺はカバンからスマホを取り出す。召喚された日に電源を落としたが『自室』では充電出来る事に気付き充電はしていた。電気がどこから来ているのか分かっていないが、電気の事なんてよく分からないので調べて壊しちゃいましたでは困るので、調べる気もない。ただ、電波はどうやっても入らないので、カメラや動画撮影ぐらいにしか使えないだろう。
「あん?何だそれ?鏡か?それにしちゃあ、すごいきれいに写ってんな?」
「ガフ、俺はもうギンが何しようが驚かない事にしたぞ、多分こいつ自身何も分かってないから俺らが驚くだけ馬鹿らしい」
なんかギースさんが酷い事言ってるが、実際その通りなんだよな、何が凄くて何が凄くないか全然分かっていない。
「ほら、二人とももっと俺に近づいて下さい。いきますよ」
カシャッ
3人写した写真の俺は笑っているが師匠もギースさんも困惑した表情を浮かべている。けど、まあいいか折角この世界に来て初めて撮った記念の写真だ。大事にしよう。
「おい、ギンこれ鏡じゃねえな。何だこれ」
「カメラって言ってその瞬間の映像を切り取って記録に残す道具です」
「いや何言ってんのか分かんねえ」
だよなあ、この世界の住人の師匠達に分かる訳ないよな。
「まあこういうのが記録に残るって奴です」
そう言って撮影した写真を二人に見せる。
「これはガフとギンと俺か?俺はもうちょいイケメンだろ」
「馬鹿野郎、まんまギースじゃねえか。俺はこんなに極悪人みたいなツラしてねえぞ」
「いや、二人とも全く同じ凶悪な顔してま・・・・イタッ!」
話の途中で二人から叩かれた。この二人マジで手加減せずに叩くから本気で痛いんだよな。
「まあ、変わった道具だけど、あんまり役に立たなさそうだな」
「まあ貴族なら買うんじゃないか。あいつら肖像画書かせてるから」
2人から見てスマホというより写真が撮れる道具の評価は低いみたいだ。売るつもりは欠片もないけど。
写真について二人の話を聞きながらギルドに行くとギルマスが待っていた。ミーサさんは今、『水都』に向かっているので、ギルマス直々に対応してくれるみたいだ。そうして個室に案内されるとすぐにギルマスが話しかけてくる。
「ギン、今日で指導期間は終わりだと聞いているが、どうだった?」
「すごく勉強になりました。個人的な意見ですが、1日が銀貨1枚以上の価値は十分にあると思っていますよ」
この世界の事、冒険者の事何も分かってない俺にとってはそれ以上の価値があった。当然ながらべた褒めする。
「そうか、そう言ってくれるとこちらとしても有難い、ガフを紹介して良かったよ、ところで何でギースまでいるんだ?」
「ギースさんも俺の指導をしてもらいました、すごく助かりましたよ」
主に師匠が二日酔いで役に立ってなかった時だけど言う必要はない。
「そうか、ギースもわざわざすまんな。」
「別に暇だっただけだ、後は鈍った体を動かしたかったからな。それに無償だったとは言え少し稼がしてもらったからな」
「それは、酒の件とエドワード様の件だろ。酒はどこで手に入れた?」
「さすがのギルマスにも酒の出所は言えねえな。まあすぐに話題になると思うぜ。それよりもエドワードの件はどうなったんだ?」
「あれは6代前の領主の弟だったそうだ。一応公式にはあの方は家を出て冒険者になったとなっていた」
「まあ、そんな所か。これ以上は貴族に関わりたくねえから、どうでもいいか」
師匠は心底どうでもいいように答えるその態度からやっぱり貴族には極力関わらない方がいいみたいだ。
「全く、お前は相変わらずだな。それでガフ、指導してみた感じギンはどうだった?」
「ん?ああ?全然問題ねえぜ。多分才能あるぞ。ギン、ラチナの実を渡せ。ほらギルマス、これで新人依頼終わりだ」
師匠に褒められてちょっと嬉しい。しかも才能あるって。
「・・・ホントだな。まだ16日目だぞ。指導員つけるだけでこんなに早いのか?」
「ホントは昨日拾い終わってたんだけどな。北の村の先まで行ってたから今日になった」
「取り合えず先に処理させてもらうぞ」
そう言ってギルマスはラチナの実と俺のギルドカードを持って出ていった。しばらくすると報酬銀貨1枚とギルドカードを持って来る。
「ほら、ギン、処理は終わった。お前は今からFランクに昇格だ、おめでとう」
「ありがとうございます」
「さて、これで用は終わりだ。ギン、分かってると思うが、ガフの教えをしっかり守れ。あんまり調子に乗ってすぐに死んだりしないでくれよ。これでお前の名前が有名になると指導員制度の有用性を理解した新人が出てくるかもしれないからな」
そう言ってギルマスは仕事があるからと立ち去ってしまった。俺達も用もなく個室にいる理由もないので、ギルドの食堂に移動した。




