32話 BBQ②
「ギン?」
俺と院長、シスターで肉を食べていると後ろから声を掛けられた。子供達は多分お腹が膨れたから昼寝をしていると院長が言っていたので姿が見えなくても気にしなくていいだろう。この場に残っているのは大人以外はガジと買い物についてきたうちの2人だが、お腹もある程度膨らみまったりした空気が漂っていた。
「エレナ?」
振り返るといつものキャバ嬢みたいな格好じゃなくて足首まであるワンピースを着た町娘の格好をしたエレナが立っていた。その隣にはサラまでいる。
「何でギンがここにいるの?っていうか何してるの?」
「飯食ってんだよ。見たら分かるだろ」
「いや分かるけど、何で外で?・・・ああ。院長これ今月分です」
外で食べているのが不思議なのか困惑した顔になりながらも、院長に何か手渡す。
「エレナ、サラ、いつもありがとうね。でもあんたたちちゃんと生活できているの?無理しちゃ駄目だよ。自分を一番に考えなさいよ」
「大丈夫だって。ちゃんと生活できているから心配しないでいいから。それよりも足の具合は?」
「大丈夫よ、ここ最近やる事が増えてね。足の痛みなんて考えてられないわ」
院長がチラリとこちらを見てくる。多分寄付した服を縫うのに忙しいんだろう。
「ふうん。まあ痛くないならいいけど。・・・それで何でギンがここにいるの?」
「今日はガジと湧水行ったから一緒に飯食べているんだけどいたらマズかったか?」
「いや、マズくはないけど、何で外で焼いて食べているの?」
エレナが不思議そうに聞いてくる横で、サラも不思議な顔をしている。
「エレナ姉ちゃん、これバーベキューって料理なんだって、お兄ちゃんが教えてくれた。外で食べると普段より美味しくなるよ。しかもこれ全部お兄ちゃんの奢りだよ。これなんてオーク肉だよ。すごいよね!しかもこれに付けるとすんごく美味しいの」
女の子が自慢げにタレの事も含めて全て話すが、話しているとどんどんエレナとサラが不機嫌になっていく。
「ふうん。何か怪しいですね。小さい子が好きなんですか?」
「ギン、何が目的?」
二人から詰め寄られるが俺には特に下心はない。その事を院長と女の子が説明してくれたら、怪しんでいた二人は何も言ってこなくなった。
「美味しい!」
「うま!」
エレナとサラも当たり前のように肉を食べ始めるが、タレと塩コショウを付けて食べるとと驚きの声をあげる。
「ねえ、ギン。これどうしたのよ」
「この街に来る前に行商人から買った」
誰かから探りを入れられるだろうと思っていたので、事前に考えていた架空の商人を言い訳に使う。
「このタレはまあそれで納得してあげるけど、こっちは塩と胡椒よね?胡椒なんて高級品をよく買えたわね?あとそれをこんなに提供するなんて、ホントに何が目的?」
質問攻めにされて焦る俺。この世界では胡椒って高級品なのか?提供したのマズかったかな。しかしエレナが俺を怪しんでくるから誤魔化すのも大変だ。いい理由も思い浮かばないし・・・・
ドン!
「飲むか?」
「飲む!」
話題を変えて誤魔化す為にワインを出してやるとエレナが即答する。さりげなくサラまでこっちに近づいてくるが、グラス2つしか持ってないんだよな
「グラス2つしかないけど」
申し訳なさそうにリュックからグラスを取り出すとエレナはさっそくワインを注いで飲み始める。どんだけ好きなんだよ。
「ガジ!スープ皿!私と院長達入れて3つ!」
サラがガジに命令しているが、こんな感じの子だったかな?もしかして『猫宿』ではキャラ作ってるのかな?しかし院長達まで飲むのか。
「偉そうに言うなよ。まったくサラは相変わらずだな。そんな性格じゃ客とれねえぞ」
「うるさい!いいからさっさと行ってきなさい!エレナ姐に全部飲まれちゃう!」
ガジに文句を言いながらもサラは肉も食べたいのか自分で動こうとしない。ガジはやれやれって感じで建物の中に入っていく。エレナはサラが心配している通りもう1杯目を飲み終わっていた。
「エレナ飲むペース早いぞ。ってエレナ達仕事は?」
そういえば『猫宿』は15時ぐらいから開店だったはず。今から飲んで大丈夫なのか?酒飲んで出勤は流石に怒られるだろ。
「今日は私達休みよ。だから時間気にしなくてもいいのよ」
「そうなんですよ。今日は時間も人目も気にしなくていいんでたくさん飲みますよ」
いつの間にかサラがスープ皿にワインを入れて飲み始めてるが、俺より年下だけどそんな事言って大丈夫なのか?院長達も同じようにワインを飲みその美味しさに驚いているが、誰もサラに注意する素振りは見せないって事は問題ないのかな?
「なあ、兄ちゃん。それってお酒だよな?俺もちょっと飲んで良い?」
ガジが聞いてくるがこれは飲ませてもいいのか?同じ年ぐらいのサラは気にせず飲んでるから大丈夫なのか。
「自己責任だからな、どうなっても知らねえぞ」
「えへへ、兄ちゃん、ありがと。サラ、ちょっとお前が飲んでる奴貸せ」
サラからスープ皿を奪うと一口酒を口にするガジだが、とたんにしかめっ面に変わる。口に合わなかったみたいだ。一緒にいる女の子2人も一口ずつ飲んで同じように険しい顔をする。
「うええ。これ変な味がする。美味しくない。サラは良く平気で飲めるな」
「あんた達が子供なだけよ。これが美味しいと思わないなんて勿体ない」
サラがそう言ってガジ達を馬鹿にするが、少なくても日本では俺より年下が言っていいセリフじゃない。
「ほら、お前らはこっちだ」
ガジ達に葡萄を渡してやると、喜んで食べ始める。
「酔った」
しばらく肉と酒を堪能していると、エレナが俺に寄りかかりながらポツリと呟く。そら、結構飲んだからな。ガジは酔いつぶれたサラに膝枕させられて困ってる。院長とシスターはさすがに酔いつぶれる事なく、ある程度の所で俺にお礼を言って仕事に戻っていったが二人とも結構飲んでたけど大丈夫かな。
「大丈夫か?孤児院の中で休むか?」
「ここでいい、しばらくこのまま外の空気吸ってる。ギンは片付け始めてくれる?」
そう言われてもエレナが寄りかかっているから俺は身動きとれないんだけど。取り合えず女の子2人に片付けを始めるように指示を出す、余った肉は孤児院に寄付だ。片付け始めると女の子達が起こしたみたいで昼寝をしていた子供達がまだ眠そうな目をしながら建物から出てきた。そうして酔った二人のせいで動けない俺とガジ以外が片付けをしていく。人数が多いからすぐに片付けも終わるだろうと思っていたが、
「あー!誰か葡萄食べてる!」
実のついてない葡萄の枝を誰かが目ざとく見つけて大声を上げると、チビ達が集まってくる。
「ほんとだー、だれー食べたの?」、「3つもあるーずるいー」、「昼寝してたから私じゃない」
子供達が騒ぎ出し、何人かは食べた犯人が分かったのか。視線を向けるが、向けられた3人は気付いていないふりをする。女の子2人は片付けしながらだから逃げられるだろうが、ガジ、お前は無理だ。サラの頭を膝に乗せて逃げられないガジはすぐに取り囲まれた。
「お前たちにも葡萄やるから並べ。食べたらちゃんと片付け始めるんだぞ」
子供達に囲まれて困ったガジを助ける為に葡萄を配る。元々その為に買ってきたので、あげても構わない。
「兄ちゃん。ポテチは?」
「ああ、こら!そんな催促したら駄目っていつも言ってるでしょ。お兄ちゃんなら許してくれるけど、他の人なら蹴られるよ」
葡萄を渡した一人からポテチを催促された。そう言えば湧水汲みに行く時あげる約束してたんだった。・・・・してたか?その子には女の子が優しく注意するが、注意した内容は全然優しくなかった。
「ああ、約束だったな。結構人がいるから、みんなで分けると少なくなるけど我慢しろよ」
そう言ってカバンからポテチを3袋取り出すとみんなポテチに興味深々で集まってくる。ガジとこの間食べた子は目がキラキラしてるな。
「ほら、食べていいぞ。喧嘩するなよ」
3袋全て開けてから食べていいと言うと、子供達が殺到してポテチを口に運ぶ。すぐに美味しさに感動の声を上げて騒ぎ出す。その騒ぎに酔いつぶれていたサラも目を覚ましたみたいだが、まだ気持ち悪いのか膝枕されながらガジからポテチを食べさせてもらっている。今日だけでサラの評価が大幅に変わった。『猫宿』だと年不相応なきちんとした接客態度で大人びて見えたけど、孤児院では年相応、むしろガジ達に甘えてる分幼く見える。・・・いや酔いつぶれてる時点で年相当じゃないけどな。
「ギンはホントに何者なの?お金も今日だけで一杯使っただろうし、タレとか塩コショウも使わせてくれて、更にこのポテチ?って美味しい食べ物まで出してくれるなんて」
ポテチを口にしながらエレナが俺の素性を探ってくるが、絶対に本当の事は言えない。
「だからただの田舎者だって」
「ふうん。ホントかしら?『最長』って渾名と一緒にどこかのお貴族様って噂も流れてきたけど?」
ギルドで指導員制度頼んだ時になんかそんな事後ろで言ってた奴等もいたな。まさかそんなデマがエレナまで届いてるとは思わなかった。
「違うってホントに唯の田舎者だって」
「まあ、田舎者は置いておいて、貴族じゃないってのはホントみたいね。ギンは全く貴族っぽくないしね」
貴族っぽくないってどうやったら貴族っぽく見えるんだ?偉そうな態度してればいいのか?
「まあ、素性の詮索はこれ以上はやめておく。今は子供達に優しいお兄ちゃんって思っておくわ」
「実際優しいお兄ちゃんだろ?無償でここまでしてやったんだから」
「そうね、今から対価を要求されても困るし、そう思ってるわ」
絶対そんな事思ってない口ぶりなので、少し不満が残るがこれ以上詮索されたくないので何も言わない。
「さて、お腹も膨れたし、酔いも少し醒めたし帰ろうかなって思ったんだけど、『コレ』どうしようかしら」
エレナは未だにガジに膝枕されているサラを呆れたように見下ろす。サラはポテチを食べたらまた寝たのか目を瞑っている。
「どうすんだ?ここに置いてくか?サラもこの孤児院出身だから特に問題ないだろ?」
俺の言葉にエレナは首を振って否定する。
「うちの店お付きの子は寮で暮らす事になってるの。基本外泊禁止、ただ例外としてお付きの姐さんの家なら指導や反省会って名目で泊ってもいいんだけどね・・・・仕方ないか、このまま寮に持って行くと誰かが惜しげもなく振舞ったお酒の事バレちゃうかもしれないし、私の家に泊めるわ。って事でギン、『コレ』運んで」
エレナはさっきから『コレ』扱いしているサラを指差して俺に運べと言ってくる。正直運んでる時に吐かれそうで怖いんだけど。
「何で、俺が?ガジ!お前やれ」
「ギン!誰のせいでこうなったと思ってるの」
俺のせい?酒出したのは俺だけど酔い潰れたのは自業自得だろ。
「それにガジ達は今から薪の準備とかチビ達洗ったりとか色々やる事があるのよ。だから責任持ってギンが運びなさい」
「え~。エレナが運べばいいじゃん」
「あら、じゃあ私の家は提供しないわ、そうすると酔い潰れた『コレ』は寮の子達からどうしたのか聞かれるでしょうね。あら、ギンがお酒持ってるってバレちゃうかも」
くそ、エレナめ。そう言われると運ばざるを得ないじゃねえか。
「分かったよ。運ぶよ。ガジ、サラを俺の背中に乗っけてくれ」
背中に乗せた瞬間サラが「ウッ」とか言うからかなり焦った。周りを見るとガジとエレナが少し距離を取って警戒している。やっぱり吐かれる可能性があるって事か。頼むから吐かないでくれよ。吐くならエレナの家でしてくれ。
ガジに改めてお礼を言われて別れたあと俺はエレナと歩き出す。
「しかしサラの奴酒癖悪いぞ。将来大丈夫か?」
「私もこんなになるなんて知らなかったわよ。元々大量にお酒飲める程お金も貰ってないから、酔いつぶれたのは今日が初めてだったんじゃない」
「まあ、起きたらエレナ姐さんからのきつい指導をお願いしとく」
「分かってるわよ。きつく言い聞かせておくわ。ただこれがお店じゃなくて良かったわ。これがお店なら私まで女将に怒られてた」
二人でサラの事を話しながらエレナの家まで歩く。途中サラが俺の背中で寝言なのか気持ち悪いのか声を出す度に緊張が走った。
「ほら、ここが私の借りてる部屋よ、どうぞ入って」
案内されたエレナの家は1人暮らし用のアパートだった。しかもアパートから『猫宿』が見えるぐらい近い。
「近くね?」
「私達が帰る時間考えなさいよ。近くないと危ないでしょ。まあ近くても危ないから店で雇った用心棒が帰りはついて来てくれるけどね」
この世界はそれぐらいしないと安心できないか。
エレナに指示されてサラをベッドに寝かせる。良かった吐かれなくて。よし、サラここまできたらいつでも吐いていいぞ。
「なんか酷い事考えてない?」
エレナが何か感じ取ったのか質問されるが、俺は首を振って否定する。ついでにサラを運んで疲れた腕を回したりして体をほぐしているとふと思った。
ここって女子の家じゃん・・・・初めて入った。気づけば何かいい匂いするし、緊張してきたな。
「ギン、今日は孤児院の事ありがと。あと『コレ』も運んでくれて」
緊張していたけど、エレナの指差す酔い潰れたサラをみて脱力する。
「じゃあ、次指名した時はサービスしてくれよ」
サラを見て一瞬でも緊張したのが馬鹿らしくなり、思わず品のない冗談を口にしてしまう。
「嫌よ、仕事と私生活は分ける主義なの」
この手の冗談は言われ慣れているだろうエレナがすぐに切り返してくる。
「そんな冷たい事ばっかり言ってるとナンバー1の座から落ちても知らないぞ」
「はあ~。ホント誰がそれ言い出したのか。別に私はナンバー1じゃないわよ。先月と恐らく今月もスーティンが1位ね。大体私がほとんどの指名を断ってるって聞いてるでしょ?売上なんて下から数えた方が早いわよ」
「え?そうなの?・・・まあ言われてみればそうだよな。って違う!売上じゃなくて人気が1位って聞いたぞ」
「それこそ、誰が言いだしたのか。指名された回数なんて店は数えてないから数字としては何も残ってないわよ。それに私は指名を断ってるから給仕の時間が長いの。他の子が指名に応じて人数が少なくなるからその分指名が増えるだけよ」
うん。言われてみればエレナの言う方が正しい気がする。
「そうか。まあ1位だろうが最下位だろうが、エレナはエレナだ。次は指名させてもらうからな」
「は~い。その時はワインも宜しくね」
くそ、絶対ワインが目的だな。これワイン無くなったって言ったら指名断られるんじゃね?
「はあ~。次指名するのやめとこうかな」
「嘘よ。冗談。ワインは気が向いた時に少し飲ませてくれるだけでいいわ」
ホントかよ。今日とこの前の飲みっぷりみてると信じられねえぞ。
「頼むからワイン無くなったら指名断るとかやめてくれよ。さすがにそれは凹むぞ」
「大丈夫、そんな事しないわよ。それより時間大丈夫?ガフ達と待ち合わせしてるんじゃないの?」
「ああ、もうそろそろ行くか。多分明日はゴブリンだと思うからその打ち合わせだな。」
「そう、気をつけてね。あっギン、ちょっと私もおんぶしてよ。サラを見てたらやってみたくなったわ」
「何でだよ。まだ酔ってんのか?」
「そう、酔ってるの。だから早く」
良く分からないがエレナの様子から背中で吐かれる事はなさそうなので素直におんぶしてあげる。
「アハハ、おんぶなんてすごい久ぶり。孤児院の頃を思い出すわ」
エレナはおんぶの何が楽しいのか俺の背中で上機嫌で笑っているけど、時折背中を嗅がれている気がするのは気のせいか?
「あ~楽しかった。ありがと、ギン」
しばらく俺のおんぶを堪能した後、楽しそうにお礼を言ってくるエレナに挨拶をしてからギルドに向かった。ギルドにはまだ師匠達の姿は無かったが、会いたくない奴等がいた。会いたくなかった『ドアールの羽』の連中は俺に気付くとこちらに向かってくる。
うわ~関わりたくねえ・・・けど無理だな、めっちゃこっち睨みながら向かってきてる。
「おい『最長』!てめえどういう事だよ?」
やってくるなり今にも胸倉を掴みそうな勢いで怒鳴りつけてくるが、主語がないので何を言ってるのか理解できない。
「どういう事?」
「だから、てめえあと2つで終わりってどういう事だよ。俺達の事騙したのか?」
もう何言ってるのか理解できない。騙すってなんだよ、騙して俺に何の得があるんだ?
「いや、何も騙してないだろ?何言ってんだ?」
「お前昨日俺らに1週目あと1つって言ってたじゃねえか?あれ噓だったのか?」
「いや、お前らに噓なんてついてねえよ。そもそも俺が嘘つく理由がないだろ?」
「俺達を油断させる為だろ!」
「お前ら油断させて何になるんだよ。俺に得なんてないじゃねえか」
もう嫌だ、言ってる事が理解できないこいつらとは関わりたくない。ホントに何が気に入らないんだ。
「とにかくあと2つで終わりだからって調子乗るなよ!絶対お前には負けねえからな!」
大声で怒鳴ってギルドから出ていくリーダーとその仲間達。また訳分からん絡まれ方したな。大体調子になんて乗ってねえよ。・・・「調子に乗ってる」か、ああいう奴らの常套句だよな、便利な言葉だ、金子達にも散々言われたな。
「よお、ギン!今の何だよ。あいつら『ドアールの羽』って奴等だろ?知り合いか?」
ギルドに丁度やってきた師匠とギースさんだが今のやり取りを見ていたみたいだ
「全然知らないですよ。妙に絡まれて困ってるんですよ。しかも師匠が目立たないようにって時間を考えて納品したのに、大声で俺の残り依頼の数バラしていきましたよ」
あいつらが残り二つとバラしたせいでさっきからチラホラ俺を話題にしてくる声が聞こえてくる。
「あいつ早くねえか?この間冒険者になったばかりだろ?」
「どうせガフとギースの手持ち買ったりしたんだろ」
「ガキ共を使ってたの見たぜ」
「指導員がガフだからそんなもんじゃねえのか?」
いくつか聞き捨てならない事を言ってる奴もいるが、
「ガハハハッ。バレちまったなら仕方ねえ。まあ色々好き勝手言われると思うけど気にすんな!」
師匠が笑っているので、俺も気にしない事にした。
「それでギン。ゴブリンはあと何匹だ?」
「あと18匹ですね。まあ2~3日でいけるかなって考えてます」
この前は半日で6匹狩れたから『探索』使えば最高でも3日かければ余裕だと思っている。
「明日は俺もギースもついていくからな。できれば群れを見つけてさっさと終わらしておきてえな」
「職員に群れの情報がないか聞いてみるか」
そう言ってギースさんは職員の所に向かっていった。そうか、こういう場合も職員に聞きにいけばいいのか。
ギースさんの行動に感心しつつ、俺は給仕の子にビールと定食を3人前注文する。
「ギースが居ねえ今なら聞けるが、ラチナの実はどうだ?あと何日かかりそうだ?」
「ラチナの実はあと12個なんですよね。ただ北門はあんまりないし、南門はこの間拾ったので、後は東門を探しに行きたいって所ですかね。但し湧水の分岐から先の方ですけど」
そう、『探索』はあれば見つけられるが、無ければ当たり前だけど見つける事はできない。
「まあ、見つからなければ少し遠出するしかねえな、どっちも並行してやっていって残った方を考えればいい」
「東門の方に群れが有るかもしれないって言われたぞ」
戻ってきたギースさんが職員から聞いた情報を教えてくれる。それならラチナの実もついでに探せるから丁度いい。
「それじゃあ、明日は東だな。群れを探しながらラチナの実も探すでいいか。じゃあ明日も広場に七の鐘集合な。ギン!分かってると思うが明日は群れとやり合う可能性があるからな装備しっかりした奴で来いよ」
師匠の注意にしっかり頷いて飯を食べ終わるとそのまま解散となった。




