31話 BBQ
「兄ちゃん?」
あの後師匠と別れて孤児院に足を運ぶと外で小さい子と遊んでいたガジが俺に気付いて駆け寄ってくる。呼び出す手間が省けて良かった。
「よお、ガジ。明日湧水行かないか?」
「うん。行く。行くよ。また、朝にギルド集合でいい?」
二つ返事でOKしてくれる。この間のポテチが又貰えるかもと思っているのかすごい嬉しそうだ。
「おう、それでいいぞ。もし俺が寝坊したら先に行っててくれ。走って追いかける」
ガジと約束をして孤児院を後にしてから馴染の安宿で部屋を取り寝る前に露店で買ったスープを飲んでみたが、買った時と同じで温かかった。
翌日
寝坊することなく準備を済ませてこの間と同じ時間にギルドに行くと、相変わらず殺気立っている連中がギルド前に群がっていた。
「兄ちゃん。おはよー」
殺気立った連中から少し離れた所で待っているとガジ達がやってきた。今日は3人か。
「この前兄ちゃんから貰った「ポテチ」の話したら今日はみんな行きたがってな。選ぶのに苦労したよ」
別にあげる約束はしてないんだけどな。でも後ろの子達のキラキラした目を見たらあげない訳にはいかないな。軽く話しているとギルドが開いて殺気立った連中が入って数分してから俺達も中に入る。空いてる受付で革袋を各自もらうが俺だけは2週目なので受付の人に言うと20個借りられた。でも普通の新人はこんなに持てるのか?一緒にいるチビは多分無理だろう。
クロの所ではもう一度花を添えて手を合わせたりはしたが、湧水まで特に問題なく辿り着いた。一緒に来ているチビ二人は付いてこれるか心配だったが、全く問題なかった。むしろ目的地が分かってる分、草探しより楽だと言っていた。
「兄ちゃん。それ『魔法鞄』だよな?」
さすがに満タンの革袋20個も入れたらバレるか。
「ああ、そうだぞ。爺さんの形見だ。結構便利だからお前らも買えばいいじゃん」
「いや、何言ってんだよ。高すぎて買えないよ。一番安い奴でも銀貨5枚だぜ。しかも容量が拳一つ分増えるだけって全く役立たないから。実用レベルの奴は金貨になるから俺達には手がでないよ」
へえ~高いって聞いてたけどそれぐらいなんだな。いや、ピンキリなのか?師匠も俺の『影収納』は白金貨するとか言ってたな
「高い奴だとどのくらい入るんだ?例えば白金貨クラスの『魔法鞄』とか?」
「そんなん俺が分かる訳ないじゃん。金貨クラスは容量の倍は入るって聞いた事あるけど白金貨なんて想像できないよ」
まあ、俺も全然想像つかないし、俺『影収納』あるから別にどうでもいいか。そういえば、
「なあ、ガジ少しお古だけど普通の鞄って欲しいか?「欲しい!」
即答だよ。どんだけ鞄欲しいんだよ。そう言えばガジ達いつも手ぶらだな、鞄持ってないのか。
ハンターさんから奪った鞄、このでかいカバン買ってからずっと肥しになってんだよな。しかもハンターさん3人から奪ったから他2つは戦利品確認以降取り出した事もない。
「じゃあ、やるよ。ちょっと汚れてるから1回洗った方がいいかもな」
カバンから3つ取り出してそれぞれに渡す。
「3つも!!何で?俺達何か悪い事した?どこか売られるの?」
俺をどんな奴だと思ってるのか・・・混乱したガジが訳わかんない事を言い出すからチビ2人も涙目になっている。
「何でだよ。お前は俺の事何だと思ってんだ?そんな事言うならやらねえぞ」
「すみませんでした」
速攻で謝るガジ。後ろの二人もホッとした表情をしている。ガジが言った事本気にしたのか?俺結構孤児院に貢献してると思うんだけどなあ。
「あっ。でもこれお前らにあげたんじゃないからな。孤児院にあげたんだからな。勘違いして喧嘩するなよ。ガジ、ちゃんと毎日、鞄を誰に持たせるか良く考えて貸すんだぞ」
「うん。分かった。そうするとやっぱり採取に行ってる奴等に渡す方がいいか。見つける時は持てなくて諦めるぐらい見つける事もあるからな」
「ガジ兄ちゃん。この鞄なんかヘン」
渡した鞄に採取した湧水を入れていると一人のチビから声が上がる。何となく嫌な予感がする。
「何だ?どうした?入らないのか?放り込んでいくんじゃなくて敷き詰めるようにっていつも言われてるだろ」
ガジがお兄ちゃんに見える。チビに優しく教えながら鞄から革袋を取り出してそれをもう一度鞄に入れなおしていく。
「うん?・・・あれ?あれ?・・・!!」
鞄を不思議がって見ているガジが何かに気付くとバッと輝いた顔を俺に向ける。いや、違うよ知らなかっただけだよ。
「兄ちゃん!これ『魔法鞄』!」
やっぱりか~。ハンターさん達ベテランっぽかったもんな。って事はもしかして3つとも?いや一つは俺が使ってたから違う・・・・違う?・・全部『影収納』入れてたから検証してないな・・・ヤバい・・・ハンターさんから奪った時も戦利品多かったから内容を流して見てたから気付いてなかった。
「これも!これも!」
ガジは他の二つも調べるとすぐに『魔法鞄』だと気付く。・・・おう、全部か。
「兄ちゃん!ホントにこれくれるの?」
キラキラした目でガジとチビ2人が俺を見てくる。さすがにここで「嘘でした~」は鬼畜すぎるな。
「ああ、俺にはこいつがあるからな。但し俺から貰った事は内緒だぞ。あと、『魔法鞄』って事もだ。悪い奴等に狙われるからな」
いつも使ってるカバンを叩きながらガジ達に注意をする。「貴重な物を持っていると狙われる」今まで散々師匠から注意された事をガジ達にもする。
「分かってるって、兄ちゃん。俺ら孤児は弱者だからな、奪われるのには慣れてるけど、奪われないようにする事にも慣れてるからな。それにみんな口が固いからそうそうバレないよ」
「・・・・・」
ガジが年齢に全く似合わない事を言う。これだけで孤児が今までどれだけ苦労して生きてきたかが分かり言葉がでない。
「・・・な・何か困った事があったら俺か師匠に相談しろ。俺よりは師匠が断然頼りになるけどな、顔が怖いのは我慢しろ」
何とか言葉をひねり出すが、結局師匠に頼ってしまった。情けない。
そこから見た目と入っている革袋の数がおかしくないように調整してから街に戻り、報酬を受け取る。これで湧水は終了し、後はラチナの実とゴブリンだけになった。
さて、夕方は師匠に合流しないといけないけどまだ昼前なのでラチナの実を拾いながらゴブリンを少しでも狩っておくかなとか考えながらギルドを後にしたが、今日はチビが2人もいるので念の為、俺も孤児院まで送って行く。あっ。ポテチあげてなかった。
『魔法鞄』を俺から貰ってテンション高い3人と孤児院まで戻ると、孤児院の入り口に数人子供達が立って俺達を見ている。出迎えでもしてくれたのかなと思ったが、その表情は暗く、テンションの高かったガジ達もその様子に気付くと走って孤児院に向かっていく。
「「「わーん。ガジ兄ちゃん」」」
「どうした?何があった?」
ガジが近づくと小さい子達がガジに抱き着いて泣き始める。
「秘密の場所バレちゃった、ごめんなさい」
比較的年上の子がガジに状況を説明すると、孤児院で管理?していた薬草の群生地って言っても20本ぐらいだが、その場所が今日、街の子供達にバレてしまったらしい。こうなると街の子供達に知れ渡り、孤児院だけで採取する事が難しくなるそうだ。今回は街の子達が孤児院の子の後を付けていたので秘密の場所がバレたらしい。
「ガジ、それってルール違反なのか?」
「いや、俺らも同じ事するから、こっちからは何も言えない」
う~ん。そうか、なら仕方ないかな。それにしては子供達も殺伐しすぎだろ。もうちょっと仲良くしろよ。
未だにガジにしがみ付いて泣いているチビ達はこの世の終わりかというぐらい泣いているので見ていると可哀そうになってくる。ここで手を差し伸べて良いか分からないが、まあ今日ぐらいいいだろ。
「お前ら泣き止め。泣き止むと俺が良いものやるぞ」
「「「いいもの?」」」
俺の言葉に反応したチビ共が泣きながらも興味を持ったようだ。
「ああ、腹が減ったからなバーベキューでもするか?」
「バーベキュー?」
やっぱり知らないか?教えればすぐに分かるだろ。
「バーベキューってのは外で鉄板か金網の上で肉、野菜を焼いて食う料理だ。シンプルだけど旨いぞ」
ジュルリ。
泣いていたチビ達がよだれを垂らす。汚いな。
「ガジ、孤児院に鉄板か金網ってあるか?」
「うん、どっちもあるよ。調理場で使ってるから一応シスターの許可がいるけど多分借りれる」
「よし、それなら借りてこい。で、後買い出しなんだけどこの孤児院って何人いるんだ?」
「院長とシスターいれて全部で21人だよ」
「そうか分かった。買い出し行くから何人か付いて来てくれるか?ガジはここに残ってバーベキューの準備しておいてくれ」
軽くバーベキューの準備を教えると理解してくれたのでガジに後は任せて俺は3人の女の子と買い出しに出掛ける。この子たちが普段買い出しとシスターの料理補助をしているので、店の場所はこの子達が教えてくれるし、肉や野菜の良し悪しも判断してくれる。
そうして案内されたのはまずは肉屋だった。まあ、肉に期待するよね。ついてきた3人とも目が輝いているから、ちょっと奮発するか。金なら余裕あるしな。
「いらっしゃい。って何だお前らか。今日は何だ?クズ肉は明後日って言っただろ。早く帰れ」
店の親父が孤児院の子達を邪険に扱うが、実際はよく屑肉をタダでくれるツンデレ親父だと聞いている。
「親父、この子達は案内をしてもらったんだ。で、肉を買いたいけど約20人分の肉ってどのくらいの量と値段になる?」
「お前『最長』か。肉については種類にもよるな、豚、牛、狼、兎、鳥どれだ?」
って言われてもバーベキューは普通は牛だと思うんだけど、どうなのかな。
「なあ、どれが食いたい?」
俺が女の子達に聞くと3人顔を見合わせてヒソヒソ会話を始める。
「あの、できればオーク肉を食べてみたいです」
代表して1人が自分のスカートの裾を掴みながら申し訳なさそうに言ってくる。食べてみたいって事は食べた事ないのか?
「親父、オーク肉ってあるの?」
さっきの親父の会話にはオークなんて単語なかったけど。
「ああ、豚な。それならこの塊で銀貨1枚だ。20人だとするともう一つ買っておいた方がいいぞ」
オークって豚なのね。この世界だとそういう風に言うんだなんて感心しつつ銀貨2枚を取り出すと、女の子達が慌てて止める。
「ま、待って下さい。さっきのは冗談です。あの一番安い兎でも私達には十分なご馳走ですから」
ふむ。冗談か、ダメ元で言ってみたらホントに買いそうで慌てて止めたって所か・・・この子達の言い分に納得しつつも親父に銀貨2枚を渡す。
「毎度!」
「ああ。何で?」
嬉しそうな親父に対して物凄く困惑した女の子達。困惑している子達が可愛くて面白いので俺はニヤニヤしながらその様子を眺めている。
「・・・・・分かりました。エレナ姉ちゃんには敵いませんけど、私達頑張ります。孤児院は他の子もいるので出来れば宿の方がいいんですけど」
・・・・
「何も分かってねえよ!違えよ!そんな事求めてないから!しかも「達」って何だよ!あと俺がエレナ指名してるの知ってるの?ねえ?何で?」
俺が慌てて否定すると、物凄く不思議そうな顔をする3人。駄目だなんか価値観が違う。こいつらが孤児院で生きてきたからなのか?
「普通はこういう時は身体を代価にするんですけど。お兄ちゃんは違うんですか?」
「違えよ。求めてねえから。ただ泣いている子達がちょっと可哀そうだったから飯でも奢ってやろうと思っただけだ。あと、ガジには色々世話になってるからな」
・・・・
「ああ、そっちですか。」
「ガジの事好きなんですね」
「そっちでもねえよ!変な勘違いするんじゃねえ、お前らには肉食わさねえぞ」
俺の言葉に慌てて謝ってくる3人。その3人を放置して親父から肉を受け取り野菜を買いに行こうとするが、店がわからん。
「うふふ、こっちですよ。案内しますね」
肉を買ったのでさっきよりは距離が近くなった現金な3人が俺の手を引いて野菜屋に案内する。
まあ、野菜はこいつらに任せればいいかと思い、店のおばちゃんに銀貨1枚渡して選ばせる。笑顔で野菜を選び始めた3人に、俺は少し買いたい物があるので、しばらくここで選んでおくように言ってから俺は広場に向かう。
「おばちゃん、また葡萄20個くれ」
「また、あんたかい。ちょっと葡萄好きすぎじゃないか。まあこっちは助かるからいいんだけど、また一つおまけしとくよ」
おばちゃんにお礼を言ってから野菜屋に戻ると選び終わったのか両手一杯に野菜を抱えている3人が待っていた。
「待ってました。さあ、戻りましょう」
3人ともテンションが高い。だがこのまま街を歩くと目立って仕方がない。
「ほら、お前ら野菜貸せ」
そう言って野菜をポイポイとカバンに放り込んでいく。
「あれ、『魔法鞄』だ」
「何でお兄ちゃんって新人だよね?何でそんなの持ってるの?」
「今日もタダでご飯奢ってくれるし、お兄ちゃんってお金持ち?」
何やら3人でヒソヒソ話している。ふふふ、知らなかったとはいえ、その『魔法鞄』今日孤児院に3つも寄付しちゃいました。後でガジに聞いて驚くがいい。
孤児院に戻るとガジが言われた通りバーベキューの準備をして火起こしまで完璧に済ませていた。今まで見た事も聞いた事もないのに俺の説明だけで完璧にこなせるって凄くね。
「あっ。兄ちゃん、準備できてるよ」
ガジはキラキラした目で俺を見ているが、他の子は何かがっかりした感じで俺を見ているのは俺達が手ぶらだからだろうか。
よ~し、それなら見て驚け。
「ほい、これ肉な、で野菜な、ほら、野菜はどんどん井戸に持って行って洗って来い。あとは誰か調理場からナイフと台を持ってこい」
俺が肉と野菜を取り出すとみんな目が釘付けになるが、俺の指示を受けるとすぐにみんな指示通り動き出す。洗った野菜は俺に付いてきた女の子達に任せて、俺はナイフで肉を切り分けていくが、肉の切り分けなんて慣れていないから大きさがバラバラだ。なんとか1/4ぐらいの肉の塊の切り分けが終わり、慣れた子にこのぐらいの大きさと厚さにするように指示すると、女の子は手慣れた感じでどんどん切り分けていく。しかも大きさも整ってるし、なんか孤児院って優秀な子が多い気がする。それともこの世界の子供はこれぐらいできるのか?
「よーし、最初は野菜だ、好き嫌いせずに食べろよ」
小さい子は野菜嫌いだから食べないと肉が食べられないようにしたのだが、野菜は瞬殺された。みんな好き嫌いせずに争うように食べていた。基本的に空腹状態で、パンと屑野菜のスープしか食べていない孤児院ではこんなに歯ごたえのある野菜はご馳走になるらしい。孤児院では屑野菜のスープに屑肉が入るのがご馳走だそうだ、孤児院って思ったよりやばい環境にある
「や、野菜無くなったな。あはは、じゃあ次は肉食べていいぞ。ちゃんと焼けた奴から食べろよ。ガジ達大きい子はチビ達が生焼け食わないか良くみてろよ」
俺が言うなり切り分けてあった肉を鉄板、金網余す事なく並べていく、焼いている肉を見ている子供達の目が怖い。
最初の一枚は今回のスポンサーで有る俺が食べていいらしい。という事で十分火の通った肉を口にする。
うん?肉の味しかしねえ。塩コショウとか焼肉のタレが欲しいな。
「どう?兄ちゃん?」
ガジが目を輝かせて聞いてくるし、周りの子も同じだ、小さい子はよだれまで垂らしている。
「ああ、焼けてる。食っていいぞ」
その言葉を合図にみんな肉に群がって夢中で食べ始める中、俺はちょっと思う事がある。
「ガジ、トイレどこだ?」
「入って一番奥の右の扉。兄ちゃんトイレなんて行ってると肉無くなるぞ」
「大丈夫だ、あれだけあるからな。気にせず食ってていいぞ」
そうガジに伝えて俺はトイレに行くと個室に入り『自室』に戻る。
えっと、焼肉のタレ甘口、中辛と塩コショウ。これでいいか
影収納にタレと塩コショウをいれてバーベキュー会場に戻る前に、少し調理場に寄り大き目の皿を3枚借りる。
戻ると3枚の皿にそれぞれタレと塩コショウを入れていくが、みんな焼いている肉に注目して誰も俺を見ていない。どんだけ肉に飢えてんだよ。
「ねえ~お兄ちゃん!これオーク肉だよね~」
一緒に買い物をした子が聞いてくるので、肯定すると、子供達が騒ぎ出す。
「これがオーク肉」
「美味いよお」
「兄ちゃん、何で?こんなにしてくれるの?俺達何も出来ないよ?・・・・身体?誰?」
アホな事言うガジにチョップをお見舞いする。何ですぐにそういう発想になる。
「チビ共が可哀そうだったからだ。あんまりアホな事言ってるとこれやらねえぞ」
近くに置いていたタレと塩コショウの皿も手に持ちながらガジに文句を言う。
「ごめん兄ちゃん!それ何?欲しい!」
取り合えず実演しながらどういう物か説明すると、好奇心旺盛な子達はすぐに焼肉のタレや塩コショウを肉に付けて食べ出す。食べた全員から美味いと声が上がり、全員から大人気になる事は分かっていた。
1塊分の肉を食べ終わる頃には子供達もお腹が膨れてきたのかペースが落ちてきたので、ようやく俺も肉にありつける。院長やシスターもいるがさっきから手を付けていないのが気になった。
「もしかして口に合いませんでしたか?」
「いえいえ、私達はいつも子供達の後なんですよ。食事中は小さい子を見てないと危ないですから。あと今日は子供達には私達より先にお腹を膨らませて欲しかったんですよ。いつも空腹なので申し訳なくて」
申し訳なく笑う院長とシスター。何?この2人聖人か何かなの?孤児院の子はこの人達がいるから捻くれていないのかな。
「今日はありがとうございます。こんなに子供達が喜んでいるのを見るのは久しぶりです」
「いえ、お礼はガジとクロに言って下さい」
「ガジとクロですか?」
不思議そうに首を傾げる院長とシスター
「ガジはまあ、こっちが世話になってるからですかね。クロは俺の甘い部分に気付かせてくれたからって所ですね」
そう、ホントは俺より辛いはずのガジが立ち直っているのを見て、俺もしっかりしないとと考えるようになった。異世界でも死ぬ事は無いだろうと甘く考えていた俺にクロは簡単に殺される事もあるって教えてくれた。そう思うと飯を奢るぐらい大した事ではない。
「いえ、それでもありがとうございます。こちらとしては何もお返し出来ないのが心苦しいのですが・・・・えっと気に入った子がいれば「それは大丈夫です」
院長の言葉を途中で遮る。・・・マジか。院長からしてこういう考えなのか。これはこの世界がそういう考えだって思ってた方がいいかもな。




