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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
2章 水の国境都市の新人冒険者
31/163

30話 依頼1周目完了

本日2回目です

『猫宿』のベッドで目が覚める。いつもの事だが隣に昨日の相手はいない。今日はゴブリン狩りなので、完全装備だ。影で一瞬で着替えてから顔を洗ったり準備をする。


さてと、今日は師匠に指示されたゴブリン狩りだ。師匠からは3匹以上のグループなら逃げるように言われてるから、まずは2匹以下のグループ探さないと。今日の目標は4匹討伐だ、それで新人依頼1周目が終わる。


部屋を出て1階にいる給仕の子達に挨拶をして、朝食を食べていると、エレナ付きの子・・サラがこちらにやってくる。


「この間はありがとうございます。あと、昨日エレナ姐からも聞きました。そちらもありがとうございます。」


主語がないので、お酒の事だとすぐに理解する。あんまり表情変えるイメージは無かったが、今日はものすごい笑顔で話してくるな。そんなにあの酒気に入ったんだろうか。


「ああ、気にすんな。でも見つからないようにな。そういえば師匠達は?」

「いつもの通り姐さん達と降りてきて、お酒を飲んでからまた別の姐さん達と部屋に戻りましたので、まだお休みしてますよ」


またかよ。元気すぎだろ、あの二人。って事はまた昼まで起きてこないだろうな。


サラにお礼を言ってから朝食を食べ店を後にして、取り合えず広場に向かう。広場には相変わらず店がたくさん出ていて賑やかだ。その中の一つ初日に寄った店に近づく。


「おばちゃん、葡萄20個くれ」

「20!ってあんたかい。『最長』は葡萄好きなのかい?」


いい加減俺の渾名広がりすぎて驚く事も無くなってきたな。


「ああ、移動中でも軽く摘まめるからな。あると便利なんだよ」

「そうかい、また一つおまけしとくね」


おばちゃんにお礼を言ってから次の店に足を運ぶ。次はスープ屋だ。ここで買ったスープを影収納にいれて時間が経ったらどうなるか調べる事にする。


「おっちゃん。一つ頂戴。コップごと貰うといくらになる?」


「おっ。お前『最長』か?コップごとだと鉄銭4枚でいいぜ」


・・・渾名は気にしない、気にしない。おっちゃんに金を払いコップを受け取ると少し物影に隠れてコップごと影収納に入れる。


よし、準備完了。さて、ゴブリンは・・・いねえ。やっぱり街の近くは寄ってこないのか、来てもすぐに倒されるのか。・・・ギルドに聞きにいくか。


ギルドで職員に効率のいい狩場を聞きに行こうとすると、


「おい、『最長』、ちょっと待て」


ギルドから出て来た4人組から声を掛けられる。こいつらアレだ俺の先輩にあたる『ドアールの羽』だったか?


「何?」


なんかこいつら変に俺に対抗意識燃やしているみたいだから、関わりたくないんだよな。


「今の依頼状況教えろ」


イラッ。何で命令口調なんだよ。でも先輩だから正直に教えないといけないのか?やっぱりこういう所が分かってないから俺はまだまだ新人だよな。


「ゴブリン4匹狩れば1周目は終わりだ」

「ハッ。まだそんな所かよ。俺らはもう2周目の5個まで終わったぞ」


別にこいつらと競っている訳じゃないので、こいつらが今どこまで進めているとかすごくどうでもいい。


「ああ、そうかじゃあ頑張れよ」


こいつらと話してても楽しくないので、話を切り上げギルドに向かおうとするが、


「おう。・・・・って何でお前に偉そうに言われないといけないんだよ」


俺の前に立ち塞がるリーダーっぽい男。道を塞がれて正直すごい邪魔。


「あっ、そうだ。お前らゴブリンが良く出る場所知ってるか?」

「あ?・・・・ああ、それなら北に一杯いるらしいぞ」


ニヤニヤしながら答えるこいつがこのパーティのリーダーなんだろう。後ろの3人も何も言ってこないが、さっきから後ろでニヤニヤしていて、気持ち悪いし、いい気分にはならない。まあそのニヤケ顔は金子達で見慣れているから大方噓ついてるんだろうってのがバレバレだ。


「そうか、ありがとう。じゃあな」


お礼を言ってから俺は南門に向かって歩き出す。


「・・・・・・・チッ!」


また何か言われるかと思ったけど、大きな舌打ちだけが聞こえてきただけだった。面倒くせえ。



『探索』であいつらが後を付いて来てない事を確認して街から出て、ゴブリンを探す。ついでにラチナの実も探しながら街道を歩いている。30分程歩くとマップに反応があった。


これはラチナの実か。近いし拾いに行くか。む!ゴブリンの反応!これは3匹以上いるな。近づかないで、実だけ拾って離れよう。


そこからまた10分程歩くと再びラチナの実を見つける。拾いに行くと今度はゴブリンの反応が一つ。サクッと背後から一撃で倒して魔石と耳を手に入れる。これで残り3匹。


街道に戻り移動するとすぐに2つ反応があったので、静かに近づいていく。1匹は背後から一撃で倒すともう1匹に気付かれ、武器を構え相対する。




やっぱり、隙だらけだな。どう攻撃しても倒せそうだ。でも向こうの攻撃も意識しないといけないからな。今日は師匠もギースさんもいない。何かあっても誰も助けてくれない。落ち着いて、まずは武器をどうにかしよう。


ジリジリ間合いを詰めていくと、先にゴブリンが手に持った錆びだらけの片手剣を振りかぶった。遅い!師匠達の動きより大分遅い。俺は余裕で振り下ろされる片手剣を躱す。


ザシュ!


躱してすぐに片手剣を持った手を切りつけると、結構深く入ったみたいでゴブリンは片手剣を取りこぼした。


「ギャアアアアアアアアア」


武器を落としたゴブリンは大声を上げながら俺に掴みかかってくるが、片手しか使えないので、それを躱して、


ザクッ!


喉にナイフを突き立てると、ゴブリンは動かなくなった。念の為もう一度ゴブリン達の首にナイフを刺してから魔石の回収と耳の切り取りを始める。1匹目の回収が終わった所でふとマップを見ると、囲まれている事に気付いた。


やべ。回収に集中してマップ全然見てなかった。姿は見えないけど囲まれてるな。数は3匹。逃げたいけど背中を見せて逃げてる時に投げナイフとか弓で攻撃されたら嫌だな。仕方ない。あんまり使いたくないけど『影』使うか。


——————ズッ


影を広げる。


「ギャ?」

「ガ」


ザシュ!


影がゴブリンを捉えたと同時に影を槍に変えて下から突き刺す。念の為一度影収納に入れて死んでいるか確認。ついでに耳も影で切り落として回収しておく。


しかし影の範囲に入るとやっぱり気付かれてたよな。影の範囲に入ったらすぐに動き止めるか殺すかしないとゴブリンと言っても油断は出来ないな。いや、その前に囲まれた事を反省しないと。『探索』に頼りすぎなんだよな。切っておくか・・・いや、それで接近に気付かず死んだら馬鹿だよな。戦闘直後は警戒を怠らないように気を付けるしかないか。


ゴブリンから魔石を回収しながら、さっきの反省をして回収が終わると再び歩き出す。そこからラチナの実を更に2つ見つけた所で師匠から『念話』が入った。


(う~ん。わりい。今店出たわ、どこにいる?)

(おはようございます。今南門側でゴブリン狩りとラチナの実を探してます)

(おっ。真面目だな。どんな感じだ目標は達成できたか?)

(はい、今ゴブリン6匹狩ったので、今日のノルマ達成ですね。これで2周目行けますよ)

(よし、それなら一度戻ってこい。昼飯奢ってやる。あと出来れば人が少ねえ時間に2周目の納品をやっときたい。俺が指導しているって言っても流石にお前のペースは速すぎる。あんまり目立ちたくねえからな)


師匠の指示に従い、依頼を切り上げて街に戻りギルドに行くと師匠がジョッキ片手に掲示板を眺めていた。また酒飲んでんの?


「お、戻ったな。じゃあ、今日はサービスだ、タダで稽古してやる」


酒飲んでるのにちゃんと稽古つけれるのかな?






その心配は杞憂に終わった。


「はあ、はあ」

「ガハハハッ。まだまだだな。1回ぐらいは俺に攻撃当てるか、俺の攻撃を躱して欲しかったな。この前ギースも言ってたようにギンは動きが素直すぎるな。斥候系は相手を攪乱しないといけないからフェイントや意表を突いた攻撃しねえとな」


くそ、師匠酒飲んでるのに、全く攻撃当たらねえ、しかも師匠の攻撃は吸い込まれるように俺に当たるし、この人やっぱり化物なんじゃないか?それともDランク冒険者ってこれぐらい普通なのか。ただ、最近『自室』で寝る時は短剣で素振りをしてから寝ている効果か少しスタミナがついてきた気がする。


「いつも言ってるが寝る前はもう一度今日の訓練を思い出してから寝ろよ。取り合えず昼も過ぎて人も減った事だろうし、飯食いに行くぞ」


師匠が俺の手を引いて起きるのを手伝ってくれる。起きたら軽く『洗浄』してからギルドに入っていく。




「そういえば今日、ギースさんどうしたんですか?」


昼飯を食べながら師匠に質問する。今日の俺の昼飯はカルボナーラだ。まんま日本で食べたのと同じ味で少し驚いた。さすがに半熟卵は乗ってなかったけど。カルボナーラはあったが、この街で和食は見た事ない。もしかしたら無い可能性もあるが、いつか『水都』にでも行って探してみようと考えている。


「ギースの野郎は商業ギルドだ、酒売りに行ってるぞ」


そう言えば昨日行くって言ってたな。師匠ついて行かなくて大丈夫なんだろうか?


「ギースさんが商人相手に交渉してるイメージ沸かないんですけど、大丈夫なんですか?」


師匠みたいに巧みな話術を使えるのかな?一人で行ってるって事はできるんだろうな。


「ああ、あいつは頑固だからな。今日は金2銀1枚で売ってくるって言ってたから、多分、最初からその値段言って後は妥協はしないってやり方だ。あいつのは交渉じゃねえな」


すげえ。唯の嫌がらせじゃんか。商業ギルドだから出来るけど、他の店なら出禁にされるんじゃないか。


「まあ、それで失敗したら俺が買うって言ってるからな。別に心配しなくてもいいぞ。それよりも食い終わったか?そんじゃあ人もほとんどいなくなった事だし受付行くか」




師匠と共に受付のミーサさんの元に向かうと、すぐに向こうも気づいてくれたみたいだ。軽く手を振ってくれる。多分俺に手を振ったんだと思うけど、何故か師匠が手を振り返すとすっげえ嫌そうな顔になる。


「ようこそ、ギンさん。納品ですか?」


ミーサさんは師匠には視線を向けずに俺にだけ話しかける。ホント師匠何したんだろ?


「ガハハハッ。ミーサちゃん。ギンの野郎1周目終わりだ。ギン、耳!」


師匠に言われて、リュックからゴブリンの耳を取り出し、ミーサさんの用意してくれた木箱に入れていく。


「うん。10匹分ありますね。おめでとうございます。まずは報酬ですね。ギルドカード失礼します」


そう言って奥にゴブリンの耳と俺のギルドカードを持っていつもの様に何かの機械で処理をしている。


「はい、報酬は銅貨3枚になります。これから2周目なので、納品、討伐の数は今までの倍になります。って言ってもこの間、聞きましたから次の納品に行きましょう。えっと、草とアレと蛙と蝙蝠でしたね」


そう言ってミーサさんは足元から大きな箱と小さな箱を取り出す。


「こっちの小さい箱にはアレを入れて下さい、ギンさん、アレって何か分かりますよね?・・・ガフさん!分かってますけど、この前みたいないたずらしたら顔引っ掻きますからね!」


ミーサさんはホントに大鼠嫌いだな。あと、師匠は何をしたんだろ?何となく想像できるけど。


注意された師匠は肩をすくめるだけで何も言わない。俺は言われた通り、大鼠の尻尾を口に数を出しながら小さい箱に入れていく。そうして20匹数を数えて箱に入れ終わると、すぐにミーサさんが蓋をする。


「はい、分かりました。結構です。確認しました。じゃあ、これは・・・ああ、ギルマス!これ処理しといて下さい」


すげえ、ギルマスをパシリに使った。ギルマスってこの街の冒険者ギルドのトップだよな?唯の事務員がパシリに使ってもいいのか?ギルマスも呆れた様子でミーサさんの言う通りにしているし、もしかしてミーサさん偉いのかな?


「ふう、じゃあ、次は草を出して下さい」


ギルマスをパシリに使いながらも何事もなかったように話を続けるミーサさんってある意味すごい人なのかもしれない。


指示通り薬草と魔力草を大きい箱に入れていく。今度はミーサさんに手渡し状態を良く確認してから箱に入れていく。同じ様に蝙蝠と蛙もミーサさんに手渡す。


「はい、これで全部ですかね?・・・あっそう言えば角兎も終わってるって言ってましたね?」


さっきと同じ様に角兎の肉も渡す。渡しながらスライムも終わっている事を伝えるとまあ、驚かれた。


「ええ?って事はあと3つですか?状況を教えてください、むしろ毎日報告聞きたいぐらいです」


受付から乗り出しながら聞いてくるから顔が近い。


「いや、ミーサちゃん、まずは報酬くれよ」


さすがの師匠も呆れた感じでミーサさんに突っ込みを入れる。


「ああ、そうでしたね。すみません。ちょっと待っていてください」


納品物の入った箱を重そうに抱えながら奥に向かうと、職員もミーサさんが気になるみたいで何人か手伝っている。手伝った人は必ず驚きの顔でこちらを見るので、噂になるのは覚悟しとこう。


依頼達成した数が多かったからか30分程待たされてミーサさんが戻ってきた。報酬は全部合わせて銅貨48枚


「はい、おめでとうございます。報酬は銅貨48枚になります。いやあ、すごいですね。ここまで一遍に終わらせた人は初めて見ました。それで?残りの状況はどうなってます?」


「ゴブリンが残り18匹、ラチナの実が12個、湧水が20本ですね」


湧水は1日で終わる、ラチナの実も多分1日で終わるな。ゴブリンは2日見てれば大丈夫かな。順調に行けば15日で終わるな。そう言えばソロ最速とかミーサさん言ってたな、あれ何日ぐらいなんだろ?


「ミーサさん。ソロ最速って何日なんですか?」

「えっと、この街なら15日ですね。冒険者ギルド全体の記録ですと、2日ですね。そっちは報酬を用意しておいて、実際は大鼠とゴブリン討伐だけで達成したようなものですけど」


う~ん。ギルド全体の記録はどうでもいいけど、この街最速と同じは目立つよな~。いや、今そんな事考えても仕方ないな。最後の依頼の時にでも考えよう。


「ギン、お前は指導員制度利用しているからこの街最速にならねえから目指そうとするなよ」


俺が最速目指そうとしてると思ったのか、師匠が忠告してくれるがむしろ逆だ。目立ちたくないのでどうやって日数稼ごうか考えている。


「そんな事ないですよ。一応ガフさんの言う通りですけど、この街のギルド職員ではギンさんはソロって認識ですからね。公式には最速記録は更新されませんけど是非、最速目指して頑張って下さい」


ミーサさんが励ましてくれるけど、この人自分の評価上げたいから言ってるんだよな。


「まあ、俺は師匠と自分のペースでのんびりやりますよ。今までが運が良すぎたのでこれからも同じとは限りませんから」

「そうですか。でもなるべく頑張って下さいね」


これで下心なければ頑張ろうって思うんだけどなあ。


「で?ギン明日はどうする?ここまで来たから後はお前が決めていいぞ」


師匠から言われてもどうすればいいかわかんねえ。


「どうすればいいですかね?」

「俺なら湧水終わってからゴブリンとラチナの実に力を入れるかな」

「そうですか。分かりました。なら明日は湧水行きます。師匠はどうしますか?」

「湧水なら俺いなくても大丈夫だろ。またガキども誘って行って来い。俺らも、もうそろそろ準備始めねえといけねえから俺の事は気にすんな。それじゃあ明日は夕方にギルド集合な。飯食いながら打ち合わせするぞ」


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