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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
2章 水の国境都市の新人冒険者
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29話 再び下水道へ

お礼を言って二人と別れた後は腹が減ったからギルドに戻り食事を食べてから師匠に『念話』をする。


(師匠、終わりました。どこ行けばいいですか?)


食事が終わり師匠に『念話』を飛ばすと、すぐに返事がくる。


(よし、今から俺の家に来い。こん棒と盾も忘れずにな)


??何で?あとはゴブリンだけなんだけど、こん棒で殺すのかな?まあ、影収納に入っているから忘れないんだけど。


不思議に思いつつも師匠の家に向かうと、すぐに中に通されたが、師匠とギースさんが深刻な顔をしている。なんかマズい雰囲気だ。問題でも発生したのか?俺が呼ばれるって事は俺関連だよな、でも何もしてないと思うけど・・・


「ギン、マズい事になった。お前の後輩が入ってきた」


師匠は重い口をようやく開くが、言っている意味が分からない。


「・・・??」

「今日、新人冒険者が入って来た。3人グループで近くの村出身の奴等らしい。お前のすぐ下の後輩になるな」


はあ?別にどうでもよくないか?俺の先輩って『ドアールの羽?風?』みたいな名前の4人組パーティだけど、1回嫌味言われただけで、特に絡んだ事もない。俺も後輩が出来たって言っても先輩ズラする気はないし、特に近づいたりはしないけどなあ。


「はあ、知らない奴等なんで、どうでもいいですけど、何がマズいんですか?」

「ああ、マズい、下水に入られる。聞いた話だともう明日には大鼠に行くらしい」


うん?下水に入られると何がマズいんだ?別に大鼠の尻尾の数は集まってるから新人が大鼠を全滅させても俺は特に問題はないな。


「いや、ホントに何がマズいか良く分かんないです」

「いいか。その新人が下水に入ると俺らが見つけたワインの部屋の事がバレるじゃねえか。それを他の冒険者にポロリと漏らしてみろ、今まで下水にそんな小部屋があるなんて誰も知らなかったんだぞ、絶対他にも何かあると思う奴等が下水を探索し始めるだろ。その前に今から下水に行って、まだ隠し部屋がねえか隈なく探すぞ。あのワインは俺んだからな、絶対誰にも渡さねえ」


いや、師匠の物じゃないですよね。あそこに隠した人の物じゃん。


「って事でお前も付いてこい。俺らだけだと下水に行くのは不自然だ、お前がいねえと勘繰られる。ついでにこの間あそこに置いてきたままの木箱も回収する。一部しか壊さなかった壁も全部壊してなるべく違和感ないようにする。証拠は残さねえようにしねえとな、へへへ」


最後!言い方ぁ!完全に悪者のセリフじゃん。でもまあ俺を誘う上手い言い訳考えたな、ギースさん完全に師匠の言う事信じてるな。



「じゃあ、今回は北門側から入っていくぞ。北側から探して行ってこの間見つけた小部屋まで向かう。木箱は最悪カバンに入らなくても下水に投げ捨てればいいだろ」


なんか作戦雑だなと思いながらも、いいかと思い師匠とギースさんについて行く。そして俺は一つ重大な事をすっかり忘れていたのを下水に来てから思い出す事になるのであった。




◇◇◇

「くせえ、マジでくせえ、師匠、ギースさんやっぱり帰りましょうよ」


そうこの臭い、これをすっかり忘れていた。まだ下水の入り口だけど、もうすでに帰りたい。


「馬鹿言うな。あの酒は俺んだぞ。臭い程度じゃ諦められるか」


だから師匠のじゃないですって。


「臭いぐらい我慢しろ。俺はまだ見つけてないんだからな。見つけたら山分けだぞ。グフフ、装備一新できるかもしれんな。・・・グフフ」


ギースさんは取らぬ狸の何とかって奴して不気味に笑ってるし。それなら・・・


「師匠、ギースさん。もしワインが見つかって3人で山分けした時に半端になった分は俺は辞退しますね。その代わり今から倒した大鼠の尻尾は俺に下さい」


少し考えがある俺の言葉に二人とも呆れた顔になる。


「なんで、そんなもん欲しがる?まあギンがそれで良いならいいが」

「なんか怪しいな。ミーサちゃんにいたずらでもするのか?」

「そんな事しないですよ。したら多分俺殺されます。まあ尻尾を欲しがるのは特に意味はないですけど敢えて言うならFランクの納品で必要かもしれないってのと、新人に少し高くても売れそうだと思って。ククク」


銅貨4枚でも売れるかもしれない。そしたら銅貨1枚の儲け。もしかしたら新人に恩を売れるかもしれないし、ついでに集めた尻尾で金儲け出来るって何か得した気分じゃん。


「はあ~。ギンって小物だな」

「だな、こいつはコソ泥ぐらいがお似合いだな」


二人は呆れ顔で失礼な事を言い出す。極悪人顔の二人に文句を言おうとしたら、マップに隠し部屋発見。マジか、まだあんのか。いやさすがにもう酒はないよな。





「ガハハハッ。やった。また酒だ。」

「ブハハハハ。ガフ!お前最近どうした?ノリノリじゃねえか?」


ボガッ!


まだあんのかよ。


酒がまだ隠されている事に呆れながら盾で受けた大鼠を殴りつける。なんか「ながら作業」で大鼠倒してるな。師匠とギースさんはさすがパーティメンバー、声を掛ける事もなくこの前俺と師匠がやった作業を手際よく行い、俺が警戒で役割を分担して作業している。


「よし、やっぱりここも100本あるな。ギン!これ箱ごとお前の『魔法鞄』にいれておけ。俺とギースは今からこの壁を違和感ない感じにしていくからよ。警戒も怠るなよ」


師匠の指示に従い3人各自の役割を果たしていると、隠し部屋を見つけて20分ぐらいで粗方片付いた。俺も壁を少し触って『偽装』を手伝った、多分俺のスキルもあるからそう違和感はないと思う。


「よし、次だ」




そうやって彷徨いながら結局2つの隠し部屋を発見して、酒は200本手に入り、大鼠は22匹討伐した。前回見つけた隠し部屋の壁も同じ様な『偽装』してから街に戻ると辺りはもう薄暗くなっていた。分け前は約束通り師匠とギースさんが1本多くもらい、俺は大鼠の尻尾を全て貰った。


「ガハハハッ。やっぱりあったな。でもさすがにこれ以上はねえだろうな」


俺の『探索』で隈なく探したので、もうこの街の下水に隠し部屋は無い事を師匠は確信している。唯ギースさんは未だに少し未練があるみたいだ。


「ギース!もう時間切れだ。諦めろ。さすがに新人でも3回も下水に入ると隠し部屋の存在がバレた時に怪しまれる。もし探しに行くなら隠し部屋の存在が他の連中にバレた時にしろ。でもまあ、安心しろ、隅々まで探したから多分もう隠し部屋はねえよ」

「ガフの言う通りだな。ワインが67本手に入っただけでも恩の字だな。よし、取り合えず明日10本売ってくる。1本最低金貨2枚で売れるんだよな?」

「大丈夫だ、絶対売れるぞ。なんなら俺が今買い取ってやろうか?」


意地悪く笑いながら師匠がギースさんに提案するが、ギースさんは断る。


「いや、お前がそんだけ言うって事は最低が金貨2枚って事だな。最高いくら見てる?」


「まあ金2、銀2で売れたら大勝利って考えてるな」


前回より金貨1枚も多く売るれるかもって考えられる師匠すげえ。


「まあ、アレだ、そいつは明日考えるとして、稼いだことだしよ。『猫宿』行こうぜ。」

「そうだな。稼いだらいつもの『猫宿』だよな」

「やった。じゃあ行きましょう。」


3人とも顔がにやけながら歩いているので、街に入るとすれ違う人が時々明らかに距離を取るが気にしない。テンションの上がった3人は弾む足取りで『猫宿』に足を運んだ。


『猫宿』に着いていつものように3人で酒と食事を楽しんでいるが、今日は師匠がモテまくっている。ワインの話が広まっている訳ではないが、多分師匠からワインを貰った子達が師匠に滅茶苦茶アピールしている。俺とギースさんはいつも通りって感じ、むしろ師匠にアピールする子は俺とギースさんには全くアピールしてこない。今日はスーティンは休みみたいなので、俺がワインを持っている事を知っているのはエレナだけだ。そのエレナは先程からすごい不機嫌そうにこちらを見てくるが、何も言ってこないのが逆に怖い。




「ふう、師匠が今日はご機嫌だな」


トイレからの帰り師匠の笑い声が聞こえてくるので少し呆れた言葉がでてしまった。楽しそうだからいいか。


「・・・・ぐえ」


テーブルに戻る途中で誰かに襟首を掴まれて引っ張られてどこかに連れていかれる。


うお?何?何だ?誰?・・・・エレナ?


引っ張られながら一瞬見えた後ろ姿でエレナだと分かったが、何故引っ張られて連れていかれるのか分からない。


ドン!


どこかに連れ込まれると壁際に立たされてエレナから壁ドンされる。う~ん。こういうのは逆だと思うんだけどなんて軽口が言えないくらいエレナが不機嫌そうな顔をしている。


「えっと?どうした?エレナ?元気?」

「ギン、ハマるなって何回言わせるの?いい加減借金しても知らないわよ」


そう言われてエレナが不機嫌な理由がようやく分かった。ホントに俺の事心配してんだな。少し嬉しい。けど、これ以上エレナに心配かけるのも悪いよな。今日の事は師匠から口止めされてないけど言わない方が良い事は俺でも分かる。だけど、俺が来るたびにエレナを不機嫌にしたくはないな。


「エレナ、金ならホントに大丈夫だ。」


すごい信じてもらえていないのが表情からわかる。仕方ないか、今、師匠から『念話』でOKは貰った。少し耳を貸すようにジェスチャーで示すとエレナは不機嫌そうだが素直に従ってくれる。


「あのさ、今日もワイン見つけたんだよ。200本。それを3人で分けたから俺も60本は持ってる。だから大丈夫だ」


その言葉にエレナは驚き言葉がないようだが、すぐに気を取り直す。


「嘘。信じられないわ」


口元がピクピクしているが、あの時のお酒の味を思い出しているのかな。


「ホントだぜ。エレナ、何隠れて乳繰り合ってんだ。ベテランのお前がそんな事してていいのかよ」


良かった。多分俺の言葉じゃ信じてもらえないと思ったから『念話』で師匠呼んだけど、来てくれた。


「ガフ?何でここに?あんた達の机からだと見えなかったはずだけど」

「ハッ、勘だよ。斥候職舐めんな」


ホントは『念話』で呼んだんだけど、酔ってるはずだけどこんな堂々とした態度なら信じるだろう。


「ふー。そう。で?ホントなの今日も見つけたって?」

「ああ、ホントだ。明日ギースが10本売りに行くから噂が流れるぞ」

「ホントなの?あんた達何本見つけたのよ?」

「全部で400だ。ギンと俺は同じ数で分けたけど、俺は毎日飲んでるからな今はギンが一番持ってんな。ギン今日の分足して何個残ってる?」


「よん!!!??」


「多分160本ぐらいです」


「ひゃ!!」


エレナのリアクションがおかしい。いつもは余裕のある感じなのに、奇声を発して驚くので面白い。うわ、メッチャ睨まれた。


「って事だ。ギンは金に困ってねえって分かったか?」

「まあ、そう言われたら信じるけど、どうするのよ?ギンがお酒持ってるって知られたら狙われるわよ。あんたとギースは腕が立つから大丈夫だと思うけど」

「それなら大丈夫だ。ギン、お前エレナ以外にもう店で酒を飲ませるな。エレナもグラス持ち込んでる事悟られるな・・・いやギンお前の『魔法鞄』にグラス入れておけ。これで問題ないだろ」


「スーティンはどうするのよ?ギンがお酒あげたみたいよ」

「ああ、そっちは俺が酒運ぶの手伝った礼であげた奴だってこの前言っておいたから、ギンはスーティンの誘いに1回は乗ってそこで酒はもう無いっていっとけば大丈夫だ」


すげえ、エレナも俺の事心配してくれて嬉しいけど、師匠も俺の事考えて色々動いてくれてる。やっぱり師匠には頭が上がらねえ


「エレナは今日みたいにギンの相手出来ない時は大丈夫そうな相手選んでやってくれ。出来れば酒の事知らない奴がいい」

「あんたが、・・・いや今日からギースもね、気前よくお酒飲ませるからそんな子すぐいなくなりそうだけどね」

「ガハハハッ。違いねえ。まあその辺は俺達が考える事じゃねえからなエレナに任せるわ」

「任せるんだったら、少しは協力しなさい。部屋でワイン飲ませるのやめなさいよ」

「そりゃ無理だ、だって俺が飲みたいからな。ガハハハッ。じゃあギン戻るぞ!・・・ってどうした?」


戻ろうとしたら何故かエレナから腕を掴まれる。


「ガフはもういいわ、ギンにはもう少し説教するから」


ええ?何で?悪い事してないよな。


「ふ~ん。まあいいぜ、ギン、俺達はもう部屋に行くからな、勝手に宜しくやってろ」


「あっ!師匠俺も・・・イテテテ。何なんだよ?」


嫌な予感がしたし、説教するって言われたからドサクサ紛れて師匠の後を付いて行こうとしたらエレナから引っ張られる。


「サラの事よ。私付きの子って言えばわかる?あんたあの子にもお酒あげたみたいね?」

「ちょっと待て。あげてないぞ、エレナの飲み残しをあげただけだ。」


何か勘違いされてそうなので慌てて言い訳する。


「そういう事か。それでもあの子あなたのこと気に入ったみたいね。お店で抱き付いたみたいだし。あの子はまだお客取れないから勘違いされる事するなって、きつく言っておいたわ。お酒の事は誰にもバレなければ飲んで良いっていったけど。あんまり甘やかさないでくれる?」


だから何で俺のせい?飲めるって言って飲めなかったエレナのせいじゃないのか?


「いや、甘やかしてないぞ、俺のせいじゃない。飲めるって言ったのにエレナが飲み干さなかったのが悪いんだろ?」

「うぐ・・・だって美味しかったから飲めると思ったんだもん。そしたら意外にアルコール高くて酔っちゃったんだもん」


子供みたいな言い方で拗ねるなよ。


「分かったよ。今度からお酒は出さないように「嫌!」


最後まで言う前に否定するなんてあの酒どんだけ気に入ってんだよ。正直飲めるようにはなったけど、いまだに美味しいとは思ってないんだよな。


「はあ~。エレナの時にはお酒だすけど、お付の子・・・サラって言ったよな。その子に余りは勝手に持って帰っていいって言っておいてくれ。あと口止めもしっかりしておいてくれよ」

「分かったわ。はあ~。何でギンは今日私を指名できないのかな~」


話が終わるとエレナは営業モードになり俺に寄りかかってくる。多分話をしていたからあの酒が飲みたくなったんだろう。正直演技だと分かっていてもムラムラしてくる。


「連続指名できないのは店のルールだから仕方ないだろ。それより我慢できなくなりそうだから、あんまり誘惑してこないでくれ。それで、早く俺の相手を選んでくれ」

「ふう。分かったわよ。席で待ってて。相手を連れてくるわ」


席に戻るとすぐにエレナが相手を連れてきてくれた。『猫宿』ではエレナ、スーティンと同じベテランに入る人みたいで色々気持ち良かった。


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