28話 湧水採取(2回目)
本日2回目です
朝5時にセットした目覚ましが鳴る。寝る時間が早かったので、二度寝の誘惑が起きる事無く目を覚まして、準備をする。この時間で朝食できてんのか?と思ったが、普通に出てきた。何でも朝食は5時から大丈夫らしい。朝食を食べてギルドに向かうとまだギルドは開いてないらしくて、大勢の冒険者がギルドの扉が開くのを待っている。しかも連中何かギラ付いて怖いので、少し離れた所でギルドが開くのを待っていると、ガジ達がやってきた。
やってきた二人と挨拶しながら、あのギラついた連中の事を聞いてみる。
「なあ、ガジ、ギルドが開く前ってみんなあんなに殺気立ってるのか?」
「うん、いつもの事だよ。流石にギルド内では依頼の取り合いとか禁止だけど、怒声が飛び交ってるよ。俺らは湧水だから関係ないけどね」
少しでも報酬の旨い依頼受ける為にみんな必死なんだな。俺もいずれあいつら見たいになるのかな。・・・いや、なりたくないな。師匠も言っていたけど人気のない採取系をメインにやっていこう。
ガジ達と話をし始めるとすぐにギルドの扉が開いた。冒険者は開くと同時に駆け込むかと思ったが、しっかり扉が開くまで我慢して、職員が少し離れて手を上げた瞬間、一斉にギルド内に駆け込んでいく。昔は扉が開くと同時に中に駆け込んでいたが、職員が度々巻き込まれてケガをした事が何度もあったので、今のやり方に変わったらしい。ちなみに職員の合図を待たずにギルドに足を踏み入れるとペナルティで30分は依頼を受け付けて貰えないので、あれだけ殺気立っていてもみんなルールは守っている。
不人気依頼の湧水の俺達は関係ないので、掲示板の横を通り過ぎて受付に向かう。掲示板前はガジの言う通り怒声が飛び交っているが、改めて考えるとそんなに報酬の旨い依頼があるのか疑問だ。依頼の振り分けはギルド職員が規定に従って行っているので、そんなに難易度と報酬に差が出る訳じゃないと思うんだけどなあ。
殺気立ってる冒険者を横に俺たちは受付で革袋を貰い、湧水に向かう。ちなみに革袋は新人2周目以外は10個しか貸してもらえない。不人気依頼だが、100個限定だかららしい。
「え!お前ら冒険者じゃないの?じゃあ何で依頼受けられるんだよ」
湧水に向かう途中孤児院の子供達が冒険者じゃないと知って驚いた。だってこいつら普通に受付で革袋貰ってたぞ。
「兄ちゃん。冒険者になるには15歳の成人迎えてからだぜ。知らないの?本当は駄目なんだけど湧水採取は不人気過ぎて俺達みたいな子供でも特例で受けさせてくれるんだけどな。草とかの採取系はギルドじゃなくても道具屋でも買い取ってくれるから子供は大概それで小遣い稼ぎしてるよ。討伐系はさすがにどこでも引き取ってくれないっていうか持っていくと「危険な事するな」って怒られる。」
そういえば草は子供の小遣い稼ぎって師匠が言ってたな。討伐系は怒られるの当たり前か。確かに簡単って言ってもガジより小さい子供だとやっぱり危ねえよな。・・・・・あれ?こいつら湧水でスライムの魔石集めてなかったか?
「あれ?でもお前らスライムの魔石集めてただろ?あれ討伐系だからどこも引き取ってくれないだろ?」
「へっへへ~。そこはまあ、孤児院の長年の伝手があるんだよ。100個まとめて持っていけば報酬の銀貨1枚に鉄銭2枚追加してくれる伝手がね」
やっす!100個集めておまけが鉄銭2枚って。・・・いや、少し色付けてるし、騙してる訳でもないからいいのか。俺もあと10個集めないといけないけど・・・あれ?ガジ達から買い取るってアリか?アリだな。スライムの魔石の納品だもんな討伐じゃないもんな。また装備溶かされて赤字になっても嫌だしな。
「なあ、お前ら今ってどのぐらいスライムの魔石持ってんだ?俺に売る事って出来るか?」
「うん?ああ、今は50は無かったと思うけど、別に兄ちゃんなら売ってもいいよ。何個いるの?」
「必要なのはあと10個だけど、Fランク依頼でも必要になるかもしれないから40個くれ。銅貨4枚と鉄銭4枚でどうだ?」
師匠からは「払いすぎだ馬鹿!」と怒られるかもしれないが、この間スライムに靴を駄目にされて赤字になった経験からノーリスクでこの値段ならむしろ安く感じる。
「マジでそんなに高く買い取ってくれるの?いいよ。全部売るよ。ついでに今日でまた10個集まったら」
「ああ、いいぞ。買い取ってやる。但し、今日だけな、今後は必要な時以外は買わないから俺を当てにするなよ」
「やった~!兄ちゃんありがと。でも何でそんな高く買い取ってくれるの?これだと赤字だよね?」
まあ当然の疑問が浮かぶが、そこはまあ苦い経験からとしか・・・これって他の新人でも同じなんじゃね?
「この間湧水でスライムに靴を駄目にされてな。銅貨9枚の赤字になったんだよ。それならお前らから買い取れば赤字だけどノーリスクだからな。多く買い取ったのは念の為だ。それより湧水に来た新人は少しぐらいの赤字でも魔石買ってもらえるかもよ。特にスライムに装備を駄目にされた奴」
「そうか。兄ちゃんの言うように装備駄目にされた新人なら兄ちゃんと同じ値段でも買い取ってくれるかも。今度から装備駄目にされた新人がいたら聞いてみよう。多分、そんなにいないだろうし、ぼろ儲けしてる訳じゃないから目を付けられないと思うからやってみるか」
俺の提案に何やらブツブツ言って考え始めるガジ。
そんな事を話しながら湧水に向かっているが、段々とみんな口数が少なくなってくる。もうすぐ例の場所なので、俺もだけどガジ達も色々考えているのだろう。
そしてクロが灰狼に殺された場所に辿り着いた。あの時はここは辺り一面血の海だったが、今はホントにここで人が死んだのかと思うぐらい辺りの風景と何も変わりがなくなっている。その周りと何も変化のない場所に昨日広場の花屋で買った花束をクロがいた場所に置いて手を合わせて目を瞑り、冥福を祈る。
「兄ちゃん?何してんの?」
俺の行動に疑問をもったガジが俺が目を開けると同時に尋ねてくる。日本式だからこっちでは不思議に思われても仕方がないが、クロの為に何かしている事はガジも理解しているっぽい。
「ああ、俺の故郷のお祈りだ。天国に行けますようにってな」
「天国?何それ?」
やっぱり、分かんねえか。でも俺も具体的に説明できねえしな
「普通はクロ・・・っていうか死んだ人にはどんなお祈りするんだ?」
「静かにお眠り下さいとかアンデットになるなよとか?」
どっちも同じ意味合いっぽいけど、死んだらアンデットになるのかよ。やっぱり異世界ヤベえな。でも死んだ奴全員アンデット化してたら大変だから、何かさせないようにする方法があるのか?
「アンデットにならないようにするにはどうするんだ?」
「へ?死体の首を切り落とすか焼くか、街で教会に頼んできちんと弔ってやるんだよって兄ちゃん冒険者なのに知らないの?」
知らねえよ。火葬は何となく分かるけど、何だよ死体の首切り落とすって、絶対にやりたくねえ。
「って事はそれしないと全部アンデットになるのか?」
「いや、なる奴とならない奴がいるよ。魔力の高い人がなり易いって言われてるけど、実験なんて出来ないから実際の所は良く分かっていないよ」
まあ、実験なんてしたらえらい事だ、大量殺人者が出来上がる。しかし教会の弔い方ってどんなのだろ。何かお祈りでアンデット化阻止するような方法とかあんのかな?
「教会ってどんな風に弔うんだ?」
「棺桶に入れて釘とかで厳重に封印して土に埋める」
おい、それアンデット化しても出られないようにしてるだけじゃねえか。万が一棺桶の封印破られたら地面から出てくるぞ。・・・・ああ地面から手が出てくる海外のホラー映画思い出した。
「それで月に一度『浄化』の魔法をかけてるんだったかな」
ああ、やっぱりそういう事やってんだ。そうじゃないと、毎晩アンデット発生するもんな。
「それで兄ちゃん、天国って何?」
ガジが引き下がってくれない。う~ん困ったな。詳しい事分かんねえけど、まあホントか嘘かなんてガジには分かんねえから説明は適当でいいか。
「まあ、天国ってのは神様のいる所だ。そこは美味しい料理が毎日腹一杯食べれる場所だな」
あとは酒も美味くて美人なお姉ちゃんが一杯いて凄く楽しい場所ってイメージだけど、改めて考えるとかなり俗っぽい場所っていうか金の支払いがない『猫宿』みたいだな。『猫宿』は天国だった?
「へえ~そんな場所があるんだ、クロも行けてるといいな。でも兄ちゃん、神様って何?」
え?神様知らないの?ガジが知らないだけ?それともここって神様の信仰とかないの?
「へ?神様知らないの?困っている人を助けてくれたり、奇跡を起こしたりする人なんだけど、知らない?」
「う~ん。女神様とか建国王様の事?」
「いや、そいつら500年前の人だろ?それよりももっと前から崇められたり、信仰されてる人じゃない概念みたいなものって言えばいいのか?」
「う~ん。なんかそれっぽい事聞いた事あったような。良く分かんねえや」
この世界に神様いるのか?いないのか?いない場合は、俺達神様に異世界に召喚された訳じゃないのか?いや、実は神様は存在していて隠れてこの世界を見守っているってパターンもラノベにはあった。どっちなんだ?いるのか?いないのか?
神様が俺に接触してきてないって事は存在しないと考えよう。でも存在しないってなると元の世界に帰れる可能性も大分低くなるな。後は何か目的を達成したら帰れるってパターンだけど。
「なあ、ガジ、魔王とかこの世界の人類の敵って知ってるか?」
「魔王?人類の敵?・・・・『皇帝』の事?」
・・・誰?
「皇帝って誰だよ?」
「皇帝は建国王様達が倒した悪い奴だよ?知らないの?」
建国王が倒したなら約500年前の奴かよ。知りたいのはそんな昔の話じゃない。
「知らねえな。それよりも今世界を敵に回しているような奴っていないのか?」
「う~ん。そんな敵いないよ。100年以上前は各国で争いがあったみたいだけど、今は各国とも仲良しだって聞いてる。兄ちゃんの言う世界の敵みたいな奴は聞いた事ないよ」
う~ん。魔王を倒せとかそういう目的系でもないのか。いや怪しいのは『皇帝』って奴が復活するパターンかなあ?
そんな雑談をしつつも湧水に辿り着くとスライムがヤバいぐらいいる。これ20匹以上いないか?
「うおおお!こんなにいるのすっごく久しぶりだ!よし、兄ちゃん達行くぞ!」
ガジともう一人は躊躇う事なく全裸になるとスライムに向かっていく。さすがに俺は全裸になれないので、安全そうな場所にいるスライムから魔石を引っこ抜いていく。ガジ達は何匹かから魔石を引っこ抜くと近くの川に飛び込んで、スライムの酸を洗った後、再びスライムに向かって行く。結果、ガジ13個、男の子10個、俺は装備がやられないように慎重に動いていたので魔石は3個だった。
「兄ちゃんも裸になれば装備気にしないで済むのに」
さすがに湧水まで足の踏み場もないぐらいスライムの死骸があるので、ガジ達と死骸を川に流していく。いつもはそのまま放置していれば別のスライムが死骸を捕食していくので放置らしいが、流石に今日は水を汲むのに邪魔だ。そうしてスライムの死骸を川に流し終わると湧水を汲んでから街に戻る。今日は5時台に飯を食べたのでまだ10時ぐらいだと思うが腹が減ったので、リュックからポテチを取り出す。さすがにガジ達にはあげずに俺だけ食べるとかいう酷い事はせずにどちらにもポテチを1袋あげると二人とも無言ですごい勢いで食べ終わった。で、結局、俺が食べようと思ったポテチも物欲しそうに見ている二人の視線に耐えれずに二人に渡してしまったので腹が減った。
「兄ちゃん、昼からもまた湧水行かない?」
街に着くとガジが誘ってくるが、さっき師匠から『念話』が飛んできたので、ガジの誘いは断った。何でも昼から一緒に出掛ける必要が出てきたっていう良く分からん内容だったが、まあ、師匠の言う事なら従っておいて間違いはないだろう。
「それじゃあ、兄ちゃんあと1回は湧水いくんだろ?そん時はまた一緒に行こうよ。この時期は朝と昼2回行くからいつでも誘ってくれよ。今日はありがとう」
ギルドで湧水と角兎の納品を済ませると俺は一度ガジ達と孤児院に足を運びスライムの魔石を買い取り、お礼を言って二人と別れた。




