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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
2章 水の国境都市の新人冒険者
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23話 ゴブリン討伐

だるい、・・・頭が重い・・・体が風邪をひいた時みたいに動きが悪い。でも風邪をひいた訳じゃない事は分かる。あの後布団で寝たが、まともに眠れる訳もなくあの時の光景が夢に出てくる度に目を覚ましていたので寝不足が原因だ。頑張って重い体を起こして準備を始め、いつものように広場に行くとやっぱり師匠は来ていなかった。そして7の鐘が鳴ってしばらくすると師匠とギースさんが広場に姿を現す。師匠はいつものように頭を抑えているので、また二日酔いなんだろう。そうして二人と挨拶をしてから南門に向かう。


「今日は蝙蝠だったな。この間の洞窟封鎖されたから今日は別の洞窟に向かうが、少し遠いぞ」


教えてくれるギースさんの横を俺が歩き、師匠が頭を抑えながら辛そうについてくる。なんかもう見慣れたような気になる光景だ。暫く道を歩くとマップに敵の反応が1つあった。


(師匠敵です。動きからスライムではなさそうです)

(ああ、ちょっと頭痛えからお前らに任せるわ)


ええ~。そんな投げやりでいいのか?普段は師匠が索敵担当だって聞いてるけど、そんなんで、大丈夫なのかな?


「ギースさん。右手の森の中に何かいます。どうしましょう?」

「お?ホントか?ガフ・・・は駄目だ使いもんにならねえ、仕方ねえギン、二人で少し見にいくぞ!この辺はあんまり強い魔物はいねえから心配するな」





「ゴブリンか」

「ゴブリンですね」


二人で森に入り様子を見に行くとゴブリンが1匹でウロウロしていた。師匠は道端で休んでもらっている。


「ギンどうする?俺がやろうか?」

「いえ、大丈夫です。1匹なんで俺がやります。」


心配そうに聞いてくるギースさんの申し出を断り自分で行く事にする。短剣を持つ震えていない手に目を向けると、大丈夫だと言う事を確信する。


「でもお前昨日ゴブリンから逃げ出したって聞いたぞ。大丈夫か?」


ギースさんは昨日の事を知っているのか更に心配してくる。ギースさんなら昨日の事は師匠から全部話されてても不思議じゃないな。


「もう震えもないので大丈夫です」

「そうか。なら一つだけ。お前は良くやったからな、昨日の子供の事は考えるな。ゴブリンを倒す事に集中しろ」


ギースさんからのアドバイスにコクリと頷くと俺はその場から静かに立ち去り、ゴブリンの背後に回り込む。


よし、大丈夫だ、震えてない。


ザクッ!


背後から歩み寄り手の震えが無い事をもう一度確認すると、ゴブリンの首に短剣を突き刺す。すぐにゴブリンは地面に崩れ落ちた。


「おお、やったなギン!一撃で仕留めるなんてすごいじゃないか。でもこいつら死んだふりする事があるから、念の為もう1回首を刺しとけ」


ギースさんのアドバイスに従い、もう一度首に短剣を突き刺す。全く反応しないので、完全に死んだみたいだ。


「よし、いいぞ。そんで基本的に魔石は胸の真ん中の辺りにあるからな。胸を開いて探してみろ。あと討伐証明に片耳だけ切り取っておけ」


ギースさんの指示に従いゴブリンの胸を短剣で切り開き腕を突っ込むとすぐに石みたいな感触が手に当たるのでそれを掴んで引っ張り出す。それから耳も切り取ってリュックに入れる。


「これで終わりだ。一応全身を『洗浄』しとくのが良いぞ。こいつらは魔石以外金にならないから、死体はここに放置だ。後は獣や魔物が処理してくれる」


こうして、あれだけ手こずっていたゴブリンとの戦闘は思った以上にあっけなく終わった。




「よお、どうだった?」


道に戻ると頭を抑えた師匠が出迎えてくれたが、まだ二日酔いみたいだ。


「昨日聞いてたから心配だったが、鮮やかだったぞ。後ろから一撃で仕留めた。」


何故か俺の代わりにギースさんが答えてくれる。それを聞いた師匠は満足そうに頷くと顔を顰めた。多分頭痛くなったんだろうな。


そうして道を歩いていると再びマップに反応がある。今度は二つ。


「ギースさん、また森の中に何かいます。どうしましょう?」

「ガフ・・・まだ駄目か。仕方ねえギン、行くぞ」





「またかよ」

「どうします?」


森に入って警戒しながら近づくとまたゴブリンだった。今度は2匹。


「面倒くせえけど、ギンの依頼の為だ、やるぞ。俺が1匹受け持つからもう1匹はギンがやれ」


ギースさんが作戦を立ててくれるが、俺には少し思う所がある。


「ちょっと、待って下さい。2匹とも俺にやらせてもらってもいいですか?」

「はあ?大丈夫か?」


俺の言葉にギースさんは心配してくれる。


「さっきと同じで1匹は気付かれる前に殺します。で、もう1匹の相手をします。さっきは結局不意打ちで、自分がどれだけ戦えるか分からなかったので、今回は良い機会かなって」

「まあ、いいけど。危なくなったらすぐに助けに入るから文句言うなよ」


ギースさんの言葉に文句等あるはずもなくコクリと頷くとさっきと同じようにゴブリンの背後に回り込む。そして同じように気付かれる事なく1匹の首に短剣を突き刺すと地面に崩れ落ちた。気付かれないのは多分『潜伏』スキルのおかげだろう。だが動くとスキルの効果は無くなると聞いた通りすぐに隣のゴブリンには気付かれて「キー、キー」言いながら武器を構えて俺を見据える。だが、


なんか隙だらけだな。師匠達みたいにどこを攻撃しても躱されるって感じしないな。むしろどう攻撃しても当たりそう。


ザシュッ!


気付いたらゴブリンの首に短剣を突き刺していた。崩れ落ちたゴブリンにもう一度短剣を刺し、最初に殺した方にももう一度短剣を刺して反応が無い事を確認すると、魔石と片耳を取ってから、ギースさんの元に戻る。


「よし、いい手際じゃないか。ってギン!お前腹!血が出てるぞ!」


驚くギースさんの声で俺も慌てて腹を確認すると、脇腹から服に血が滲んでいた。


「いて、いてええええ」


さっきまで何とも感じてなかったが、傷がついている事が分かると、途端に脇腹に痛みが走り、我慢できなくて声を出す。


「取り合えず見せてみろ。ああ、これぐらいなら大丈夫だ。『洗浄』・・・下級ポーション持ってるか?」


俺は慌ててポーションを取り出してギースさんに渡すと腹の傷に振りかけてくれる。すぐに痛みは治まり傷は塞がったが、少し傷跡が残った。


その後ギースさんと師匠の所に戻り、結果を報告する。師匠今日はまた一段と役に立ってないな。


「ああ、そうか。訓練の時、攻撃しかやらせてなかったな。今日からは躱す練習もするぞ」






そうして街を出てから約3時間ぐらいだろうか、ようやく洞窟に辿り着いた。この前の洞窟と同じで崖に穴が開いているタイプだ。


「着いたぞ、ここだ。この洞窟はE、Fランクの奴等がよく来る場所だな。ギンもそのうち来る事になるから場所は覚えておけ」

「この洞窟は地下5階まであって、この間の洞窟より複雑になっているから入るなら地図買ってから来いよ。まあ今日は蝙蝠目的で1階だけだからいらねえけどな」


ギースさんと二日酔いから回復した師匠が入り口前で準備をしながら色々教えてくれる


「じゃあ、今日は俺とギースが叩き落してギンがトドメな。落ちた奴の首を切ればいいからな。数はギンが数えろよ」


そうして準備を終えて各自の役割分担を決めてから3人で洞窟探索を開始する。しばらく歩くと聞いた事のある鳴き声が聞こえてきたので、この間と同じように『光』を3つ程辺りに投げて周囲を明るくする。


「よし、ギンいいぞ。言われなくても自分がやる事を理解してるな」

「ギース、あんまり褒めんな。まだこっからだ。ギン!ちゃんとトドメ刺していけよ」


棒を構えながら褒めてくれるギースさんと釘を刺してくる師匠。来る時に俺が3匹のゴブリンにトドメを刺してきた事は知っている師匠だが直接は見ていないので心配なのだろうか?


師匠の心配を余所に俺は二人が落とした蝙蝠の首に躊躇う事無く短剣でトドメを刺してカバンに放りこんでいく。今回は3匹しか襲って来なかったが、しばらく洞窟を探して回り昼過ぎには目標の合計20匹を討伐し終えて洞窟から外に出てきた。


「ふう~なんとか時間内に終わったな。これなら暗くなる前に街に入れるな。昼飯食べてると時間が怪しくなるから歩きながら適当に食うか」


夜になると街の入り口の門が閉められるので、今日の依頼は撤収時間が決まっていた。時間については師匠達は外にいる時は太陽?の位置から、洞窟内では感覚で分かるらしい。何それすごい。


元々この洞窟は来るだけでも3時間はかかるので泊まり前提で挑むのが普通だが今日は蝙蝠目的だったので日帰りできるとの判断でここにしたそうだ。というよりここ以外はもう泊まりが確定する距離にしか洞窟はないらしい。俺には『自室』があるから問題ないが怪しまれない為にも少しは野宿の道具を買った方がいいかもしれない。


そうして師匠の指示通り街へ向かって歩きながら各自適当に腹を満たしている。師匠とギースさんは手持ちの干し肉に齧り付いていて、俺はカバンからポテチを取り出し食べている。しばらく二人の後ろでバリバリ音を立ててポテチを食べて、ぼーっと歩いていると前を歩く二人が同時に振り返った。


「おお!何ですか?後ろ?魔物ですか?」


慌てて後ろを振り向くが何もいない。マップにも反応がないのでいなくて当然だが二人の様子から、もしかしてマップにも反応しない魔物の気配でも感じたのかと思ったが、


「ギン、お前さっきから何食べてんだ?」

「何か変わったもん食ってんな?またこの間のカップ何とかって奴か?」

「ああ、そっちですか。いきなり二人同時に振り返るから魔物かと思って焦ったじゃないですか。これですか?ポテチですよ。美味いですよ」


二人が振り返った理由が分かりホッとした俺が答えると同時に二人からニョイと手が伸びてきたので、ポテチを後ろに隠す。


「ちょっと、二人とも何するんですか。俺の昼飯ですよ」


後ろに隠されたポテチが気になるのか覗き込んで来ようとするが、すばやくカバンに入れる。


「よし、ギン俺の干し肉と交換だ。これでいいだろ?」

「嫌ですよ。その干し肉って獣臭くてあんまり食べたくないです」


獣臭い味のする干し肉を差し出してきたギースさんの提案を断る。


「ガハハハッ。ギースざまあねえな。俺を良く見とけ!おい!ギン!師匠命令ださっきの俺に寄越せ」

「鉄銭2枚になります」

「ああ!金とんのか!ふざけんな、俺はお前の師匠だぞ!」


慣れたから師匠が怒っても怖くないけど、多分日本だったらすぐにポテチ差し出して逃げるな。いやポテチをカツアゲしてくる奴なんていないか。


「師匠が言ったんじゃないですか!冒険者が外で飯を恵んで貰うのはマナー違反なんでしょ!だから金とるんじゃないですか!」

「グッ・・・・」


苦々しい顔で俺を睨みつける師匠の頭を掴んで横に投げるギースさんが俺に鉄銭2枚を差し出してきた。


「ギース!てめえこの野郎!」


師匠が怒っているがギースさんは気にしていないので俺は鉄銭2枚受け取りカバンからうすしお味とのり塩味を取り出して尋ねる。


「どっちがいいですか?」

「こっちが気になる」


のり塩味を指差したのでそちらをギースさんに渡す。


「ああ!てめえ!ギース!何でリーダーのお前が抜け駆けしてんだよ!こういう時は話し合いって決まっていただろ」

「このまま食っていいのか?」


ギースさんは師匠をとことん無視して俺に聞いてくる。よっぽどこの間のカップラーメンを気にいったみたいでこれも同じぐらい美味いものと思ってるのかなあ?


「そのままは駄目ですよ!袋開けないと!多分ギースさんの馬鹿力だと開けた瞬間中身が飛び散るから俺が開けますね」


そう言いながら袋を開けてギースさんに渡すと、ラッパでポテチを飲み込んでいく。豪快すぎい。


「う、美味え、ギン!これがほんとに鉄銭2枚でいいのか?もう一つあったな俺が買う!金なら払う!早く出せ!」


物凄い剣幕でギースさんから詰め寄られる。慣れてると言っても流石に顔怖ええ。


ドン!


俺が詰め寄ってくるギースさんに若干引いていると、目の前のギースさんが横にすっ飛んで行った。目の前にはギースさんに代わり師匠が目の前にいる。多分タックルして師匠がギースさんを吹っ飛ばしたんだと思うが、さすがに乱暴すぎないか?


「ふざけんな!ギース!もう1つは俺んだ!ほらギンさっさと寄越せ!」


血走った目の師匠から鉄銭2枚を渡されたので師匠の勢いに飲まれてうす塩味のポテチを渡す。


バシャッ!


師匠は俺からポテチを奪い取るとすぐに見様見真似で力任せに袋を破るから辺りに飛び散ってしまったが、そんなんお構いなしに地面に落ちた奴も拾って口に入れていく。


「美味、美味え。なんだこれ?おい!ギースてめえのちょっと交換しろ!」


ここからはもう滅茶苦茶だ、何故か地面に落ちたポテチと自分のポテチを交換するギースさん。そうしてギースさんも何故か地面においたポテチを口に運ぶ師匠。砂とか付いて食べづらいだけですよとか言える訳もなく二人の奇行を黙って見ているがそんなに時間が経つ事無く二人は食べ終わった。


「いや、この間の奴もだけどこれも美味いな!」

「マジでどこで手に入れた?またあん時の商人か?」


速攻でポテチを食い終わった二人から色々質問されるがカップラーメンと同じ架空の商人さんに責任を押し付けながら、さっき食いかけだったコンソメ味のポテチを二人から奪われないように食べている。3つともしょっちゅう遊びに来るノブが自分用に在庫を確保してあった奴だけどまあいいか。




街へ戻る途中にまたマップに赤い反応があった。今度は3つ


(師匠、敵です。右の森の中に3匹います)


ギースさんと話しながら歩いていた師匠が足を止める。ギースさんもすぐに警戒態勢に入り、俺に止まるように指示をしてくる。


「少し見てくる」


師匠はそう言い残し森に入っていく。と思ったらすぐに戻ってきた。マップでも分かっていたけど結構近いもんな。


「ゴブリンだ。倒すのは当然だがどうする?1匹づつにするか?」

「いえ、師匠。3匹とも俺にやらして下さい」

「大丈夫か?ギースどう思う?」

「さっきの戦いぶりだと何とかいけるんじゃないか?危なかったら助ければいいだろ」

「そうか。ならいいか。但しギン!最初は弓持ちから殺れ、遠距離攻撃から潰すのは基本だしな。殺ったら弓持ちを生き残ったゴブリンのどっちかに蹴り飛ばせ。多分隙が出来るが、後は状況によるからギンで判断しろ」


師匠の指示に頷いてから俺はゴブリンの元に向かう。さっきと同じように背後に回り込み弓持ちに近づいて首に短剣を突き刺す。そうして師匠の指示通り生き残りの1匹に蹴り飛ばすとそいつは弓持ちともつれて倒れこんだ。チャンス!と思ったがもう1匹が立ち塞がる。すぐにそいつの横をすり抜けるように動き短剣で首を切り裂く。倒れたゴブリンはようやく弓持ちの死体をどけたようだが、もう遅い。絶望した目をするゴブリンに短剣を振り下ろしトドメを刺して終了した。多分3匹とも死んでるがギースさんに教えられたようにもう一度首に短剣を突き刺そうとすると、


「ギン!大丈夫か?すぐに傷を見せろ」


慌てた様子で師匠とギースさんが近づいてくる。


傷?


師匠の言ってる事が理解できなくて、自分の体を見回すと腕からだらだら血が出て服が血塗れになっていた。それに気付くと痛みが襲ってくる。


「いてえええええ。いつの間に・・・切られた?いててて」


「2匹目の首切った時だ。向こうもお前を狙ってきてたのが腕に当たってた。・・・・こりゃ下級ポーションじゃ無理だな。かといって中級はもったいねえし。」


「中級ならありますよ。使って下さい」


痛みを我慢してリュックから中級ポーションを取り出すが、


「いや、来る時に下級ポーション使った時点で赤字がほぼ確定しているのに、ここで中級ポーション使ったらこの依頼は大赤字だ。なら赤字を抑える為に出費は抑えなきゃならねえ。って事でギン!下級ポーション出せ!」


指示通り下級ポーションを渡すと『洗浄』した後に腕に振りかけてくれるがまだ痛みがある。そこに師匠の『魔法鞄』から取り出したキレイな白い布でギュッと縛られたもんだからすげえ痛い。


「いてえええええ。師匠優しくして下さいよ」

「我慢しろ。これぐらいの痛みは冒険者なら慣れとけ。もっとひでえケガでも我慢しなきゃいけねえ時だってあるからな」

「ほい、ギン!魔石と耳だ。とってきてやったぞ」


師匠が俺の手当てをしている間にギースさんが後処理してくれたようでゴブリンの魔石と耳を渡してくる。


「ギースさん。ありがとうございます」

「ああ、別にこれぐらい構わん。ただなあ、ガフ」


何か言いたげのギースさんだがどうしたんだろ?いつもは言いたい事は言うイメージがあるのにこんなギースさんは珍しい


「ああ、もういいだろ」


そう言うなり師匠は俺の頭にゲンコツを落とした。さっきのケガよりもかなり痛い。


「いてえええええ。師匠!何すんですか」

「ギン、さっきの戦い弓持ちを蹴り飛ばす所までは良かったが、その後が駄目だ!お前向こうの攻撃気にしてねえだろ!2匹目の攻撃、あれは少しでも意識していたら簡単に躱せた!3匹目もだ、あいつはビビッて何もしてこなかったけど手に短剣持っていたぞ。普通は足で腕を踏んでからトドメか、先に武器をどうにかすんだよ」


今までにないぐらいの剣幕で師匠から怒られた。と同時に師匠に言われて確かに向こうの攻撃を全く気にしていない事に気付いた。


「すみません。今師匠に言われるまで敵の攻撃を気にしていないって気付いてなかったです」

「はあ~、お前まだガキ・・・クロって言ったかあいつの事引きずってるだろ。魔物が憎くて殺す事しか考えてないな」


師匠に言われてピクンと体が反応する。確かに戦っている時は殺す事しか考えていない。あの子の事も考えないようにしているが、ふとした時に考えてしまう。


「なあ、ギン、この前はスーティンだったから今日はエレナ誘えるな。エレナと少し話をしてこい」


ギースさんが深刻そうに言ってくるが何故そんな事を言うのか分からないし、今日もそんな気分ではない。


「ギースさん。すみませんが、まだそういう気分にはなれないので今日は遠慮させて下さい」

「いや、駄目だ。今日は『猫宿』に無理やりでも連れていく。そんでエレナを誘え。別に抱かなくても話をするだけでもいいからよ」


ギースさんの誘いを断るが師匠が許してくれない。何でそんなに俺を『猫宿』に連れていきたがるんだろ。


「二人とも何でそんなに『猫宿』押してくるんですか?」

「『猫宿』ってよりもエレナだな。こういう時は女を抱くのがいいんだが、お前はそんな気分じゃないんだろ。それでもエレナなら上手い事やってくれるだろって思ってな」

「それってエレナに丸投げって言うんじゃ・・・」

「まあ、そうとも言うな。俺らじゃ「酒飲んで女抱け」ぐらいしかアドバイスできねえからな。その点エレナっていうか、ああいう所のベテランはこういうのにも慣れてるからな」


俺の呆れた声に本音を師匠が口にするので、俺は更に呆れてしまう。呆れてしまうが俺を心配してくれているのは分かるので悪い気分ではなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「今までにないぐらいの剣幕で師匠から怒られた。と同時に師匠に言われて確かに向こうの攻撃を全く気にしていない事に気付いた」 ゴブリンが持っている武器を全く気にしない?
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