149話 異国交流
「レイ!あの朝ごはん何よ!何で日本食が!?ご飯は分かるけど味噌汁ってどうしたの?」
翌朝会議室に行くと既に溝口達以外のお偉いさん達は座って待っていた。だから何でみんな偉いのにそんなに早くから待っているんだろう?そして時間少し前に溝口達が入って来たと思ったらこの言葉だ。溝口に抱っこされている黒龍、その背後から待木とフェイが入ってくる。
あれ?待木なんかやつれてないか?溝口とフェイは何かテカテカしてるような?
「土屋って凄いな」
何が?
待木の奴ボソリと俺に呟いて空いてる席に腰を下ろすと、そのまま目を瞑ってしまった。
「あれは大体こっちの素材で作ったのよ。凄いでしょ?」
レイは新しい街に着く度に見た事無い食材買って色々研究しているからな。この間なんかカレーが完全に再現出来たのには驚いた。今は俺のリクエストでラーメンを研究している所だけど、かなり再現できたと聞いている。
「ちょ!ちょっと待って!アンナは分かるけど、お婆・・・フェイ!あんたまさか!」
「フフフ、いやあ久しぶりじゃがやはりいいもんじゃ」
水谷の奴一体何の話だ?日本食の話じゃないよな。
「ちょっと!アンナ!あんたはこれでいいの?」
「嫌だって言ってもこの色ボケエルフ引き下がらないのよ!何度も飛ばしたんだけど懲りずに突撃してくるし、結局折れたのよ」
「な!!何考えてるのよ!もう!待木も最低よ!」
水谷に怒られても微動だにしない待木。こいつ寝てね?っていうかさっきの待木の呟きの意味がようやく分かった。疲れただろうからそっとしておいてやろう。
「ホントに!土屋も待木も男共はこっちに来て好き勝手やりすぎよ!信じられない!」
「アユムちゃん、男子だけって訳じゃないよ。浅野さん達も何人も彼氏いたよ」
「・・・・もう!みんな好き勝手しすぎよ!」
水谷って人の事なのにあんなに怒って疲れないのかな。
「それで?アンナも早く席に着いたら?いつまでそこに立ったままなの?」
レイが言う通り溝口は未だに扉の前から動いていない。フェイと待木は既に席に座っているのに、溝口は何かに警戒している様子だ。
「昨日、フェイから聞いたんだけど、ツッチー影魔法使えるってホント?」
「ホントよ。まあそれは後で話すからいい加減座って」
レイが促すが溝口はやはり警戒して扉の前から動こうとしない。もしかして俺を警戒してるのか?
「いや、ここならギリギリ対応できるからここでいいわ」
??何に対応するんだ?
「何言ってるのか意味分かんない。いいから席に着いてよ」
「ちなみにツッチーの影はここまで伸ばせる?」
溝口はレイには答えず俺に質問してくる。何で俺の影を警戒しているのか・・・。
「ああ、出来るぞ」
溝口までの距離なら全然余裕なので影を伸ばす。何ならこの帝都・・・は無理そうだけど、夜なら城は余裕で影の範囲に入る。
「ひぃいいいい!」
俺が影を伸ばすと、情けない声をあげた溝口の足元に魔法陣が浮かび上がり、そのまま溝口と溝口に抱き着いていたタマが消えた。召喚魔法って自分にも使えるのか・・・便利だな。
「はあ~。全くアンナの奴は昨日あれだけ言ったのに、仕方のないやつじゃ」
フェイが溜め息を吐いて呆れているが、その足元に魔法陣が現れた。
「喚ばれたから少し行ってくる。すぐに戻る」
そう言い残してフェイは魔法陣に消えていった。ついでに待木も消えていた。マジで便利だな。何か制約みたいなものあるんだろうか。
「私は喚んで頂けないんですね・・・」
同じ奴隷なのに1人喚ばれなかったフランが寂しそうに呟いた。待木は奴隷じゃないから奴隷しか喚べないって事ではないのか。色々対象を選択できるみたいだな。
「アンナちゃん、どうしたのかな?」
「取り合えず会議を始めましょうか」
「・・・主様」
水谷が仕切っているけどいいのか?そしてフランが溝口の事いつの間にか主様とか言って落ち込んでいる。
「取り合えず火の国の分割についてだが、風の国側から帝都までを風が、水の国側から帝都の手前の街までを水が治める。ドアールだけはギンが治める事に決まった」
あれ?いつの間に決まった?俺がドアール治めるとか聞いてないぞ?復興させたいって言ってるだけなんだけど?
「アレス、何か話違くないか?俺はドアールを復興させたいってだけで、領主になりたいって訳じゃないんだけど?」
「お前の事だから絶対復興させるだろ。それで復興したドアールを水の国の支配下に置くのは嫌なんだとよ」
「国王陛下!嫌とは言っておりません。恐れ多いと言ったのです」
水の国の代表が失礼な事を言うアレスの言葉を慌てて遮る。
「子爵よ、ギンにはハッキリ言っておいた方がいい。ギンも折角復興させたドアールが知らない奴等に好き勝手されると嫌だろ?」
「・・・まあ確かにあんまり気分がいい話じゃないな」
折角頑張って復興した街を知らない貴族が滅茶苦茶にしたらキレるだろうな。
「だろ?だからドアールだけはお前の国だから、好きにしろ。水の国もお前がドアールを治めてくれた方が安心だと言っておる」
「でも、俺が街を治めるなんて無理だぞ」
「別にギンじゃなくてもお前が信頼できる奴に任せればいいだろ。ちなみに各国からドアールに1人は貴族を派遣する事が決定しておるからな」
俺何も聞かされていないんだけど?いつの間に勝手に決めてんだ。
「いや、何も聞いてないんだけど?」
「この前言っただろ。王族からの支援を受けてないと知らない貴族から際限なく支援という名の覚えのない婚約者達が送られてくるって」
ああ、そう言えばそんな事言ってたな。まだ復興を始めてもいないのに頭が痛くなってくる。
「そんな顔するな。そういうのを追い払う為にも各国から1人派遣するんだからな。なんならギンは椅子にふんぞり返っているだけでも勝手に復興が終わってると思うぞ」
アレスの言葉に各国の代表も頷いている。どの国も優秀な奴を派遣してくるつもり満々じゃねえか。俺はどっちかというと肉体労働しながら復興するつもりで、頭脳的な事はヒトミ達に投げようと考えていたんだけど・・・まあその時になってから考えればいいか。領主は・・・ヒトミは人に指示している姿が思い浮かばないからレイか水谷にお願いすればいいかな。もし断られたらフィナにしよう。獣人族の長だから街がもう一つ増えた所で大した負担にならないだろ。
「戻った。全くアンナの阿呆め。何度も説明したじゃろ」
「だって、やっぱり怖い物は怖いのよ」
「アンナ、服を引っ張るな。歩きにくい」
「テツは私を守りなさいよ!服とか気にしてんじゃないわよ」
騒がしい一行が帰ってきたので、ドアールの話は終わった。これってもうこれで決定したって事なの?
「アンナ!あんたどこ行ってるのよ!」
戻って来た溝口に水谷が怒り出す。
「いやあ、流石に影は無いでしょ?散々沼田に苦しめられてきたから私にとってのトラウマなのよ。」
「ギンジ君は優しいからアンナちゃんを傷つけないって」
「え~。いくらツッチーだって言ってもやっぱり影使い怖いって」
沼田のせいだとは思うけど、何もしていない俺まで怖がられると少し凹むな。
「あ~、ごめんね、ツッチーのせいじゃないのは分かってるの。全部沼田の奴が悪いんだけど、慣れるまで少しだけ我慢してねって事でこの話は終わり。それで今は何の話をしているのかな?」
勝手に話を打ち切って仕切り始める溝口。ただし俺から一番遠く離れた場所に椅子を召喚して座っている。
「火の国の領土分配とドアールの街の今後についてですが、今話は終わりました」
アレスの奴何で溝口に丁寧に話しているんだ?
「教国については?」
「教国については基本放置です。ただあの国の神官が回復魔法を使えなくなったので、これからどんどん衰退していくでしょう。恐らく女神教を信仰しなくなった信者が他国に流出してくると思いますが、基本風か水で受け入れてもらおうと考えています」
回復魔法があの国の取柄だったもんな。あの国食い物上手くないし、サービス悪い癖に色々高いんだもんな。今までは黙っていても信者が巡礼に訪れていたけど今後はそれも無くなるだろう。後は各国に隣接しているって利点を生かして交易都市とするぐらいじゃないと生き残れないだろう。
「回復魔法については昨日の通りね?」
溝口がアレスに尋ねる。アレスがサイの国の王様で回りも各国のお偉いさんだって知っても何も態度変わらないな。やっぱり昔も敬われていたから慣れているのか。
「はい、恐らく各街に一人か二人は使える者が出てくると考えています。ただ、『上級治癒』についてはどれぐらいの人数が使えるのか予想がついておりません」
「う~ん、私が教えた時は大体10人に1~2人ぐらいだったかな」
「それは本当ですか!・・・それなら今とあんまり変わらないぐらいか・・女神様貴重な情報ありがとうございます」
アレスも礼儀正しいな。別に俺と同じ態度で接しても問題ないと思うんだけど、
「それで女神様達はこれからどう行動するおつもりでしょうか?」
「昨日も言ったけどマーキング切れてるから各国を回りながら回復魔法の手ほどきをしていく予定よ。その前に現在の状況を少し把握してからになるけど」
そう言えば昨日もマーキングがどうのとか言ってたな。
「昨日も言ってたけどマーキングって何だ?」
「私の召喚魔法ってだいたい2㎞ぐらいならマーキング無しで呼んだり飛ばしたりできるんだけど、それ以上は前もってマーキングしておかないと飛べないのよ。昔は色んな所にマーキングしてたんだけど、500年も経てば流石にそれが切れてるからもう一度つけにいくの」
手の内を晒さない主義と言ってたから答えてくれないと思ったが素直に教えてくれた。
「それってマーキングがあればどれだけ離れていても飛べるのか?」
「昔、帝都からスーの実家までは飛べたわよ」
マジかよ、この帝都からかなりの距離だぞ、すげえな。
「そ、それなら我々が飛ぶことも可能ですか?」
フランが食いついてきた。ここから湖都まで一瞬ならそりゃあ魅力的だろう。みんな食い入るように溝口の答えを待っている。
「私がいれば飛べるけど、いないと無理・・・そう言えばフェイはアレまだ持ってるの?」
「リングか?持っておるぞ?もう魔力は残っていないがな」
そう言って首から下げていたリングを取り出して見せる。特に変わった所もない普通のリングにしか見えない。
「ちょっと貸して・・・・おっ魔力込められるじゃん。これをつけていれば私がいなくても飛べるわよ。ただ私の魔力補充が必要だし、1人しか飛べないけど」
フェイの奴すげえ便利な魔道具持ってんな。俺達も人数分欲しいけど、フェイが持ってるって事は貴重そうだな。
「そ、それはどこで手に入れたものでしょうか?」
「これはバッジワーグが作ったから作り方は知らん。ドワーフの小僧なら分かるかもしれんが、壊されたら嫌じゃから儂のは貸さんぞ」
「別にいいから、貸してあげなさい。それで同じの出来たらアユム達にも貸してあげられるし、それにしばらくアンタは私と一緒に行動するんだから必要ないでしょ」
「な、何でじゃ?アンナは今から世界中を旅するんじゃろ!何で儂が一緒に行かんといかんのじゃ!儂はアジトで待っておる」
溝口と世界を旅するにがショックだったみたいで抗議を始める。
「何言ってんのよ。人見知り治すって約束守れてないじゃない。世界旅するついでにあんたの人見知りも治すのよ」
「い、嫌じゃ。儂はもう人見知りは治った。小僧達とも仲良くしておるじゃろ。もう親友と言う奴じゃ。イチ様とナガレみたいなもんじゃ。だから一緒にはいかんぞ」
誰が親友だ。フェイには東達の事で感謝はしているけど友達になったつもりはない。
「はいはい、言い訳は旅しながら聞くわ」
溝口も付き合いが長いからフェイの噓にまともに取り合わない。
「そ、そうじゃ、イチ様からエルフと獣人は森に隠れているように言われておるんじゃった。儂はイチ様の指示に逆らう訳にはいかんからな。ほら獣人の娘ども、用事が済んだから森に帰るぞ。今なら儂の風魔法で一緒に運んでいってやる」
フェイの奴諦め悪いなあ。ガルラとフィナを巻き込むなよ、困っているじゃねえか。
「う~ん。今ってエルフと獣人ってどんな扱いなわけ?」
「どちらも大森林で暮らしていて詳しい実態は把握出来ていません。ただ、何かしらの罪人達が森から追放されて出てくる事がありますが、その場合は基本奴隷として捕まり高値で取引されます」
「あ~、あんまり変わんないのね。そっちの獣人さん達もそんな感じなの?」
「ガルラ達は村が襲撃されて無理やり奴隷にされたんだ。運よく俺達が買う事ができたけど、大森林の外で奴隷の首輪がないと攫われるからつけてもらっている」
それも今では必要ない位二人とも強いんだけど、外すとフィナに怒られるから怖くて外せないんだよなあ。・・・俺が主なのに怒られるってどう言う事なんだろ。
「その二人は例外だけど、この500年であんまり待遇改善していないのね」
「そ、それは我々の問題かと。この500年僅かばかりの交流しかなく人族の方の認識は500年前から変わっていません。未だに我々より力の強い獣人、見た目が美しく魔法に長けたエルフの奴隷を持つ事に憧れを抱いている者も少なくないのです」
そう考えると、ガルラとフィナを手に入れられた俺は物凄く運が良かったな。
「う~ん。でもこのまま引き籠っていても何も変わらないのよね~。・・・そうだ!留学してみるってのはどうよ?」
「りゅうがく?ですか、それはどのような?」
「エルフと獣人を何人か人の国に送って人族の暮らしぶりとか文化を経験するのよ。逆に何人かを大森林に送ってもらってこっちの暮らしぶりも知ってもらうのよ!貴族とか小さい時に他国の勉強しに行ったりしないの?」
「『異国交流』の事ですか?それなら各国でもよく行われているので理解できますが、ただ、それを大森林側が許してくれるでしょうか?」
「フェイ、エルフはいいわよね?あとは獣人だけど、誰に聞けばいいの?」
すげえな500年引き籠っているエルフの方は即決したぞ。フェイがキョトンとしているけど分かってるのかな。
「獣人はフィナに聞けばいい。我々はそれに従うだけだ」
「フィナってこのマリの子孫よね?私達より年下に見えるけど・・・もしかして変化してる?」
「いや、見た目通りの年だけど先代族長に勝ったから今は族長をやっているぞ。今は俺達についてきているから族長代理が里をまとめているけどな」
「そうなんだ。それなら話が早くて助かるわ、それでどう?この話乗らない?このまま獣人も森に引き籠っていたら駄目だと思うでしょ?」
フィナを抱きしめながら交渉しているけど、これフィナが頷くまで離すつもりないだろ。
「えっと、そうは思いますけど、やっぱり里から外に出るのは少し心配なんですけど」
「なら、フィナが心配しないぐらいの人物を選べばいいじゃない。それに砂の国なら絶対に不当な扱いはしないから」
「う~ん。フランがそういうなら考えてみようかな・・・でもまだ先の話だよ。まずはお兄ちゃんを手伝ってドアールの街の再興が終わってからね。それまでには選抜しておくから」
「分かった!約束だからね!やったー!持つべきものは友達ね。これでみんなにごちゃごちゃ言われなくて済む。えへへ。」
その本音は口に出したら駄目だろ、フィナがジト目で見ているけど、嬉しくて気付いてないな。それで砂の国に出し抜かれたアレスとアメリア王女が焦っている。
「め、女神様、その時は何卒我がサイの国へりゅうがくをお願い致します。ご存知の通り我が国は建国王様が興した国でございます。大森林とも国境を接していて、何より建国王妃様のハイエルフ様もこの国で暮らしていた馴染深い国でございます。我が国にりゅうがくして頂ければ国を挙げて歓迎し、国賓として迎える予定でございます」
「な!ずるいぞ。アーレスブライト王!ハイエルフ様!我が国の建国王妃様はあなた様と共に建国王様をお支えしたと伝わっております。それによく我が国にお忍びでいらして作法など気にせず初代様と大変仲良く寛いで過ごされていたと伝わっています。ですので堅苦しい作法は我が国では不要ですので、何卒我が国へのりゅうがくをお願い致します。当然大森林へは闇の国第2王女である私がりゅうがくさせて頂きたく考えております」
「な!王族が他国へ『異国交流』など聞いた事ないぞ!それにそんな重大な事女王に聞かなくてもよいのか?」
「ふふん。母上からは全て私の裁量で判断せよと言われているから心配はいりません。それに大森林の街へ許可を貰い初めて立ち入れるのです。王族がいかなくてどうするのですか?ああ、そちらは既に未婚の王族はいませんでしたね。『異国交流』に既婚者を出すなんて失礼な事はサイの国ならしませんよね?ウフフフ」
なんか二人で不穏な空気だしているな。『異国交流』って名前以上の政治的な意味がありそうだ。
「ヒトミ、『異国交流』で既婚者がでたら駄目な理由って知ってるか?」
「『異国交流』ってのはお見合い相手探しみたいなものだからだよ。まあ貴族の兄妹の三番目以下がよく行くみたいで、目的は優秀な人材の確保だね。男は爵位を継承できる可能性が低いから他国でお嫁さんをもらってその家を継ぐ、女なら他国で婿を見つけてその家に入るってのがパターンだね。どちらも国の厳しい審査を勝ち抜いた優秀な人材だからもし、そこで相手が見つからなくても国に帰れば相手に困る事はないみたい。だから貴族の下の弟妹はそれ目指しているからどんどん優秀になるし、上も愚鈍のままだと継承権を破棄させられるから必死なんだよ。結構厳しいシステムだけどね」
へえ~。貴族って気楽かと思ったら結構厳しい環境に置かれているんだな。そう言えば水の国には馬鹿貴族がいたけど、あれは兄弟がいなかったから馬鹿になったのかな。
「そうだな、結構意地の悪いシステムだけど、誰が考えたんだろ?」
「ヨミコじゃ。優秀な奴が一杯いれば自分達が楽できるって儂とスーに話を持ってきおった」
・・・黒川・・・いや、理由はどうあれそれで優秀な人が国を回しているならいいのか。
「どうせフェイもその話に喜んで乗ったんでしょ?それで二人でスーを説得したって所かな。イチは・・・あいつは裏が読めないから素直に信じたな」
「な、何の事じゃ。儂もいい考えだと思ったからその話に乗ったんじゃ。失礼な事を言うな」
「絶対嘘よ。あんた、優秀な人が増えれば自分が人前に出なくて済むとでもヨミコに言われたんでしょ」
言われたフェイは口をパクパクさせているが、反論できないみたいだから、溝口の言う通りみたいだ。フェイって結構考えが浅いな。
「まあ、これでフェイが大森林に引き籠っている理由は無くなったわね」
そう言われたフェイの顔が見る見る血の気が引いて行っている。
「い、嫌じゃ、絶対嫌じゃ。エルフなんて目立つに決まっている・・・そうじゃ!」
「変化は禁止ね。丁度いいわ。世界を回りながらエルフってこんな感じってみんなに知っていってもらいましょう。これもエルフ達が大森林から外に出る為の布石ね」
フェイがこの世の終わりみたいな顔になっている。少し可哀そうに思えてくるけど、二人の事だから何も口出しはしない。フェイ頑張れ。