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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
7章 大森林のBランク冒険者
146/163

136話 後始末

「はあ~」

「ヒトミ!いい加減川崎の事で落ち込むのはやめなさい。あんたは十分情けをかけたわよ。それを踏みにじった奴の事はさっさと忘れなさい」


 川崎の一件からずっと落ち込んでいるヒトミを水谷が叱る。俺も水谷ぐらい厳しくしないといけないんだけど、そこまで心を鬼に出来ない。それに水谷も大概だけど、うちには更にそれ以上に心を鬼にしている奴がいる。


「ヒトミお姉ちゃん。もしカワサキが罪を許されて釈放されても私は許さないから。牢屋から出た瞬間に殺すからね」


 族長になってから仲間というか家族を異常に大切にしているフィナが冷たい目をしてヒトミに言ったから、ヒトミは何も言う事が出来ずさっきから溜め息しかでてこない。


 金子には逃げられたが、他の火の国の悪魔達と決着をつけた後は、敵は撤退を開始したので今はガルラを先頭に追撃戦に突入している。俺達の役目はもう終わりで後は連合軍の奴等に任せろって言ったんだけど、あの戦闘狂は言う事聞かずに大声で笑いながら突っ走っていきやがった。あいつは自由すぎる。


 そして俺達は今、その戦闘の片づけをしている。ヒトミとフィナは俺達が殺した死体と現在進行形でガルラ達、追撃部隊から作られている死体の焼却を、俺は死体を回収して身ぐるみ剥いでからヒトミ達の所に運ぶ仕事をしている。水谷は万が一火が燃え広がった時の為に待機しているから、ヒトミの溜め息をずっと聞かされて嫌になったんだろう。あの戦いで味方が怪我する所は無かったはずだけど、ヒトミが防いだ最初の向こうからの攻撃と追撃戦に移行して進軍する時に転んで骨を折ったりした奴がいたらしくレイは今その治療に当たっている。


 それで今は追撃を行いつつ、周辺の街や村をいくつかの部隊に別れて解放している所らしい。そして今日は水の国境都市チルラトまで軍を進めるそうだ。・・・チルラト・・・俺の持っているワインの産地で新人冒険者の頃から何度も名前を聞いた街だけど来るのは初めてだ。そして師匠が教えてくれた通り、あんまり栄えている感じはしない街だ。




「いやあ、まだ気を緩める訳にはいかないですが、今日のギン様達のご活躍素晴らしかった。これでこちらの士気も十分、このまま『帝都』まで問題なく兵を進める事が出来ますでしょう」


 サイの国の王様は口では気を引き締めろと言っているが顔は真逆の表情をしてご機嫌の様子だ。そして闇の国の女王と水、風、砂の国の代表も同じ様な表情で俺の出したワインを飲んでいる。今この場には各国の代表と俺しかいない。砂の国の女王フランには無理言って『自室』でみんなと過ごして貰っている。まあ、本人は喜んでいたからいいだろう。ヒトミの落ち込みっぷりにばかり目がいくが、レイと水谷もクラスメイトと殺し合いをしたから恐らく相当心にダメージを負っているはずだ。フランだけじゃなくて出来ればクーミ達もいて気を晴らして欲しいが、サイの国にいるから無い物ねだりは出来ない。


「サイの国の王の言う通りだ。警戒するに越した事は無いが、このまま兵を進めるにしてもどう進めていくか考えなければならん」


 闇の国の女王の言葉にこの場にいる面々の顔に緊張が走る。


 あ~面倒くさい。政治的な事に俺達は巻き込まないで欲しいな~。まあ、巻き込まれそうなら全力で拒否しよう。


「それなら闇は国境まで撤退し、防御を固めるのと教国への警戒を、砂は今ここにいる軍は自国まで戻り、残っている軍で風の国から『帝都』に攻め上っていく。ここから先は水と風の連合軍に任せるというのはどうだろう?」


 サイの国の王様から各国へ提案があるが、これはどうなんだろう?


「まあ、我が国は領土を攻められてもいないし、兵の被害はないので少し大規模な遠征をしたと思えば文句はないが、教国が攻めて来た時が面倒だな。砂の国は?」


 女王様は文句は無いと言っているけど何か警戒した言い方だぞ?


「我が国もまあ同じような考えですが、ただ、敗残処理になると言っても風の国から攻め上ると、こちらも少なくない被害は受けるのが気になりますが・・・」


「二人の言い分も理解している上で提案だ。我が国の第3騎士団を火の国が滅ぶまで闇の国の防衛に当たらせよう。その間は全て貴国の管理下に置かせる。そして砂の国へ派遣している第2騎士団は共に風の国の都市を解放させながら『帝都』に攻め上ろう。こちらもその間は全ての指揮権を貴国に委ねる」


「ええ!?」

「はあああああ!!!??」


 王様の提案が有り得ないことぐらい俺でも分かる。当然両国の代表は代表らしからぬ声をあげる。まあ、すぐに落ち着いて冷静に考えを巡らす所は流石だな。当事者でないから冷静に見てられるけど、当事者二人は心穏やかじゃないだろうな。


「サイ国の王よ。何を企んでおる?」

「そうですよ!その案はそちらに何もメリットが無い!」

「はは~ん。分かりましたよ。この後『帝都』に攻め込むのに他の国を排除したいのでしょう?で我らが残存兵達と「帝都」まで攻め上り、勝ってから我らが国から土地か金を貰うつもりでしょう?」


 水か風かよく分かんないけどその代表がサイの国の王の考えを口にする。流石にそんな事考えてるなら・・・いや政治ってそう言う物なのかな。


「いや、そのつもりはない。火の国を滅ぼすのは、国を再興させる為に立ち上がった水と風の兵士達でなければらん。我が国の騎士団は万が一の為の後詰と思ってくれていればいい」

「王様、その理由は?それだとサイの国にはメリットが何も無いですよね?っていうか遠征で兵糧とか使ってるからマイナスだと思うんだけど?」


 腹の探り合いとか俺にとってどうでもいいから直球で聞いてみた。闇以外の代表は俺の質問の仕方に呆れているみたいだ。


「メリットはありますよ。ギン様の前ですから正直に話しますけど、まず建前として、闇と同じように兵達に本当の戦争というものを経験させる事ができました、更に皆初めての戦争という事もあり、装備の見直し整備等見直す事が出来ました。更にこれから水、風の国を再興するとなると我が国からも職人や資材を輸出する事になるので経済が回ります」


 まあ言ってる事はもっともだけど、それは国としての意見だな。どうもこの王様それは建前で本音は別にある気がする。


「アーレスブライト王個人としての意見も聞きたいんですけど」

「・・・・あは、アハハハハ!・・・・初代様と同じ勇者様からの質問ですから正直に答えますが、もう色んな事が面倒くさいです。自国の民の為ならどれだけでも身を粉にしても働きますが、他国の事なんか知った事ではないので、さっさと終わらせて帰ってゆっくりしたいってのが本音です。更に言えば勇者召喚も私の代でなければこんなに面倒を抱え込まなくてよかったと思っています」


・・・・おおう、ぶっちゃけすぎだろ。こっちに召喚されたのは俺達のせいじゃないぞ。


「サイ国の王!それは少しいい過ぎなのでは?」

「面倒くさいとかどうでもいいとか上に立つ人が口にすべきではないですよ」

「勇者様の前で無礼すぎる。殺されるぞ」


・・・さすがに殺さないよ。俺の事、機嫌を損ねるとすぐに殺すアブナイ奴だと思われてねえ?


「もし仮に私に野心があったとしても『カークスの底』が健在の内は何もしようとは思わんな。たったの6人・・・いや、実質3人で火の国を撃退したのだから相手にするのは分が悪すぎる。女性の勇者様達が攻撃に加わるとどうなるのか、考えるだけで恐ろしい」


 サイの国の王様の言葉に各国代表も言われてみればそうだなみたいな顔してる。なんか俺達の事ヤバい集団だと思われてそうだな。





 翌日はガルラと二人で進軍する兵の後を歩いてついていっている。他のメンバーはやっぱり精神的ダメージが大きかったので今日は『自室』で休ませている。レイと水谷は多分今日1日で回復してくれると思うが、ヒトミはまだまだ時間がかかりそうなので、捕まえたクラスメイトが処刑されるまで『自室』にいてもらおうと考えている。


「おい!土屋!いい加減ここから出せよ!」

「せめて服だけでも頂戴。私の裸はタダじゃないのよ」

「瞳に!瞳に会わせてくれ!あいつなら俺の話を聞いてくれる」


 牢屋に入れられて運ばれてるのに偉そうな態度だな。こいつら『水都』で処刑されるって説明したから分かってるはずだよな?こいつらから聞きたい事は聞いたから話しかけられても無視できるが、ヒトミは優しいから無理だろうな。逆にこいつらの言う事信じてまた命だけは、ってくるのが目に浮かぶので、やっぱり『水都』を出るまでヒトミは『自室』にいてもらおう。


 こいつらから聞き出した事で分かった事はあんまり無い。藤原が大量の死体を集めていた事はわかったけど、理由はコレクションと使用の為って事だから余計気持ち悪い。たまに自慢されて鬱陶しかったと言っていた。

 こいつらは普段は火の国で豪遊して暮らしていて、たまに戦争に駆り出されても勇者とだけは真面目に前に出て戦い、あとは後ろから魔法をバンバン打ち込んでいただけだそうだ。藤原だけは城とか領主の館に喜んで向かっていったのだけど、まあ理由は美人の死体集めだから気持ち悪い。

 一応会議の最後に各国の代表に死体の確認をしてもらったら、カラミティ以外は王女や王妃、貴族令嬢、領主婦人等貴族の偉い人達でその中でも美人で有名な人達ばかりだそうだ。死体の確認をした各国の代表は当然怒り心頭だったが、その中でもサイの国の王様がさっきまで面倒くさいとかどうでもいいとか言ってた人とは思えないぐらいに怒っていた。自慢の愛娘の死体をみたらそうなるのも仕方がないけど、今すぐにでも進軍を開始すると言い出したので慌ててみんなで止めた。

 そしてその死体はこの戦争が終わって落ち着いた後に埋葬したいと言われたので、未だに俺が預かっている。あと金子の持っていた『転移石』については捕まった3人とも何も聞かされていなかった。当然だけど金子がどこに行ったかも知るはずもなかった。


 その後は特に火の国から大きな抵抗はなかった。『水都』でさえも既に兵が撤退しており、簡単に奪還出来たので、火の国はどこかで騎士団を再編して俺達を迎え討つつもりらしい。しかし最初の戦いで一万以上いた兵士がほぼ壊滅したのにまだ勝てるとでも思っているんだろうか?残りの第1騎士団が約2500人と各街の防衛にあたっていた兵士全て撤退させたと言っても多く見て4000人程度しかないと聞いた。こっちは集まって来た水と風の連合兵だけで3000人、サイの国の第4,5騎士団2000人ずつがいるから数でも負けてる。更に風の国側からも攻め込まれてるからどう考えても勝ち目はないのにまだ抵抗するなんて何か秘策があるんだろうか?考えられるのは教国からの援軍だけど、これは闇の国と第3騎士団が警戒に当たっているから問題ないはずだ。


 そして『水都』を簡単に奪還できた俺達は、


「おい!ふざけんなよ!こっちは命令で仕方なくやってただけだって言ってるだろ!」

「ちょ!マジ無理だって!こっちは無理やりこっちに召喚された被害者なんだって!」

「頼む!誰か助けてくれ!!マジで早くしろよ!」


 今からクラスメイトが処刑されるのを見ている。処刑台に連れて来られた3人は未だに文句を言っているが、まだ助かるとでも思っているんだろう。だけど処刑台に括りつけられた所で、とうとう自分の立場を理解したみたいだ。


「土屋!頼む!助けてくれ!」

「お願い死にたくないの助けて」

「ごめんなさい。ごめんなさい。許してください」


 命乞いをしている連中を前に水の国の代表がこいつらの罪状を読み上げていく。周りからは当然だけどこいつらに対しての罵声しか飛んでこない。水の国が滅んでから水の国民はかなり搾取され続けたのでその怒りは理解できる。そしてそんな罵倒の声が吹き荒れる中、風の国の代表の合図でクラスメイト3人の首があっけなく落とされた。当然だけど、クラスメイト3人が処刑された所で、何も感じる事は無かった。これで後は金子ただ一人かぐらいの感想しか浮かばなかった。




「ただいま」

「終わったよ~」


 全てが終わり『自室』に戻ると、当然のようにフランも入ってくる。砂の国の兵は一度国に引き上げたのだが、フランはレイと一緒にいたいからこちらに残っている。これで砂の国に戻れば今後はそう簡単に国外に出る事は出来ないし、火の国の最後をこの目で見るのが王としての努めだとかいう建前で、家臣を黙らせた。俺達『カークスの底』がフランの護衛をするという言葉も決め手になったらしいが、俺はそんな約束してない。


「おかえり」

「どうだった?」


 処刑の際は俺とガルラは周囲の警戒をしていたが、他のみんなは家にいてもらったんだけど、やっぱり3人とも程度は違うけど落ち込んでる。そんな中全く気にしていないフィナが処刑の様子を聞いてくる。


「あれが世界中を震え上がらせた火の国の悪魔だと思えないぐらいみっともなく騒いでたよ」


 処刑何て見慣れたと言っているフランがその様子を答えている。最初聞いた時はその年で処刑見慣れたってすげえ事言うなあと思ったけど、そう言えばポーラスも面前で処刑されてたからこっちの人は結構見慣れてるのかもしれない。


「な~んだ。助けにくるような人もいなかったんだ」

「ギン様達が警戒しているのに、そんな事しようとする奴はただの自殺志願者だと思う」


 歳も近い二人は友達感覚で話しているが一人は獣人の族長で、一人は砂の国の女王と良く分からない関係だ。


「そんな事よりフィナ。交易の場所を早く元の場所まで戻してよ」

「だから、私達の村を襲った人達を捕まえたらって話でしょ」

「報告は受けてるけど探すのに手間取ってるから仕方ないでしょ。それよりもあの時遊んだ獣人が族長になるなんて先見の明がありますね何て言われて周りからのプレッシャーが凄いんだよ。だからね?友達を助けると思って」

「駄目だって!私もあそこまで戻すのは族長になったドサクサ紛れなんだもん。これで何も無しに元の場所まで戻したら、みんなから文句言われるよ」


 可愛く言い争っているが、内容は国と里の重要案件だったりするのが笑えない。そして笑えていないのがこの部屋に3人いる。ガルラは部屋に戻って解体している。相変わらずの自由人だ。


「顔色が悪いから今日は3人とも休んだらどうだ?」

「あ、うん、そうしようかな」

「で、でもご飯は?」

「そんなの適当に食うから心配するな」


 すぐに反応してくれた水谷とレイは明日ぐらいには気持ちを切り替えるだろう。ただヒトミがなあ・・・さっきから顔をタオルで押さえてずっと泣いている。


「ほら、部屋まで運んでやるから今日は3人でヒトミの部屋で寝ろ」


 未だに泣いているヒトミを抱き上げると、すぐにヒトミが俺の胸で泣き出す。こういう時は何て言うのが正解なんだろうなあ。男なら風俗で解決できるんだけど、女はどうすればいいのかリマやクオンに聞いておけばよかった。そんな事を考えながらヒトミをキングサイズのベッドに降ろしてから部屋を出て行こうとすると、ヒトミから質問された。


「ギンジ君はクラスメイトが死んで何も思わないの?」


 振り返ると、レイと水谷も真剣な目で俺を見ていた。ここは誤魔化したりしないで正直に答えておいた方がいいな。


「そうだな。俺の大切な人や場所を奪ったあいつらが死んだ所で何も感じないな。復讐を果たしたからもっと嬉しくなると思ってたんだけど、それすらもないな」

「そっか。ありがとう。あとごめんね。明日には立ち直るから今日だけは一杯泣かせて」


 俺の答えに何を思ってくれたのかヒトミはいつもの様に笑ってくれたのを見て、俺は部屋を後にした。その日の夜は3人で思いっきり泣いたと後で教えて貰った。






「少しご一緒してもいいですか?」


 あの後、何となく久しぶりの『水都』を見て回ろうと城から出て行こうとした所で、サイの国の王様から声を掛けられた。


「一緒って?これから城の外に行くんですよ?」

「ええ、ギン様なら私を連れて城の外に行く事ぐらい簡単でしょう?」


 そう言ってくる王様は明らかに貴族の格好をしているからこのまま外に連れて行くと目立って仕方ない。仕方がないので影で王様を冒険者風に着替えさせる。


「こ、これは?」

「その格好でいいなら連れて行きます。あと外にいる間は俺と王様はパーティと言う事でタメ口で話しますよ」

「フフフ、いいですねえ。初代様達はよくお供も連れずに城から抜け出していたらしいですから、私もやってみたかったんですよね。ああ、そうだ、ギン、外では俺の事はアレスと呼べ」

「あ、ああ分かった」


 いきなりフランクに話しかけてきたから少し戸惑ったけど、これなら安心してもいいだろう。そして俺は王様・・・アレスを『影移動』で城の外に連れ出した。




「ぷはっ??ぎ、ギン!今のは何だ?」

「ああ、あれは俺の影移動だ。ほらまだ城の近くだから大声出すなよ」


 影移動から外に出ると、アレスは驚いて騒ぎ出すので注意する。これ使うと最初みんなもがき出すのは何でだろうな?溺れるとでも思うんだろうか?


「フフフ、アハハハハ!!ま、まさかこの俺が!この年で!覗きをするなんてな。ガハハハッ」


 さっき城を移動中数回メイドさんの影に隠れて移動した時の事を思い出したのか大笑いして俺の背中をバシバシ叩いてくる。王様だと言っても常日頃体を鍛えているだけあって結構痛いぞ。


「ほお?これが城下というものか?ギン!アレは何だ?」

「買ってやるから落ち着けって。普段は城下とか視察にいかないのか?」

「行くには行くが、事前に安全が確認された店で回りに護衛がゾロゾロついてくるから、普段の平民の様子なんて見れてないのも同義だ。だから今はものすごく楽しいぞ」


 ああ、その顔見れば楽しんでいるのは分かるけど、あんまりキョロキョロしていると田舎者だと思われて絡まれるぞ。今はまあ、周りに兵士が大勢見回りしてるから大丈夫だけど。


「ほら、食ってみろ。庶民の味だ」


 そう言って適当に入った定食屋で飯とビールを頼んで二人で食べ始める。口に合わなくても食べてもらう。


「おお、美味い!ギン!これは何という食べ物だ」


 そんな心配は必要ないみたいでアレスは口に入れると満面の笑みに代わる。あんた普段からもっと良い物食べてるだろう。


「多分兎の串焼きだろう。まあ一番ランクの低い肉だな。食った事ねえのか?」

「ない。しかしこれで一番ランクが低いのか勿体ない」


串焼きにご満悦なオッサン。これがサイの国の王様だとは誰も思わないだろう。

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