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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
7章 大森林のBランク冒険者
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134話 火の国の悪魔達

 いねえな。あいつらどこにいやがる。


 影で敵を斬り飛ばしながら金子達を探しているが今の所見つからない。見つからないけど、でかい魔法が飛んできたからまだあいつらは逃げ出していない事は分かる。ただ敵が俺に向かってくるのを躊躇うようになってきたから、いい加減早く見つけないと、敵が逃げ出してあいつらも一緒に逃げるかもしれない。焦りも出てきた頃、遂に目の前の敵が何人か逃げ出し始めやがった。


 マズい、まだ見つけてねえぞ。


 更に焦る俺、周りを見てもあいつらの姿は見えないので少し早歩きになり敵を倒していくと、俺から逃げ出す兵士達が増えてきたので、更に焦る俺だったが、後方から大きな音が響いた。


 約束通りフェイから合図があったって事はようやく来やがったか。




「おらあ!どけどけ!」

「敵を前に逃げ出してんじゃねえよ!」

「俺らの手を煩わせやがって!ふざけんなよ!!」





・・・来やがった・・・ようやくだ・・・会いたかった


 学校にいた時は会いたくも無かったが、今ではこいつらに会えるのを心待ちにしているなんて、人の心はどうなるかわからない。そんな事を考えながら作戦通り、敵から距離をとる。


「おお!勇者様だ!勇者様が来てくれたぞ!」

「よっしゃあ!ここからが本番だ!!」

「見ろ!あいつら勇者様を恐れて下がりやがったぞ」


 あいつらが出て来た事が分かると敵の士気が一気にあがった。そして仕切り直しの為に一旦下がっただけなのに何か盛大に勘違いしているな。距離をとった俺に後ろにいたレイ達、左右にいたガルラ達が集合したと同時に兵士の人混みの中から遂にあいつらが現れた。


 グループのボスの『金子』、レイの髪や顔を切り刻んだ『大久保』、ヒトミの幼馴染『川崎』、水谷の獲物の『石井』、パシリの『藤原』だ。よし、全員いるな、誰も死んでねえし、逃げ出してもねえ。今日ここで全てを終わらせてやる!


「あれ?委員長じゃない?」

「嘘だろ!焼け死んだって聞いてるぞ」

「瞳!お前、瞳か?」

「アッチは水谷じゃねえか?」

「うわ!ホントだ生きてやがった!またオーク探さねえと」


 顔を隠している俺とレイに気付かないのは仕方ないけど、やっぱりヒトミと水谷はすぐに正体がバレてしまったな。石井の馬鹿は水谷を挑発してんな・・・ってやっぱり水谷がキレやがった。


「石井!!あんたは絶対許さないから!!真澄達の、陛下の仇!ここで討ってやる!!」


 水谷が今まで聞いた事無いぐらいでかい声で石井に向かって怒鳴りだす。俺達は石井が何をやったか水谷に聞いているので、その怒りは理解できる。


「ハハハハハ!そりゃあ楽しみだ!また捕まえて今度こそオークで初体験させてやるよ。ガハハハッ」


石井はそんな怒りを分かってないのか更に水谷を煽ってくる。


「・・・殺してやる」


 水谷がそれを聞いてボソリと呟いた。普段はぎゃあぎゃあ怒ってる水谷がこんな風に静かに怒るなんて初めてだな。






「瞳、お前自殺したって聞いたぞ。何で生きてんだ?」

「俊介!もうやめて!今ならまだ許して貰えるようにお願いしたから!だからもうみんなに謝って!」


 戦いの前に川崎の処遇について俺はヒトミと何度も言い争いをした。結局ヒトミの『ちゃんとみんなに謝罪させて、奴隷でも炭鉱夫でも何でもやらせるから命だけは助けて』という意見を俺は許してしまった。但し、チャンスは一度切り、少しでも反省してない素振りを見せたらその時は覚悟すると、ヒトミと約束した。


「何でだよ!誰に謝るんだよ?馬鹿かお前?」

「みんなにだよ!一杯色んな人に迷惑かけたんでしょ!許されない事もしたんでしょ!私も一緒に頭下げるから!だからもうやめてこっちに来て・・・これ以上は私でも庇いきれないよ」

「だからそれがムカつくんだよ!何でいっつもお前は上から目線なんだよ!」



「・・・えっ?・・・俊介・・・何言ってるの?」



「その自覚してねえ所もムカつくんだよ!小さい頃から優等生のお前と比べられて、ちょっとした事で一々注意してきてお前の存在がもうムカつくんだよ!お前が自殺したって時はこれで口煩い奴が消えたって喜んだのによ!1回ぐらいヤらせてくれたら俺の気が変わったかもしれなかったけど、もう女には困ってねえんだ、だからもうお前はいらねえや」

「・・・・俊介・・・何でそんなに酷い事言うの。・・・私の事が嫌いでもいいから、まずはみんなに謝ろう。じゃないと、もう・・・本当に・・・」

「だからうるせえんだよ!俺に話しかけてくんじゃねえ!!・・・いや、もう目障りだから死ねや!」


 ヒトミの決死のお願いもこの分では無駄になりそうだ。





「あれ~。あれあれ~?もしかしてあなた聖女の大野さんじゃん!良かった~生きてたんだね~」


 近づいてきた大久保がレイに気付いたようだ。まあマスクで顔隠しているって言っても、ヒトミと水谷もいるから元クラスメイトなら髪型とかですぐに誰か感づくだろう。


「そんな心配全くしてないくせによくそんな事言えるわね。相変わらず性格悪すぎよ」


 レイはかなり冷静に答えている風だけど、これは滅茶苦茶怒ってる時の声なのは、俺達はみんな知っている。レイはこいつらにどんな事をされたか話してくれた事は無いが、それでもかなり酷い仕打ちを受けた事は知ってるし、それを率先してやってたのが大久保と浅野のギャル二人だってのは想像できる。浅野は俺が殺した今、その怒りは全て大久保が受ける事になるんだけど、大久保は分かってないな。


「あれ~?何で顔隠しているの?もしかして酷い怪我して人に見せられない顔になったのかな~?」

「ああ、あの時切り刻まれた顔の傷は元通りよ。この仮面はちょっとした変装だから気にしないで」

「あら~残念。だったら次はその仮面でも隠せないぐらいの傷をつけてあげようか?」


 大久保の煽りにレイは仮面を外し大久保に向かって軽く放り投げた。


・・・・カラン、カラン。


「何?いきなり仮面外して?」


 レイが何故いきなりこんな事をしたか分からずに、足元に転がってきた仮面を見ながら質問する。


「今度から大久保さんに必要になるだろうから、その仮面あげるわ。もっとも全部は隠しきれないだろうけどね!」

「はっ!次は顔だけじゃなくて体中傷だらけにしてやるわ」

「出来るもんならやって見なさい!あの時の私と同じ目に会わせてやる!」






「で?お前は誰なんだよ?」

「政、こいつ風の国で襲撃掛けて来やがったやつだ。水谷が一緒にいるから間違いねえ」


 藤原が金子に教えると学校で俺を揶揄ってきた時のような人を小馬鹿にしたような笑いになった。見飽きた笑いだが、それよりもパシリの藤原が金子と対等な感じで話をしている事に少し驚いた。


「てめえか?あの時俺を殴った奴・・って違うな。あれは女の声だったぞ。まあそれはいいが、てめえは誰だって聞いてんだろ?クラスメイト女子3人連れてきているって事はお前も日本人か?」


「・・・・」


 俺は金子の質問には答えず黙って顔を見せてやると、金子と藤原が驚いた顔をする。


「土屋!てめえ死んだんじゃねえのかよ」

「ククク、アハハハハ!まさかてめえが生きていたなんてな」

「・・・・」


 こいつらには色々言ってやりたいが、今は我慢だ。闇魔法使いの金子と目を見て話す事は厳禁だとフェイから聞いているからな。まあ、色々対策は教えて貰ったけど、今この場所で手の内を見せる必要は無い。


「おい!無視してんじゃねえよ!」

「俺にビビってんだろ。で?俺を殴った奴はどいつだ?」


 無視する俺に藤原が怒鳴りつけてくる。こいつ本当に性格変わったなパシリから取り巻きにランクアップしたのかな。対して金子も見当違いの事言ってるけど、こいつ自分の魔法の弱点知らないみたいだな。


「ガルラ、金子の奴お前に相手して欲しいみたいだぞ?」


金子と話す訳にも行かないので、ガルラに話を振ってみるが物凄く不満そうな顔をする。


「主殿、こいつは弱すぎて話にならなかったから、もう一人の奴と戦ってみたいんだが?」

「その声!やっぱりてめえか!あの時俺の事、弱えとか言った事忘れてねえからな!お前に復讐する為にこっちはやりたくもねえ訓練を真面目にやってたんだ!今度は泣いて命乞いさせてやるよ、獣女!」


 ガルラの弱い発言に金子は顔を真っ赤にして怒り出す。真面目に訓練していたってこいつどれだけ悔しかったんだよ。


「アハハハハ!主殿、分かった!こいつの相手は引き受けよう。別に殺しても構わんのだろ?」

「ああ、構わないぞ。ただレイたちの魔法に巻き込まれないように遠くでな。後1対1だから存在がぼやける変なスキルは心配してないけど、他のスキルは警戒だぞ」


「ああ!!てめえらさっきから俺達無視して何勝手に決めてんだよ!」


 藤原が俺達の話を聞いて再び凄んでくるが、果たしてこいつらは既にいつでも殺される状況に陥っている事を理解しているんだろうか。俺は既に全員に影を伸ばして、いつでも下から貫ける準備は出来ている。やったら、みんなから怒られるからやらないけど・・・。しかしこいつらマジで足元の影に気付いてないのかな?それとも気付いているけどいつでも対応できるとでも考えているんだろうか・・・マジでよく分からんけど警戒だけはしておくか。


「主殿、みんなも話が終わったようだし、そろそろ始めてもいいか?」


 各自因縁の相手との話も終わったみたいだし、そろそろ始めよう。俺はガルラにコクリと頷くと、ガルラの姿が消え、一瞬で金子の背後に回った。


「ほら、相手してやるからこっちにこい」

「うわああああああ」



 そう言って金子の首を掴んで遠くに放り投げて、俺達から距離をとる。何とも乱暴な方法だが、ガルラらしい。そして金子達は誰一人ガルラの動きに反応していないのが気になる。もしかして俺が思っている以上にこいつら弱いのか?・・・いや、水の国のAランクが3つともやられてんだ、油断は禁物だ。そして俺の相手の藤原を影で捕縛してみんなから距離をとる為に移動を開始した。

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