133話 国境での戦い
「おお~向こうも多いわね~」
「砂の国の方には最小限の兵力しか残してないって聞いたから。このまま一気にサイの国まで攻め込もうって考えてるんじゃないかな?」
相手の兵の数を見ても俺のパーティ誰一人慌てない。俺はあの数に勝てるのか少し不安になるけど、今更決まった事は変えられないので覚悟を決める。
「まあ、どうでもいいわ。あいつらは来てるの?」
「ああ、報告ではかなり後ろに陣取って宴会してるらしいぞ。あいつら馬鹿にしすぎだろ」
俺の言葉にレイと水谷はため息を吐く、ヒトミは暗い表情で何も言わない。
呆れていると向こうから一人兵士がこちらに向かってきた。俺達の所まで来ると立ち止まり、威圧的な態度で話しかけてくる。
「貴様ら!一体何者だ!これから我が国が偽りの王アーレスブライトとその国を成敗する戦が始まるのだ!見物ならどこか余所へ行け!」
そう怒鳴ってくる兵士だが明らかに怯えている。その理由は俺達の後ろにサイ、闇、砂の騎士団約1万が控えているからだろう。それでも臆せずここまで来たのは、兵士の矜持か金子達がいるという安心感か・・・。向こうの言い分は少し気になるけど、まともな答えを期待はしていないので、俺は目の前の兵士の両腕を影で斬り飛ばす。
「風の国で次は容赦しないって言っただろう。これが最後だ、このまま引けば火の国の悪魔達を引き渡すだけで勘弁してやると偉い奴に伝えろ」
そう言って腕を切られて呻いている兵士が乗っている馬の尻を叩いて軍に戻してやると、何故か咆哮が聞こえた。見ると、全員気合を入れて雄たけびをあげている。向こうの指揮官は有能なようで俺と伝令とのやり取りを上手く利用して士気をあげたようだ。
(なあガルラ、フィナ、本当に大丈夫か?今からでもフェイ達に任せるか?)
(主殿、何を馬鹿な事を。向こうはやる気になったんだ、少しは手応えがあるかもしれん)
(大丈夫だって。お兄ちゃんは心配性だなあ、まあ、適当に暴れるよ)
ブオ~~~!ブオ~~~!
ブオ~~~!ブオ~~~!
最初は火の国側からほら貝に似た音が鳴り響くと兵士達が更に気合を入れている声が聞こえる。俺達の味方の連合軍からも同じようにほら貝の音が鳴り響き遅れて気合を入れる声が聞こえてきた。
各軍気合を入れ終わると火の国の軍の先頭に立つ指揮官が腕を振り下ろした事で戦争が始まった。
火の国の指揮官が腕を振り下ろした瞬間後方から数えきれないぐらいに矢や魔法が飛んでくる。それに続いて先頭の一団が走り出してこちらに向かってくる。一方こちらは、
・・・・・・
気合を入れた後、俺の指示通り動きはない。全員が降り注ぐだろう矢や魔法に向けて盾を構えている。それすらも必要ないって言ってたんだけど、兵が怯えるからって王様達が言ってたから持たせたんだけど、やっぱり必要なかったな。
ヒトミが腕を振って俺達の目の前に出した火壁が飛んできた魔法や矢を全て燃やし尽くすのを見てそう思った。
「何だあれは?し、白い炎?」
「なんであれを突き破って来ないんだ?どういう事だ?」
自分達の所に何も飛んでこないのを不思議に思った後ろの兵達が盾から顔を覗かせて、声をあげている。ヒトミの白い炎は俺達でもどうにもできないから、普通の魔法や矢如きでは何も役に立たない。ヒトミがもし敵になった時は・・・マジでこれどうやって攻略すればいいんだろう。
そんな事を考えていると遠距離攻撃の第1波が収まった。そして敵が大分距離を詰めてきたので遠距離攻撃はもう来ないだろうと思い足を進める。・・・なんか後ろの味方が敵の攻撃を止めたヒトミの二つ名叫んでるけど、ヒトミの機嫌が悪くなるから止めてほしいな。
「ガルラ、フィナ。行くぞ。ここまで来たから俺も覚悟を決めた。それで昨日も言ったけど手加減は無しだ、好きに暴れていいぞ。但し俺の影に入るなよ」
「ククク、アハハハハハハハ!今まで暴れるなとは何度も言われた事はあったが、暴れろなんて初めて言われたぞ!やはり主殿と一緒にいると面白い!アハハハハ!」
そう残して笑いながら左側の敵に向かって行ったガルラ。
「うわ~。お姉ちゃんテンション高いな~。私も頑張ろうっと」
フィナもガルラの高笑いにドン引きしながらも、その場を後にし右側の敵に向かって行った。それじゃあ俺も行くか。
—————ズ
俺も覚悟を決めて影を広げる。あいつらをここで殺せるなら、もう影魔法が見られても、影魔法使いだとバレても構わない!ここで全てを終わらせてやる!
エレナを・・・ドアールのみんなを思い出しながら、俺は足を前に進めた。