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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
6章 砂とサイの国のCランク冒険者
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108話 城からの招待

「見られてるな」

「うむ、やはりそうか」


 あの後ギルド本部を後にした俺達は広場の屋台で買い物をしてから腹を膨らませていると、どこからか視線を感じた。いつものようにガルラとフィナが珍しいとか、『カークスの底』だとか好奇の目で見られている感じではしない。ガルラも俺の意見に賛成って事は勘違いではないだろう。


「ただ、敵意はないんだよな」

「いつものように好奇心で見られてるだけじゃないの?」

「まあ、放っておけばいつもみたいにしばらく様子を見てから絡んでくるんじゃない?」





「う~ん。見られてるな」


 翌日も昨日と同様に視線を感じる。昨日はずっと視線を感じていたが、結局誰も絡んでくる事はなく宿をとって家で休んだ。一応『探索』で確認していたけど、部屋に忍び込んでくる奴とかはいなかった。そして今日も家を出ると昨日と同じ視線を感じている。


「どうする、お兄ちゃん。私が捕まえてこようか?」


 フィナが聞いてくるが、特に敵意があるように見えないので、どうしようかすごく悩む。『探索』使えるフィナは既に対象を特定しているけど敵意は無いんだよなあ。


「いや、敵意はないようだし放置でいい。さて、今日はどうする?昨日代理から言われたから所属変更にでも行くか」


 みんな俺の意見に特に異論は無いようなので、妊婦二人は家でお留守番してもらい、店の親父に教えてもらったここから一番近い東のギルドに向かう。


ギィ。


 いつものように軋む扉を開けて中に入ると、冒険者から注目を集めるが気にしない。やっぱりギルドの大きさと冒険者の数は各都と同じぐらいの大きさだ、それがこの『ギョク』には4つもある事に再び驚いてしまう。そして注目を集める中、俺達は受付で所属の変更をお願いする。


 受付が終わるといつものように絡まれるかと思ったが、その心配は杞憂だった。なんかチラチラ見られているが特に話しかけてくる奴はいない。


「何か拍子抜け~」

「うむ、出来れば強い奴と戦ってみたかったが」


 うちの戦士は物騒な事を口にしている。


「それでどうするの?」

「ちょっとだけ、依頼見てきていいか?どんなのがあるか気になるんだ」


 水谷の質問に俺は好奇心を満たしたい旨を伝える。依頼を見るとその街のだいたいのレベルが分かるんだよな。あとは野盗の情報とかガルラ達が喜びそうな魔物の情報なんかも気になる。


「ギンジ君、依頼見るのホントに好きだね~」

「いや、冒険者なら気になるらしいわよ。私もヒトミも気にならないって事はまだ冒険者になりきれてないんじゃない?」


 Bランクになったレイが言ってもなあって感じだが、俺は特に何も言わずに掲示板に貼ってある依頼を見に行く。


 おお、Aランク依頼が一杯ある。火竜討伐の緊急依頼か・・・レイド戦だけど、これだけ冒険者がいれば掲示板に貼るだけで人が集まるのか。なになに、参加条件「Bランク以上火竜討伐経験あり」ってそんなので人が集まるのか?・・・・いや集まるんだろうな緊急依頼でこれなのか。うわ~竜種の素材納品依頼も一杯あるな~。そう言えばノブにやる予定だった風竜どうしようか・・・飛竜もガルラの解体終わってからずっと放置してるな。肉は残してあとは売りにいかないとな。




「すまん、ここに『カークスの底』はいるか!」


 おっ!ようやくいつものイベント発生か?と思い声のする方に顔を向けると、そこには大量の兵士がいた。・・・・・・何で?



「初めまして『カークスの底』の皆様。私は第1騎士団第3中隊隊長ハロルド・ヴァンクスと申します」


 ギルドで名指しで指名されたし、他の連中が俺達に注目しているので逃げる訳にも行かず、仕方なく騎士達の前に出る。俺達の前できちんと敬礼して爽やかな笑顔で名乗ってくれる藍色の髪のイケメン。そのハロルドの後ろでは頭以外は頑丈で高そうな鎧に身を包み兜を片手に同じように敬礼している、恐らくハロルドの部下達。冒険者ギルド内がざわつくが、その原因はこの光景以外にもハロルドさんにもあるようだ。


 「おい、ハロルドだぞ」、「この前の大会で決勝まで勝ち上がった奴だろ」、「次の騎士団長に最も近い奴だろ」、「すげえ、話には聞いてたけど、かなりのイケメンじゃねえか、それで腕もたつとかずりいな」、「そんな奴が何で『カークスの底』に・・・ていうかあいつらやっぱり本物じゃねえか」、「話かけなくて良かった、殺される所だったぜ」


 周囲のヒソヒソ話から相当の実力者らしい。そして若干俺達が危ない奴みたいに言ってる奴がいるが、どんな噂が流れてるんだ。そういうのは『金棒』だけで十分だ。


「ハロルドさんって言いましたか?俺達に何か用ですか?」


 第1騎士団だから多分貴族なんだろうと思いこちらも敬語で対応する。まあ向こうも礼儀正しいし年上だしな。


「はい、もしお時間があれば城までお越し頂けないかと。あるお方が少しお話をしたいと言っていまして・・・ああ、無理にとは言いません。本当にお暇でしたらって話です」


(・・・・なあ、これって断ったらマズいかな?)

(マズいに決まってるでしょ!第1騎士団が来てるのよ。多分かなり上の人からの命令よこれ。『風の国』なら王族か公爵家じゃないと第1騎士団は動かせなかったわよ!)


 『念話』でみんなに相談すると、すぐに水谷から突っ込まれる。第1騎士団と聞いた時点でお偉いさんが動いている事は分かっている。分かっているが何故こんなに低姿勢なんだろう?命令で無理やり城まで連行するとか出来るはずだけど・・・一応みんなに確認するが、心当たりはないようだ。


(どうするの?まあこの人悪い感じしなさそうだし、お呼ばれしてもいいんじゃない?)

(そうだね。私達ならどうとでもなるだろうし)


 ヒトミの言う通りだが、少しは警戒した方がいいと思うんだけどな。まあこれで門番じゃなくて、もう少し偉い人に東の伝言伝えられたらラッキーぐらいの感覚で、ハロルドさんに今から城まで行っても大丈夫だと言うと、心底安心したようにほ~と息を吐いた。どれだけ緊張していたんだろう。


「あ、あの、そ、それでですね。城に行く前に出来れば一度高名な『カークスの底』と手合わせをしてみたいんですが・・・お願い致します!」


 そう言ってハロルドさんが頭を下げてくる。・・・うん、うちの獣人達が笑顔になってるからこれは断れないな。と言う事でその申し出を受けてギルドの訓練場まで足を運ぶ。当然ハロルドさんの部下もついてくる。周りの冒険者達は頼んでもいないのについてくる。


「うおおお、ハロルド対『カークスの底』だ」、「『カークスの底』は誰が出る?」、「すげえ大会の決勝トーナメント並の戦いが目の前で見れるのか」、「今日依頼受けて無くて良かったぜ」


 何かどっちが勝つか賭けも始まったみたいだが、俺達には関係ない。誰が・・・ではないどっちが相手するか揉めている獣人二人だが、今回はフィナが行くらしい。ガルラが下がった理由は城で騎士団長と戦うチャンスがあればガルラに先を譲るって約束したからだ。・・・騎士団長とは戦わないぞ。ヤバくなったら逃げるって言ってるはずなんだけどなあ。




訓練場で準備を済ませて対峙したフィナとハロルドさん。


「じゃあ行きますね」


その言葉にハロルドさんが頷く。


ガキン!


 頷くと同時に対峙したフィナの姿が消えると、引き攣った顔でハロルドさんがフィナの攻撃を受ける。


「おっ!受けたな」

「いや強いよ。ハロルドさん」

「あれ、見切るの大変だったわねえ」

「私、最近ようやく躱せるようになったのに、あの人強いわね」

「うむ、まあこれぐらいは余裕で対処して貰わないと困る」


 普段絡んでくる奴等はガルラかフィナが一撃で気絶させていくので、初手を防げたハロルドさんは中々実力があるみたいだ。・・・・ガルラは何が困るんだろう?


「あれ?強いですね・・・ハロルドさんだっけ?」

「ふう~。さすが『金影』噂通り早すぎるよ」


 話が噛み合っていないがすぐにフィナの姿が消える。『金影』って何だ?いつの間にかフィナに通り名がついたのかな?


キン!ガキン!カキン!


 次もフィナが連続で3回攻撃したがそれも全て防がれる。全て防いだがハロルドさんは余裕がなさそうだな。


「フィナの奴少し遊びを覚えたな。相手の実力を見る主殿の悪い癖が移ってしまったではないか」


・・・確かに他人から見ればその通りだけど、俺は相手の実力ってより何も使わない時、『生活魔法』使った時、『身体強化』使った時の自分の実力を見てるだけなんだけどな。あと本当に相手の実力を見る癖があるガルラには言われたくない。




 そして再び距離をとり対峙する二人。


「ガルフィナさん。手加減はいりません、本気でお願いします」


 フィナが手加減しているのが分かったハロルドさんの言葉に、フィナが困った顔をしながらこっちを見てくる。本気を出すと相手を殺してしまう危険があるのでガルラとフィナには普段は手加減するように言ってある。


(まあ向こうが言ってきてる事だし、フィナ、いいぞ。ただし武器を狙え、間違っても攻撃をハロルドさんに当てるなよ)


 困っているフィナに『念話』で許可を出す。


「それじゃあ、お兄ちゃんから許可貰ったから行きますね」


 そう言ってフィナの姿が消えると同時に甲高い音が訓練場に響く。気付いた時にはハロルドさんの手に持つ棒が宙に舞っていた。ハロルドさんは棒を構えた姿勢でさっきまでフィナの立っていた場所に注目したままだ。まだ自分の武器が弾かれた事に気付いていないようだ。


 そして背後で武器が地面に落ちた音でハロルドさんが自分の手に棒が無い事に気付き慌て始めた。一方フィナは落ちた棒を拾いハロルドさんの所まで歩いて向かっている。


「はい、落としましたよ」

「・・・・・・・・参りました」


 フィナが拾ってくれた棒を受け取るとハロルドさんは素直に負けを認めてくれた。ここでごねたりしない所がまたポイントが高い。


「いやあ、完敗です。少しは勝負になるかと思いましたが、試合にすらならないとは噂以上にお強い」


 周囲のギャラリーが騒いで五月蠅い中、負けたハロルドさんは爽やかな笑顔だ。


「ハロルドさんもフィナの初撃を受け止められるなんて中々の実力ですね。クーミより強いんじゃないですか」

「クーミというのはあの女騎士の方ですよね。紋章から『風の国』の伯爵家の関係者だとお見受けしますが?」

「はい!『風の国』第3騎士団所属、クーミ・グレシーです。グレシー伯爵家出身です」


 兵士らしい敬礼でハロルドさんに答えるクーミ。


「ハロルド・ヴァンクスと申します。『サイの国』の国王様より一代騎士爵を賜っています。どうですか?一つ?」


 次はクーミを試合に誘うハロルドさん。


「失礼ですが、現在任務中なのではないのでしょうか?」


 珍しくクーミが険しい顔でハロルドさんに問いかける。後で聞いたが、クーミは上司の命令には忠実に従うようで、任務中に別の事をやる人は許せないそうだ。


「ああ、そうでした。そうでした。それで如何でしょう?城までお越し頂けないでしょうか?」


 先程誘いに乗る事は決まったので、ハロルドさんの提案に乗って城に行く事にした。



◇◇◇

「ハロルドです。お連れしました」


 ハロルドさんに連れられて俺達は城の一室に案内された。呼ばれているのは『カークスの底』なので、クーミ達は家に入って貰っている。そうして案内された部屋は扉の前に見張りの兵はいたが扉自体は普通だったので特に気にする事なくハロルドさんに続いて入って行く。

 これが謁見の間とかだと扉の前に複数の兵士が配置されていて、扉を開閉する為だけの兵士も立っている、更に扉の装飾もこれでもかと言うぐらいに煌びやかになっているので誰が待っているかは『風の国』で学んでいる。

 入った部屋の中はまあ少し豪華かな?って思う円卓が置かれていて一番奥に身なりのいいオッサン、その隣にもこれまた身なりのいいオッサン。その反対には20代前半ぐらいのと、二十歳ぐらいのイケメン二人が座っていた。多分この二人は顔立ちが似ているから兄弟だと思う。そしてこの兄弟誰かに似ている。・・・誰だっただろうか思い出せない。


「ようこそおいで下さいました。いきなりお呼びして申し訳ありません。さあ、どうぞお座り下さい」


 部屋に入り扉が閉められると正面のオッサンが挨拶して椅子に座るように勧めてくる。多分座る位置的にこのオッサンが一番偉い人なんだと思うんだが、オッサン以外の3人は眉間に皺を寄せて何も言って来ない。あんまり歓迎されていないのか?一応全員の『念話』を繋いで、こういう場面に詳しいレイと水谷から指示を受け、勧められるままに椅子に座る。『探索』でも確認しているが隠れてる奴はいない・・・ハロルドさんが扉前の兵士に引き離されていくのが分かる。あの人何やってんだ?


「ほら、そちらの獣人のお二方もどうぞお座り下さい」


 一応対外的には俺の奴隷なので、椅子に座らないで立っておくのが普通だと水谷から教えて貰った二人は俺達の後ろで立っていたのだけど、その二人にもオッサンが椅子を勧めてくる。


「父上!!」


 その言葉に弟さんが声を上げるが、オッサンが一睨みするだけで、萎縮して黙ってしまった。そしてその一瞬でこのオッサンが気のいいオッサンではない事が分かった。まあ第1騎士団が動いている時点でお偉いさんだとは分かっていたけど、俺が思っている以上に偉い人かもしれない。


 勧められるままに、ガルラとフィナも席に座ると、オッサンが挨拶を始める。


「初めまして、私はこの国の王をしています、アーレスブライトと申します」

「・・・・王?・・・・王!!王様!!」


 驚いて声を上げる俺。偉い人だとは思っていたが、いきなりこの世界最高権力者が目の前に現れるとは、想像もしていなかった。謁見の間で偉そうに座っているイメージしかなかったんだけど、何でこんな低姿勢なんだ?っていうかこの人達、先に部屋にいたよな?って事は俺達が来るのわざわざ待ってたのか?


「はい、一応この国の王をやらせてもらっています」


 驚く俺達を前に隣の第1王子がアルフレート、弟がヴェルナー、王の隣のオッサンが宰相のクリストファーと名乗ってくれた。この場にいる4人全員この国というよりこの世界の超VIPじゃねえか。何でこんな4人から呼び出しを受けた。向こうの自己紹介が終わったのでこちらも戸惑いつつも自己紹介をして用件を尋ねる。


「それで俺達に何の用でしょうか?」

「いえ、そちらが用があるはずだと聞いていますので、こういった場をご用意したのですが?」


 うん?どういう事だ?俺は貴族なんぞ関わりたくないから接触した事・・・・・ま、まさかあの時は頭のおかしい奴等だと思われていたんじゃなかったのか?。


「もしかして、建国王の指示で会いに来た奴等がいたって報告が上がってきましたか?」


 満面の笑みでコクリと頷く国王。その隣の第1王子は引き攣った笑顔をしている。第2王子と宰相はいまだに胡散臭そうな目を向けてくる。


「はあ~。それなら正直に話しますと、この国の国境都市『ワコール』で建国王の像を見ました。そしてその台座には『この文字が読める者はこの国の王に会いに行け』と建国王『東一徹』の名前で書かれていたので、その指示に従いました」

「ち、父上、や、やはり伝承通りこのお方達は・・・」


 俺の言葉に真っ先に反応したのは第1王子だ。かなり驚いているが今の話信じてくれたのか?


「分かっている。私とお前しか知らない建国王様のお名前を口にしたんだ、このお方達は野良勇者様で間違いない。」

「・・・は?」

「・・・・え?」


 王様の言葉に第2王子と宰相がキョトンとした顔をする。話についていけてないけど王様は更に話を進める。


「野良勇者様、伝承通りこの国を訪れて頂きありがとうございます。建国王様からは訪れた場合は、野良勇者様に協力するように伝わっています。何かご要望などありますでしょうか?」


・・・えっと、俺達も話についていけてない。東の名前を口にしただけで、王様が協力してくれるってどういう事だ?


「えっと。すみません。全然話についていけないんですけど、確かに東の指示でこの国の王を訪ねるように書かれていましたが、何をしろとかって事は書かれてなかったんで・・・そっちはどんな指示を受けているんですか?」

「私達、子孫は『野良勇者様は絶対に怒らせるな、この国に来たら野良勇者様は必ず訪ねてくる、訪ねてきたら野良勇者様には必ず協力しろ』と伝わっています。あと、王と次の王の候補者だけには建国王様のお名前が伝えられています」


 聞いてみて考えてみたが、結局東は何をして欲しいのか良く分からん。


「私達にも建国王様のお考えはよく分かりませんが、大森林に暮らすフェイ様・・・建国王様の第2妃のあのお方なら何かご存じだと思います。大森林の長であるあのお方は、自分の血を引く血縁者以外と会う事はないと言われていますが、皆さまならもしかしたらお会いしてくれるかもしれません」


 だよな~。そのフェイって奴に会いに行くのは少しは考えていた。会えば色々謎が解けそうだしな。ただその間に金子達が動いても困るので、金子達の件が片付いてからと漠然と考えていた。


「父上!先程からのお話、こいつらが勇者と確定したように話を進めていますが、まだ確定した訳ではないでしょう」

「そうですよ陛下!もしかしたらこの者達は本物の勇者様から情報を聞いただけの奴らかもしれないですよ」


 第2王子と宰相は未だに俺達が本物の野良勇者か疑っているみたいだ。確かに東の名前だけで信じる事がおかしいもんな。逆にこれで納得した王様と第1王子がおかしいって俺でも分かる。


「その前に陛下、こちらを。コーデリア様よりこちらに避難しているご息女にお渡しするように頼まれましたのでお渡し致します」

「こ、これは姉上の・・・」

「何故姉上の物をお前が?」


 水谷が風の国の王妃様から預かっていたペンダントを差し出すと、兄弟二人はすぐに何か分かったみたいだ。そして俺も風の国の王妃様はこの二人の姉ちゃんだったことが分かった。どこかで見た事がある顔だと思った。


「国境での戦いに負けた後、コーデリア様より頼まれました」


 片膝をついたまま頭を下げた状態で水谷が答える。


「そうではない。何故お前のようなものが姉上から、そんな頼まれごとをしたのかと聞いている」


 第2王子がさっきから偉そうだな。一応水谷は俺のパーティメンバーだからあんまりそんな態度とられると少しムッとするぞ。


「彼女はアユムと言いまして、風の国の勇者だからですよ。殿下」


 レイが話に割って入ると更に不機嫌な顔になる。


「また、勇者か・・・それではそいつが勇者だと言う証拠を見せてみろ。姉上のペンダントを持っていたと言うのは理由にはならんぞ」

「アユム、何かある?」


 レイの言葉に水谷は首を振る。


「あいつらに捕まった時に全部盗られたから何も」


 水谷の答えにそれ見た事かとドヤ顔をする第2王子と宰相。


「ヴェルナー!もうやめろ、先程から勇者様にその態度は無礼だぞ!」


 王様が怒鳴りつけるが、第2王子と宰相は収まらない。


「父上、何故この者達にここまでへりくだるのですか!あなたはこのサイの国の王ですよ!この世で一番偉い立場の人物のはずだ。いい加減目を覚まして下さい」

「そうですよ、陛下。最近の陛下は建国王様関連になると目が曇っています。ヴェルナー殿下の言う通り目を覚まして下さい」


 何か収集つかなくなりそうだ。これって俺達は悪い事になりそうだなあ。もう少し状況悪くなったら逃げようかな。とか考えていたら、


「ふう~。それでは私の言う事なら信じて貰えますか?ヴェルナー親善大使様?」


 レイが顔に付けた仮面を外しながら第2王子に話かけた。あれ?二人知り合い?


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