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影魔法使いの冒険者  作者: 日没です
5章 風の国境都市のDランク冒険者
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97話 謁見の間の攻防

「何だ?驚き過ぎて聞こえなかったのか?レイとヒトミと言ったか、お前達は平民だがヤスヒコ殿たっての希望により妻となる栄誉を与えられた。ただヤスヒコ殿に嫁ぐのに平民の身分だとおかしいからな。まずは子爵家の養女となり貴族としての作法を覚えた後となる。平民が子爵家の養女とか異例中の異例だからな、ヤスヒコ殿に感謝するように」


 俺達が欲しい答えではなく、全く見当外れの事をドヤ顔で行ってくるオッサン・・・いや宰相。視界に入っている原田がすげえニヤついているから殴りてえ。


「ちょっと、アユム!どういう事よ、これ!」

「2人だと駄目で4人はいいってどういう事なのかな?アユムちゃん?」


 後ろから二人の声が聞こえる。この声のトーンは二人ともかなり怒っているが、俺もかなりキレている。人をモノ扱いして許可なく勝手に決めやがって、こいつらもクソムカつく国の奴等と何も変わらないな。


「・・・は?・・・え?宰相様、少し話が違いませんか?二人は私が預かるって話でしたよね?」


 水谷が驚いて宰相を問い詰めている所から、これは水谷が仕組んだ事じゃなくてニヤニヤしている宰相と原田と王様が先走ったっぽいな。


「アユムよ。このパーティリーダーから二人を引き離すのがお前の目的だろう?これが一番良いのだ。あまり我儘を言うな」


 ここに来て初めて王様が話したな。しかしどういう事だ?ノブも一枚嚙んでんのか?


 そう思ってノブを見ると、すぐに慌てて手を振ったのでノブは何も知らされていないみたいだ。さっきから喋っていない外山も驚いているからこいつも噛んでないな。


「アユム!あんたには昨日何回も話したでしょ!何で信じないのよ!」

「相変わらず人の意見聞かずに突っ走るね。ただ今回はちょっとやり過ぎだよ」


 2人は勝手な事をした水谷に怒っているが、俺はこの国の王達に怒りが湧いてくる。やっぱり貴族達に関わると碌な事ないな。


「取り合えずオッサン。俺らはそんな命令聞く気はないからな。命令したきゃ壁に向かって命令してろ」

「き、貴様!陛下に何たる無礼な!しかもその口の聞き方!」


 隣の宰相が怒り出すが、王様が片手を挙げて黙らせた。


「よい、どうせ平民だ。正しい作法など出来る訳なかろう。ただ、私の命を聞けぬと言うか?平民は貴族の命令には絶対服従だぞ?しかもその命令をだしたのがこの国の王である私だ?分かっておるのか、私の命を聞かないと言う事はここ風の国を相手にすると言う事だ。今なら頭を床にこすりつけて許しを乞えば私も許してやるかもしれないぞ」


 ニヤニヤ笑いながら地面を指差しやがって気持ち悪いなこいつ。絶対性格悪いだろ。


「俺達はこの国の人間じゃないから、お前の命令に従う義務は無いな。まあ、安心しろ、すぐにこの国から出ていってやるよ」


 俺の答えに少し驚いた顔をする王様。大きく溜め息をついて、次に俺の方を見たその目は冷たい目をしていた。


「この国にいる時点で私の命令は絶対だ。それに貴様はこの国から無事に出られるとでも思っているのか?この国の王である私に許可なく直答、言葉遣い、礼儀、先程から無礼な態度だと理解できているのか?」

「ああ、分かっているさ。分かっていてこの態度だよ。お前らも火の国の奴等と同じで俺達を道具としか見てないからな!そんな奴に礼儀正しく出来るか!」

「ふ~。それは今ここにいる全員を敵に回すと分かっているのか?」


 呆れたように王様が言うと、周囲の兵士が全てマップで赤色に変わった。何を合図したのかは分からなかったがやるつもりなら遠慮はしない。


ピシッ!!

ブワッ!!


 殺気を感じたレイとヒトミは俺が何も言わなくても魔法を体に纏い戦闘態勢に入る。俺も既に影をバレないように伸ばして仕込みが完了している。


「ば!待て!3人とも落ち着け!」

「ちょっと、二人ともどうしたの?」


 最初に止めに入ったノブでも反応が遅い。これなら俺達の相手にならないだろう。水谷他3人は戸惑っているだけなので戦力にもなっていない。こいつら唯の足手まといだ。


 声を掛けないと後で怒られるかもしれないから、ノブは無視してガルラとフィナに一応声を掛ける。


(ガルラ、フィナ、騎士団と戦う事になりそうだけど来るか?)

(すぐ行く。騎士団か・・・どのぐらいの強さなんだろうか。ククク)

(行く~)


 ノリノリで誘いに乗ってくる獣人二人。ガルラは仕方ないけど、フィナも最近戦闘好きになってるなあとか考えながら扉を出す。


「あ、あれは?」、「逃げる気か!」


 昨日の事を思い出したのか周囲が一瞬ざわつくが、すぐに扉が大きな音を立てて獣人二人が飛び出してきた。・・・・何で二人とも下着しか着てないんだ?


「ガル!フィナ!あんた達何て格好してるのよ!」

「二人ともその格好は駄目よ!女の子でしょ!」


「ま、待て二人とも!今日は今まで飛竜の解体してたんだ」

「ごめんなさい。服が汚れるのが嫌だったの」


 周囲には殺気立った兵士がいるのに、なんとも気の抜ける光景が目に入ってくる。


「あ、あれが『金棒』のガルラか」、「見ろ!丸腰ではないか、恐れる事はない」、「いくら強くてもあの格好なら余裕じゃねえか」


———————ズァァァ


 2人の格好を見て気の抜けた兵士達には悪いが、フィナの影が包み一瞬で着替えが完了する二人。出来れば出てくる前に着替えておいて欲しかったけど、緊急事態だしフィナが影使ったのは仕方ないか。


「な!今あいつら何した!」、「早着替えしたぞ」、「わ、分からんが警戒しろ」


 回りが騒がしいが無視してガルラ達と話を進めていく。


「うむ。あいつが一番強そうだ。主殿あれをくれ」


 そう言ってガルラが指差したのは王様の横にいる奴だ。立ち位置から多分一番強い兵士だろう。


「あ~。お姉ちゃんズルい!次は私の番だったのに、この間飛竜譲ってあげたじゃん」

「・・・フィナ、上の4人はどうだ?中々強そうだぞ」


 緊張感のない獣人二人に呆れつつもフィナに代わりを提案する。


「はあ~、分かったよ。お兄ちゃんのお願いだから特別だからね!お姉ちゃん、次は絶対私が相手させてもらうからね」


 そう言ってフィナの姿が消えると天井に穴があき上から大きな音がする。


「さて、次は私の番か」

「ま、待て銀!やめろ!陛下も!兵を止めて下さい!」


 ガルラが一歩足を踏み出すと、我に返ったノブが慌てて俺と王様を止めてくる。


「ノブタダ、何故止める?こいつには身分の差を分からせなければならないのだ。お前の友だとしても先ほどの態度は許される事ではない」


 今だに自分の状況を理解していない王が偉そうな態度だから影で黙らせてやろうか。


「陛下!!・・・・・・くっ!分かりました。陛下が引いてくれないと言うなら俺は銀に味方します!」

「何?・・・ノブタダ!貴様裏切るつもりか!」


 意外にもノブがこっちについてくれた。多分この状況が不味い事は分かっているのか?


「裏切るつもりはありません。ただ、こうでもしないと陛下が兵を止めてくれないからです。俺達は既に負けています。これ以上銀を怒らせたら、すぐにでもここにいる全員皆殺しにされてしまいます。なあ、銀!そうだろ」

「仕込みは完了しているからな。いつでも全員殺せるな」

「ふん、ハッタリだな」


ドシュッ!


ノブの言ってる事が正しいと証明する為に王の足の甲を影で突き刺してやる。王だろうが躊躇う訳がない。


「ぐあああああああ!」

「陛下!!!・・・・な、何故動かん?」


 王の叫びに慌てて駆け寄ろうとする宰相だが足は既に拘束しているから動けるはずがない。ただ俺達以外唯一動ける奴は王じゃなくて俺達に剣を抜いて向かってきた。ガルラの相手だし、こいつは拘束はしなかった。


「貴様ら!陛下に何をしたあああああ!」


キィィン!


 王の一番近くに立っていた兵士が俺達に斬りかかってくるが、ガルラが難なく受け止める。


「うむ、まあ人にしては鍛えている方だが、私の相手をするにはまだまだだな」


 手に持つこん棒で簡単に兵士の剣をはじいて態勢が崩れた所を、素手でぶん殴ると壁まで吹っ飛んで行って動かなくなった。まあ死んでないから問題ないな。


 さて、次は俺の番か、腰から愛用の剣を抜いて王の方へ歩いて向かう。


「待て!銀!俺達が悪かった!謝るから許してくれ!」

「ノブは別に悪くないから謝らなくていいぞ。謝るのはこのオッサンだ、偉そうに人をモノ扱いしやがって、しかも俺達を殺そうとしたんだ、当然殺されても文句は言わないよな」


 ノブと話しながらもゆっくりと王様の方へ向かっていく。


「き、貴様!私に刃を向けるか!誰かこいつを討て!」


 騒ぎ出す王だが全員影で縛っているので当然誰も動けない。誰も動かない事に気付いたのか更に焦る王。


「は、早く!誰か!こいつを処理しろ!」

「土よ!・・・・いっ!!!痛ええええええ!!」


 慌てる王に我に返った原田が詠唱を始めたので影で足を貫いてやる。外山と水谷は呆然としていて役に立っていないが、一応忠告はしてやる。


「詠唱始めたら原田と同じ目に遭うからな。やるなら容赦しないぞ」


 水谷と外山に警告するが、聞こえていないのか呆然とした表情をしているので多分大丈夫だろう。そして王の前に立つ。


「う、嘘だ。死にたくない!悪かった!私が悪かった!許してくれ!」


 王だから今まで命の危険なんて感じた事無かったんだろう。俺が剣を手に目の前に立つと速攻で謝って来た。オッサンが涙、鼻水、よだれを垂らしているので絵面が汚い。・・・・うわ、このオッサン漏らしてやがる。


 俺は無言のまま剣を振り上げる。


「銀!やめろ!」

「陛下!」


 慌てるノブと宰相の声が響き渡るが誰も手だし出来ない。そして俺は誰にも邪魔される事無く剣を振り下ろす。


ドン!

 

 剣を肘掛に突き刺すと風の国の王は失神した。





「・・・・それで?どうする?まだやるって言うなら、このまま続きをするけど?」


 回りを見渡して確認する。これが最後の警告だ、これでもまだ続けるって言うならこのまま失神している王を殺す事に躊躇うつもりはない。


「分かった。俺達の負けだ。勘弁してくれよ、銀」


 すぐにノブが疲れた顔で答えてくるが、


「悪いなノブ。お前じゃなくて他の奴に聞いてんだ」


 さっき王を止めようとしていたノブの意見は却下されたからな。ここでも同じように却下されるかもしれないので、出来れば宰相か隣の王妃辺りに負けを認めてくれないかなと思っている。ただ、この王妃さっきから顔の表情を変えなくて、更に微動だにせず俺達の行動を黙って見ている。すごい色っぽい美女だが少し怖い。




「・・・ふう、私達の負けだ。一同、勝手に動くなよ」

「殿下!何を勝手な!平民風情に負けを認めろと言うのですか!!」


 ようやく王妃様が口を開いて負けを認めてくれたが、宰相が慌てて抗議する。この国は宰相も駄目だな、状況を理解していない。


「ならば、まだ戦うか?幸い向こうも敵意が無ければ攻撃して来ないようだし、続きをしたい奴だけで続きをしても別に構わぬぞ。近衛兵長もこの様だ、恐らく上の護衛も同じだろう今、続きを始めれば確実に陛下の命は消えるがな」

「・・・・ぐ・・・しかし」

「責任は私がとる。陛下もここまでの醜態を晒したのだ。文句等言えまい」


 そう言うと宰相は渋々引き下がった。それを確認すると、王妃様は改めて俺達に向き直る。


「『カークスの底』この度はとんだ迷惑をかけた。この国を代表して心よりお詫びする。先程の命令については無かった事にするので許して欲しい」


 王妃様がきちんと頭を下げて謝ってきたけどいいのかな?俺達平民だし、ガルラとか獣人もいるんだけど。でも、この人は話を分かってくれそうだ。


「さっきの命令を取り消してくれるなら特に文句はありません。顔を上げて下さい」

「うむ、助かる」


 そう言って王妃が顔を上げると周りの兵士から敵意が無くなる。マジでどんな合図したのか全然分からないな。取り合えず剣を仕舞い、王と原田に中級ポーションを投げて傷を治してやる。ガルラに吹っ飛ばされた兵士はレイに『治癒』(ヒール)をお願いした。無詠唱だし、みんな俺達に注目しているからバレないだろう。


「それでは用も済んだ事ですし、帰らせてもらいますね」

「なんだ、もう帰るのか?茶ぐらい飲んでいかんか?」


 何で旦那をここまでにした奴を気軽に茶に誘うんだろう。まあ、毒殺や暗殺の可能性も十分考えられるので断っておく。


「信用できないので、遠慮しておきます。ああ、そうそう一つ忠告ですが、このままだと戦争に負けますよ」

「何!き、貴様!無礼だぞ!・・・」


 俺の言葉に再び騒ぎ出した宰相を手を挙げて黙らせる王妃。宰相ってあんまり有能そうじゃないな。


「理由は?」


 真っすぐ俺を見つめて王妃が聞いてくる。恐らく俺の言ってる事が本当か嘘か見抜こうとしているんだろう。俺は特に噓を言う理由もないので正直に答える。


「今の騒ぎ見たでしょう。ノブも含めて勇者4人とも全く役に立ってなかった」

「はあ?ふざけないでよ。あんた達が暴れるなんて思ってなかったから、少しびっくりしただけよ。大体こっちは4人もいるから負ける訳ないじゃない」


 水谷がすぐに怒り口調で俺に反論してくる。さっきのザマでよくここまで言えるなと感心してしまう。


「向こうは6人だ。数でも負けてるのにどうやって勝つんだ?それに相手はあの金子達だぞ」

「は?噓?」


 水谷は数の有利差があると思っていたんだろう。っていうか、こいつ火の国に何人召喚されたか聞かされてないのか?まあ有利差があってもこの様子だと金子達の相手は多分無理だな。


「人数差が何よ勝てるわよ。こっちは真面目に魔法の練習してるのよ。金子君達にだって負ける訳ないわ」


 こいつ負けず嫌いだな。・・・いや現実が見えてないだけか、なら決定的な違いを教えてやるか。


「はあ~、お前ら4人じゃ絶対無理だ。だってお前ら人殺した事無いだろ?」

「「「「・・・・・・・・」」」」


 俺の質問に誰も答えない事が答えだ。やっぱりこいつら人を殺した事がない。下手したら魔物と殺し合いもした事ないのかもな。


「あ、あ、ある訳ないじゃない。人殺しなんて」

「あいつらは殺してるぞ。・・・魔法の練習をしたいってふざけた理由で街を一つ全滅させた。だからお前らを殺す事も絶対に躊躇わない。お前らはどうだ?その覚悟はあるのか?」


 自分で口にしたが、あの時のドアールの光景が脳裏に浮かび怒りが湧いてくる。この怒りがあれば俺はあいつらを殺す事に躊躇う事はない。


「あ、あ、ある・・・わよ。そ、そういう土屋こそどうなのよ?覚悟できてんの?」


 怯えながらも覚悟を口にする水谷。ここで引かない分少しはマシかもしれないな。


「俺は200は殺してるよ」

「に!!!!」

「!!!!」

「200!!!!あんたそれだと殺人鬼じゃないのよ!嘘つかないでよ!!」


 ノブには話したから驚かれないが、他3人のクラスメイトは当然驚く。


「ホントだよ。俺の渾名の『首渡し』の由来知らないのか?野盗の首を捕まってた人にあげてたからだぞ。それに・・・」

「それに何よ!」


 チラリとレイを見ると察したのか、少し顔色が悪くなってきた。当たり前だけどまだ立ち直れていないみたいだ。


「ヒトミ!レイを連れて家に入っていてくれ。フィナも一緒に頼む」

「は~い」


 俺が呼ぶと今まで姿が見えなかったフィナが忽然と姿を現したので、周囲から息を飲む声が聞こえる。多分フィナの存在誰も覚えていなかったんだろうな。


「殺してないよな?」

「うん。手足の健を切っただけ。中級ポーションで回復できる程度だよ。ただポーション全部貰って来たからみんな動けないけど」


 子供らしい可愛い笑顔で俺を見上げて報告してくるが、言ってる内容はかなりえげつない。俺はフィナの頭を撫でてから、家に帰らせた後少しやり過ぎたかもと反省した。


 そして俺は話の続きを始める。


「それに俺はとっくに二人殺してるんだ、覚悟は出来てるさ」

「・・・・え?・・・・ふ、二人って・・・え?」

「杉山と浅野だ。残りの6人も全員殺してやるよ」

「う、嘘・・・な、なんで・・・冗談でしょ?」


 信じて貰える訳ないのは当然だから証拠を見せるか。俺はカバンから生首を二つ取り出す。時間停止が働いているので、まだ首から血が滴り落ちるぐらいには新鮮な元クラスメイトの生首だ。


「き、きゃあああああ」

「土屋!お前何てことを!!!」

「う、うええええええ」


 既にこの事を知っているノブ以外の3人の勇者、水谷は悲鳴を、原田は怒声を、外山は嘔吐した。


「これを見ただけで、ここまで醜態をさらすとは覚悟が出来ているとは言い難いな。これじゃあ、金子達に簡単に殺されるぞ」


 もう少しこの3人には耐性を付けてもらって少しは戦力になって貰わないと、このままだとこいつら邪魔にしかならない。



「こ、この人殺し!何でこんな事したのよ!」





・・・・。


「こんな事した理由か?・・・・こいつらはドアールを・・・俺を受け入れてくた大事な場所に攻め込んで何もかも滅茶苦茶にしていきやがった!こいつらに滅茶苦茶にされたのは水着窃盗と今回で2度目だ!しかも、今回こいつらは、エレナを!!ドアールのみんなを!!俺の大切な人達を殺したんだ!!!だから俺もみんなの仇をとる為に殺してやったんだよ!!!」

「主殿!!!」


水谷の言葉に思い浮かぶ理由を口にすると、あの時の悲惨な光景が頭に浮かび、どんどん怒りが湧いてきて自分でも抑える事が出来ず怒鳴ってしまった。


・・・・・


・・・ふう、落ち着け。俺。


 ガルラが大声を出して正気に戻してくれなかったらヤバかったな・・・少し頭に血が昇り過ぎたみたいだ。


「ガルラ、ありがとう。止めてくれなかったらやばかった」

「これぐらいお安い御用だ。本気の主殿は止めるのも一苦労だからな」


 珍しくガルラが冗談を口にするので、俺もかなり怒りが収まった。ガルラなりに俺に気を使ってくれたんだろう。


「銀、頼むぜ、ホントに・・・」


 ふとノブのぼやきが聞こえたので目を向けると、よろよろとイスに腰かける所だった。他3人は怯えた目で俺を見ているし、宰相は尻もちをついている。王妃様も無表情だったのが若干引き攣った顔をしている。兵士も武器を杖代わりにプルプルしながら立っている奴等ばっかりで、まともに立っているのは俺とガルラだけだ。


「水谷、金子達の事で言わせてもらえば、あいつらもクラスメイトを殺してるぞ。水の国にいた前原だ」

「ほ、ホントに?」

「嘘だろ、前原が」


 俺の言葉に気を持ち直した水谷と原田が驚く。確か原田は前原とよくつるんでいたから驚くのも無理はない。外山は吐いた後は耳を塞いで椅子に顔を埋めてブルブル震えている。こいつが一番戦力になりそうにないな。


「ああ、レイが殺される所を見たそうだ。レイも俺が助けた時は酷い状態だったぞ」


 そう言ってレイを助け出した時の状況を話すとみんな絶句して言葉がないが、俺は更に言葉を続ける。


「最近は少なくなったけど、助けた最初の頃は、夜にレイはよくうなされていたんだよ。それでその内容からだから想像でしかないが・・・・レイは一度両手両足を斬り落とされてる。更に付け加えれば焼かれているはずだ。それをクラスメイトだったあいつらがやったんだ。」


「う、嘘、何で・・・・」

「・・・・」

「あいつらはもう日本人じゃねえよ、こっちに来てから変わったんだ。『火の国の悪魔』だったか?あいつらの渾名?だからもうあいつらはこっちの世界の人間だと思った方がいい」


 まあ俺もドアールの街で師匠達の仇を討った時に・・・人を殺した時にこっちの世界の人間として生きる事に決めたから、人の事はいえないけどな。


100話気付いてませんでした。ありがとうございます。

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