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trick or treat

作者: 春日陽一

ハロウィンの夜のこと


お菓子をもらった子供たちが


すやすやと満足そうに眠る夜のこと


静かに眠るこの街に


不気味な魔女の声とともに


カボチャの馬車がやってきた。


「トリック、トリック」


そのかすれた声は


耳障りなほど


よく、響いた。


「トリート、トリート」


その声は


眠る子供たちの


夢の中に


溶け込むように


入っていく。



綺麗な夢に


悪臭漂う汚物を。


輝く夢に


底の見えない絶望を。


悲しい夢には


もっと悲しみを。


苦しい夢には


もっと苦しみを。


怖い夢には、


怖い夢には、魔女の優しさを。


でも、気をつけて、


魔女は狂っているから


魔女は歪んでしまっているから


その優しさが、


恐怖をもっと、引き立たせると思うよ。


夢の中は、


もう魔女のテリトリー。


さぁ、


思う存分


魔女を楽しませてあげて。


魔女は子供がだぁーい好きなの


魔女は子供の悲鳴がだぁーい好きなの


魔女は子供の涙がだぁーい好きなの


そんなのじゃ、ダメダメ。


狂った魔女は喜んでくれない。



声が枯れてしまうほど叫んで、


顔を思いっきり恐怖で歪ませて、


「ママー、助けてぇー」


って、泣いてみてはどう?


きっと、魔女は喜ぶよ。


さぁ、


はやく、はやく。


早くしないと、


夜が明けてしまう。


夜が明ける前に帰らないと、


もう、戻れなくなっちゃうよ?


夢の中でさ迷いつづけちゃうよ?


大好きなママとパパとは永遠にバイバイだよ?


それでもいいのかな?


まぁ、いいや。


きっとその時は


魔女が変わりにママになってあげるっ



さぁ、


夢の中でさ迷いなさい


そして


私を楽しませてよ


魔女の楽しみは


一年に一度しかやって来ないんだから。



あら、


もう朝になっちゃうわ。


ほら、


今年もいるいる。


自分の夢の中でさ迷っちゃった


哀れな子供たちが



お菓子が欲しいなら


イタズラをさせてね。



夢から帰って来れなかった子供たちの


生温かいベッドの上には


居なくなった子供の代わりに


一つ、


カボチャが置いてありましたとさ。




おしまい。






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