レベルとステータスとスキル
「ホラーゲームかと思ったらレベルかぁ。夢にしてもゴチャゴチャしてるっスね。まあ迷ってもしょうがないっス! ゲームの世界ならやっぱり……ステータスオープンヌッ!」
異世界モノの小説やアニメを好んで見ているトウコは、ノリノリでポーズを決めながら叫ぶ。
トウコの目の前に、半透明の情報ウィンドウが表示される。
「ステータス、キターっ! いいっス! 悪夢より、ゲームのほうがマシっス!」
そこには予想した通り、ステータスやスキル、職業というような情報が書かれていた。
トウコはここがゲームの世界だと確信していた。
ゲームの夢なのだ。そう考えて気分を切り替える。
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名前 : アソ トウコ
レベル: 2
筋力 : C
体力 : C
敏捷 : C
知力 : C
魔力 : C
生命力: C
職業 : なし(取得可能)
スキル: なし(残ポイント:10)
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「まずは職業を選ぶっス!」
トウコは迷いなくウィンドウを操作していく。
スマートフォンのようにタップすることで操作することができる。
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<職業を選択してください>
・学生
・給仕人
・シューター
・戦士
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「シューター? ……銃で戦うゲームをやりこんでるからっスかね。銃があればゾンビなんか目じゃないっス。これに決めたーっと!」
トウコは即決する。あまり深く考える性質ではない。
現実世界では短所ととられることが多いこの性質は、一秒の迷いが死につながる世界では長所となる。
<職業により、ステータスが変動しました!>
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名前 : アソ トウコ
レベル: 2
筋力 : C
体力 : C
敏捷 : B(上昇)
知力 : C
魔力 : C
生命力: C
職業 : シューター
スキル: なし(残ポイント:10)
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「ふうん、敏捷が上がったっスね。ちょっと、身体が軽くなったような気がするっス! 次はスキルを選ぶっス!」
トウコはその場で飛び跳ねてみる。
いつもより素早く、高く跳ぶことができた。
ステータスが効果を発揮しているようだ。
ウィンドウを操作し、スキルを一読する。
「スキルはシューター系ゲームのスキルとかパークに似た感じっスね。なら、選ぶスキルはクイックリロード、クイックドロー、エイムって感じで……」
トウコは迷わずにスキルを取得していく。
これがゾンビのはびこるゲーム世界だというのなら迷っている暇はない。
ゲームのように時間が止まっているわけではないのだから。
先ほどの戦闘では大きな音を立てた。
音に引き寄せられ、ゾンビのうめき声が近づいてきている。
じっくりと準備する猶予はない。
「とにかく今必要なのは生き延びることっス! とにかく銃! ナイフでゾンビと戦うとか縛りプレイは嫌っス!」
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スキル:
【銃創造】1
【弾薬調達】1
【応急処置】1
【緊急回避】1
【銃器】1
【照準精度】1
【装填】1
【早撃ち】1
【安定化】1
(残ポイント:1)
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「ではさっそく! 【銃創造】! 銃よ、出ろっ!」
【銃創造】は無から銃を生み出すスキルだ。
スキルが発動し、トウコの手が光り輝く。
光が収まるとその手には一丁のリボルバー拳銃が握られていた。
物理法則を無視して現れた銃だが、トウコは驚きもせず受け入れた。
「おおー! ソフトクリームは出なかったけど銃は出たっ! でもリボルバーか……。どうせならオートマチックがよかったっス。これは【銃創造】のスキルレベルを上げれば自由になるんスかね?」
トウコは手の中の銃を確認する。西部劇でおなじみの回転式拳銃だ。
トウコがゲームや映画で見たことのある実銃に似ている。
それを模してスキルが作り出した架空の銃だ。
構造や仕組みも似たものだが、現実と同じ動作とは限らない。
「見た感じ、世界で最も高貴な銃……シングルアクションアーミーっスね!」
西部劇の時代から現代に至るまでガンマンに愛されている名銃だ。
シリンダーは固定式で、弾は一発ずつ装填する。
トウコは弾倉を確認する。弾は6発装填されている。
シリンダーを手ではじく。
小気味いい音を立てて、弾倉が回転する。
「おお、コレやってみたかったっス! やっぱ実物はカッケエっスね!」
意味のない動作でテンションを上げ、トウコはにんまりと笑みを浮かべる。
そこへ二階の奥からゾンビが姿を現す。
「ウウァ……オオォ」
「お、さっそくお客さんのお出ましっス! ……なんてセリフも言ってみたかったっス!」
トウコは銃をゾンビへと向けて構えた。
没タイトルシリーズ
■悪夢の世界かと思ったらロールプレイング風システムな件