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階段は安全地帯……!?

 階段ではよたよたと歩くゾンビの動きは悪くなる。


「安全地帯っス! また踊り場で戦えば……!」


 トウコは手すりに掴まりながら、痛む足をかばって歩く。

 木製の手すりがぎしぎしと軋む。

 この手すりは安心できる強度ではないとわかっていた。


 細心の注意を払って一歩一歩階段を降りる。

 傷ついた足がひどく痛み、顔をゆがめる。


「っつぅー!」


「ウゥアア……」


 階段上にたどり着いたゾンビが向かって来る。

 だがゾンビは足を踏み外し、階段を転げ落ちる。

 階段の途中にいるトウコは焦って足を速める。


 手すりにつかまり、なんとか巻き込まれずにやりすごすことができた。


 ゾンビは踊り場に叩きつけられる。

 手足が妙な角度に曲がっているが、まだ動いている。


 上からはさらにゾンビが迫る。

 ゆらゆらと不安定に、階段を降りてくる。


 トウコは踊り場に到着する。

 そして足元のゾンビと降りてくるゾンビのどちらを撃つべきか考える。


 トウコは即決する。


「元気な奴から始末するっス!」


 倒れたゾンビを避けながら階段を降りてくるゾンビへと銃を向ける。

 弾丸は六発。

 ゾンビは頭を撃てば二発で倒せる。


 階段上のゾンビを撃てば、死体が転がり落ちてくる。

 なら、二発連続で頭部に撃ち込む。


 トウコはこの不思議な状況をゲームに近いものだと思い込んでいる。

 まるでゲームのような仕様を利用する。

 これで転落する死体に巻き込まれずにすむという算段だ。


「食らえっス!」


 揺れる頭部にゆっくりと狙いを定め、連続して二射する。

 命中。命中。


 ゾンビの頭部に侵入した弾丸は的確に命を絶ち、二発目がトドメとなって死体を消し去る。

 三発の弾丸が生成されて階段を転がる。


「やたっ! ――って、ちょおっ!?」


 喜びの表情が一転、驚きにひきつる。


 ゾンビが階段を転げ落ちてくるのがトウコの目に映る。

 銃撃したゾンビのすぐ後ろから、新たなゾンビが迫っていたのだ。


 銃声に反応したのか、ただ(つまづ)いたのかはわからない。


 勢いよく転がり落ちてくるゾンビは――トウコへ直撃するコースだ。

 避けられなければ無事ではすまない!


「ウアァ」


 倒れたゾンビがうめき声を上げ、トウコの足をつかもうとする。


「うおっとぉ!」


 とっさにトウコはそれを回避しようとする。

 鏡の破片で痛めた足が悲鳴を上げた。


「くぅっ!」


 ずるりと、足が血で滑る。


 それでも、なんとか踏み切って、足元のゾンビを飛び越えた。

 逃れる方向は一階方向だ。


 トウコが逃れると同時、上から転がり落ちたゾンビが踊り場に叩きつけられる。


 踊り場から階段へと跳んだトウコが着地する先――その足元に陶器の破片が転がっているのが目に入る。

 凶器のように、尖った破片だ。


 トウコは反射的に足を引く。


「あっ!?」


 そのまま、バランスを失って空中に投げ出される。

 一階へ向かう階段へと落下していく。

 その先には――


「……こ、こんなバカなっ! 最初にあたしがぶちまけた陶器の破片が!」


 宙に投げ出され、陶器の欠片が怪物の牙のように上を向いている。


 トウコはなすすべもなく、大きな破片に向けて倒れこみ、階段を転げ落ちる。

 破片はトウコの喉を切り裂き、大量の血を噴き出させた。


「う、うそ……?」


 そして、トウコは意識を失った。

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